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▽レス始

「GSルシオラ?恋闘編!!第12話(GS)」

クロト (2005-12-01 20:08)
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 その日事務所に帰ってきたおキヌはひどく機嫌が悪かった。
「どうしたのおキヌちゃん? せっかく優勝したのに」
 不思議そうに訊ねる美神に、
「だって、クラスのみんなが『横島さんとルシオラさんってつきあってるの?』って聞いてくるんですよ? もー信じられません!」
 あの模範試合で横島とルシオラは六女生徒にかなり強い印象を与えたらしい。2人の同僚であるおキヌにクラスメイトがいろいろ訊ねてきたのだ。
『強い』とか『すごい』という表現で横島が褒められるのはおキヌにとっても嬉しい事だったが、その質問は勘弁してほしかった。
 答えはYESだから、そう答えた。
 その度に、胸の奥が痛んだ。
 覚悟はしていた。2人の関係を知っていて、それでも彼のことが好きで、諦めたくなくて、だから告白したのだから。
 だからそれは許せるとして、おキヌと横島がつきあっているのかと聞いてくる者が1人もいなかったのはどういうことか?
 その理由も分かっている。除霊スタイルの違いと、何より――実力の差。
 分かってはいる。でも、それで割り切れるかと言えばそうでもないわけで。
「いいかげんその話やめてくれないと復讐者になっちゃいますよ。くすくす笑ってごーごーってしちゃいますよ? 教室真っ黒にしちゃいますよ?」
 などと口が勝手に喋ってしまいそうになったので、慌てて帰って来たという次第なのである。
 美神はそこまで察することはできなかったが、とにかく話題を変えるべきだと理解して、
「ま、まあ落ち着いて。それよりあんたの給料のこと、まだきちんと話してなかったでしょ。横島クン達が戻って来たら一緒に話すからお茶でも入れてくれない?」
「え、お給料ですか?」
 属性『天然』を持つだけあってころっと表情が普段通りに戻るおキヌ(金欲によるものではない)に美神は少々脱力しつつ、
「そ、おキヌちゃんも生き返ったんだから日給30円ってわけにはいかないでしょ。横島クン達にも関係する話だから、待ってる間にお茶でも入れてくれない?」
「はーい」
 ……。
 やがて買い物を頼んでいた横島とルシオラが戻って来ると、美神は3人を集めて、
「……そういうわけで、おキヌちゃんも生き返ってネクロマンサーなんて希少スキル会得しちゃったし、横島クン達も成長したから、これを機会にお給料改定しようと思ってね」
 彼女が示した新待遇は、横島(ルシオラ込み)もおキヌも時給1000円、単独で仕事をした場合は今まで通りの歩合を出す。
 ただしおキヌが単独で仕事を行うことはできないので、横島に任せる分におキヌが同行することは許可する。その場合ギャラは山分け。
 所内にいる時と現場で除霊する時では労働強度が全然違うのだが、彼らの給料はそれを均した額ということになっている。
「横島クンには不利になった面もあるけど、収入が減らない程度には仕事回すから勘弁してちょうだい。おキヌちゃんもこれで学費払えるでしょ?」
 美神にしては珍しい程の気の回しようだが、霊波刀と文珠の使い手プラス宝具持ちの上級神魔、世界で4人目の死霊術士を雇う条件としては非常に安い。
 幸いにして3人とも自分達のそういう金銭的価値については無頓着なので、
「み、美神さんが俺の時給を1000円も……こ、これは結婚の申し出としか」
 と例によってル○ンダイブをかましかけた横島だが、これも例によってルシオラが取り押さえて、
「いーかげん使い古されたネタはやめなさい」
 見れば美神もおキヌも無視している。横島は悲しくなって、
「うう、いいんや、どーせ俺なんて……」
 と涙でのの字を書き始めたが、誰も見てくれないのですぐ止めた。
 ちなみに後日おキヌが得た情報では、六女における外部講師の人気度は、今のところ美神>西条>横ルシ=カップル扱い>唐巣その他という順番なので、級友がライバルになる可能性は低いが、
(でも油断はできませんよね。私もまだまだ諦めませんから!!)
 と夜空に輝く六女の星に誓うおキヌだった。

