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「霊光波動拳継承者『横島』(改訂版)16話(GS+幽遊白書+いろいろ)」

柿の種 (2006-01-01 02:58/2006-01-01 03:09)
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 美神とおキヌによって制裁を受け、横島はズタボロになっていた。いつものセクハラと比べても少しばかり度が過ぎた行為であった事に加えて、自分達の想いを認めたor伝えた後だっただけに、その折檻は通常の2倍増しで激しかった。故に不死身の再生力を持つといわれる彼とはいえ、すぐには復活できないようである。

「結界を張って、それから自縛ロープを三重に!!」

 そして、その間に美智恵が指示を出し、厳重な拘束をする。文珠で拘束されていた上に、腰に力の入らなかったルシオラはそれに抵抗することができない。そして、拘束が終わると美智恵による尋問が開始された。

「あなたにはアシュタロス側に関する情報を知る限り話してもらうわ」

 一切の緩みの無い表情でそう睨みつける。しかし、ルシオラはそれをあざけるように笑った。

「無駄よ、私はアシュ様を裏切る気なんてないわ。それに、そもそも私は話せないように作られているの。アシュ様を裏切ろうとすれば、タブーに触れ、私達の存在は消滅するわ」

「それは、本当かしらね?」

 その言葉を聞いた次の瞬間、美智恵は無造作にルシオラの腕を切り落とす。

「!!」

 激痛に声にならない悲鳴をあげるルシオラ。そんな、彼女を美智恵は冷酷に見下す。

「私は敵であるものを容赦しないわ。あなたが何も話せないというのなら、生かしておく必要も無い。次は殺すわ」

 そう迷いの無い口調で言う。そしてそれは真実彼女の本音だった。ルシオラを哀れむ気持ちや、このような残酷な振る舞いをする事に躊躇いがまるで無いという訳ではなかったが、そんなものは娘を守ろうとする彼女の強い決意の前ではまるで意味の無いものだったのである。

「次は首をはねるわ」

 そう言って、剣の形にした竜の牙を振り上げる。それを見て、美神とおキヌが止めに入った。

「ちょ、ちょっとママ」

「いくらなんでも、それは!!」

 普段は敵に対して容赦の無い美神も目の前の残虐な行為には流石に気がとがめ、優しいおキヌにとっては言うまでも無く見過ごせない行為だった。けれど、そんな二人を美智恵は一言で制止する。

「なら令子、あなたが代わりに死ぬ?」

 その言葉で二人は完全に硬直する。そんな二人に美智恵は冷酷な言葉を続けた。

「私達はこれからの戦いをどんな手を使ってでも勝ち抜かなければならないわ。その為には容赦なんかしてられない。それが、嫌だというのなら、令子あなたが死んでアシュタロスの野望を防ぐしかないわ」

 こう言われては、二人は何も言えなかった。美神に自分が犠牲になってまで、他人を救うような自己犠牲精神は無いし、おキヌにしても美神と敵である魔族との命を天秤に掛ければ、どうしたって美神に傾いてしまう。二人が黙ったのを確認して、美智恵は再び剣を振り上げた。

「嘘をついているのなら、白状するのは今の内よ」

「嘘なんてついていないわ。それに、例え、何の枷も無かったとしてもあなたになんか絶体に話したりしない!!」

「月並みな台詞ね」

 ルシオラが目を閉じ、覚悟を決める。誰も動けない。誰も止められない。そう、その筈だった。

「ちょっと、待ったあああああああ!!!!!!」

 高速で移動し、美智恵の剣を受け止めた存在があったのだ。

「何の真似かしら、横島君?」

 それは、いつの間にか起き上がっていた横島だった。彼は霊波刀で美智恵の剣を受け止め、やってしまった、っとでも言うような表情をしている。そして、しどろもどろに言い訳を始めた。

