サァ─・・・
木々の間を駆け抜けるように去っていく風が
汗ばむ程の緊張を促してきた。
「 急がないと──・・・ 」
理由も無く、胸を締め付ける不安に押されるように
──横島は走る速度を上げる。
森を駆け抜ける中で何度も鳴り響く銃声に
血塗れの妖孤と血塗れの令子達が脳裏に浮かんでは
頭を振って──その想像を消す。
暫く走り続けていると周辺の様子が
がらりと─変化した。
陰鬱で悪意の篭ったその森を
縫い目を縫うように吹く風が、横島の鼻にその血臭を届けた。
森の密な空気と混ざり合ったその鼻をつく臭気に
喉を絡みつく湿気を感じて
吐き気と不安で胸が──ドキドキと鼓動を高める。
『 みんな──無事でいてくれっ! 』
駆け抜けながら、横島は唯、祈った。
願い 〜第一話〜 中編 その四
[ 殺生石前 ]
急激な運動と走り難い森の道を駆け抜けた身体は
休息を求め、徐々に意思を奪おうとし──更には
『 ハァ─ハァ─ハァ─・・・ 』と定期的に出て行く吐息が
周囲を漂う臭気を多量に吸い込み─戻ると
それが嘔吐感を催し体力を奪っていく。
それでも駆ける事を止めずに、目的地へと辿り着いた横島は
周辺を窺うと同時に悲鳴を上げた。
「 うわっ。何だ・・・こりゃ─・・・ 」
視界には、風が運んできた血臭の元が一面に広がっており
枯葉や枯れ木・・・大地に転がる岩石を薄暗い森の中で
真紅の彩りを施している。
更に高まる嘔吐感を必死で押さえ
・ ・ ・ ・ ・
視界を僅かに上に向けて──生きている人間を探す。
ふと、頬を撫でるように通り過ぎた風に熱を感じて
顔を向け、『一つ』の熱を持つ光源を見つけた。
その光源の『 蒼白い光 』に照らされた周囲は
──より、一層にその様子を強く伝えてくる。
「 ──なっ!? 」
その周囲の様子から意図して意識を反らし
横島は光源の元に目を向けて──驚愕した。
血塗れのまま、倒れている白金の妖孤に──
その傍らに寄り
見守るように様子を窺っている金色の妖孤。
そして、『狐火』で光源を作り出したと思われる白銀の妖孤。
それらを視界にいれ、僅かに動きを止めた後
( な・・・何で妖孤が三匹おんねんっ! )
脳内で──そう叫んで更に混乱する。
( お、落ち着くんや、こういう時は・・・
──昔オカンから習った5W2Hやっ! )
『 Who 』 : 妖孤が
『 What 』 : 分裂している
『 When 』 : 俺が来る前から?
『 Where 』 : 此処で・・・
『 Why 』 : 何故って─寂しくて?
『 How 』 : どうやってやろ?手品ちゃうんか?
『How Much 』 : 知るか ぼけぇぇぇっ!!」
つい言葉に出して『 ─ハッ!? 』 と辺りを見回した。
そんな横島に金孤は興味深いといった視線を一度向け
その視線を銀孤に移した──
それにつられる様に横島も銀孤に視線を向けようして・・・
──止まった。
狐火を挟んで銀孤の対面に
自衛隊の服装に包まれた人が居るではないか──。
( 誰だ─・・・って、美神さんっ?! )
徐々に小さくなっていく狐火の光に照らされた令子の
恐怖の色に彩られたその表情に不安感を抱き
「 美神さんっ!? 」
駆け寄り叫んだ。
瞬間
銀孤が口元を一度歪ませ
その狐火を放った・・・。
「 ─っ、何ぃぃぃぃっ?! 」
周囲の空気を揺らめかせながら迫り狂う
その狐火に
『 反 』
横島は僅かなところで
咄嗟に『反』の文珠を使用しかわす。
『反』らされたその狐火は
木々で作られた屋根を燃やし尽くしながら上空へと軌跡を描き
───その場に陽光の光を届けた。
( 力無き者と捨て置いたが・・・妾の火を反らすとは─ )
『 ──小僧、面妖な奇術を見せてくれるな・・・。 』
陽光の暖かな光に包まれ、放心していた横島の頭に
銀孤の声が響く。
「 ─・・・な 」
『 ─な? 』
「 何て事すんねんっ!─美神さんの髪焦がしとるがなっ!!
──あぁ・・・殺される・・・。
理不尽に折檻されるんやーっ!!」
叫び、力無く地面に崩れ落ちた横島。
時折、『たん』と地面を叩く音─それと同時に瞳から零れる涙が
彼の無念さを物語っている。
瞬刻の間
玉の汗を額から流し、呆けて固まった銀孤には、
かの『 華陽婦人 』威厳は・・・──見当たらなかった。
僅かな時間の経過
未だ『たん』と地面を叩き続けている横島が覚悟の決意に
表情を固めた──
突如
嬰児の様に純粋で─
それでいて艶のある笑い声が森の中を響き
「 ──あはっ。面白い顔ね──華陽・・・ 」
声は若い女性のものだった。
だが、その声は空気を貫くほどに澄みわたり
音楽を奏でるように優雅で・・・
それは声というより
──音色と呼べるモノだった。
何時まで経っても来ない折檻を不審に思ったのか─
それとも凛と張った艶のある美声につられたのか─
は、定かではないが
横島が地面を叩くのを止め、声の主へと視線を向ける。
薄い羽衣を纏い、その隙間からチラリと見える
艶めく白魚の様な太もも。
抱いたら折れそうなほどに─キュっと締まった腰。
黄金比を表したような、そのスタイルを一切崩さない程度に
大きい胸。
横島は期待を込めて徐々に視線を上げる。
横島と美神の間に割り込み、銀孤へと声を掛けた
その女体の持ち主は類稀な美貌を持ち
太陽の陽光を浴びて、金色の輝きを放つ髪を
サァー・・・とイタズラに踊らせた風が─
更にその美貌を引き立たせる。
正に傾国の美女の言葉を表すに相応しい女性だった。
(な、なんてキレイな姉ちゃんや・・・イカンっ!怯むなっ忠夫っ!)
