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「願い〜第一話〜中篇(GS)」

水稀 (2005-12-03 13:22/2005-12-17 00:36)
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『 美神さん。大事なお話があります。
    隊長の携帯にすぐ掛けて下さい。  』


と、用件を一方的に伝えられた私は辺りを囲んでいる
自衛隊のチームに不快感を感じていた。

つい、金額で承諾してしまった依頼だったが
冷静になると色々と不穏な点が見える。


まず、違約内容の多さや
──それに伴う金額の多額さ。


次に那須に封じ込められている筈の九尾の退治が
都市近郊の森で行われるというのは
──明らかにおかしい。


そして、九尾という大妖を退治するための戦力に
オカルトGメンを登用していないのは
──明らかに何らかの意図が見えた。

そして、殺生石にある周りを囲うための結界。

妖孤を封じ込めるための結界のはずのソレは
態々レベルを下げてまで
──対人にも効果のあるソレを要求された。


ふと、依頼内容の書類を思い出す。


何故か、金額と場所に関する内容の書類が
無くなっていたが、昨夜の内に読んでいたので
──間違うことなく指定の場所に来れたのだが・・・。

今は紛失しなかった書類の方を思い出す。

『 殺生石の封印が都市近郊の森で解けるので
  ソレに伴って退治をすれば報酬三億
        捕獲すれば 報酬一億・・・。 』

『 違約記述 結界の補強を何より優先させること。
  違反した場合は前金全額を政府に返金すること。 』


政府は那須に殺生石がないのを
──知っていたと見るのが妥当だろう。


次に理由・・・。

九尾の封印時間を延ばすために
──那須より霊的地脈が少ないこの場に移した・・・?

それであれば何故・・・時間を延ばしたのだろう。


───チラっ

私は左方を固めている自衛隊の一人に視線を移す。

( あれは銀の銃弾ね・・・。
      ──装備を用意するための時間稼ぎかしら?)


装備に考えを巡らし更に謎を深めた。


[ 何故、私を呼んだのか? ]

装備を整えることが出来たのなら
──私はそんなに必要ないはずだ。


( 『九尾の狐』 といっても

   封印が解けたばかりじゃ赤子みたいなものだわ。)

そう、私を呼ぶ理由がない。


[ 対人にも効果のある結界術の強制 ]

ふと、違約記述の一旦が浮かぶが
何度考えても、手かがりが少ない現状では
──答えがでることが無かった・・・。

暫く考えた後


『 美神さん。大事なお話があります。
    隊長の携帯にすぐ掛けて下さい。  』


答えは横島の伝言通りに従えば答えを得るのだろうと
漠然とした予感がした。 


          願い 〜第一話〜中篇


[ 都市近郊のはずれにある森 ]


森の木々達が枝葉で天井を作り
─その隙間から零れ落ちる陽光によって

枯葉や木の根で埋め尽くされた地面

そして─ポツン─と置かれた殺生石に複雑な模様を描いている。


そんな景色を幻想的だと思いながら私は眺めていた。


「 おキヌちゃん 」


半ば呆けていた私を小声で呼ぶ声の持ち主は

『 美神 令子 』 私の上司であり、お姉さん的な存在
である彼女は実は恋のライバルだったりする。

腰まで伸びている艶やかな亜麻色の髪や
露出度の高い服装に見合うプロモーションを持つ
彼女を見ながら『私だってっ!』 と意気込むのは
既に日常的な一幕となっている。


