[ とある会議室 ]
唯広いだけの無機質な印象を与える部屋の中に置かれた
豪華な装飾を施された黒塗りの机
──そしてそれに合わしているのだろうか?
これまた豪華な装飾をした椅子が辺りを囲んでいた。
しかし─それ等が与える印象はやはり無機質で
使い込まれて出来るはずの丸みや、傷など
一切見当たらず新品の時の独特とした匂いを感じさせた。
そして、そんな家具達には見向きもせずに
此処には政治家達や
──オカルトGメン幹部の幾人かが集まっている。
───『 ガヤガヤ ザワザワ 』
一切のBGMが流れることなく唯、人のざわめきが支配する中
─カツン─と何かを叩くような音が室内を一度巡り
「 さぁ・・・。始めようか。 」
初老の男性の──重苦しい声音が室内に響いた。
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──俺はどうなるんだろう。
最近自身の体の内に起こっている変化に疑問を投げかけた。
美神さんには一端しか話してはいないが
自身の体のことだ──何となく理由には気づいている。
[ 魔力と霊力 ]
それ等を合わせ持ち続けている種族は
現在において、横島唯一人。
一定期間であれば、魔装術を扱う術者も
それらに該当するのだろう。
それは霊力を消費して魔力を維持する方法ではあるが・・・。
それでも術を媒体としてするはずの
魔力と霊力の共存であって
霊能力はあっても、術として扱っていない
遺伝子レベルでの共存に
普通の人間が堪えれる訳がない。
訳がないのだが・・・。
横島はありえないほどの魔族因子との親和性を発揮し
──共存した─が最近感じる違和感。
自身の因子が彼女を拒んでる──もしくは・・・
彼女が・・・?
──プチッ
互いに支えあったはずの彼らの絆が引き千切れていく音が
──彼の心に響いた。
ソレは本来聞こえることのない遺伝子レベルでの音。
──その音は─朧気にだが確実に・・・。
体内で異変が起こっていることを彼に伝える。
自分と彼女の境界線
そのラインが徐々に無くなっていく。
一つになるのか─それとも・・・
互いに無くなるのか・・・。
『 ルシオラ・・・。 』
彼の心は──孤独感に苛まれていた。
美神事務所から出た俺は
「 ふぅ・・・。 」
と、零れた溜息に僅かに苦笑を起こし
『 溜息 多くなったな・・・。』と
──そんな感慨を覚えながら
平日だが賑わっている商店街を探索する。
今日はカップうどんの特売がある日だ。
なんて意気込んで商店街を歩き目的地へとたどり着いたが
『今回からカップうどん特売パック一名様2パックまで』
と書かれた注意書きを目に入れ落胆した[今まで4パックだった]
( くぅぅぅぅ。俺の生命線がーっ!! )
───ダンダンダンっ
と近頃あまりやる人のいない地団駄を惜しげも無く披露し
半泣きになったことにより目頭に溜まった涙を
──ごしごしっと乱暴に拭う。
僅かな時間の経過
「 ふぅ・・・。 」
と更に溜息を吐き出す。
このまま駄々をこねていても仕方がないな・・・と
目の前に積まれていたカップうどんのパックに手を出すが
───スカッ
「 ん? 」
地団駄を踏んでいる内に積まれていたパックが
──見事その姿を消していた。
「 何やとぉぉぉぉぉぉぉっ!? 」
周りにいた主婦達の手際の良さに
思わず、大声で叫んだことも気に留めずに視線を張り巡らせ
───きょろきょろ
時間を経てること無く「 ハッ! 」 と息を呑み
視界の内にカップうどんパックを捕らえた。
そして
それが最後の二個と気づき
──日頃ル○ンダイブで鍛えていた瞬発力を生かし
───『ンガバチョ』
と、摩訶不思議な擬音をたてうどんに抱きいた。
( 間に合ったか・・・? )
僅かに感じるうどんのカップの感触を得て
安着の溜息を吐いた後
用心を重ね─腕の中にあるソレ等を視認すると
( よしっ!俺は手に入れたぞ。手に入れたんやっ! )
ガッツポーズを小さく握った。
・・・後に栄光を掴む手『 ハンズ オブ グローリー 』 の派生技
栄光を抱えるダイブ『 ダイブ オブ グローリー 』と名付けられた
彼の必殺技はこうして
生まれるわけがない。
願い 〜第一話〜前編
不思議な緊張感の漂う商店街のスーパーの中で
彼『 横島 忠夫 』のする奇行を見守っていた主婦達は
ざわめくはずの店内に沈黙が占めているのを感じとっていた。
───シーーーン
本来ならあるはずの無い静謐な場を
───ピッピッ
レジを通す機械の音が空しく響いた。
何度目かのレジの機会の音が響いた時
目を見開いて横島の奇行を見守っていた男の子が
地面に落ちていた紙を拾い
─タッタッタ・・・─と、横島へと駆け寄り
─ぐいっ─っと何時までも
カップうどんのパックを抱えている横島の袖を引っ張った。
『ごくっ・・・』
主婦達がその様子を
──固唾を呑んで見守り時間が経過した・・・。
突如
「 誰にもやらへぇぇぇぇぇん!
