対峙する二つの影
一つは邪剣を構える凶狼
もう一つは神々しい神剣を構える竜姫
二つの魂・・・いざ激突。
エピソード二十八 呼び覚ます大剣
「てい!!・・・・この野郎!!」
「頑丈な奴らですジャ!!」
ギルスとTGは亀二体とカラスを相手に交戦していた。地上の亀二体はTGがパワーで押し、空中から攻めてくるカラスにはギルスは跳躍して挑んでいた。
「ギィィ!!」
「んなろ!!」
カラスは宙から一気に滑空しギルスに迫る。しかしそれをギルスは跳躍し、カラスを踏み台にして回避した。
「グギャ!!」
≪ガッシャーーーーーーン≫
カラスはそのまま勢いあまって、ビルのガラスへと突っ込んでとまった。
「よし、トドメだぜ!!」
それを見たギルスは右足の踵を鋭く伸ばすと、そのまま跳躍してカラスへと挑む。しかし・・・。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアス!!」
それに気づいたカラスは間一髪で宙へと舞い上がり、そのままどこかへと消えた。
「く、攻撃が読めないですジャー!!」
TGは亀たちの繰り出す攻撃が読めず、僅かづつだがダメージを受け始めていた。
(タイガーさん。次二匹が突きを放ったらそれを掴んでください)
「わ・・・分かったですジャ!!」
琉朱菜の指示を受け、TGは二匹が放ってきた突きを受け止めた。
「ギャ!?」
「ギギ!?」
(そのまま腕を下に振ってください)
琉朱菜の言葉に従い亀たちの腕を下に振るった。すると、亀たちの身体が一気に回転し、地面に転がった。
「喰らえですジャ!!」
TGは一方の亀に拳を叩き込んだ。すると、一匹は吹き飛ばされ、壁へとめり込んだ。
「さぁいくですジャ!!雪乃丞サーン!!」
「おいや!!こい!!」
TGは倒れている亀を掴むと、ギルスのいる方向へと投げた。するとギルスは待ちわびていたように踵を伸ばし跳躍する。
「うらっ!!」
≪ザシュン!!≫
ギルスの踵は亀の首に突き刺さった。そしてそのままギルスは亀の胸部を蹴り地面へと降り立った。
「ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
≪ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!≫
亀は断末魔の悲鳴を上げて爆発した。
「よし、後は一匹」
「雪乃丞サン!!危ないですジャー!!」
TGの言葉を受け振り向くと、跳躍し体当たりを仕掛けようとするもう一匹の亀の姿があった。ギルスは対応しようにも間に合わない。
≪ベキッ≫
「ぐはぁ!!」
そのまま体当たりを受け、吹っ飛ばされるギルス。そして亀が再度体当たりを仕掛けようとしてくる。
「ち・・・!!」
衝撃で動けないギルス。これまでかと思われた・・・次の瞬間。
≪バシューーーーーーン≫
突如光の矢が亀の背中に直撃し、甲羅が火花を散らしながら倒れた。
「な・・・なんだ!?」
「なんなんですジャ!?」
(なんなんですか、今の!?)
三者がそれぞれ疑問を感じながら矢の放たれた方向を見た。そこには、鬼丸を右腕に宿し弓へと変えた政樹の姿があった。
「な、何なんだアイツ!?」
「あ、横島サンから聞いた事があります。確か冥子サンと式神を賭けた勝負をした相手だそうですジャ」
(じゃぁ、あの人が鬼道家の人ですか!?)