「 ──はへ? 」


そして、呆けていたために恥ずかしい返事を
してしまったのが私『 氷室 キヌ 』


艶やかな黒髪と
美神より少々凹凸に乏しいが
抱きしめたら折れそうな印象を与える
スリムなプロポーションを持つ元・幽霊巫女。

現在は復活して『 私立:六道女学園 』で
──立派に生徒をしている。


「 ちょっと此処から離れるわよ 」

返事をした私に再び小声で話しかけてくる美神さんを
不思議に思いながら

私は従い歩き出したのだが


───ガシっ


「 きゃっ?! 」

突如、私の腕を捕んできた自衛隊員の腕に
驚き声を出してしまった。


「 すみませんが、持ち場を離れないでもらえますか? 」

と、丁寧だがやや凄みのある声で話しかけられた私は


「 え? えっ? 」

混乱したように美神さんと
─自衛隊の男性を交互に見ることしかできなかった。


「 ちょっと話しがありますので── 」

と、笑顔を浮かべ男性に話しかける美神さんと

「 話は此処でしてもらえませんか? 」

と、私の腕を掴んだままに
武張った感じのある表情を崩さずに言う男性の
発言を耳に入れながら

──私は


男性の腕から逃げることに必死になっていた。


僅かな時間の経過。
─結局

『 殺生石に変化が起きた時の連絡のため 』

『 結界を維持するため、キヌさんには待機してもらいたい 』


と言う男性の言葉に従い妥協し
隊長格の男性が一人つき、僅かな時間持ち場から
離れることを許された。


殺生石からやや離れた場所で[自衛隊の包囲網の一番端 ]


「 おキヌちゃんに頼みたいことがあるの 」

と態々─付き添った男性に聞こえるように喋る美神さんの
思惑を考えながら私は

「 ──何ですか? 」

と返事した。


突如

『 おキヌちゃん、驚かないでね 』

そんな言葉が私の頭に響いた。

僅かに驚き─ピクっ─と反応してしまった私に
付き添った男性が怪訝な表情で私を見ていたが
──アハハっ・・・ と誤魔化し

『 今文珠使って伝えてるんだけど
   ──伝/心じゃないから一方通行なのよ 』


「 今から私は殺生石の周りに敷いている
       ──結界の点検に行くから・・・ 」
「 はい 」


頭に響く内容と言葉で喋られている内容を混乱しないように
私はゆっくりと整理して返事した。


『 ──と、いう訳で私が合図したら此処から離れる素振りをして
  その際はあの男の脇を抜けるようにしてね。

  そしたらアイツがまた─おキヌちゃんの腕を掴むはずだから
  その隙に私は文珠で『眠』をあの男にぶつけて此処から一旦でるわ
  ──その時におキヌちゃんには残ってもらって
  文珠を渡すから『幻』を使って時間を稼いで。

  対象にぶつける訳じゃないから
  効果時間は短いけれど間に合わせるから──           』


「 殺生石に変化が起こった時に、笛で知らせて欲しいのよ。
                         ──今よっ!!」


美神さんがそう叫ぶと─私は指示にあったように
男性の脇を抜けるために駆け出した。


「 何処へ行くっ?! 」

そんな怒声と共に腕を伸ばす男性を見ながら

「 きゃぁー! 」

と声が出てしまうのは仕方ないことだと思う。

───怖いんです。

( 美神さん頼みますっ! )


怖いのを必死で抑えて男性に近づき、脇を抜けようとして


───ドサっ


( あら? )


