あの人の結婚式。
あの人はタキシードに身を包み、そのときを待っている。
だけど、その隣で純白のウエディングレスを着るのは――私じゃない。
悔しくて、凄く悲しい。
ドレスを着た彼女の溢れんばかりの笑顔が、眩しくて堪らない。
今にも泣き出しそうな心を、「しょうがないよね。彼女はあの人にとってもお似合いだから」なんて考えて、無理やり押さえつけている。
目を閉じて浮かんでくるのは、幸せだったあの頃。
もう戻れないんだろうか……。
そんなことを考えて――また涙が出そうになるのを必死に我慢していた。
「忠ちゃん、おっはよー」
ピンポーンと呼び鈴を鳴らす。
今日も私は幼なじみの彼を起こして、一緒に学校に行くため、彼が一人暮らしをしているアパートにやってきた。
彼の両親は仕事で海外に行っており、今は一人暮らしだが、その前からしている、私の日常行事と化したことである。
「ほらもう朝だよ! 急がないと遅刻しちゃうよ! 起きてーっ!」
さらに呼び鈴を鳴らし続ける。
ここまでしないと彼はなかなか起きないのだ。
どうせ、「あと、五分……」とか言って、寝返りをうっているに違いない。
「忠ちゃん、起きて! 起きてよーっ!」
声を張り上げつつ、呼び鈴を連打する。
「だあぁぁぁああっ! うるせえぇ!」
彼の声が中から響いた。
しばらくすると、どたどたと騒がしい音も聞こえてくる。
おそらく目覚まし時計を見て、いまの現状を理解したのだろう。
「まったく……」とも思うが、彼のこういうところは結構可愛いし、早起きになったら私が起こしに来れないからそれはかなり寂しい。
こういうのも惚れた弱みなのだろうか。
少し待っていると、勢いよく目の前のドアが開き、彼が姿を現した。
「よう、おはよう……」
「うん! おはよう、忠ちゃん」
二人で学校までの道を歩く。
最近は、二人で話す機会があまりないし、この時間はかなり貴重だったりする。
「ふぁぁああ……。それにしても、今日もありがとな」
その言葉に、私の頬が緩んでいくのを感じる。
たとえ、あくびをしながらであっても、彼からお礼を言われるのが一番嬉しいのだ。
「いいよ。ちっちゃい頃からずっとしてることじゃない。
それに、忠ちゃんからそう言ってもらえれば、私は十分だよ」
普通の人だったら、こう言われたら私の気持ちに感づくんだろうけど、彼はなかなか、いや全然気付いてくれない。
結構アピールしてるんだけどなー。
私が幼なじみという関係に甘えているんだろうか。
「でも、いいのか? 高校入ってまでこんなことしてて。
知らん人が見たら誤解するかもしれんぞ。お前結構モテるんだろ?」
自慢じゃないが、私は結構モテる。
学校全体で見てもプロポーションはかなりいいし、髪だってさらさらだ。
だけどこれを見て欲しいのは、他の有象無象じゃなくて、目の前の人物唯一人なのだ。
「そんなの別にいいもん」
「……ったく。それで俺まで彼女できなかったらどうすんじゃ。
ううぅぅぅ……。高校生になってまで彼女なしなんて悲しすぎるっ」
「えへへ♪ その時は私が彼女になってあげるから、ね?」
わざとらしく泣きまねする彼に、この際だからもっとアピールしておく。
自分の中で最高の笑顔を彼に向けるが、それと同時に緊張でかあぁっと顔が熱くなってくるのがはっきり分かる。
ここまで言えば、さすがに彼も分かってくれるかなぁ?
「うーん……。お前にそう言われてもなあ」
だけど彼の言葉は、私をがっかりさせるのに十分だった。
私、女の子に見られてないんだろうか。
私が綺麗でいようと努力してるのは全部貴方のためなんだよ?
はっきりと心が沈んでいくが、それと同時に無意味に緊張していた自分が馬鹿らしく、彼に対して怒りが湧いてくる。
「うぅぅっ! 忠ちゃんのバカバカ!