──このうどんはワイのもんやぁぁぁぁぁ!! 」
血涙を流すバカの遠吠えが辺りを支配した。
───ヒソヒソ ザワザワ
こうしてスーパーは──僅かな時間を経て
元のあるべき姿へと戻るのだった。
ちなみに、某人妻が横島を見守り、我が子の
「 何してるの?あの兄ちゃん 」という言葉に
「 男の子には、ああいう辛い時期があるのよ 」
と涙ながらに我が子へ語りかける暖かい場面が見られたそうだ。
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あれから、様々な紆余曲折が行われたが
[ 主に泣かれた子供を慰めたり、ヒソヒソと話す主婦達に
頬をぽりぽりと掻きながら何とか自然を装ったり ]
無事に帰路の道へと辿りつくことが出来た。
「 ん〜。これで二週間は持たせるぞっ! 」
腕にぶらさげたビニールを視界に入れ、決意を露にし
「 ふわぁぁ・・。それにしてもこの紙なんやろ? 」
と、あくびを漏らした後で
ふと、手渡された紙の存在を思い出す。
『 はいっ。落としたよ。この紙。 』
そう言って泣き止んだ後に手渡されたこの紙。
気になり始めるともう止まらずに
ビニールの中へ空いてる手を突っ込み紙を掴む
「 何々・・・? 」
──仕事内容 : 九尾の狐の捕獲あるいは退治
依頼主 : 日本国政府
依頼料 : 3億円
( これって・・・。美神さんとこの書類じゃないか? )
昨夜言っていた令子の言葉を思い出し、書類と比較した。
『 明日、妖怪退治に行くわよ。政府からの依頼で
違約金は高いけど妙に羽振りがいいのよねぇ〜 』
と、ホクホクした顔で微笑む令子の顔を思い浮かべ
何故、あんな場所に・・・─と疑問が湧き出た。
( たしか─今日美神さんところに行ったときに
書類を投げつけられたな─で、その後に折檻されて・・・。
ル○ンダイブをして──服と一緒に叩き出されたっけ?
んで、ドア付近に散らばってた書類の一部が
ズボンに入りこんでいて・・・──
地団駄したときに落としたのか
名推理やっ!俺ってば賢いっ!! )
妙に長い説明文のような思考をした後
横島とは思えないほどの冴えた答えを出した。
「 んー、どうすっかなぁ・・・。 」
( 書類ないと困るだろうしなぁ。 )
幾許かの思考の後
─九尾の狐と書かれている書類を再度読み
霊力をまともに扱えない自分が邪魔にならないように休日を
申し出たはずなのだが──書類を渡すため・・・それと
( 九尾の狐って名前からして強そうやし・・・
いざという時は暴走してでも守らないと── )
という、横島らしい心配をしたために自主登校ならぬ
自主出勤を決意した。
「 よし、行こう。えぇーっと場所は・・・? 」
再び書類に目を通し
───場所 : 街外れにある森付近
作戦 : 三時決行
( 美神さんの事務所を出たのが1時ぐらいだったから
──ヤバイ、急がないとなっ! )
こうして、体調不良で休んだ男は、颯爽と街中を駆けていった。
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[ 街外れの公園付近 ]
体調不良どころか、人とは思えない速度で
颯爽と駆けてきた横島だったが『 ハァ─ハァ─ハァ・・・。 』と
この場所につく頃には荒い息を吐き、繰り返し肩を上下に動かしていた。
「 こっから何処にいきゃ、いいんだ ? 」
荒かった息を抑えながら呟いたと同時に
「 横島クン?横島クンじゃないかっ! 」
と、男から声が掛けられた。
その男に声にシカトを決め込んでいた横島だったが
───ポンっ
と音がたつように肩に置かれた手に
背筋に鳥肌が立つのを感じ取った横島は間をおかず
───ブンッ
ビニール袋を持っていない、空いている手で
腰の捻りを利用した鋭いバックブロー『裏拳』を放つ。
───ガシッ ビキ
空気を裂くように放ったソレに男は紙一重の見切りで
顎を反らすように避け、彼の腕が伸びきった瞬間に掴んで極めた。
「 痛ってぇぇー!!何すんだっ道楽公務員っ! 」
道楽公務員と呼ばれた男『 西条 輝彦 』は
横島の腕を極めたまま
「 喧嘩を売っているのかぃ? 」
無駄に爽やかな笑みと共に彼の耳元で囁いた。
───ゾクゥゥゥ!