以外な人物が声をあげた事により、タイガーが驚く。
「琉朱菜サン、知ってるんですかいノー?」
(はい、昔は凄腕の式神使いの一族だったと聞きます)
皆がそれぞれの反応を示す中、気にせず政樹は目の前の敵に集中する。
「戻ってくれや、鬼丸」
政樹は鬼丸を影に戻すと、構えをとる。すると、下腹部に黄金のベルトが出現する。そして右手を前に突き出しながら叫ぶ。己の中に潜む戦士を呼び起こす言葉を・・・。
「変身!!」
次の瞬間、政樹はベルトの両腰のボタンを押した。すると、周りを光が包む。そしてその場には・・・・黄金の戦士『アギト』の姿があった。
≪ガキン・・・ザシュン・ズシャリ≫
静流は犬飼の振るう刃を受け流しながし、どう攻めるか考えていた。
「フン!!受けばかりでは勝てないぞ!!」
そう言って、犬飼は更に勢いを加速させて刃を振るった。しかしその瞬間、静流は強く右足を踏み込んだ。その瞬間・・・・静流が消えた。
「な、何!?」
「・・・・ここだ」
静流の声が響く瞬間、犬飼の身体に多数の傷が浮かび上がる。
「ぐは!!・・・・何をした?」
「お主が大振りになった瞬間、瞬動でお主の後ろに回り込んだのだ」
「ぐ・・・・」
そう言って膝をつく犬飼。
「な、何よ。心眼てこんなに強かったの!?」
「こ、これなら勝てるかもしれませんね」
「そうね、これだけ圧倒的ならね」
美神・おキヌ・エミの三人は楽観視し始めていたが、横島だけは何か嫌な予感がしてたまらなかった。
「どうしたのヨコシマ?」
「どうしたのでござるか、先生?」
シロタマの二人が話しかけると、横島は突如思っていた疑問をつぶやいた。
「ありゃまだ本気じゃねえな・・・」
「え・・・」
「何故でござる?」
「分からねえか?あの犬飼っておっさん、フェンリル化してないんだぜ」
それを聞きハッとする二人。それを聴いたのか、犬飼が不敵な笑みを浮かべ答える。
「左様。拙者はまだ力を完全には解放しておらんぞ、少し出してやらん事もないがな」
そう言い、全身の筋肉がメキメキと変形しそうになった。その時!!
≪ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ≫
突如、犬飼の背中を弾丸が襲った。不意を突かれた犬飼が地面に倒れこむと同時に、蒼き鎧を纏った戦士が横島たちの前に立った。
「さ・・・・西条さん!?」
「すいません美神さん、僕です」
「ぴ、ピートかお前!?」
ピートもといG3の言葉を聞き驚きの声をあげる横島。それは皆も同じ気持ちで、どういうリアクションを取ればいいか困っていた。すると、G3に時雨からの指示が飛ぶ。
『ピート君!!今からスラッシャーユニットを射出する!!訓練でボロボロになった鬱憤をここで晴らしたまえ』
「そうさせていただきます!!」
G3はそう言い、地面を蹴って跳躍した。すると、大きな刃を装備したマシンが飛来し、G3とのドッキングを果たした。
「はあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
G3は背中にあった巨大な霊剣を引き抜き、犬飼に挑む。
≪ガッキーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン≫
強烈な光と共に、二つの刃が交錯する。
「ぐうう・・・・やりおるな!!」
「僕は仲間のために・・・・戦う!!」
二人は互いに一歩も引かず、力の押し比べになっていた。すると、半フェンリル化した犬飼の体から一匹のノミが出現した。
「貴様はコイツの相手でもするがいい!!」
「そんな決意無き存在に・・・」
そう言いながら、G3はノミを下から掬い上げるように刃で殴り上げ、背中のブースターを全開にして挑む。
「僕の決意は負けない!!」
G3はそう言うと、刃をノミに向け、特攻をかける。
「喰らえ!!僕のオリジナル技!!(命名クー&茶々丸)」
