人間は信用しちゃいけない。
──平気で騙すから・・・。
人間に見つかってはいけない。
──人は人外の者を嫌い除外し虐殺、虐使するから・・・。
[ 都市郊外の森 ]
森は木々の枝葉で数々の天井を作り
その隙間から零れ落ちる陽光によって
枯葉や木の根で埋め尽くされた地面に複雑な模様を描いている。
辺りには森の匂いが充満し、独特の匂いを発散させている。
現代では少なくなった自然の森 『環境』
そんな深い森の終わりで
ガサッ
音をたて子孤が駆け抜けていった。
「 おいっ!そっちに逃げたぞっ! 」
その狐を追いかけ森の中から出てくるなり
自衛隊の制服に身を包んだ男が叫んだ。
装備のトランシーバーから時間を掛けることなく
『 了解 』と返された返事を聞くと
男は森への入り口を手早く封鎖した。
暫くして森と隣接してある公園に向かった子狐の後ろ姿を一瞥し
「 手間かけさせやがって 」
と小さく呟かれたその声は何に対して言ったのだろうか・・・。
その呟きを向けた相手は男しか知らない。
『 おいっ!そっちに逃げたぞ 』
トランシーバーから聞こえた声に
「 了解 」と短く返すと同時に仲間へと視線を巡らし、命令した。
「 今から九尾の狐がこっちに来るそうだ。 」
その一言によって僅かに高まらせた緊張感が
仲間に染み渡るのを確認し力強く発言する。
「 我がチームが相手にするのは、転生した妖孤だ。
幼い形を取って様ともヤツは各国を手玉に取った
傾国の美女─九尾の狐だ。決して気を抜くなよっ!」
「「「「「 はっ! 」」」」」
「 では、装備を怠ることなく持ち場につけっ! 」
怒号と同時に散らばる六人一隊。
命令から僅かな時間も掛けることなく
二人一隊で左右の植え込みで身を伏せ
一人は公衆トイレの外壁を登り入り口へとスコープを調整した。
何時もは平凡な日常を描く公園の景色は
こうして──緊張感漂う戦場へと姿を変えた。
サァー・・・。
一度、やや肌寒くなった季節を感じさせる風が公園内を舞う。
その乾いた風に──これから起こる惨劇を想い
・・・『 ごくりっ 』 と何時の間にか溜まった唾液を飲み込んだ。
入り口からの死角に待機したチームのリーダである男の額から
緊張により出た汗がつぅと額からゆっくりと顎先へ伝わり
「 まだか・・・? 」
ソレを袖で拭い呟いた。
瞬刻
──────パァーンっ!!
軽く感じる火薬の破裂音『銃声』が公園内に響いた。
願い 〜第一話〜プロローグ
───パァーンっ!!
遠くから小さい破裂音が耳に届くと同時に
私の後ろ足が鈍く熱い痛みを訴える。
( ちくしょうっ!畜生畜生っ!! )
何度毒づいたか分からない罵声を私は頭の中で叫ぶ。
何故、何もしてない私を追ってくるのか?
何故、殺生石の前で待ち伏せされてたのか?
何故、殺されないといけない?何故・・・何故・・・何故・・・
転生したばかりの私の心の中で様々な疑問が生まれると共に
それらに対する返答の言葉が私の内から溢れ出した。
人間は信用しちゃいけない。
平気で騙すから・・・。
人間に見つかってはいけない。
人は人外の者を嫌い除外し虐殺、虐使するから・・・。
( くそっ!!人間めっ!奴等は敵だっ!敵だっ!敵だっ! )
何故忘れていたのだろう。
奴等は前世でも敵だったはずだ。
転生したばかりとはいえ、忘れることではない
本能にさえ刷り込んだ教訓じゃなかったのか・・・。
胸の内に流れる意思を感じながら
傷ついた足をなるべく使用しないように三本の足で
跳躍するように公園内を駆ける。
ズキッ
頭の中に直接響くような足の痛みを誤魔化し
必死で駆けた逃走劇も終盤へと近づく。
───パァーンっ
遠くから公園内に響いた忌まわしい音をたてた狂気が
私の足を再び射抜いた。
瞬間、大地に肉と血液と共に『狂気』が大地に孔穴を作り出した。
肉を熱い『狂気』が抉っていく感覚をリアルに感じ
真っ白になる思考。
それと同時に傾く視界。
トサッ
まだ小さい私の体が地面に倒れこむ音を
意識の外で聞きながら──只管人間へ怨嗟の言葉を連ねた。
タッタッタ・・・。
時間を掛けずに地面についた耳から幾人かの人の足音が響き
遠くで喧騒の声が聞こえた。
ジャリ・・・
私の近くの砂礫が軋む音がすると同時に私の視界に影が覆う。
( 何故・・・? )
影を感じ、痛みを訴え続ける体と意識を闇へと誘う誘惑を振り切り
何時の間にか私の傍へと来ていた男を目に入れて出た言葉は
怨嗟では無く、最初の疑問だった・・・。
そんな私を目に入れた男は
下卑た笑いを浮かべ銃を向けると
───パァン
「 不運だったな・・・ 」
暗闇に堕ちていく意識の中
──私はそんな言葉を聞いたような気がした・・・。
・
・
・
・
・
───ハッ!?
