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うう、お腹が減りました。お米を分けて欲しいけど誰も分けてくれません。世知辛い世の中です。家でお母さんが待ってるのに……。
「でも小鳩は負けません!」
お米を貰おうと彷徨ってたら、いつの間にやら山の中に入ってしまったようです。辺りはもう暗いし、少し不安です。でもお米を貰うまでは絶対に帰れません。
「あっ、あんなところに灯りが」
上を見上げると、ぼんやりと灯りが見えました。こんな山の頂上に人が住んでいるのでしょうか? でももうそこに行くしかありません。
「小鳩、あそこはもしかしたら……」
「? 貧ちゃん、あそこ知ってるの?」
肩に乗っかってった貧ちゃんが話しかけてきました。少し考え込んでます。
それから30分も歩くとついにその灯りの元へ辿り着くことができました。足が棒みたいで痛いです。
「も、もうだめ~」
「小鳩!? しっかりせい!」
疲労と足の痛みでついに倒れこんでしまいました。意識も遠ざかっていきます。
「あれ、君たちどうしたの?」
遠ざかる意識の中で、誰か男の声が聞こえたような気がしました。
妙神山のただおくん~女の戦い 前編~
<小竜姫>
最近忠夫さんは元気がありません。帰ってくるのも遅いですし、何か悩み事でもあるのでしょうか? 悔しいですけど今一番忠夫さんと長い時間一緒にいるルシオラさんやおキヌさんに聞いてもよく分からないらしいですし、忠夫さんも私には何も話してくれません。
「小竜姫さん、お味噌汁が吹き出てますよ」
「えっ? きゃあっ!」
おキヌさんに言われて私は慌ててお味噌汁にかけてた火を弛めました。いけませんね、考えごとをしながらお料理しては。帰ってくるのが遅くなったとはいえもうそろそろ忠夫さんも帰ってくる頃ですし、急がなければ!
「ただいまー」
あっ、ちょうど帰ってきました。私はえぷろんを脱ぐとすぐさま玄関へ向かいます。
「おキヌさん、後は頼みます!」
「えっ!? そんなずるいです~」
早いもの勝ちです!
「おかえりなさ~……い……?」
玄関には当たり前ですが忠夫さんと……
「あの、この女の子が玄関前に倒れてたんだけど……なんで小竜姉ちゃんそんな怖い顔してんの?」
忠夫さんに背負われた、歳は忠夫さんと同じぐらいの巨乳の女の子がいました。
<小鳩>
目を覚ますと、そこは知らない天井でした。すぐに貧ちゃんが私が目を覚ましたことを伝えに行くと、美人さんが4,5人、そして私と同じくらいの年頃に見える男の子がやってきました。
「目が覚めたの? よかったね」
男の子が優しく話しかけてくれました。話を聞くとこの男の子が助けてくれたそうです。
「助けてくれてありがとうございます。私、花戸小鳩と言います。こちらは家族の貧ちゃんです」
皆さんも自己紹介してくれました。バンダナを巻いた男の子は横島忠夫さん、その隣にいる角の生えた方は貧ちゃんと同じ神様の小竜姫さん、触角の生えた黒髪の方はルシオラさん、ふわふわ浮いているのが幽霊のおキヌさん、そして髪を九つに分けた子が横島さんの妹のタマモさん。皆さん優しそうな方なんですが…………なぜに皆さん私の胸を凝視しているのですか?
「あの、助けてもらった上にこんなことを言うのはとても厚かましいしいことだと思うんですけど、……お米分けてもらえませんか?」
「……そのためにこんな山奥まで来たの? 小鳩ちゃん何気にパワフルだね……」
横島さんが呆れたように言いました。
「でも今の日本でどうしてそんなにお金に困ってるの?」
「そうよね、米を分けてもらえなければ生活できないなんておかしいわ」
「それはワイが説明しよう」
タマモさんとルシオラさんの言葉に貧ちゃんが答えました。どうして私のところに貧ちゃんがいるのか、どうしてこんなに貧乏なのかを説明します。
「あなたは貧乏神でしたか。なるほど、あなたが憑けば確かにお米に困るぐらいに貧乏してもおかしくはありません」
「それじゃあ、こいつを祓えば小鳩ちゃんの貧乏も治るんじゃないの?」
そう言って手を光らせながら立ち上がりかけた横島さんを、小竜姫さんが
「駄目です、忠夫さん。貧乏神は力ずくで祓おうとすると巨大化して更に貧乏が酷くなってしまいますよ」
「なんだ、そうなの……」
? えらくがっかりしてますね、横島さん。どうかしたのでしょうか?