G3は刃に術式をかけ、最大加速を出した。そしてその姿は、雷鳴が如く一瞬しか映らぬ強さを映し出した。
「光華崩剣!!」
その魂の叫びとともに、ノミは一瞬にして殲滅、そして昇華させたのである。
「チィ!!ならば完全にフェンリルに!!」
「待たれよ犬飼殿」
怒り狂う犬飼を、なんと静流が止めたのだ。
「何故止める竜神!!」
「こんな月で戦おうというのか?おぬしの全力は満月だろうに、それでいいのか?」
静流の言葉を受け、犬飼は一瞬だけ考えると、ニヤリと不敵な笑みを浮かべて答える。
「いいだろう。決着は満月まで持ち越しだ。決着の場所は・・・・人狼の里だ」
それを聞いた瞬間、シロが怒りのあまり飛び掛ろうとするが、なんとか横島が止めに入る。
「では・・・・・また会おうぞ現代の武士たちよ!!」
その言葉と共に、犬飼は姿を消した。
「ふぅ・・・」
静流は一息つきながら刃を納めた。
「ちょ・・・・ちょっと心眼!?」
「な、何がどうなってるですか!?」
「落ち着いてくれぬか美神殿におキヌ殿」
そう言うと、静流は横島と共に何があったのかを全て話した。
「アンタたちが除霊しに行った場所でそんな事があったなんて・・・」
「事実よ。おかげで横島は怪我しちゃったんだから!」
そう言い妖気を放つタマモ。しかしお約束通り横島に撫でられてふにゃ~んと崩れ、子狐化して横島の頭に乗った。
「という訳で、とりあえず俺たちはあの犬飼を倒すために人狼の里に行きます。美神さんは・・・」
「行くに決まってるでしょ。私の所員を傷つけた以上は、放っておくわけにいかないわ」
その言葉と共に、美神たちはシロに連れられ人狼の里へと向かうのだった。
「たぁ!!はぁ!!せりゃ!!」
アギトは変身するなり駆け出すと、ギルスに再び襲い掛かろうとする亀を飛び蹴りを喰らわせた。すると衝撃で亀は吹き飛ばされ、亀との間に間合いが出来た。その間に、アギトはギルスへと手を差し出す。
「大丈夫かいな?」
「あ・・・ああ」
アギトの手を借りギルスは起き上がった。すると、亀は奇声を発しながら走ってきたのだ。
「とりあえず協力しましょか?」
「だな。いくぜ!!」
そう言うと、アギトとギルスは同時に走り出し、亀へと向かいだす。それを見た亀は跳躍すると同時に両手足や頭を引っ込め、空中で回転し始めた。そしてそのまま、アギトたちに襲い掛かる。」
「うわ!!」
「ガ○ラかてめーは!!」
二人はなんとか避けると、アギトはベルトの両腰のボタンを押し、ギルスは魔装術を発動した。すると、アギトは全身を真紅に染め、筋肉が盛り上がり、角が二本から六本へと変わった。同じくギルスも全身を真紅に染め、手首足首には銀色のリストへと変化した。そう、アギト・バーニングフォーム。ギルスⅡの降臨である。
「いくぜ!!」
ギルスⅡはそう言うと、両手首からムチを伸ばし、それを振り回すと空中で回転する亀に巻きつけた。そして亀の回転を強制的に封じた。
「ギギ!?」
亀は驚きの声を上げながら落下し始める。すると、その下には拳の灼熱の炎を纏わせたアギトの姿があった。
「喰らいなはれ!!」
アギトの放った拳は、亀の腹部へと向かう。そして・・・。
「ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!」
爆音と共に、それは炸裂した。
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
亀は悲鳴を上げながら、爆発して消滅した。
「はぁ・・・はぁ・・・・・強いなあんさん」
「テメエこそ・・・・中々の力じゃねえか」
二人は変身を解くと、がっちりと固い握手をかわした。それを見たタイガーと琉朱菜は即座にのたもうた。
「共に戦う者に時間なんて関係ないんですジャー(ねー)」
熱い友情に感動するのだった(汗)。すると、突如タイガーの携帯が震えた。それを手に取ると、エミから一通のメールが届いていた。