ごくり、と知らぬ間に溜まった固唾を飲み込み
──両の手をワキワキと動かす。
緊張によって額から出た汗が顎先へ伝わり
地面に一粒の黒い点を彩る瞬間
( よしっ! 今やっ! )
「 生まれた時から愛してましたーっ!!」
生涯で最高の美声を出した。
瞬間
「 オイタはだめよん♪ 」
美女に向かって抱きついた筈だった。
──筈だった。
「 ─なっ?! 」
驚愕の声を出しながら横島は
美女の後ろに居た令子に抱きついていた。
─美女の姿は忽然と消えた。
いや、霧のように横島の身体を通り過ぎた。
「 堪忍やーっ!不可抗力なんやーっ!! 」
僅かな時間、硬直していた横島の懺悔の言葉が森に響いた。
頭を抱えながら、小さく縮こまった横島は
何時まで経っても来ない折檻に
ふと気づいたように令子の顔を見た。
その表情は、今では何も浮かんでおらずに
瞳が何も在らぬ虚空を映し、唯、呆然としていた。
「 ──美神さん? 」
不思議そうに横島は令子に尋ねたが
反応を返すことなく
唯、虚空を見つめ呆然とし続ける令子に
横島は一度拳を『ぐっ』と握り
『・・・こほん』と咳払いをして
パ ル プ ○ テ
「 シリコン胸 」
禁断の覚醒呪文を呟いた。
シーーーーン
「 なっ?! どうしたんスか美神さんっ!? 」
何も反応を返さない令子に本格的に不安になり
涙目で令子の身体を揺さぶろうとしたが・・・。
どこかで なにかが きれるような おとが した!
「 まだ言うかっ!─貴様はーーーっ!? 」
「 時間sちゃぺるぁっ!? 」
時間差できた攻撃に成す術も無く─
横島は豪快に吹き飛び・・・
「 ──きゃっ」 「「「 ・・・ぐえっ 」」」
何時の間にか──
木々の影から青い顔をして覗いていたおキヌ達を巻き込み
地面へと叩きつけられた。
・
・
・
・
・
「 ──痛ったたた・・・─んっ!? 」
「 あひゃー・・・ 」 「「「 ・・・ 」」」
吹き飛ばされた『ふにぃ♪』とした感触が手に伝わり
横島は一秒と経たずに奇跡の復活を遂げた。
『ふにふに』 と柔らかい物体を自分の意識外で
身体が・・・左手が・・・本能的に──揉み続ける。
「 ひゃぅ・・・ん・・・ 」
何故か隣で倒れているおキヌから声が漏れた。
( えっ?おキヌちゃん?──ってことはっ?! )
この『ふにふに』した物体はっ?!─と、視線を左手に
『 ギ・・・ギ・・・ギ・・ 』と錆付いたロボットのように移した。
「 乱暴はいけないよ・・・?─少年・・・ 」
妙に『キラリ☆』と歯を輝かせながら喋る中年男性
おとぼけ三人組の一人 『 田中 (32歳) 』は語った。
「 俺のトキメキを返せぇぇっ!!! 」
「 ごふぁっ!? 」 「 ふぇっ? 」
──田中(32歳)此処で散る。
ついでに
「「 あぁ・・・田中ぁぁぁっ! 」」と、おとぼけ三人組の退場である。
あとがき
有言実行ができない水稀です(挨拶)
キャラが勝手に動いていきます・・・orz
デンパがたくさん届いてきます・・・。
今回でバトルシーンをいれ、次回で解決 といった
展開で書いていたはずなんですが・・・
どうにも、上手く纏めれません(´・ω・`)
それでも・・・何とか三人が集合できたので良しとするか・・
と開き直り、投稿しました orz
こうなれば、一晩中書きまくって
何話でも重ねて終わらせてやるぞと意気込む次第でありまして・・・。
どうぞ、気長に・・・次の展開をお待ち下さい(ノ∀`゜)
>>拓坊様
おキヌちゃんのイメージが
どうしても天然になってしまうんですよねw
オチキャラにも扱いやすいし・・・w
あと、タマモの変化の構想はできてるんですが・・
あまりにも長くなるので一旦ここで切らせてもらいました。
>>矢沢様
タマモは・・・これから結構出していくつもりです。
キャラもなるべく原作を壊さないようにしていきたいのですが・・・
要!勉強ですねw
なるべく早く投稿しますので、これからもよろしくお願いします!
>>帝様
フレーム無しだそうですが、フレームを使用している方が
いましたので、これからもフレーム有りにあわせた文になりますがっ!
愛想を尽かさずに見てやって下さいorz
今回から、時間軸の移動を減らした( 無くした )ので
大分 マシになってきたと思うんですが・・・
デンパが・・デンパが邪魔するので上手く進めなかったですTT
帝様を逃さないように説明文と会話を上手く両立したいですねw
がんばります!
以上三名様 アンケート&見聞 ありがとう御座いました!
では、次回も頑張りますので皆様、暖かい目で見守ってください!
そして、新しい方も ヨロシク です!