横島さんは光る手を引っ込めようとした……その時でした。
「みんな久しぶりー! ヒャクメちゃん登場なのねー!」
横島さんの上からちょっと変わった女の人が降ってきました。そして上から落ちてきたその女の人は当然横島さんを押す形になり、そして……
「うわっ!?」
「「「「「「へっ?」」」」」」
その勢いで横島さんの光る手が貧ちゃんに思いっきり叩き込まれました。
ぼん!
そして貧ちゃんは天井を突き抜けるほどの大きくなってしまいました。
<小竜姫>
「なんてことするんや! タダでさえ小鳩はもうぎりぎりだったのに、これ以上貧乏さす気か!」
「ごめんなさーい!」
神界ではそれなりに重要な役目のヒャクメが、神族では最下級に位置する貧乏神に土下座してます。まあ、確かに今のは明らかにヒャクメが悪いわけですが。
「ごめんね、小鳩ちゃん。俺のせいで」
「だ、大丈夫ですよ。食事の時の米の量を減らして雑草を主食にすればきっと……」
忠夫さんたちが必死に慰めてますが……さすがに元気がなさそうです。
「ヒャクメ、こうなったのも半分以上あなたの責任なんですからね! なんとかしなさい!」
「分かったのねー。……そうだ、いい案があるのねー!」
「いい案? なんですかそれは?」
「それはねー、忠夫くんが……小鳩ちゃんと結婚して身内になればいいのねー!」
おい、こら、ちょっと待て
<忠夫>
リーンゴーン リーンゴーン
「汝、横島忠夫は悩める時も健やかなる時もー」
ヒャクメ姉ちゃんが神父さんの格好をして俺と小鳩ちゃんに結婚式でお約束の台詞を告げる。俺はタキシード姿で、小鳩ちゃんはウェディングドレス姿。二人とも十二、三歳だから普通のものがあるわけもなく、子供用に作られた特注品だ。俺はともかく小鳩ちゃんのウェディングドレス姿は可愛らしい。小鳩ちゃん自身が可愛いからよく似合ってるしね。
「小鳩ちゃん、あの……」
「はい、なんですか、横島さん」
ごっことはいえ俺なんかと結婚していいのって聞こうと思ったけど、なんか嬉しそうにしてるから聞きづらかった。にしても本当によく似合ってるな、ドレス姿。こうしてみると小鳩ちゃん同い年なのに胸も大きいし……
ぞくり!
な、なんか凄い視線とプレッシャーを感じるぞ!?
「お兄様、結婚おめでとう。心から祝福させてもらうわ」
妹よ、どうして教会以外の辺り一面が焼け野原になってるのかなあ?
「横島さん、よく似合ってますよそのタキシード姿」
おキヌちゃん、そのとんでもない数の霊団はお友達かい?
「よかったわね、ヨコシマ。そんな美人で胸の大きい子と結婚できて」
ねえルシオラ、なんで背中から文明を破壊できそうな翼が輝いてるのですか?
「忠夫さん、はい、これが結婚指輪ですよ。……あら、なぜかダイヤの指輪が砕けちゃいましたね」
小竜姉ちゃん、逆鱗を触ってもないのにどうして右手が龍化しかけてるの?
誰かへるぷみー。
<小竜姫>
忠夫さんと小鳩さんが指輪をはめると、貧乏神はしゅるしゅると小さくなっていきました。さすがに元の大きさに戻るというわけにはいきませんでしたけど。
にしてもこれはピンチです。まさかこんな形で忠夫さんの純潔が奪われかけるなど! しかも登場してすぐここまで来るなんて、侮れません小鳩さん! 特にあの胸! なんですかあれは! あなたまだ中学生かそこらでしょう!? 私は何百年も生きていてこの胸で、どうして十二、三年しか生きてないあなたがそんな胸なんですか!? 理不尽でしょう、これ! 人間なのに人外より人外ってどういうことですかあなたは!?
