「佐藤さん、どうもっす」
「終わったか?」
ルシオラの所から離れた横島は佐藤に礼を言う。本来なら、入れない&見張りがあるルシオラの居場所に横島が侵入できたのは佐藤の小細工だった。
「それから、俺がいない間、色々とお世話になりました」
「気にする事はない。弟弟子の面倒を見るのは当然の事だからな」
偉そうな言い方だが、横島は特に気にしない。彼にしては珍しい事に外見は美形でキザったらしい言い方もする佐藤を彼は兄弟子として素直に慕っていた。それは、記憶を失っている間、世話になった相手だと言う事もあるが、彼の本性が3枚目である事が空気から思いっきりわかった為、嫉妬の感情などが起こらなかった事が一番の理由だったりもする。
「だが、何時までも誤魔化している訳にはいかんぞ。腕が治っている事は直ぐにばれる」
「うっ、そうっすね。まあ、その事は正直に伝えておきます。滅茶苦茶怖いっすけど・・・まあ、俺がちょっとしばかれとけば、一度治したものをわざわざもう一度切り落としたりはしないと思いますし・・・・」
ガクガク震えながら答える横島。腕を補完していたのは、つまりは束縛されていないその腕がルシオラを解放したり、敵に情報を伝えたりする危険性を恐れていた為であり、拘束された本体と一緒にあるのなら特に大きな問題は無いと横島は推測した。っと、言っても実際にその推測をしたのは、半分以上横島の相談相手となった佐藤達なのだが。
「いや、それではすまないだろう。只でさえ、お前は一度反抗を示しているのだからな」
「うっ」
けれど、それはあくまでルシオラに対する処遇。例え実質的に問題は無くても横島は連続して反抗を示したことになり、かなりまずい状況だった。その事に関してもあらかじめ指摘されながらも決意して実行したのだが、流石に冷や汗がたれる。
「仕方ない。俺がお前を助けてやろう」
「ど、どうするんすか!?」
しかし、そこで自信あり気に佐藤が助け舟をだした。その言葉に横島は藁にでも縋りつくような気持ちで、彼に期待を寄せる。そんな彼に佐藤はある問いかけをした。
「お前は気にならないか。魔族である俺が何故、他の魔族と違って自由に動けるのか?」
「あっ、そういえば・・・・」
言われて気付く不思議。横島は答えがわからず、首をかしげる。
「それは、私がこういうものを持っているからだ」
そして、佐藤はその横島のリアクションを見て満足したようにあるものを見せる。それは見た事も無いような色をした丸い球体のようだった。
「なんすか。これ?」
「これは私が作った闇アイテムの一つで、エネルギーの供給を受ける端末・・・・・まあ、一種のアンテナのようなものだと考えてもらえばいい」
「アンテナ?」
「そうだ。地獄炉のな」
「ぶっ!!!!」
思いっきり物騒な言葉に思わず横島が噴出す。あまりに勢いよく噴出したので、咳き込み、そしてそれがおさまると彼に詰め寄った。
「あ、あ、あんた!! なんちゅう物騒なものを作るんじゃああああ!?」
地獄炉の事は横島も一度中世にタイムスリップした時にみたもので、暴走すれば、あたり一体を魔界に変えてしまう原子力発電所の数倍以上に危険なものである。しかし、佐藤は平然と答えた。
「心配ない。技術事態は数百年も前に完成しているものだからな。改良して危険性は無い様にしてある。まあ、その分、出力も落ちて精々数人分のエネルギーしか補えないのだが・・・・」
「あんたの保証が当てになるかあああああああ!!!!!!!!!」
兄弟子に対して酷い言い草だが、つくったものがものだけに仕方が無いとも言えるだろう。
「まあ、ともかく、そのエネルギーを提供するのと引き換えに、お前のした件を不問にしてもらうよう取引をするんだ。システムが心配だというのなら、その際調べなおしてもらってもかまわん」
「ま、まあ、それなら・・・・・・」
佐藤の話しを聞いて、自分の為を思って骨を折ってくれてる相手をそこまで責めるのもどうかとも思い、退く横島。そして、そこで別の話題を切り出す。
「そういえば、ヒャクメが裏切ったって本当っすか?」
「ああ、それは本当だ。奴は“世界はアシュタロスのもの”だと高らかに笑って宣言していた」
「うーむ。そんな奴には思えんのだが。それに、あいつもお間抜けだけど、結構美人だからなあ。あんま、やっつけたりはしたくないんだけどなあ」
「お前がしなくても、あの小竜姫という神族が討つだろうな。彼女が裏切ったというなら、自分の手で討つと宣言していたからな」
「小竜姫様かあ。確かにあの人なら手加減せんだろうなあ」
小竜姫なら、裏切り者の神族など決して許しておきはしないだろうと、ヒャクメを切り裂く姿を彼はリアルに想像した。
「クシュン」
横島と佐藤が話している頃、逆転号でヒャクメがタイミングよくクシャミをする。
「風邪でちゅか、ペス?」
「そんな事ないのねえ~。多分、多分誰か噂でもしてるんだと思うのね~」
それを見て、心配そうな顔をするパピリオ。ヒャクメの答えを聞いた彼女は安心した表情になった。
「そうでちゅか」
「それよりもパピリオ様~、私は何で張りつけられているのね~」
しかし、ヒャクメの方は安心できない。何故ならヒャクメは今、四肢を拘束され謎の金属円盤の上に貼り付けられているからだ。それは、丁度、仮面ラ○ダーや0○9、宇宙人に改造される人の図にでてくるような光景だった。
「ルシオラちゃんを助けだす為にペスには最強の造魔になってもらいまちゅ。これは、その為の改造手術でちゅよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・嫌なのねー! 改造されたバ○タ男やトン○男みたくなるのは嫌なのねー!!!!!」
パピリオの言った言葉の意味を理解し、泣き叫ぶヒャクメ。しかし、パピリオの方は笑顔のまま言った。
「大丈夫でちゅ。ペスはメスでちゅから、バッタ“男”にはなれまちぇん」
「そういう問題じゃないのねーーーー!!!!!」
再び泣き叫び、暴れるヒャクメ。しかし、そんな彼女に魔力の塊が突きつけられた。
「うるさいでちゅ。大人しく言う事を効かないなら、安楽死でちゅよ」
パピリオが冷たい声で言う。ルシオラが敵のもとに捕らわれている、あるいは殺されてしまったかもしれないと思う事で、彼女はかなり気がたっていた。彼女の本気さに気付き、ヒャクメは息を飲み黙る。
「いい子でちゅねえ。さ、改造でちゅよ」
(私って、何て不幸なのねー!!!!!!)
ヒャクメの態度がおとなしくなったパピリオ。それに対し、声に出すと殺されるかもしれないので、心の中で泣き叫ぶヒャクメだった。
(後書き)
佐藤って、確か魔界編で登場した時は“俺”って一人称だったと思うんですがそれであってましたっけ?
あと佐藤って俺の中では本来の性格は若干妄想癖のあるけど、性格的な面をいえば、他は割りと普通の人ってイメージなんですけどどうですかね?