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「GS横島!!極楽トンボ大作戦!! 第六話(GS)」

球道 (2005-12-14 23:05)
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目覚めは最悪だった。

否、そもそも『目覚め』では無かった。

あれから、晩の食事を経て、床に就こうとしたとき。

目を瞑れば浮かんでくるのは『泣いた雪之丞の顔』

それを無理に振り払って眠ろうとすれば、静まり返った部屋に響くように、

『だいっきらい!!』と、雪之丞の声。

眠れるはずは無かった。

覚悟を決めたはずなのに、決意はグラグラと揺らいだ。

そんなこんなで、気が付いた時には空は白み、鳥が囀り始め、新聞屋のバイクが道を走り始めていた。

「ま、まったく寝られんかった……」

布団から這い出た横島の顔には濃い隈が出来ていた。

ああ、顔、合わせるの辛いなあ……。

横島は溜息をついた。


その時、押入れの中から声が聞こえた。

「横島さ〜ん、起きてますか〜?」

「は、はい」

押入れに返事を返す。

「朝ごはんが出来ましたから」

「わかりました、そっち行きます」

横島はそう答え、押入れを開ける。

そこには、

「あ、お早うございます、横島さん」

笑顔の小竜姫様と、

「くっ!まだだ!まだ終わらんよ!!」

と、携帯ゲームに精を出す老師の姿があった。


横島の家の押入れと、妙神山の居間は、空間が直結しており、自由に行き来できる様に成っている。

横島は、アパートの部屋を自分の部屋として使い、食事や風呂は妙神山を使っているのだ。


二人と一匹(?)の食卓。
今日の献立は和食で統一、ご飯、菜物、汁物、等、バランスの取れたものだった。

「おお〜、凄いっすね〜!小竜姫様!!」
「いえ、弟子の食生活は師匠である私がですね……って、横島さん!」
がしっ!
いきなり顔を掴まれた。
「は、はい?」
小竜姫様は顔を近づける。
「隈」
「はい?」
「眠れなかったんですか?」
「あ、ちょっと考え事してて……」
「わ!私が相談に!!」
目がランランと輝いている。
どうやら小竜姫様は初弟子とあって張り切っているようだ、正直怖い。
「い、いや、もう答えはでたので……」
「……そうですか」
しゅん、と、項垂れてしまう。
そんなに落ち込まなくてもいいだろうに……。

「そ、それよりご飯にしましょうよ!俺腹減っちゃって!!小竜姫様の手作り料理早く食べたいなぁ!」
「そうですか!?じゃ、じゃあ、ご飯よそって来ますね♪」
一気にルンルンだ、こんな人(神)だったろうか?小竜姫様は。
「老師!食卓にゲームは持ち込まないでください!!没収しますよ!!」
「むう」
こんな人(神)だったかもしれない。


朝食が終わって、支度を手早く済ますと、重い気持ちを奮い立たせて、アパートのドアを開けた。

「いってらっしゃい」
後ろから、小竜姫様の声。

小竜姫様からかばんを受け取り、ドアをくぐった。
「いってきます」
俺は重い足取りで学校へ向かった。


GS横島!!
極楽トンボ大作戦!!

第六話


気が付くと校門の前だった、そこで顔を上げると、

「あ」

雪之丞がいた。

呼び止めようかと声をかけようとするも、声が出ない。
雪之丞に向かってあげようとした手が、空中で力をなくした。

雪之丞はこちらに気が付くことなく、校門を通り、昇降口に向かう。
足取りは重く、とぼとぼ、と、いう感じがしっくりときた。

「目、赤かったな」
泣き腫らしたんだろうか、雪之丞の目は赤く腫れていた。
雪之丞をあんな状態にしたのが自分であるということに、腹立たしさが込み上げる。
それと同時に、雪之丞があんな顔をしているのが、堪らなく嫌だった。


横島忠夫は、覚悟を決めた。


校門に差し掛かったとき、雪乃は横島に気が付いた。
横島がこっちを見ている、気配でそれが解った。
しかし、足を止めることは出来なかった。
赤く目を腫らした顔等、見せたくなかったのだ。
昨日の今日だ、どんな顔で会えばいいのか解らなかった。


雪乃は逃げ続けることは出来ない現実を理解しながら、逃げ続けていた。


教室のドアを開ける。
クラスメイト達の視線が向けられるのが解った。
その中で、一人、雪乃に声をかけてくる女子がいた。

「伊達さん、おはよう!どったの?目、赤いよ?」
たしか名前は瀬戸……、なんだったか。
「いや、気にしないで、昨日ちょっと色々あって」
無理に笑って手を振った。
早く机に顔を伏せてしまいたかった。