「いや、その、やっぱ動けない女の子を殺すのは敵とはいえ、どーかなーっと」

「見かけはそうでも彼女は強力な敵なのよ。それに、話を聞いていたのでしょう? 彼女を殺さないのなら、令子を殺すしかないわ」

「け、けど、この戦いに勝てるんなら、別に美神さんもその子も殺す必要はないっすよね?」

 冷たい目で見られ激しいプレッシャーを感じながら、それでも引き下がらない横島。そんな彼に美智恵は問いかけた。

「どうやって、あなたにはそれを実行する何かいい手があるっていうの?」

 押し黙る横島。彼に具体的な考えなど無かった。けれど、彼はひかなかった。いや、ひけなかったのだ。飛び出した時は半ば勢い頼りだったが、彼には今更引き下がれない“理由”があった。だから、横島は宣言する。

「お、俺が美神さんを守ります!! んで、アシュタロスも俺が倒します!!」

 それは答えにもなっていない答え。同時にもっともシンプルで、以前の彼であれば決して出なかっただろう、自らが責任を背負う事を覚悟した答えであった。その言葉に今度は美智恵の方が一瞬沈黙し、再び問いかけをする。

「それがあなたの答えだっているのなら、他にまだ聞かなければならない事ができるけどいいわよね?」

「えっ、はい」

「なら、聞きます、あなたは令子の事をどう思ってる?」

「それは・・・・・・・・」

 美智恵の問いかけに対し、横島は考えむ。それはある意味彼の中でも答えでていない答えだったので何と答えていいのかすぐには思いつかなかった。前に、西条に同じような子事を問い掛けられた時は、彼は性欲まるだしの答えを返したが、今は流石にそんな事を言える場面ではない。そして、彼はしばしの黙考の後、自分にとって最も正しい答えを導き出した。

 
「大切な人です」


 美智恵の目を直視し、真剣な態度で横島はそう答えた。その答えに後ろで話を聞いていた美神が思わず顔を赤くする。
 “職場の上司として尊敬してる”、“女として愛してる”、“性欲の対象としてみてる”、“前世から縁”そう言った理由を述べたとしてもそれらは全て事実と当てはまる。けれど、彼の心を最も忠実に反映した答えはこれ以外になかっただろう。横島にとって美神は理屈抜きで最も大切な存在の一人だった。

「なら、何故、あの魔族をそこまで庇おうとするの?」

 横島の言葉を嘘だとは美智恵には感じられなかった。ならばこそ疑問に思うのが、“何故、彼はその相手が危険にさらされる可能性を増やしてまで敵であった相手を庇おうとするのか?”、“何故、自分と違う道を選ぼうとするのか?”と言うこと。
その問い掛けに横島は再び押し黙る。ただ、それは先程と違い、“何と答えていいのか迷っている”のでは無く、“既にある答えを言うのを躊躇っている”ようだった。

「えと、その、美人をねーちゃんは出来れば殺したくないってのもあるんですけど、なんていうか、そのお詫びっていうか・・・」

「お詫び?」

 そして、やがて決意したように答えた横島に、美智恵は訝しげ気な顔をする。それに対し、横島は更に躊躇ったようにしながら答えた。

「あ、さっき、ちょっと暴走して酷い事しちゃいましたし・・・・」

「ぷっ」

 その、答えを聞いて美智恵は思わず吹き出した。横島の言っているのはルシオラにセクハラを働いた事だろう。けれど彼女は所詮は世界の敵で魔族、人権も何もない。少なくとも法的には何ら処罰されることなく、彼女が処刑されてしまえば罪すら残らない。けれど彼は“そんな事”の為に命をかけた誓いができるのだ。自分の立場を失うかもしれない行動をできるのだ。彼女は美神から“横島は馬鹿だ”と聞かされていたが、この時、初めてその本当の意味を理解した。“確かに彼は馬鹿だ”、そう実感し、同時にそんな横島がとてもまぶしく見えた。

(馬鹿な自分、理想に燃えていた自分、私が捨ててしまったものを彼はまだ持ってるのね)

美智恵は若き頃正義の味方を目指していた。正義なんて無い世の中で、それでもGSという職業だけはそれを貫いていけるのだと信じ、結局は折れた。
 そんな自分の生き方を彼女は後悔してはいない。現実の前に奇麗事だけを言っては居られない。それを今の彼女は理解している。それでも、たまに思う事はあるのだ。“もし、自分が理想を捨てない生き方をしていたら自分はどうなっていたのか?”っと。