「何だこの契約書、違約時の罰則事項がずいぶん多いな。それに政府の仕事なのにオカGが関わってねえのか?」
「そもそも除霊の対象が書いてないわ。準備のしようがないじゃない」
「お金は高いですね」
 それが移動中の車の中で今回の仕事の書類を読んだ所員3人の反応。どれも言外に異議を唱えるものだった。
 美神も不審はいだいたのだが、報酬の額に目がくらんで一発OKしてしまったのだ。
 そういうわけで、美神達は現在とある山の中で、その正体不明の妖怪を退治すべく行動していた。
 美神自身は自衛隊のチームと一緒に、何故か乗馬スタイルで馬に乗って妖怪を追っている。横島・ルシオラ・おキヌの3人は林の中の一角につくられた捕縛用結界のそばに待機していた。
 そこに横島の携帯が鳴る。
「何だ、こんな時に?」
 とは思ったが、ルシオラが一緒なら大抵の敵は問題ない。ポケットから出して応対した。
「……西条? 何でお前がこの番号知ってやがる」
「すまないが大事な話なんだ。今そこに自衛隊のチームはいるか?」
 電話の向こうから聞こえる声は小さいが、何やら切羽詰った様子は横島にも分かった。からむのは止めて、
「……いねえよ。俺とルシオラとおキヌちゃんだけだ」
 すると声はほっとした様子になって、
「そうか、それは良かった。ルシオラ君に代わってくれないか」
 普段の横島なら「てめえ俺のルシオラに手ぇ出す気か?」と因縁をつけている所だが、そういう用件でないのは明らかだったので、
「ああ」
 と目の前の少女に携帯を渡す。不思議そうな顔でそれを受け取ったルシオラに電話の向こうの西条は、
「すまないが君に頼みがある。今回追われているのは『九尾の狐』の幼生だが、殺さずに逃がしてやって欲しいんだ」
 政府は妖狐を殺そうとしているが、それでは妖狐に『人間は敵』という印象を与えてむしろ危険を増大させてしまう。オカルトGメンは反対したが政府は代わりに美神を雇ってしまったのだ。
 しかしそれは逆に好都合。ルシオラなら自衛隊をごまかして妖狐を助けることは可能だと西条は考えたのである。
「……了解。実物を見た上で判断するわ」
 人界の偉いさんってみんな短絡的なのね、とルシオラは小さくため息をついた。そう言えば『前』にも美神を暗殺しようなどという愚行を冒していた。
『悪い』ではなく『愚か』。魔神の獲物を横取りしてただで済むと思っていた辺りが。
「どんな話だったんですか?」
「今回の妖怪が『九尾の狐』で、それを逃がしてやって欲しいんだって」
「九尾って、あの有名な?」
 平安時代の玉藻前、殷の紂王の妻妲己、天竺では華陽婦人として現れた大妖怪にして絶世の美女である。おキヌでさえ知っていた。
「どうするにしてもまだ幼生だから恐くはないわ。私に任せて」
「分かった」
 その打ち合わせの数分後、トランシーバーに美神から連絡が入った。
「そろそろ出番よ、妖狐が追われてそこに出てくるわ! 結界に捕らえたら止めをさすのよ。私もすぐ行くわ!」
「……了解」
 横島は通話を切るとルシオラを顧みて、
「もうすぐ来るぞ」
「ええ」
 ルシオラが頷いて身構える。そばの茂みがガサリと動いて1つの影が飛び出してきた。それは美神達の狙い通り結界の罠に嵌ろうとしていたが――
「……捕まえた」
 素早く反応したルシオラが片手で掴み、麻酔をかけて気絶させる。代わりに同じ姿の光幻影をつくって結界の中に放り込んだ。
「ヨコシマ!」
「分かってる!」
 横島がリュックを降ろし、気絶した妖狐を中に入れる。
「これでよし」
 という経過で、横島は現れた美神と自衛隊員の前で『妖狐』をお札に吸印して燃やしてみせた。
 わざわざ光幻影を使ったのは始末する所を自衛隊員に見せておくためであり、お札を燃やしたのは証拠隠滅が目的である。
「……よくやったわ、3人とも」
 あまり面白くもなさそうな顔つきでそう言って横島達をねぎらう美神におキヌがちょっと不満そうに、
「でもその話からすると、別に退治しなくても良かったんじゃ……?」
「ま、まーね。でも途中でやめたら莫大な違約金とられちゃうし、あんた達がトドメさしたんだから私は悪くないってことで……」
「それで俺達にやらせたんかいッ!?」
 と横島が叫び終える前に、美神の喉元に刃物が突きつけられていた。
「美神さん……あなたも教育してあげましょうか。主に剣で」
 永久凍土よりも冷たい視線が突き刺さる。美神は思わず両手を挙げて、
「だ、だってしょうがないじゃない! 経済がこんなで政局もややこしい時期だし、政府も神経過敏になってんのよ。どの道あれだけいじめちゃったら私達は妖狐の敵なんだもん、やるしかなかったのよ!
 手負いのまま逃がす訳には行かないでしょ?」
「……そうね。ま、いいわ」
 実は妖狐を助けていた分『引け目』があったルシオラはあっさり剣をひいたのだった。