長い悪夢から私は再び目が覚めた。
( 生きてる・・・?私、まだ生きてるの? )
薄汚れた民家の天井がぼやけた私の視界に映る。
───ハァ、ハァ。
ゆっくりと意識が明確になっていく間に
──自身が荒い息をついていることに気づき
( 此処は何処だろう? )
と、未だに荒く吐く息を意識して抑えつつ辺りを見回す。
───ガサっ
束の間、ビニール袋が擦れる音が聞こえ
私は音源へと細心の注意を払いながら目を向けた。
( 人間?──っ人間っ!! )
無意識に強張る体を無理やりほぐすと
最初に此処から出る場所
次に自身の体の具合を確かめた。
思考─正常 肺─正常
視覚─正常 腕─正常
嗅覚─正常 体─正常
聴覚─正常
足─・・・?
瞬間、駆け巡る違和感。
何度も動かし確かめるが・・・。
幾度となく同じ答えが出てくる。
足─正常
( 奴等に撃たれたはずの足が治っている? )
浮かぶ疑問に答えられる訳も無く、体に巡らしていた視線を
再び、近くにいる人間に向けた。
「 おっ。起きたみたいだな。 」
「 っ?! 」 ( 気づかれたっ!? )
「 体痛むところないか? 」
何の警戒も無く問いかける人間に狐疑逡巡した後
───こくんっ
と頷いた。
「 お腹空いてるだろ?─って、狐って何食べるんだ? 」
私に向けていた視線を途中で虚空に巡らし思考する人間を
興味と怨嗟の入り混じった瞳で観察した。
「 ・・・。 」 ( 妖狐と気づいてないのかしら? )
暫く、観察すると相手に敵意の無いことを
私の直感が伝える。
僅かの間、自身の内へと向けていた思考は
観察していた人間の声によって打ち切られた。
「 考えても仕方ないな。カップうどんしか家にはないし・・・ 」
不意に、『カップうどん』という物体へと目を向けた私は油揚げと
でっかくテカテカに輝く文字に心を奪われ空唾を飲み込んだ。
───んくっ。
その音に目ざとく気づいた人間は
「 ん? 」と投げかけ、私の視線とかっぷうどんを交互に見た後
「 油揚げが好物なんかっ! 」
と、どこか納得した感じに言葉を漏らし
私に無防備な笑顔を向けた。
その笑顔に呆然としながらも頷く私に
「 待ってろよー。今作ってやるからな 」
と、語りかけ嬉々とした表情でカップうどんにお湯を注いだ。
5分経過。
「 よし、出来たぞっ。ほれっ 」
そんな言葉と共に受け皿に油揚げを乗せ私へと進めた。
私はその油揚げを注視し、僅かに警戒。
そして躊躇った後でかぶりついたが
「 ギャンっ!? 」 ( 熱いっ!? )
私は転生して初めて食べる油揚げに
──浮かれてしまっていた・・・。
後書き
勢いのあるうちにどんどん書いてしまおうと
調子にのってる水稀です。
今回はフォクシー・ガール
での話しを私なりに書きつのったのですが
どうでしょうか?
楽しんでいただければ幸いですが・・・。
で、早速謝罪です。
前回 次話で横島がいった誤魔化せたか?という言葉の
意味を今回書くことができませんでした orz
次こそは書いてみせると意気込んでますので
更に暖かい目で見守ってやってください。
>>拓坊様
あたたかい言葉ありがとう御座います。
これから、どんどん他の作者様と違った展開を書いて
いきます(いきたい) ので 今後とも見聞よろしくお願いします^^
では、 今回はこのくらいにして
皆様 今後とも よろしくおねがいしますっ!!