「ありゃ。エミサンからですジャ」
「所長からですか。なんでしょうね?」
そう言い琉朱菜はタイガーの携帯の画面へと近づく。それにより琉朱菜の胸がタイガーの腕に押し付けられタイガーがうろたえるのはお約束である。(ちなみに琉朱菜がその姿を見て嬉しそうだったw)
『緊急事態なワケ。今から○×にある人狼の里に来るワケ』
それを見たタイガーと琉朱菜はエミがどれだけの危機かを理解した。
「行きましょう。琉朱菜サン」
「ええ!!」
そう言うと、二人は走りだした。
「あの様子・・・・何かあったようだな」
「そうみたいやな。あんさんはどうするんや?」
「俺は・・・一応ついていくさ」
「さいですか。じゃぁ・・・・・ワイはこれで」
「ああ・・・・・またいつか会えたらいいな」
そう言い、雪乃丞と政樹は別れた。そして雪乃丞は、タイガーたちを追うのだった。
「なるほど・・・・・あの犬飼って奴がフェンリル復活を狙っているって事ね」
「そうです。あのフェンリルが復活ともなれば、地上にいる霊能力者でも勝つのは困難でしょう」
人狼の里についた美神たちは、長老から全てを聞かされ驚きつつも、対策を考えていた。
「対策として考えれるとしたら、シロに古代の女神を宿らせて、その力で圧倒するしかないわね」
「ですな。もうそれくらいしか「もう一つあるんじゃないっスか?」」
長老が答えようとすると、突如横島が声を上げた。
「横島殿。もう一つとはなんでござるか?」
「確か前にここに来たとき、八房ともう一つ刀があったっスよね?」
「伏姫の事でござるか?」
「そうっス。あれなら八房を持った犬飼にも勝てるんじゃ?」
「しかし、あれを扱えるのは女性くらいしか・・・・まさか」
「うっス。シロならあの刀を使えるんじゃないかと思うんスよ」
「確かに・・・・今のシロなら・・・」
話し合いの結果、伏姫は最終手段として準備しておき、女神を呼び出す事になった。
美神が栄養ドリンクを飲みながら作業を始め・・・・日にちが0時になる。
「満月か・・・・シロ、絶対にあのおっさんを止めるぞ」
「了解でござる!!さっさと勝って先生と散歩にいくでござるよ!!」
「ダメよ!!ヨコシマは私とキツネうどんを食べに行くんだから!!
「なんだと女狐!!」
「何よバカ犬!!」
二匹がギャーギャー騒いでいると、ずっと会えなかったおキヌが横島の肩に止まった。
「おキヌちゃん」
「・・・心配したんですよ・・・・本当に・・・」
「ごめんね・・・・不安に・・・・させちゃったよね」
「もう・・・・・離れないでくださいね」
「うん・・・・・分かってる」
そう言いおキヌを撫でていたその時、突如里の周りを強大な霊圧が襲った。それを感じた瞬間、皆は悟った。
「来たな・・・・アイツ」
「横島殿。美神殿はまだ呼び出しに時間がかかる。それまで私たちで食い止めるでござる!!」
「うっす!!いくぞタイガー、琉朱菜ちゃん、雪乃丞、ピート!!」
そう言うと、四人はロウガの後をついていく。最後に行こうとする横島は振り向くと、シロ、タマモ、おキヌに右手の親指でサムズアップをした。そして、そのまま皆の後をついていった。
「先生・・・」
「ヨコシマ・・・・・すぐに行くからね」
二匹がそう言う中、おキヌの中では何故か不安が消えなかった。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
叫びと共に、周りにある木々は薙ぎ倒された。そしてその中心には、巨体に大きな刀を背負った、フェンリル変異体の姿があった。
「あ、ついにきやがったなおっさん!!」
現場に着いた横島たちは、すざまじい霊波を放つフェンリルに驚きつつも、それぞれの武器を構える。
「琉朱菜サン・・・・・変身ですジャ」
「はい!!」
「いくぜ!!変身!!」
「G3システム・・・・戦闘開始します!!」
皆はそれぞれ、TG・ギルスⅡ・G3へと姿を変えた。そして横島は、右手から救世の手を発動させる。
