うめき声と同時に水のような胃液をほんの少しだけ
吐き出している横島に視線を向けると共に
「 哀れな道化よ──貴様如きに何ができるという。 」
と、尋ねてくる華陽に
「 ─ゴホッ・・・キレイな姉ちゃんを口説くことぐらいかな? 」
横島は一度咳き込むと
僅かに揺らめく視界を気にも留めずに答え
「 最後に一度だけ聞く──あの孤『タマモ』に
命を分け与える事も・・・人間との共存もできないのか?」
と続ける。
僅かな間を置いて
その答えに華陽は声をあげて笑った。
「 ──ハッ、アハハハハハ。戯れたことを言うな道化。
力無きモノは力有る者に支配されるのが当然よ─ 」
言い放ち『 ニヤリ 』と口元に嘲笑を浮かべると
「 あの孤も同じこと。妾の力へと帰れるのだから
──人間という名の屑よりはマシかもしれぬがな・・・ 」
その予想できた答えに一瞬哀感の表情を浮かべると
「 ─そうか、じゃぁいっちょやりますか。 」
と、横島は答えた。
願い 〜第一話〜 その七
──沈黙。
華陽の動きがピタリと止まり、
押し黙る横島との間に音も無く風が吹き抜ける。
更に僅かな間をおいて、華陽はその両方の腕に狐火を
纏わせると視線を横島に巡らせた。
ツツゥっと顎先へ流れ落ちる額の汗を
拭う事も出来ずに横島は思案した。
『 どないせいっちゅーんじゃッ! 』
霊力の少ない自分には意識領域内にストックしておいた
文珠が後、二個しかない。
その二個で目の前の華陽に勝てる術は
思いつく筈も無く・・・
終始防戦へとなるだろう戦いに横島は嫌気がさしていた。
暫く、華陽と視線を交わし
横島は乾いた唇を、舌先でほんの少し湿らせた。
次の瞬間
華陽の腕に纏っていた狐火が無くなったかと思うと
眼前に点となって迫り来たソレを横島は
知覚するよりも早く、肉体の反射のみで避ける。
「 ──ッ あぶねぇッ! 」
右脚を引き、半身となって避けた横島に
次の狐火が迫る。
撃ッ!
『 ザシュッ! 』と音を立て肉を抉るようにして貫いた。
一撃目を急な回避で避けたため
ふらついたのが横島の命を救ったが
「 ──ッ!グアァッッ!? 」
その狐火は横島の左の二の腕に
一センチにも満たない孔穴を開けた。
血液が沸騰しそうな程に熱がある狐火の痛みに
横島は獣の様な咆哮を出しながら地へと転がった。
「 ──クックック・・・。その程度か? 」
実に愉快そうに・・・
己の血で衣服を染め、顔を痛みに歪める横島を見て
華陽は唯、嗤った。
僅かな間を置いて横島は
「 ──ッ、うるせぇよッ! 」
血で染まったGジャンを脱ぎ捨て、己の頭に巻いている
真紅のバンダナで左手の肩口をきつく縛りながら
吐き捨てるように叫んだ。
揺れる視界の内に
両手を強く祈るように握っているおキヌちゃんが映る。
『 ─ッ・・美神さんはどこだ・・・? 』
華陽にバレない様に慎重に辺りを窺い
令子を探す。
「 道化、何を企んでいる・・・
──妾を楽しませる術でも思いついたか? 」
未だ口元に嘲笑を浮かべたままで華陽は問う。
その問いに横島は不敵な笑みをこぼし
「 まっ、そんなとこだッ! 」『 バレテ〜ラ・・ 』
僅かに痛みが薄れてきた事で余裕のある言葉が出てくる。
そんな横島の言葉に華陽は
「 ──フン、道化に何ができるのか待ってやろうぞ? 」
横島に向かって一度右の手を翳し、試すように語った。
「 ─・・・? ──ッ!? 」
横島は一度翳された手を不思議に見て
背筋に流れる冷汗に・・・直感で咄嗟に身を横にずらした。
瞬間
シュッ─と音を立て目に映る事の無かった
小さな狐火が横島の左の頬に紅の線を作る。
「 うそつきぃッ?! 」
「 ──アッアハハハ。妖孤の言うことなんて信じるでないよ
『欺く』それが妖孤の本質じゃ・・・
その言葉を──冥土まで持って行くがよい。 」