その時、後ろでドアが開いた。

「うぃ〜っす」

横島だ、雪乃は心臓を掴まれた様な気持ちになった。

「うわ!横島、何だよその顔!すげぇ隈」

ビク!
雪乃の身体が少し跳ねた。
雪乃のそんな様子に、瀬戸は首を傾げた。

しかし、数秒思案すると、
「横島と、なんかあった?」

核心と、雪乃の心臓を突き刺した。

ビクッ!!
「〜〜〜っ!?」

「あ〜、いいよ、何も言わないで、何かあったのは解ったから」

瀬戸はやれやれと溜息をつくと、こう言った。

「あの変態をとっちめて謝らせようか?なんかセクハラしたんでしょ、横島」

まあ、妥当な推理である。

一年生の頃、つまり時間を遡ってくる前の横島だったらそうだっただろう。
この瀬戸という生徒、一年の時、横島とクラスメイトだったのだ。
横島の生態は、一年で理解しているつもりだった。

だから、
「横島はそんなことしない」
雪乃が言った言葉を信じられなかった。

「別にいいんだよ?ただ、謝らせるだけだし……、何されたの?」
「何かされたりとか、そんなんじゃないから、ただ」
雪乃は言葉を濁した。

「ただ?」
「久しぶりに会って、ちょっとしたことで口論になっただけだから……」


「「「「「ええええええ〜〜〜〜〜!!」」」」」


教室中から悲鳴とも聞こえるような声が上がる。
皆、聞き耳を立てていたのだろうか?

「「「「「伊達さんと横島君て知り合いだったの!?」」」」」

なんだか、凄い墓穴を掘ってしまった気がして、雪乃は立ち眩みがした。


横島は悪意の視線に身を刺され、胃が縮む思いだった。
もちろん原因は雪之丞の朝の発言。


横島と伊達さんが知り合いで、口論になって、伊達さんが泣いた。


噂は要約するとこうなっていた、まあ、その通りなのだが。

横島は完璧に悪者である、勿論、全部横島が悪いのだが。
しかし、噂の所為で横島は、雪之丞に近づく事が出来ずにいた。

休み時間は他の女子に雪之丞がガードされてしまい、話しかけることが出来ないし、授業中は如何足掻いたって無理、昼休みもおそらくこんな調子じゃ無理だろう。

今、文殊が使えたなら、文殊を雪之丞の方に転がして、『伝』『心』だとか、『通』『話』だとかで如何にかできたのだが。


き〜んこ〜んか〜んこ〜ん


そんな事を考えているうちに昼休みになってしまった。

横島は雪之丞の方を窺うが、既に、女子の壁に阻まれ、その姿は確認できなかった。

こうなったら……!


横島は立ち上がって雪之丞に席に向かって歩いていった。
行く手を阻むは女子の壁、壁は横島を睨み付け、威嚇する。
こ、怖い!正直、鬼門より強そうだった。

「あ〜、雪之丞に話があるんだけど……」
横島は声を絞り出した。

「ユキノジョウ?……ああ、雪乃嬢ね、そう呼んでるんだ。」

壁の一人がそう言うと、横から、
「何しに来たの」
一言だが、辛辣な言葉。
「いや、ちょっと話が……」
「却下」「不承」「無理」「拒否」「駄目」「死ね」


「ぐっ!」
横島はよろめいた、雪之丞にそんなに嫌われているのか。
それでも、横島は諦めなかった。


「きゃ!」「うわ!」「へ、変態!」「やん!」
壁を押し分け、雪之丞の席の前に躍り出る。


「雪之丞!俺の話を聞いてくれ!」


…………。


そこには、
『はずれ♪By瀬戸』
と、書かれた紙切れだけ。
雪之丞の姿はそこには無かった。

ああ、昼休みも駄目か……、横島は溜息をついて、後ろを振り返った。

ひしひしと伝わってくる殺気、殺意、その他諸々。

ああ、ちょっと無謀なことしたかなー。


「お手柔らかに頼む」

とりあえず頼んでみる、無理だと知りながら。
何故無理と知りながら懇願するのか?


告白すれば。
ワタシは、死にたくなんて無かったのだ。


「「「「何気取ってんだゴラァ!!」」」」

起爆。

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!堪忍やぁ!!!」


BAD END?