この、鈍感! にぶちん! もう知らないっ!」
バンッ、と彼の背中を叩くと、一目散に学校に駆け出す。
「ぐおっ!」なんて声がうしろから聞こえたけど、今日はもう振り返らない。
明日は私の気持ちに気付いてよね、忠ちゃん。
目を開けると、やっぱり彼の隣は私じゃなくて。
それでも彼女は彼にとって、穏やかなる座、平穏の象徴だから。
だから――私は笑顔で……笑って祝福しようと思う。
「――なんだこの、鈍感主人公と幼なじみの典型的朝な、あからさまな捏造回想は。
意味分からん……」
世界はそこにあるか 第31話
――愛にすべてを――
横島は深くゆっくりとため息を吐いて、自分の心をコントロールする。
こういうことを覚えたのはいつからだっただろうか。
おそらくは最近のことだろう。
昔は大騒ぎするか、呆然として思考を停止させるだけだったような気がする。
だが、今そんなことを考えていてもしょうがない。
自分が今置かれているのは、普通の人が見れば明らかに異常な状況。
高校生にして結婚式をさせられ、しかもウエディングドレスを着る相手は二人で、しかもその一人は誰が見てもロリッ娘である。
だが――まあ、これはいい。
よく考えれば疑問だらけであるが、前回もしたことだし、そもそも結婚できる年齢ではないから、明らかに真似事だからだ。
問題は美神とおキヌの二人。
また美神のように機嫌悪そうに睨んでくるだけなら、まだ何とか耐えられるが、おキヌが悲しそうな、泣きそうな顔でこちらを見てくるのは、勘弁して欲しい。
彼女のそういう顔を見るたびに非常に辛い。
これなら黒化してくれたほうが何十倍もマシだ。
「こういう状況、なんて言うんだっけ……。へそで茶が沸く?」
間違っていたって気にしない。
日本語は難しいし、最近まで誤用の代表格だと思っていた「汚名挽回」も実は間違っていないかもしれないのだ。
もしかしたら、これも正しい使い方かもしれない。
「とにかく、こういうときは『根掘り葉掘り』の葉堀りの意味でも考えて……。
……って落ち着けるか! 逆にイラつくわっ!」
自分ツッコミとは、相当混乱しているらしい。
『……どうした?』
心眼の言葉に現実に戻ってくる。
やはり彼に自分の心をコントロールなどできていない。
そうこうしていると、ウエディングドレスを着たタマモがやって来た。
「ねえねえ、横島。どう?」
横島に見せ付けるかのようにふわりと回る。
見た目は子どもなのに、纏っている雰囲気は彼が思わずドキリとするほど。
男に対する自分の魅せ方が分かっているのだ。
絶対にこの状況を楽しんでいる。
それにしてもこんなサイズのウエディングドレスがよくあったと思う。
やはり世の中、小柄な女性も結構いるということだろうか。
「あ、ああ……。いいんじゃないか」
とりあえず曖昧に返しておく。
その言葉にタマモは嬉しそうに笑った。
「あっ! あの……私はどうですか、横島さん?」
恥ずかしそうだが、タマモに便乗するかのように、やって来た小鳩が尋ねてくる。
彼女の場合、年が近いせいかタマモとは違ってなんだか現実感が出てしまい、彼にしても妙に気恥ずかしい。
「ああ……。小鳩ちゃんも可愛いと、おも……」
彼女のウエディングドレス姿は事実、非常に可愛らしい。
さらに、開いた胸元は色気まで醸し出し、首のネックレスが映えている。
彼もその姿に素直に感想を言おうとするが、言い終わる前に、近くから強烈なプレッシャーが感じられた。
たとえオールドタイプでもはっきりと分かるほどだ。
「言っとくけど、マネゴトなんだからね。
血迷うんじゃないわよ?」
美神が凄まじい威圧感とともに、ジト目で睨みつけてくる。
横ではおキヌが俯くように立っていた。
「も、もちろんですよ……。当然じゃないっすか。ハハ……」
なんとか美神の神経を逆なでしないように返事をしたが、乾いた笑いも出てくる。
いろいろな意味で嫌な汗が背中を流れていた。
だが、そんな横島の今の気持ちを嘲笑うかのように、タマモが口を開いた。
「あら、私はマネゴトでも横島と結婚できて嬉しいけど」
タマモの挑戦的な表情に、美神の顔にはさらに怒りの色が増える。
「私も横島さんとご縁ができて嬉しいです。
横島さんっていい人ですもの! だから本当の結婚じゃなくても、なんかとっても幸せなんです」
何かふっ切ったのか小鳩もタマモに追従する。
牽制かもしれない。
しかし、美神の怒りバロメーターにとってはトドメと言ってよかった。
「あ〜ら、そう……。へえ〜……」
そして、その怒りの大半はなぜか横島に向けられる。
彼はもう、こんなことさっさと終わらしてしまいたかった。
だが、そんな横島の心境とは裏腹に、タマモはさらに燃料を投下する。
「ん〜……。羨ましい? み・か・み♪」
愛らしい笑みでいうが、横島には邪悪にしか見えない。
「ちょっと、何で私が羨ましがるのよっ!