「ガキどもが・・・・・・拙者の目的の邪魔はさせんぞ!!」
フェンリルはそう言うと、刃を振り下ろす。すると、先陣に立ったロウガがそれを受け止める。
「ぐぅ・・・・・・犬塚!!」
「犬飼!!お前が自分の道を行くならば、拙者も自分の道を貫く!!」
「いいだろう!!貴様の道すら破壊しつくしてやる!!」
そう言うと、そこから猛スピードで剣撃が起きる。火花を散らし、ぶつかり合う霊波は辺りの木々に傷をつける。
「テメエの敵はそのおっさんだけじゃねえぜ!!」
ギルスⅡは右手に霊力を込めると、ムチと一緒にそれを放った。それにより、フェンリルの腹部に傷が出来るが、すぐに再生してしまった。
「ち!!」
「下がってください雪乃丞サン!!」
そう言うと、今度はTGが幻影投射を発動させ、フェンリルに幻を見せようとする。しかし・・・。
「そんなまやかし、拙者には無駄だ!!」
その叫びと共に、フェンリルは強引に刃を振るって幻影を切り払った。それにより、ロウガも力負けして吹っ飛ばされる。
「今度は僕だ!!時雨さん、スラスターユニットを!!」
『了解だ』
時雨が通信越しに答えた瞬間、空にスラスターユニットが射出されてきた。そしてそれを換装すると、G3は空中から砲身をフェンリルに向ける。
「喰らえ!!ダンピールブラスター!!」
「小賢しいわ!!」
強力な霊波砲が放たれるも、フェンリルはそれを八房の腹で防ぐ。そしてそのままその霊波砲を切り払ってしまった。しかし、その隙をついて横島が霊波刀を振るった。
≪ズバッ!!≫
「ぐは!!・・・・・おのれ!!」
「久々だなおっさん。今度こそ寝てやがれ!!」
「フン・・・・・貴様がな!!斬風牙!!」
フェンリルは刃に風を纏わせると、横一閃に払った。
「サイキック・ソーサー!!」
横島は複数のサイキック・ソーサーを発動させそれを防ぐが、耐え切れずに・・・・爆発した。
「・・・・・横島さん!?」
おキヌは突如何かを感じ取り横島が向かった方角を見た。するとそこから、煙が上がっているのが見えた。
「・・・・何か起きたみたいね」
「・・・・横島さん・・・まさか」
「大丈夫よ。アイツが死ぬなんて有り得ないんだから」
そう言い不敵な笑みを浮かべるタマモ。すると、紋章陣を完成させた美神の声が上がる。
「シロ!!早くこっちに!!」
「了解でござる!!」
シロが紋章陣で女神を受け入れた直後、森から一陣の風が舞い、フェンリルが姿を見せた。
「・・・犬飼」
「ほう・・・・女神を受け入れたようだなシロ。だが・・・それだけでは勝てないぞ!!」
女神化したシロは右手に巨大な霊波刀を構える。すると、フェンリルも八房に力を込める。そして・・・。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「グオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
二人の持つ刃がぶつかり合う。それにより火花が散り、辺りの空気が捻じ曲げられているかの如く木々がざわめく。
「犬飼!!喰らえ!!」
シロは正眼からフェンリルに向けて突きを放った。しかし、フェンリルはそれを横に弾き、上から八房を振り下ろす。
≪ガシン・・・・ビシビシ≫
シロは強引に八房を受け止めた。しかし強力な一撃にシロの踏んでいた地面にヒビが入り砕け始める。
「なんのーーーーー!!」
シロは八房を押し上げると、フェンリルを蹴って間合いを取る。しかし、それを黙ってみているフェンリルでは無く、フェンリルは速攻をかけようとした。しかし・・・。
≪ドゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン≫
突如その場に、炎が叩きつけられた。フェンリルが炎の放たれた場所を見ると、そこには指から炎を発っしているタマモの姿があった。
「貴様・・・」
