「 ─う・・・・・・ 」
令子の奇襲に寄って吹き飛ばされた華陽を尻目に
横島は姐妃の元へと
未だ出血が止まること無く、鈍痛を訴えかける
左腕を右手で抱えながら唯、走った。
「 ──ッ! 」
時折でる自身の呻き声を意識外に
聞いているような不安定な感覚の状態の中で
『 くそっ・・・やべぇってマジやべぇってッ! 』
繰り返しそんな言葉が脳髄を駆け巡る。
横島は見たのだ。
吹き飛ばされる瞬間
華陽が愉快そうに嗤っていたのを・・・。
『 多分・・・あの攻撃でダメージは負ってはいない─ 』
動悸が激しく鼓動し、呼吸をする事も億劫な状態で
漠然とした予感めいた・・・
それでいて確実であろう予測に押されるように
姐妃の元へ着いても焦燥感が止む事は無かった。
願い 〜第一話〜 中編 その八
荒い息を吐いて姐妃に辿り着くと
「 ─大丈夫? 」
そんな言葉と共に姐妃は何時の間にか手にしていた
木綿のような衣の布で横島は左手を滴り落ちる血液を拭った。
献身的な表情を浮かべた姐妃に
僅かな時間、見惚れていた横島は慌てて
荒れた呼吸のままで何とか謝礼の言葉を紡ごうとしたが
『 私も心配したんですよ? 』
と──背後から、声が届く。
スッと音も無く現われたおキヌちゃんのにこやかな笑顔と
傷口を何故か強く圧迫するその姿に
何故か言うのを躊躇ってしまい
横島はぎこちない笑顔を姐妃へと向けた。
そんな二人を姐妃は満足そうに一度眺めた後
横島の血で染まった布を体内に取り込むように消し
『 ─ふぁ・・・ぁ・・。 』と嬌声の様な言葉を出した。
瞬間
耳をピクリと動かすと驚愕の表情で固まり
『 どうしたっ!? 』というような視線でみる横島に対して
「 栄養として血液を取り込んだだけよっ♪ 」
『 こうやってね? 』と事も無げに再び木の葉で先程の布を作り
取り込む仕草を見せ、こくんと小首を傾げながら囁いた。
僅かな間をおいて
「 姐妃ちゃーんッ! 」
横島は秘技『 ル○ンダイブ 』を繰り出したッ!
「 ──ふぇ? 」
姐妃は身構えている。
おキヌは道具を使用したッ!。
『 ネクロマンサーの笛
女華姫
ピッ → 傍にあった殺生石の破片 』
「 えぃッ!『 ガスッ! 』」
「 あぅ・・・。 」
横島は瀕死のダメージを負った。
「 ふふ・・。 」
おキヌは仕事をやり遂げた表情を浮かべたッ!
おキヌは10050の経験血を得た。
おキヌはLvアップした。
体力が10増えた。
腕力が21増えた。
素早さが7増えた。
黒値が00増えた。
必殺技『 撲殺の笑み 』を覚えた。
殺生石の破片が砕け散った。
おキヌ ステータス
Lv 12 性別 女
HP 86 MP 70
体力 37 黒値 255 必殺技
腕力 55 天然度 255 ネクロマンサーの笛
知力 67 女華姫 召還
素早さ 49 撲殺の笑み
幽体離脱
「 ・・・・死んだかしら? 」
姐妃は静かに呟いた。
足元を見ると顔を己の血液で染め
熱病に浮かされたように悶絶している横島が映る。
僅かな時間
血の色に染まった横島を見つめていたおキヌちゃんが
「 ・・・吊るしましょうか? 」
未だ黒いオーラを放ち続けてにこやかに提案してくる。
そんなおキヌに向かって姐妃は呆れたように
「 今、戦闘中なんだけどね? 」
と呟き、最後に『 これでも・・・ 』 と付け足した。
「 そうですね、そこまで仰るのなら・・・ 」
おキヌは、にこやかな笑みを崩すことなく続けた。
「 先に縛っておいて
──目が覚めたら吊るしましょう♪ 」
「 ・・・・・・ 」
姐妃は話を聞かずに
何処からか出したロープをウキウキと用意するおキヌを尻目に
横島の頬を脚で突き覚醒を促した。
その時に浮かび流れ落ちる玉の汗が
姐妃の心情を深く物語っていた。
「 ・・・うぅ・・・ん? 」
何故かズキズキと鈍痛が脳髄を駆け巡る感覚を覚えながら
横島は数分と掛からずに目を覚ました。
『 ・・・チッ 』とロープを懐に収めながら舌打ちをする
おキヌちゃんに恐怖にも似た感情を覚えながら
何故自分が倒れていたのかを考えた。
『 姐妃さんの可愛い仕草を見てたら・・・つい飛び掛って
・・・・あれ? それから記憶が無いぞ?── 」
う〜んと唸り何かを思い出そうとする仕草を取る横島に
『 それから記憶が無いぞって・・・ 』