私は全然関係ないし、横島クンは単なる従業員でなんとも思ってないんだから!!」
頬を少し赤く染めながら、声を荒げる。
そしてタマモの得意気な顔を見てさらに怒りを高める。
『……おキヌ、どうかしたか?』
この事態にもまったく動じることなく、さらには一言も発しないおキヌに対して、心眼が尋ねた。
横島は「やぶへびにならんだろうな……」とも思ったが、これを収拾する自信もないので、心眼にすべてを託す。
「…………ハリセン」
「ん?」
おキヌのポツリとした呟きに、よく聞こえなかったのか横島が聞き返す。
「……ハリセンはどこですか!? 私もっ!」
おキヌが決意に満ちた瞳で高らかに宣言するが、彼女ではダメだ。
『お前のためにハリセンがあるんじゃねぇ、ハリセンのためにお前がいるんだ。
ここでは誰も僕にパス(ボケ)をくれません』
「どっ、どういうことですか!!?」
妙なネタのせいで分かりにくいが、つまり『ツッコミがあるからハリセンがある』と『ハリセンがあるからツッコミがある』は、すなわち同じなのだ。
おキヌでは天然でボケ殺しのアビリティは持っていても、ツッコミは持っていないのだ。
不憫な。
そもそも、今の心眼のボケに反応できないようではダメである。
「そんな……っ!」
おキヌが悔しそうに唇を噛み締める。
と言うか、「ハリセンじゃなくて、普通に霊力込めて攻撃しちゃダメなんだろうか……?」という誰とも分からぬ呟きは、聞かれることなく消えていった。
「……それほど小さくならないわね」
横島が小鳩、タマモの二人に指輪をはめた途端、貧乏神が小さくなった。
だが、それは元もサイズは到底言えなかったのだ。
それでも一軒家ほどの大きさであり、東京の新シンボルから、町の名所レベルには落ちているのだが。
「うーん、ここまで小さくなったら上も納得するかな」
西条が難しい目で貧乏神を見ていた。
「ねえ、これ以上は小さくならないの?」
「三人がほんまに結ばれ……。いや、なんでもないです。すんません」
美神の質問に答えるが、その答えはある二人の女性のギンッという氷のような威圧の前に最後まで言い終わることはなく、謝っていた。
西条はその言葉をニヤニヤしながら聞いている。
「まあ、元があの大きさっすからねえ……」
前も美神のときはかなり大きいままだった。
「それもありますけど、本質はそこではありませよ」
突如声が聞こえ、全員がそこを注視する。
「小竜姫さま!」
美神が思わず叫ぶが、気にせずさらに言葉を続けた。
「二人の霊力で攻撃されたと言っても、あのハリセンはもともと私のものですからね。
二人が身内になっただけでは不十分なんです」
「じゃあ、何? あんたも結婚するとか言い出すんじゃないでしょうね?」
美神が睨みつけ、おキヌがその役得っぷりを羨ましそうに見つめる。
「それはかなり心躍りますが、私はそんなこと言いませんよ。ええ!」
それを聞いて他の者は、言いたいんだな、と確信した。
『それはそうと、小竜姫。ヒャクメ様はどうした?
彼女にこれを教えてもらって、ここにいるのだろ』
妙神山にこもっている小竜姫は、通常では下界の情報を得ることはできないはずだ。
あの覗きの神さまが関わっていないとは考えにくい。
「彼女はこの事態をすぐに教えなかったので、お仕置きして棄ててきました。
まったく、こういうときくらい役に立ってほしいものです」
ちなみに、小竜姫のお仕置き部屋には血塗れのヒャクメが横たわり、そばにはこれまた血塗れの釘バットが落ちていた。
さらに手の指の辺りには、血文字で『しょうりゅうき』と書こうとした跡。
近くに行って『調べる』を実行すれば、<返事がない。ただの屍のようだ>というお馴染みの表示が返ってきたことだろう。
『何を言う! あの御方が役立たずなのは、デフォで、周知の事実のはずだろうっ!!?