自衛隊の男性が倒れたのをキョトンと眺める。

「 ふぅ・・。おキヌちゃんが上手いこと叫んでくれたから
  注意が完全にそっちにいったわ。指示とはちょっと違ったけど
  結果オーライよね。 」

と眠りに入っている男性を近くにある木の木陰に縛りながら
発言する美神さんに

「 怖かったんですよぅ! 」

と、不満をぶつけた。


暫くして、男性を縛り上げた美神さんが


「 じゃ、行って来るわね。おキヌちゃん頼んだわよっ! 」

という言葉と共に自衛隊の包囲網から
──離れた場所へと駆け込んでいった。

残された私は・・・。


「 どんな『幻』使えばいいんですかぁー! 」

と軽く泣きが入っていた。


          ・
          ・
          ・
          ・
          ・


『 ───と、いう訳なのよ 』


ママと電話で話した私は
自身に置かれていた役割を知った。

Gメンが殺生石に気づかなければ
私は依頼のまま、妖孤の退治をしていただろうが・・・

裏に隠された役割

違約記述にもある結界の補強という事項が引っかかった。


それは結界の存在を知られた場合に
Gメンが突入してきた穴を防ぎに出されるためのものと言えた。

そこから出される答えは結果的にもママに対する
『足止め』の効果であり、破られた場合も

違約による罰金で無料で私を遣えるという計算も
働いているのだろう。


「 なんですってぇ?!
   それじゃ私は─『上手く遣われる所だった・・・』」


私の発言に被せるように発言したママの言葉は
私の背筋を凍らせた。


「 じゃ、じゃぁどうするのよ? 」

『 今から令子には持ち場に戻って
  復活した九尾を結界から逃がしてほしいのよ。 』  

「 どうやってよ? 」

僅かに返答に間が空いた。


『 ──ここを出るときに縛った男がいるでしょう?
  それに『模』の文珠でも使って化けて頂戴  』


僅かな時間の経過

「 やってもいいけど、効果時間が心配だわ。 」

思考を終え、不安要素を述べた。


『 ──文珠は残りいくつあるの? 』

「 一つしか残ってないわね・・・ 」     

『 ちょっと不安ね。──あっちょっと待ってて 』

「 急いでよママっ!時間あまりないんだからっ!  」


そういってママは向こうにいる仲間達と話しているようだ。
──所々で『 横島クン── 』いう声がした。

向こうで彼が待機しているのだろう。

( せっかく休日あげたのに、何やってるんだか・・・)

つくづくトラブルに好かれた男だと思い『ハァ・・・』と
──呆れた溜息がでる。


( 合流したら一発ぶん殴ってやらなきゃ )

等と物騒な思考に変わった所で

『 もしもし、待たせたわね 』

とママから声が掛かった。

「 んで?どうしたらいいの? 」

『 横島くんが言うには文珠は飲み込むと
  使用時間が延びるらしいわ。
  
  『模』だと飲み込んだら大体二時間は持つみたい。 』

「 わかったわ。今試したいところだけど
  行動する時に使った方がいいわね。 」

『 そうね、その方がいいわね。 』

「 で、どこに逃がせばいいの? 」

『 それは ───「 ピリリリリリリリ・・・・ 」 』

「 ごめんママ、殺生石に変化が起きたみたいなのっ 
  おキヌちゃんも待たせてるしもう行くわっ!!   」

と言い残し電話を切ろうとしたが、

『 公園っ。 公園の方が私達が近いわ。
  何とか妖孤の逃げる方向を操作してっ! 』

という声を最後に聞き取り

「 わかったわっ! 」

と切ると同時に言った。


          ・
          ・
          ・
          ・
          ・

[ 再び森の中 ]


おキヌちゃんと別れた場所まで着いた私は
まだ男が縛ったまま寝ているのを観察して

ある程度の装備を奪い
『模』の文珠を飲み込んだ。

瞬間

流れる記憶。


───無機質な部屋

     集まった政治家達

    Gメン本部の思惑

     美神令子の張った結界を妖孤に抜けられた
     場合においてのみ活動する公園に潜んでいる
     待機チーム。


「 っつぅ・・・ 」


急激に頭に流れた情報によって
痛む頭を抑えながら殺生石のある場所へと
急ぎ駆け込んだ。


( それにしても運が良かったわね。
  此処まで情報をもってる男が付き添って
  その男を無意識にでも捕らえるなんて、流石私ね。      )


なんてことを考える余裕を保ちながら・・・。


[ 殺生石前 ]


私は殺生石をボーッと
眺め、美神さんを待ち続けていた。

結局私が使った『幻』の文珠は
短時間の使用で済ませた。


私が映した『幻』は

一度三人で戻ってきて、その後に
私達を監視していた男性と美神さんが
再度、殺生石の待機場所から出て行くという『幻』

( これなら途中で切れる心配なんてないですし・・・)