姐妃は漏らされたその言葉に
事情を伝えてやろうと考え─ついっと腕を横島へ向けたが
背後で微笑んでいるおキヌちゃんに
華陽以上のプレッシャーを感じ口ごもった。
横島に届く事無く、ふらりと行く場を無くした腕を
悲哀の篭った目で見てしまったのは
横島に教えてなかった事による自身の不甲斐なさの性か・・・。
「 ふふ・・・さっきは急に眠ったりしてどうしたんですか? 」
「 ん──?何か大変なことがあったような・・・? 」
未だ『 云々 』唸りながら考え込む横島に
「 忘れるぐらいだから、きっとそこまで
大した事でも無かったんじゃないですか? 」
隣で一緒に『 云々 』と真似していたおキヌちゃんが
にこやかな笑顔でそう告げてくる。
『 そうかな・・? 』と一度呟き思案して
「 ま、いいか。──で姐妃さん、どうすればいいスかね? 」
急に振り返って尋ねてくる横島に怪訝な顔をする事無く
姐妃は媚態の笑みを浮かべ囁いた。
「 わらわの言った事は覚えているわね? 」
おキヌちゃんが何故か強く掴んでいる左腕の痛みに
顔を歪めながらもその言葉の真意を考えるが
上手く要領を掴むことができなかったのか
「 まぁ・・・多分・・・ 」
横島の釈然としない口調は、そのまま覚えておりません。
と抗弁しているようなものだった。
「 ハァ・・・まぁいいわ。『望んで一つになるか─
望まずに呑まれるか─・・・』 」
白金の妖孤を救う術について語った言葉を
僅かに呆れたような顔で再び繰り返した姐妃に
黒いオーラを放ちヒーリング(?)をしてくれている
おキヌちゃんに『 ・・・ありがとう 』と伝えた後
「 ・・・それが? 」
と横島は眉を寄せながら思案するように尋ねたが
姐妃は気にもせず肩をすくめる。
「 ・・・わらわ達は一つだった。と言うより
一つになれるのよ─と言うのが今は正しいかしらね?」
試すように語る姐妃の言葉を
横島はちらりと
令子と未だ起きてこない華陽の二人を一瞥した後
思考の海に潜り込むように意識を集中させた。
横島は少しの時間を費やして
「 華陽が協力して一つになるとは思えない。
──って事は・・・呑むって事か・・・? 」
自身の言葉を信用しきれてないのだろう
その出された結論は疑問として口蓋から放たれていた。
僅かな間をおいて
「 そうね・・・。 」と小さく呟かれた姐妃の言葉は
その意味事態は横島の結論を正しいものと
支持するものだったが──
その口調に釈然としない思いを抱いて横島は問う。
「 ・・・?違うんスか? 」
そんな横島の言葉に姐妃は首を軽く横に振ると
「 いいえ、あってるわ・・・というか、それしか手が無いわね
──だけど・・・それすら無理なのかも知れない・・・ 」
と続け、最後に
華陽が倒れていた筈の場所を見ながら
「 力の差が想像以上に有りすぎたわ・・・ 」
『 アナタ達が華陽を傷つける事ができれば或いは・・・
──と思ってたんだけどね。 』
小さく呟かれたその言葉と仕草に釣られる様に
横島は華陽が吹き飛んだ場所に視線を移した。
『 クックック・・・──アッアハハハハハ・・・ 』
華陽の哄笑がその場に響く。
暫く体を『く』の字に折り曲げながら愉快そうに
地に横たわったままで嗤っていた華陽は
「 愉しいっ!愉しいぞ 道化っ!妖孤の妾を謀るとは・・・ 」
喋りながら森の枯葉や腐植土で汚れた体を払いながら起こし
その身に傷一つ着いていないのを見せるように確認すると
「 ──とても愉快だ。 」
そんな言葉と共に半眼になり
華陽は横島に殺気を放った。
「 ──はんッ!私がいることを忘れてんじゃないわよっ! 」
令子は無視された形で横島と対峙し始めた華陽の間に
割り込むように冷たく言い放ちその手に隙無く神通棍を構えた。
そんな令子に向かって華陽は鼻で一度笑い
右手に狐火を纏わせた後狐火をその手先へ集中させると
拳を軽く握りその親指を弾いた。
──刹那
『 ピキッ 』 と音を立て令子の神通棍に罅が入る。
「 ──っな?! 」
驚愕に固まる令子の表情を華陽はつまらなそうに一瞥した後
再び横島へと視線を向け呟く。
「 次は何をしてくれる? 」
『にやり』と狂相に歪められた華陽と視線を合わせたままで
横島は答えた。
「 何って・・・──美神さんっ!どーしたんですっ!?