「あの森での戦い以来ね。横島は・・・・どうしたのよ?」
「あのガキか?フン、拙者の放った斬風牙で瓦礫の下敷きになっていると思うぞ」
「「「・・・・・・!!」」」
その言葉を聞き、シロタマ、そしておキヌが蒼白する。
「な・・・・何を言う。先生が死ぬはずが・・・・」
「そ・・・そうよ。アイツが死ぬ訳・・・・ないんだからーーーーーー!!」
タマモはフェンリルに向けて狐火を放つ。しかし、それをフェンリルは軽くなぎ払うと、速攻でタマモに斬りかかる。
「ウチの所員に何するのよーーーーー!!」
しかし間一髪、美神が神通棍をフェンリルの目に突き刺しそれを防ぐ。その隙におキヌがタマモを救い出すも、美神はそのまま吹っ飛ばされ、なんとか着地する。
「た・・・タイガー。無事・・・か・・・・?」
「な・・・なんとかですケン。琉朱菜サン、大丈夫ですかいノー?」
「ええ・・・タイガーさんが守ってくれましたから」
「あれ・・・・・・・横島さんは?」
フェンリルの放った斬風牙により起きた瓦礫に埋まっていた皆がなんとか這い出す。しかし、よく見ると横島の姿が見えないのである。
「・・・・まさかアイツ!?」
「行ったですジャろか?」
「・・・どういう事です?」
「間違いなく行きましたね。横島さんなら」
琉朱菜以外の三人は横島がいない事に納得していた。
「タイガーさん。どういう事ですか?」
「琉朱菜サンはまだ知らなかったですケンノー。横島サンは、ワッシ等よりも強い力を持っているんですジャ。だから、間違いなく助けに行ったんですジャ」
そう言うタイガーの表情は、まるで勝利を確信したかのようだった・・・。
「さぁ・・・・・覚悟はいいか?」
フェンリルが美神たちに一歩ずつ近づく。美神は神通棍を精霊石化させ、おキヌはフライパンを持ち、シロは霊波刀を構え、タマモが狐火を向ける。しかし、どうみてもこの状況は勝てるといえるものではなかった。
「死ね!!斬風牙!!」
再びフェンリルが斬風牙を放った。それはどんどん距離を詰め、そして美神たちに・・・・・・・・・直撃しなかった。
「とにかくいっぱい出ろ!!サイキック・ソーサー!!」
突如無数のサイキック・ソーサーが放たれ、斬風牙を相殺した。美神たちがソーサーの放たれた方向を見ると、そこには、肩や額から血を流し、フラフラながらも確実に一歩ずつ歩き、近づく横島の姿があった。
「「「「横島(さん)(先生)(ヨコシマ)!!!!」」」」
皆が叫ぶ中、フェンリルが刃を横島に向ける。
「・・・まだ生きていたとはな」
「ああ。テメエに負けたんじゃ皆に顔向け出来ないんや!!」
「フン・・・・・あの男から貰い受けた力・・・・使わせてもらうぞ」
そう言うと同時に、フェンリルの体には皮の鎧が装備され、ベルトが付けられ、右手にはぶ厚い刃と化した八房が持たれていた。そう、トラのグロンギを発動させたのである。
「・・・こりゃ・・・やるしかないってやつだよな~」
軽口を叩くと、横島は腹部に手を当てた。すると、そこから銀色のベルトが現れた。中央部は、紫に輝いている。
「横島!!」
「ダメよ!!それを使ったら!!」
「横島さんの命が!!」
美神たちが止めるのも聞かず、横島はそのまま右腕を前に突き出す。そして・・・。
「変身!!」
その言葉と共に、横島の身体は銀色に紫のラインが入った鎧に覆われ、仮面が顔を覆う。そしてその場から横島という存在は消え、空牙が現れる。
「・・・いくぞ」
空牙はそう言うと、右手に霊波刀を発動させる。すると、それは銀色と紫の輝きを放つ刀身へと姿を変えた。
「ほぅ・・・・・勝負だ!!横島!!」
「いくぜ!!皆を守るためにやってやらーーーーーー!!」
今、空牙とフェンリルの戦いが始まる。
あとがき
ヒーロー見参上の復活!!でございます!!いや~三ヶ月以上のブランクはきっついっスね(汗)とりあえずこれで調子が復活いたしました!!これからどんどん執筆を続けさせていただきます!!では、トォ!!