と思って使った私は珍しく機転が利いてたなぁ と
自身を褒めながら只管美神さんの帰りを待っていた。


突如

殺生石の周りの雰囲気が変わった気がした。

───キョロキョロ

周りを窺うが気づいた人達は居ないようだ。

( 気のせいじゃ─ないよね? )


と、自身の内に問いかけ
未だあまり得意ではない霊視を開始する。


( 何?アレ・・・ )


そうして視えたのは殺生石が辺りの霊気を
今までより明らかに数倍の勢いで吸い込んでいるビジョンだった。

「 皆さん。動きがありました。
今から美神さんに連絡するので気を引き締めてください。 」


そう周りの男性に言い放ち


───ピリリリリリリリリ・・・・


とネクロマンサーの笛に

( 美神さん 早く来てくださいぃ )

腰の引けた感情を乗せ奏でた。


───ピシッ


そしてその音に反応したのか
殺生石に僅かな罅が入り


おキヌは固まった。


          ・
          ・
          ・
          ・
          ・

[ 殺生石付近 ]

殺生石が視界に入る木陰に潜み
私はおキヌちゃんを探した。

( ───いたっ! )

ゆっくりと不自然じゃないように木陰から出て行く。


「 あら? 隊長。美神令子さんはどうしたんですか? 」

───ドキッ

不意に隊員に話しかけられ心臓が跳ねた。

その動揺を隠し

「 彼女は結界内に他の妖怪が進入しようとしてるのを感知し
  ──結界の強度を上げるためにある地点で待機している 」

( 妖怪化したママが来るのを感知して
   ──これから結界の一部を解くんだけどね )

内心で考えてることを表に出すことなく
真実(?)と嘘を織り交ぜた報告を行った。


「 そうなんですか。そろそろ妖孤が復活するようですよ 」

「 そうか。私は詳しい話を彼女(おキヌ)に聞いてくるとしよう
               気を引き締めて持ち場に着くように。」

「 はっ!」


( ふぅぅぅ。誤魔化せたかしらね?
  なるべく『模』した男の様に喋ったのだけど── )


隊員と別れ、過大に緊張していた体を解し
おキヌちゃんと元へと歩む。


時間を然程掛けること無く

「 おキヌちゃん 」

と私は小声で語りかけたのだが


───びくぅっ?!

と音がするほどに身を固まらせたおキヌちゃんを
怪訝な表情で窺った。

「 ──? どうしたの? 」

と、尋ねたが

「 ひっ! 」

身を小さく捩って私から逃げていくおキヌちゃんに
軽く傷ついた・・・。

僅かな思考の後

( あ、私『模』の文珠使ったままだった── )

少しづつ逃げようとするおキヌちゃんに
軽い頭痛を感じた後に

「 私よ。文殊つかってるの 」

と小声で話しかけた。


その言葉を聞いておキヌちゃんは
──僅かに瞳を丸くした後


「 美k「 静かにっ!」うぅー。 」

いきなり私の名前を叫ぼうとするおキヌちゃんの
口を手で押さえながら小声に感情をのせ

おキヌちゃんを黙した。


そんな私達を怪訝な目でみる隊員達に
僅かに身を捩らせた後

おキヌちゃんと一緒に
アハハ・・・と乾いた笑いを浮かべ誤魔化した。


僅かな間、白い目で見られていた私達だが、
何とか不自然じゃない程度に現場から離れ

おキヌちゃんに事情を説明することができたのだった。


後書き

何とか此処までいけました。

様々な思惑を描いて皆様にわかりやすくと思っているのですが・・・
余計わかりにくくなっている感を感じておりますorz

次回こそ!タマモをどうやって救出したかを描きますので
ヨロシクお願いしますね!


ちなみに、また今話もキャラ三人しかでてません orz


キャラを上手く使えるように努力していきますので・・・


またも暖かい目で見守っていてください!

では 次回もがんばりますので
今後ともよろしくお願いします!


>">ash様

誤字の指摘ありがとうございます!
美智恵だったんですね。

助かりました!

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