フッと耳元に当たる西条の吐息を感じた、否感じてしまった
横島は先ほどとは比べ物にならない鳥肌を浮かべ
無意識に身を飛ばせ離れようとしたが
───ビキッ!
激痛に白目を向いて倒れた。
───ドサッ
いきなり音をたて体を崩し落ちた横島を
西条は『 僕の魅力の凄さに落ちたか・・・ 』 と
まったくといって 掠ることすらない持論を浮かべ
未だ極め続けていた腕を開放した。
「 ん? なんだい。このビニール袋は・・・ 」
ふと、視線に入れたビニール袋。
中にH雑誌が入っていたら令子ちゃんに報告してやろうと
嫌らしい笑みを浮かべたが
カップうどんのパックを見て、溜息が零す。
「 ハァー・・・。──っん? 」
漁ったビニール袋の中身を戻してやろうと
西条的 紳士行動を開始したときにソレが目に入る。
──仕事内容 : 九尾の狐の捕獲あるいは退治
依頼主 : 日本国政府
依頼料 : 3億円
「 令子ちゃんも係わっているのか・・・。」
僅かな時間その書類に目を向けていたが
すぐに目を離すと『 もしもし・・・ 』と報告のための電話を掛けた。
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───バシャーン
『 ひぃぃぃぃ。 』 と叫び混乱している横島を正面に見据えたまま
西条は横島へと語りかけた。
「 おはよう。いい目覚めだったかい? 」
その声に意識を誘導され
既に濡れてしまった髪の毛やGジャンによる不快感を
意識の管轄内に抑えたまま、西条へと掴みかかる。
「 てめぇ!何するんだっ?! 」
襟元を掴んだまま言葉早々に並び立てる
数々の罵声を気にも留めないまま
「 それより、尋ねたいことがあるんだが いいかな? 」
という、冷たい視線により横島はスゴスゴと引き下がった。
「 この書類の一切れは──令子ちゃんの所のだよね? 」
言葉と共に見せられた見覚えのある書類に
小さく「 チッ 」 と舌打ちした後で
「 そうだよ・・・。てめぇに関係あるのかよ? 」
嫌悪感を隠さずに西条に打ち明けた。
「 それは──もうすぐ先生が来るからその時に話そう。」
「 ──隊長が? 」
という会話の後
───バタバタバタ・・・・
横島を影で包むように、彼の上空にヘリが
停空待機の体制に入り──暫くして
───ドサっ
と女性が地に飛び降りる音が
耳に入る。
暫くして
「 西条君、横島君っ! 」
と、声を掛けながら駆け寄る女性『 美神 美知恵 』
彼女はシックで大人の魅力を出している服装を普段
しているはずなのだが
今日はGメンの制服で身を包み、腕を指定席としている
彼女の娘『 美神 ヒノメ 』 の姿すら見当たらない。
ここまで来れば鈍さでSSランクを所持する横島でも
彼女が仕事で来ているのが見て取れた。
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「 ───と、言うわけで横島君に協力して欲しいの 」
と、口調頼みの、内容強制的なお願いを
横島は断ることなく─断れることなく素直に従った。
彼女『 美神 美智恵 』から語られた内容は
1:オカルトGメンの本部による日本Gメンの権威失脚のための
日本政治と共同での示威的犯行
アシュタロス戦で『美智恵』による独断専行等による行動を
重くみた本部はGメンから美智恵を除外するために
日本政府
『日本Gメンがこれ以上の力を持っては今後の政治的行動に支障が
でるため。他にもGメン本部により協力要請という立場での
美智恵を失脚させた後に得る立場強固の可能性を得るために・・・』
と結託した事件が横島のいる場所で起こっていると事。
2:美智恵は那須にある殺生石に封じ込められた九尾の狐が
復活するという情報が入ったため那須へ向かったが
資料に書かれていた殺生石のあるはずの場所に何も無かったことにより
詮索活動をしていた所、『1』で述べた情報を彼女の知己である
Gメン本部の友人からリークされ、現場に残っていた
複数の足跡を解析した結果、自衛隊の隊員の行動により
殺生石が移された可能性の発覚。
3:『1・2』の情報による共通点により
Gメンのある都内近郊で事件が起これば