敵を何時もどおりにギャグの世界に引きずり込んで
葬り去るのが得意技でしょっ!?ここが正念場ッス!!
──しっかりしてー!! 」
「 う、うるさいっ!!私だって困ってんのよっ!! 」
横島は驚愕に固まっていた令子が
意識を取り戻したのを確認すると僅かに思案した後
『姐妃さんの所に戻ってください』と短く伝え令子の肩を押した。
しぶしぶと戻っていく令子を軽く見送り
横島は表情を鋭く引き締め華陽に向かって呟くように語る。
「 さて──こっからはギャグは無しだ・・・。 」
「 ・・・ほぅ? 」
此方を探るように視線を合わせ
小さく尋ねた華陽に忠告するように横島は語り始めたが
「 この技を使うのは二度目だ・・・。正直あまりの反則さに俺も
『 横島のクセに生意気よっ!!』あう゛─み゛か゛み゛さん・・・ 」
令子の横槍と共に投げられた神通棍によって舌を噛んでしまう。
僅かな時間の経過
『頼んますよ・・・』と恨めしく半眼で視線を合わせてくる横島に
令子はついっと視線を反らすと
「 あ、あはは・・・。つい、ね? 」
『 テヘッ 』と可愛らしく自身の頭を小突き
サァ─・・・
やけに乾いた風が一度吹くと令子はその風につられる様に
大人しく姐妃の元へと歩み去っていった。
令子の後ろ姿を一度見て軽く嘆息すると
横島は『ごほん』と咳払いをし
「 次こそ─ギャクは無しだっ! 」
作者にも聞こえる声で叫んだ後
続けるように再度、華陽に向かって語りかけたが
「 あ、あまりの反則さに俺も使うのを躊躇っていた。 」
つい、裏返りどもってしまったその声色は仕方の無い事だろう・・・。
後書き
手が寒すぎて動かない水稀です(挨拶
今回は二話投稿しようと思ったのですが
デムパを介入させ 思ったより進まなかったので
次回が二話連続投稿になりそうです。
ちなみに・・・この話しって壊れ表記ですかね?
良く解りませんorz
『 拓坊様 』
二つの文珠の使用方法は次でだします!
が!一度決定していた倒し方に不満が出てしまい
次の案を出すのに時間が掛かってしまって
投稿が遅れましたorz
次回もがんばりますので温かい目で見守ってください!w
『 帝様 』
そうですねぇ↓
シリアスモードで霊力ないと裏技使わないと
活躍できないんですよねw
言われて何度も思考した挙句
何とか裏技を思い出しましたので次回で出したいと思います!
デムパは今回早めに出したので
次回と連続投稿する文にはあまり期待できないのですが
それでも見てくださると嬉しいです!
今回はここで御終いです。
毎回レスを下さるお二方の言葉を参考に
がんばっております!ありがとう御座いますね!
では次回もがんばりますので
今まで見ている方も、これから見ようかなと思って
下さる方も 今後とも よろしくお願いします!