それを……っ! くっ!!』
小竜姫の言葉に心眼が噛み付き、痛ましげに目を伏せる。
それに彼女は役立たずではあるが、『覗き』という素晴らしい才能があるのだ。
決して無能ではない。
「ヒャクメは役に立たないんじゃなくって、役に立てないんだから、責めるのは酷っすよ。
それにそんなこと言ってると、小竜姫さまの好感度が下がっちゃいますよ?」
それを聞いて小竜姫は「あら、いやだ、私ったら」と赤くなって俯く。
いろいろ手遅れな感は否めないが。
「ヒャクメのことなんかどうでもいいから、貧乏神を何とかする方法を教えてよ!
知ってるから、来たんでしょ!?」
疎外感からか、痺れを切らした美神が声をあげた。
「そ、そうでした。ようは貧乏神の試練を突破すればいいのです」
「ちょ、ちょっと待ってや。あなたほどの神が知らんはずないでしょう。
あの試練に失敗すれば、永久にとり憑かれるんやで!?」
貧乏神が小竜姫の言葉に待ったをかけるが、そんなこと聞く気もない。
もっとも、試練の内容を知らない周りはそれに驚いているが。
やはり“永久”という言葉は強い。
「それに、俺は試練の内容を知ってるから、受けるのは無理っすよ」
「それなら、タマモか小鳩さんがすればすむことでしょう?」
「あっ」と横島が口をだらしなく開く。
ついうっかり。
盲点。
灯台下暗し。
「そう言えば、タマモって知らなかったけ?」
「さ、さあ?」
「お前絶対知っててあえて黙ってたろ?」
横島の質問にあからさまに目を逸らしたタマモに、最初からこんなことする必要ないことが分かっていたことを悟る。
タマモは試練があることと、その結果どうなるかは知っていたが、試練の内容そのものは聞いていなかったのだ。
あと、心眼も気付いていたが、故意に黙っていた。
ぶっちゃけ彼は孤立無援だったようだ。
「それなら、どっちかがさっさとやりなさいよ。
小竜姫が言うんだから、それほど厳しいものじゃないんでしょ?」
横島が試練の内容を知っていることはとりあえず脇に置いておき、さっさとこの事態を終息させることを促した。
相変わらず、貧乏神はなにやら言っていたが無視だ。
「じゃあ、私がやるわ」
タマモと小鳩は一瞬目が合ったが、次の瞬間にはタマモが名乗りを挙げていた。
「なら、いきますよ」
それを聞いて小竜姫が貧乏神から取った財布を開くと、その中にタマモが吸い込まれるように入っていった。
「あーあ……。やってもうたか」
「あの、大丈夫なんでしょうか?」
貧乏神の様子に、小鳩が心配そうに尋ねる。
尋ねられた小竜姫は何も言わず、じっと黙ってタマモが入っていった財布を見つめていた。
試練の中身を知らない他の者にとっても当然の質問だった。
財布に入って言ったタマモは、ようやく周りを認識する。
暗闇の中には分かれ道があり、さらにその先にはそれぞれまったく同じ窓と扉があった。
立ち上がったタマモが一つの窓を覗き込むと、そこには豪奢な建物で手を尽くされた料理を味わう、優雅な自分の姿。
「……なるほどね」
何やら頷くと、もう一つの窓を覗き込む。
そこには、一杯のキツネうどんをお互いに分け合って食べる、貧しく、みすぼらしく、惨めな自分と横島と小鳩と、
――他にも何人かの姿。
「何これ……。さっき身内になったのは三人だけのはずでしょうが!