Gメンの責任追求による圧力が格段に増え
制約を掛けやすくする効果的な場所で行われる事。
4:遠視の能力がある隊員に遠視をさせた所
那須から一番離れている都市近郊のこの場所を発見し、
西条に潜行待機させていた時に横島がきたこと
5:令子には電話が伝わらないためどうにかして連絡を
横島にとって欲しいという協力要請
6:九尾の狐に伝わる伝承には語弊があり
唯、人間の思惑内で被害にあっていた妖怪かも知れないということ。
それらのことを聞き
「 ハァー・・・。隊長も大変っすね・・・。」
と、横島が深い溜息を吐き、呟いてしまうことは仕方のない事と
いえるだろう。
それほどに複雑な事情・思惑が絡まり
形を成した人間による事件。
そして、人に利用された九尾の狐のことを思うと
唯でさえ妖怪や魔族・神族を一つの個と見る彼には
言い様も無い感情が己の内で暴れた。
「 じゃぁ俺は美神さんに連絡すればいいッスね 」
と美智恵に話しかけ横島は文珠を作動させた。
『 伝 』
瞬間
翡翠色の文珠が『伝』の字を浮かべ輝いた。
本来なら『伝/心』 で使用し会話するこの文珠は
『伝』のみでは伝えるのみで会話もできないが
『 美神さん。大事なお話があります。
隊長の携帯にすぐ掛けて下さい。 』
と、用件を一方的に伝える事は可能だった。
後書き
前編終わりましたー。
で 早速反省
那須にタマモは居たんですね・・^^;
知らなかったため、都市近郊にいることにしてました
が!
じゃぁこういった話も織り交ぜようと
GS本部と日本政治と共同による暗躍
といった場面を増やしました。
ちなみに本部の暗躍行動は
これ以上出す気がないので・・なんとか『 政治詳しくないので 』
次の話で美知恵に頑張ってもらおうと思います。
次に誤字の多さ orz
見苦しかったのを此処でお詫びさせていただきます。
あと 指摘に感謝です。
本当にありがとう御座いました。
チマチマ小ネタをはさんで
文字数激増!
もうバカかと・・w
中・後 でタマモ編を終わらす予定ですが
急遽書き方を変えているため
第一話だったのを 第一話 プロローグ へと題名変更しました orz
まぁ・・。見苦しい言い訳ばっかりで申し訳ないので
ここらへんでやめときます!
次回はタマモ救出編(中編)ですね
がんばりますので どうかヨロシクおねがいします!
>>拓坊様
次回もお言葉をくれましたね。
本当にそのお言葉が力になってくれますので
感謝です!
>>南雲様
タマモとの関係は・・・
がんばります!w
>>矢沢様
細かい指摘ありがとうございます!
タマモがいた場所を知らなかったもので
そういった情報が今回の話を書くときにとても
役に立ちました。
本当に感謝です!
>>ピース様
作者がバカだったので・・・orz
気にせず読んでくれるとありがたいです^^;
ちなみに「 各国を手玉にとった九尾 」
と修正しました。
>>流れ流れて三千里の三千分の一様
やはり原作は大事ですよねorz
今回 書いてるときに深く思いました。
お金が手に入り次第買ってみるのもいいかなぁと
思うんですが・・・当分先になりそうです(ノ∀`゜)
暖かい言葉ありがとう御座います!
>>弧枝様
詳しい説明ありがとう御座います
仰られたように修正しました。
助言感謝です!
>>ゆん様
前回はオキヌちゃんを書こうか迷ったんですが
話の関係で『文字数』を気にして諦めてましたorz
って・・・気づいたら今回も3キャラしか出てない・・
次回がんばりますので 暖かい目で見守って下さいw
>>ガム様
誤字指摘感謝です!
こ で変換していたため違和感なく進んでたんですが・・・
言われてびっくりでしたw
再度 感謝の言葉を ありがとうございました!
>>LINUS様
軽くネタをバラすと一時期横島を幽霊にしようかとも
考えたのですが・・・
「 ○○すわーん 一生憑いていきます。 」
ってセリフを言わせたいがためにw
まぁ 魔族になるか幽霊になるかなどは秘密ということで!w
相当長くなりましたが、皆様見聞ありがとうございました。
これからも見守ってくれると感謝です!
でゎ また次回の話も頑張りますので
これからもヨロシクおねがいします!!