そんな事が教室で起きているとは知らずに、雪乃は屋上で弁当を広げていた。

隣には、教室から連れ出した張本人、『瀬戸のどか』が同じく腰を下ろして、惣菜パンを頬張っていた。

雪乃はのどかに、昨日のことを話せるところだけ、話していた。

ぽつり、ぽつりと事情を話す雪乃の言葉に、のどかは軽く相槌を打ちながら、惣菜パンに噛り付く。


瀬戸のどかは、少しずつ事態が掴めて来ていた。


久しぶりに会った二人、昔会った時と比べて、想像以上に変わっていた二人。
顔をあわせても、何を言ったら良いのか解らない、相手との距離が掴めない。
こんな筈じゃなかったのに……。
ヤキモキする二人、微妙なズレが生んだ摩擦で、些細な事から口論へ。
ああ、なんてすれ違い、こんなにも愛し合っている二人なのに!
彼の気持ちが掴めない、私の気持ちが届かない!
そして、口から出た真っ赤な嘘!
『忠ちゃんなんて、だいっきらい!』
二人の時は凍りついたのでした……。


「……って、唯の痴話喧嘩じゃないか」
のどかは溜息をつくしか無かった。
唯の痴話喧嘩に巻き込まれるとは、なんて不覚。

「せ、瀬戸さん?」
雪乃は突然身悶え始め、いきなり落ち込みだした、のどかに恐る恐る声をかけた。


「あ、ああ、何でもないよ、何でも」
のどかは辟易していた。
言うなれば小学生向けの恋愛小説であろうか?
既にそんなもの卒業して数年、ぶっちゃけ付き合い切れたものじゃない。
しかし、それは、昔取った杵柄である。
解決策はすぐに見つけた。

簡単な事だ。


「謝っちゃえば?」
「……」
「たぶん向こうも同じ事考えてるよ?」
「……」
「二人して謝ってさ、それからまた話せばいいじゃん」
「そう……かな?」
「そうそう!」
「横島、怒ってないかな?」
「へーきへーき、怒ってなんかいないよ」
「本当?」
のどかは174cmと長身な為、雪乃は確実に見上げることになる。
目を潤ませて、見上げる雪乃、手が前で組んであるのはデフォだ。
『どうする〜、アイ○ル〜♪』
なんてこった、のどかはそう思った。
これは、これは、クル。
なんというか、そう、ハートに。
こうグッと、鷲掴み?

「ああ、もちろん!私が保証するよ!」
「今日の横島の顔見た?目の下に凄い隈作ってんの!アレは昨日寝てないね、つまり、かなり堪えたんだ」
「だから平気!放課後にでも向こうから謝ってくるさ!!」
支離滅裂に捲くし立て、
「だからさ、気にすんな」
そう締め括った。

「……ありがとう、瀬戸さん」

「のどかだよ、雪乃」
ああ、男前だぜ、瀬戸のどか!

「あ、ありがとう、のどか」
何処かぎこちない物だったが、今日初めての雪乃の笑顔だった。


そして、放課後はやってくる。


あとがき。


ごめんなさい、色々書いてたら多くなりすぎて仲直り出来ませんでした。

次回に回しました。

今回は新キャラで許して下さい。


新キャラプロフィール


瀬戸のどか 16歳


横島、雪乃のクラスメート。

突発的に考えたキャラながら、結構ストーリーに食い込んできそうなキャラ。

身長は174cm、運動部(何処にしよう)に所属しており、運動能力は高め。

かわいいものが好きで、背が高いのがコンプレックス。

雪乃がちっちゃくってもでっかいぞ!ならば。

のどかはでっかくってもちっちゃいぞ!という、対設定。

姉御肌で、頼りがいがある。

妄想癖あり。

おそらく、これから度々ある二人の喧嘩に一番巻き込まれる人、南無。


汗様、ラゴス様、拓坊様、ミアフ様、グリーンハウス様、ゆん様、鳴臣様、コーヤ様、沙耶様、LINUS様、ジェミナス様、内海一弘様、TOKI様、BD様。

多くの感想コメント、つっこみ、有難うございます。

これを糧とし精進し、皆様が満足される作品を目指して、突っ走って逝きたいと思っています。

これからも、生暖かい目で見守ってやってください。


じ、次回こそ仲直りを!!


次回!GS横島!!極楽トンボ大作戦!!

第七話「オリハルコンの赤い糸!」(嘘)

来週(?)も、このチャンネル(?)に!

『バッチコ〜イ!!』

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