再び手を横島に向かって翳そうとして
ふと、手を止め
「 まぁよい、今度はちゃんと待ってやろうぞ・・・ 」
華陽は腕を組み愉快そうに呟き
最後に『 笑わせてくれたお礼じゃ・・・ 』と付け足した。
その言葉に横島はわざとらしく顔をしかめ呟く。
「 ほんとぉにぃ? 」
「 ─本当じゃ・・・ 」
華陽はその呟きに答え、視線を横島と交わす。
交錯
両者が対峙したまま
動きも無く僅かな時間が過ぎた。
「 ──まだかえ? 」
その問いに答えず横島は唯、華陽と視線を合わせた。
「 ・・・。もうよい。道化に期待したのが愚かだったわ 」
その言葉と共に華陽の表情が
『 玩具を取り上げられた子供 』のように
不満げな色を湛えていた。
僅かな間を置いて
華陽は顔を軽く振ると、再び腕に狐火を纏わせ
「 舞台は終幕・・・降りろ道化よ 」
その腕を振るおうとした瞬間
「 今だッ!姐妃さんッ! 」
横島が叫んだ。
「 ──ッな!? 」
驚愕を含んだ言葉を吐き、華陽は慌てて振り向き
姐妃に視線を移した。
『 彼奴は妾の幻術を防ぐのに手一杯な筈・・・ 』
そんな思いを巡らせながら姐妃の仕草に隈なく視線を巡らす。
その探る様な華陽の視線に姐妃は
「 ──あはッ。おばかさん♪ 」
妖悦な微笑を浮かべ呟くと同時に
華陽に向かって『 ─後ろよ・・・ 』と指差した。
その言葉に華陽は一度短く舌打ちをして
再度、横島へと視線を移しかえようとした
──刹那
視界の左方から細く鋭い鞭の様な物体が映り込むと
鋭い痛みと共に奇妙な浮遊感を与えられ
轟音と同時に背後で衝撃が奔る。
「 このGS美神令子から目を離すなんて・・・痛ッ! 」
おキヌちゃんから受けていたヒーリングを中断して
横島と阿吽の呼吸で華陽へと攻撃をしたが
未だに痛む脇腹のせいで
振り切った神通根を華陽に向け差すように構えたが
涙目になった瞳と脇腹を左手で押さえてしまい
実に決まっていない台詞・格好だった。
─が、令子は気丈にも脇腹が訴えかけてくる痛みを
無視しながら、そのままの体勢で吹き飛んだ華陽を
視界に入れ続け──祈る。
『 お願いっ! 起き上がらないでっ! 』
横島を猛攻していた華陽の攻撃・強さに
分の悪い賭けだと知りながら装備など準備の無かった令子は
先程の一発に賭けることしかできなかった・・・。
後書き
暖房器具が壊れてしまった水稀です(挨拶
バトルシーンをお送りしたんですが
楽しんでもらえるか不安ですorz
今考えると
おキヌちゃんがでてこないのは仕様ですね・・・
ネクロマンサーの笛を妖怪相手に使う
イメージがどうにも沸かずに
ヒーリングという手段しか取れないなぁ と
書き込む場所ができませんでしたね
吹き矢は横島専用だし・・・w
何かいいアイディアがありましたら教えてください!
ちなみに 次回かその次は
ネタバレ?的な要素を含んでおりますので
二話連続投稿になると思います。
気長にお待ちくださると幸いです!
『 拓坊様 』
そうですよね!横島は無謀なことはしないと
私も思ってます。
なので、自身にある知識や仲間の力を上手く
使って敵を倒していくのが今の横島のスタイルとして
執筆中ですw
『 帝様 』
デムパが届きません!w
深夜の通販番組で頼んだはずなのに・・orz
ま、まぁおかげで話しが
スイスイ進むんですけどね!?w
って、デムパきた!(゜∀゜)
来たけど・・・使えるかわかんないですorz
次回も頑張りますので見守ってやってください(ノ∀`゜)
今回はこれで御終いです。
お二方今回もレスありがとう御座います!
執筆のための栄養として何度も読み返して・・・(おぃ
g・・ゲフン。
で、では、次回もがんばりますので
いつも見ていてくれる方も これから見てくれる方も
今後ともよろしくお願いしますっ!