(この子の先、もう少し見てみたいわ)

 心の中でそんな事を思いながら美智恵はルシオラに対する処遇を下す。

「いいでしょう。生かしておけば何かの役に立つ可能性もありますし、とりあえず、彼女は拘束をしておくにとどめておきましょう」

 そう美智恵は述べた。横島にほだされたように見えるこの決断は実の所そうではない。彼女は最初からルシオラを殺す気ではなかったのだ。それは今、さっき述べられたように生かしておけば存在価値があるから。プロテクトが嘘にしろ真実にしろ、ヒャクメの力を借りれば、情報を引き出せるかもしれない。
殺そうとしたのは手っ取り早くルシオラから情報を引き出そうとする為の演技であり、その後のやり取りは最高の戦力として期待できる力を持ちながら、精神的に弱い所のある横島に覚悟を決めさせる為に状況を利用したにすぎなかったのだ。結果として、横島のした決断は想定していたものとは別のものになったが、その結果に美智恵は満足していた。
 そんな事を知らない横島や、後ろのおキヌ達は美智恵の言葉にほっと一息つく。同時に彼女は横島に羨望の眼差しを送った。

(やっぱり、横島さんは凄いな・・・)

 この優しさ、そして自分には出来ない事をやってしまう強さ。戦う強さなんかじゃなく、そこに、自分は彼を好きになったのだと改めて実感する。まあ、その強さが先程のルシオラへのセクハラ等のように間違った方向へと暴走しやすいのが欠点だが。

「連れて行きなさい」

 そして、ルシオラが連行される。その途中で彼女が横島の方を向いた。

「・・・・一応、礼を言っておくわね。あなたのおかげで助かったわ」

「いや、俺の方こそ、さっきは本当にスマン」

 頭が地面につきそうな程、おもいっきり頭をさげる横島。それを見て、ずっと固い表情ままだって、彼女がほんの少しだけ表情を崩し、クスッっと笑った。

「魔族に本気で謝る人間なんて、あなたって変な人ね」

 そのやりとりに美神とそしておキヌは先程の感動も消える程に非常に嫌な予感を覚えたのだった。


(あとがき)
感想の返信を今回はこちらに乗せておきます。

>よだれ舌さんへ
横島のセクハラに関してはまあ、暴走状態だったって事です。暴走してもそんな事はしないと言われるかもしれませんが、一巻ではかなりマジでおキヌちゃんを襲ってますし、入院した時は看護婦(現看護士)の人達に本気で退職を考えさせる程のストレスを与えてますので、彼のモラルは知り合い以外には必ずしも当てにならないのではないかと思っています。
>静流時さんへ
応援を送っていただけたみたいで感謝致します。
>@刹那さんへ
読者の方の意見はどこまで受け入れるべきなのかは正直悩み所です。自分一人で突っ走るとそれはそれで暴走したり、詰まっちゃたりもしますし。ですので、とにかく意見はいただけたらと思います。勿論、それをこちらで採用するかは@刹那さんのおっしゃるとおり私自身の判断になりますが。
>こもりさんへ
応援ありがとうございます。
>quruunさんへ
連載を書いて内に感想自体がこなくなるというパターンがトラウマになってまして(汗)どうしても、意識しちゃうんですよね(苦笑)
>hiroshiさんへ
あー、流石に性器に触れたり、弄繰り回したりはしてませんが、美神に対してするのと同じ位のセクハラはしちゃってます(汗)その辺の言い訳は今回の作品の中で述べさせていただいたと思いますが。
>ぴーぷるさんへ
個人的には“惚”の文珠や“惚れ薬”を飲ませようとする原作の横島も結構えげつない事してると思うので、多少やり過ぎたとは自分でも思ってますが、オリキャラというほど逸脱してるとは思っていません。まあ、原作ではその辺を未遂で終わらせたりギャグっぽくする事で上手く濁していて、その辺が再現出来ない事は私自身の未熟さですけどね。


それでは、皆様感想ありがとうございました。

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