それとも、横島はデフォでハーレムエンド決定!? これ伏線じゃないでしょうね……」
二人でも十分ハーレムのような気もするけど。
タマモはふと、最近心眼が言っていた言葉を思い出す。
『私は横島が事務所の人間全員に手を出そうが全く平気。妙神山の女性陣全員に手を出そうが、三姉妹全員に手を出そうが全然平気。
横島自身が彼女達を悲しませさえしなければ、それでかまわない。
私が――彼のそばにずっといられる。
この事実に比べれば、そんなことジオングの足ぐらいの重要性しかない』
例えはいまいちよく分からないが、言いたいことは分かる。
「…………懐広すぎって言うか、器でかすぎって言うか」
自分はさすがにそこまでは考えられない。
「では、貴女は何を望むの?」
「何が欲しいの?」
突如、二つの扉から自分が現れ、問いかける。
目の前にいる自分と全く同じ容姿の者が二人。
自分が今試練を受けているということもあり、すぐには答えられない。
「心眼は紆余曲折の末に、自分が本当に欲しかったものを知ることができた」
「手に入れることができた」
「なら、貴女は?」
「どうするの?」
見た目通りというべきか双子のように息のあった問いかけ。
そしてそれが自分と同じ姿であることが少しキモチ悪い。
「横島との生活。それはあなたが本当に望んだものなの?」
「貴女が元々望んでいたもの」
「それは彼のそばでなくても手に入るんじゃないの?」
「むしろ彼のそばでは手に入らないかもしれない」
自分が本当に欲しいもの。
それは最終的には片方の窓の向こうに見えた優雅さだったかもしれないが、根本的なところで言うと精神の安寧だ。
生まれてすぐ、大勢に追いかけられて殺されかけた自分。
訳が分からずただ逃げ惑っていた自分。
それから、横島とおキヌの二人に救われて、美神の事務所に居つくようになって、そこで少しは手に入れることができた様な気がした。
そして、いろいろあったが今自分はここにいる。
それは自分の望みにつながるのだろうか。
「確かに、今横島の周りには必ず戦いが起こるし、安息には程遠いかもしれない。
貧乏の混乱と、裕福の安寧。当然後者を選ぶべきなんだろうけど、私はもうそれじゃあ満足できないの。足りないの。
どんな生活でも、あいつがいないと輝かないのよ。
昔、あいつが貧乏だったとき、私があいつの部屋に行くと貧乏のくせにいつも文句言いながらカップうどんを作ってくれた。
毎回それだったけど、あいつと二人で食べるカップうどんはどんなものより美味しかった。
美味しかったわ……」
感慨も込めて、今の気持ちを吐露する。
それを聞いて目の前の二人のタマモはニコリと微笑んだ。
もう、これ以上は何も言わずにタマモに近づいてくると、彼女の手をぎゅっと握る。
「それが、貴女の決断ね」
「そして、私たちの決断よ」
そう言って、二人は光になるように消えていった。
一人になって、タマモは思う。
今では、あの二人に対して嫌悪感にも似た感情はない。
なぜなら、彼女達は自分の中にいる自分自身だから。
やはり人は自分自身を見るのが一番不愉快なので、最初はしょうがないというところだろうか。
だけど――
「あんな妙なコンビネーションで喋るから、キモチ悪く聞こえるのよ。
どうにかならなかったのかしら……」
そう呟くと、にやりと可愛らしく笑い、目の前の扉を開いた。
あとがき
お久しぶりです。忙しいのに、体調を崩すという、泣きのスパイラル。
「病は気から」とよく言いますが、本当でしょうか?
――気のせいかもしれません。(ここ笑うところです)
中途半端に思えるかもしれませんが、小鳩編はこれで終わりです。
いろんなキャラに焦点を当てたつもりですが、最後はタマモにシリアスで締めてもらいました。
冒頭の捏造回想。読んでくれた方を混乱させたかもしれないこれですが、いったいだれのでしょう?
候補は本命の心眼(こんなことこいつしか考えねえ) 対抗のおキヌちゃん(なんか幼なじみ似合うような) さらに美神、シロ、小竜姫、ワルキューレ、その他にもいっぱいですw
サブタイの元ネタで未だに覚えているのは、「リオファネス城」
たとえ連続戦闘でも、二回目以降の戦闘の戦闘前にセーブしてはいけないということ幼い私に教えてくれた、超名作です。
今回も読んでいただきありがとうございます。
>拓坊さん
試練は結局こんなことに。横島以外が受ける、という結論。
まあ、手段はそれほど重要ではないので、過程に一捻り加えてみました。
>LINUSさん
美神であれば可能だったでしょうが、おキヌちゃんには無理でしたw
>ヴァイゼさん
シロは里です。だって、親父生きてるし……。
これからどうしようかは思案中ですが、もういいんじゃない? と誰かが背中を押せばもう出ない可能性もありますw
>響さん
あれは誰でも突っ込みますよねw あの名シーン台無しだもの。
さすがは「こんなこともあろうかと」を生み出した御都合主義を多分に内包した名作です。
>黒川さん
ティプトリーの原作。何も知らず、名前のかっこよさに惹かれたものの、表紙に恥ずかしさを感じて買いにくかったのを今でも覚えてますw
こういう衝動的に買った本は正解の確率が高い気がします。
>casaさん
今回もまさに「笑竜姫」w そろそろシリアスも書いてやらんと。
>ハーレ…
一体なんでしょうか?w
>なまけものさん
>覗いていたヒャクメから横島結婚の知らせをうけた
彼女の冥福を祈ってくださいw
異伝、気に入ってくださったようでありがとうございます。
まあ、いつになるかは分かりませんが、頑張りたいと思います。
では。