ってそんな場合じゃありません。ごっことはいえ結婚をした仲。もし小鳩さんがあのありえない胸を使って誘惑すれば、忠夫さんも「結婚をした」という免罪符とともにふらふら~と……
これはミョージンジャー緊急事態です!
「ブルー!」
「ここにいますよー」
「ブラック!」
「はい!」
「グリーン!……は別にいいです、もう。イエロー!」
あれ、タマモちゃんが来ませんね?
「ねえねえ貧乏神。ちょっとこっち来てくれる?」
タマモちゃんはあっちで貧乏神を呼んでいます。ミョージンジャー会議に加わらないなんて一体ナニをやっているのでしょう?
「どうしたんや?」
「ちょっと耳貸して……今よ、フォックスファイヤー・ハリケーンスペシャル!」
タマモちゃんが手を十字にさせると、十字架状の炎が一斉に現われ、貧乏神に向かっていきました。そ、そんなことしたら……
「うおおおおおおお!?」
ぼぼん!
せっかく戻りかけてた貧乏神が、また大きく、もはや教会よりも大きくなってしまいました。
「な、なにするんだ、タマモ!? せっかくだいぶ小さくなったのに!」
「あーごめん、つい、ね。でも、ちゃんと責任取るからね♪」
リーンゴーン リーンゴーン
「汝、横島忠夫は……」
やれやれといった顔でまたタキシードを着る忠夫さんと、嬉しそうにウェディング姿でその腕に抱きつくタマモちゃん。
その手があったか!?
私の神剣が貧乏神に向けられると同時に、ルシオラさんとおキヌちゃんが動き出しました。
続く
あとがき
本当にごめんなさい。過去最長の更新の遅さ……。言い訳させてもらうと今週無茶苦茶忙しかったんです。テスト、レポート、テスト、テスト、レポート、レポート、レポート! もうね、疲れ果てました。死の一週間が終わったので次はもう少し早めに更新できると思いますけど、バイトもあるので思うようにはいきません。いえ、一応丸一日暇な日もあるんですけど、たまには遊びたいんで。
いつも私のような作品を読んでくださってる方には申しわけないです。
せめてレス返しはしますので!
>シヴァやん様
>アシュのどこに惚れたんだ?
この作品最大の謎です
>W.F.様
>がんばれベスパ!父が横島の魔力から解き放たれるその日まで!!(たぶん永遠にこないと思いますが……)
来ません(笑)
>D,様
>そうすると・・・・参姉妹作った意味が・・・・
三姉妹は人界に出れないアシュが人界で行動するために作ったわけでもあるんです。
>黒覆面(赤)様
>ああ、もう取り返しのつかないところまで壊れちゃってますね
もう元には戻れません……
>ゆん様
>アシュタロスって女だったの!?
私もよくは知らないのですが、神話上ではそういうことになってるらしいです
>whiteangel様
>がんばれベスパ!
これからも彼女は報われない努力を続けます(泣)
>神曲様
>後、報われないベスパも素敵。
これからも彼女は(以下同文)。ベスパはこんな風になっちゃいました。
>拓坊様
>土偶羅のほうも完全にアシュの味方ですし、ベスパの味方はまだ忠夫くんと大きく関わってないパピリオだけが最後の頼みの綱か…無理っぽいな(汗)
はっはっは、無理です!
>花翔様
>面白いので、次回を楽しみに待ってます
ありがとうございます。これからも応援よろしくお願いします。
>義王様
>ぃやマジで何処に惚れたんだその親父の!?
筆者にも不明です(笑)
>なまけもの様
>そして、アシュ様女性化フラグキターーー!!!
これも面白いんですが、実は女性化はしないつもりです。したらアシュのスキルが減っちゃいますし
>柳野雫様
>しかも何気に小竜姉ちゃんの仕掛けたトラップで死にかけてる!?
彼女のトラップを食らうと最高指導者でもただではすみません。
>わーくん様
>次回は花戸さんですか?となると原作のあの○○式ですか?
ずばりです。まあ小鳩ちゃんといえばこれですからね。
>s,t様
>次の更新が楽しみです。
OTZ。遅くなって申し訳ございません。次はもう少し早めにしますから。
小鳩ちゃん編、実はここだけ近所の古本屋にないんです。ですから記憶を辿ってうろ覚えで描いたので変なところもあるかもしれませんが、勘弁してくださいね。
ではこの辺で。