 その夜、横島のアパートで。
 妖狐の傷を文珠で治し、ついでに洗面台で洗ってやったあと起こしてやったのだが。
「シャーッ!」
 狐は部屋の隅で唸り声をあげるばかりで、近寄ろうとすると引っ掻くので3人とも手がつけられなかった。しかしどうしても懐かないとなると、それなりの処置を取らねばならなくなる。
「でも弱ってそうですよ、何か食べさせてあげないと」
「んー、俺もそう思うんだけどな」
「大丈夫ですよ。ほら、油揚げ買ってきましたから!」
 ここに来る前にスーパーに寄って食材を買い込んでいたおキヌがここぞとばかりに自己アピールする。
「あ、そう言えば妖狐の好物だって聞いた事あるわね。つくってくれる?」
「ええ、まかせて下さい! せっかくだからみんなで夕ご飯にしましょう」
「そうだな、頼むよおキヌちゃん」
 …………。
 ……。
 やがて夕食の準備ができ、おキヌは油揚げを皿に入れて狐の前に置いてやった。
 狐は右往左往した後、とうとう誘惑に負けて油揚げを食べたのだが、
「これで仲良くなれるかも……」
 と喜ぶおキヌを睨みつけて、
「な……ナメるんじゃないよっ! このままじゃ妖力がなくなるから、あえて食べてやっただけなんだからっ!!」
 と人間の言葉を喋り、中学生くらいの女の子に変身したのだった。

「「化けた!?」」
「人間なんか、大ッ嫌いだ!」
 真っ赤な顔で叫ぶ少女。まだ幼いが顔の造形は整っており、将来は非常に有望であった。ポニーテールが9つもあるのが特徴的だ。
「殺してやるっ!」
 と爪を鋭く伸ばして3人に飛びかかろうとしたが、その瞬間ルシオラの眼光を受けて動きが止まった。
 別に何か術をかけられたとかではなく、獣の本能で力の差を感じて自分からの攻撃を放棄したのだ。
「あ、あんた何者よ……」
「私? 私のことはルシオラって呼んで。あなたは?」
 聞きたかったのはそういう事ではないのだが、名前を聞かれて仕方なく、
「……タマモ」
「へえ、それじゃあの玉藻前の生まれ変わりっていうこと?」
 何気なくそう言ったルシオラに、タマモと名乗った少女は急に柳眉を逆立てて、
「……そうよ。玉藻前と呼ばれた前世のことはほとんど覚えてないし恨んでもいないけど、今の私をあんな目に会わせるなんて許せない!」
 少女の全身が輝き、3人に幻術をかける。
 横島が突然服を脱いで畳の上で泳ぎ出し、おキヌは熱心に応援を始めた。
「くすくすくす……」
 その様子を眺めながら得意げに嘲笑を浮かべるタマモ。しかし肝心のルシオラには幻術は効いていなかった。
 ひょいと立ち上がって2人の頭に手を置くと、麻酔をかけて眠らせる。風邪をひかないよう横島の体に服をかけて、
「一応助けてあげたのに、何でこんなことするわけ?」
 タマモはルシオラの質問に答えるよりも、己の術を破られた事の方が気になって、
「な、何であんたには私の幻術が効かないの?」
「私は『心眼』だから」
「へ? 心眼って……あの心の目の?」
 妖狐がさーっと青ざめる。もし事実なら敵手としては相性最悪。なぜってソイツを術で騙すことは絶対不可能なんだから――!
 まだ狐火という手段はある。しかし『ここで』それをやったら最期だ、という事も理屈抜きで承知していた。
 ルシオラはそんなタマモを見てため息をついて、
「そんなことなら王様になんて近づかなきゃ良かったのに」
「は?」
 いきなり妙なことを言われてタマモの目が点になる。
「妾になるならその辺の大商人くらいにしておけば良かったのよ。そうすれば軍隊に追われたりこんなに有名になったりしなかったのに」
 九尾の狐はさほどの悪事はしていない。妲己の悪行とされるものも周王朝の捏造であるものが多いのだ。が、そもそも『傾国』の美女が権力者の後宮に入ること自体がすでに周囲にとって禍因なのである。
 誰が悪いということではないが……。
「……そ、そんなこと私に言ったって分かんないわよ!」
「そうね。そんなことどうでもいいわ」
「は?」
 自分から言い出したくせに本当にどうでも良さそうなルシオラの言葉と共に、突然部屋の温度が3度ほど下がったのを感じてタマモが身をすくませる。
「いま問題なのは、おまえがヨコシマに手を出したという事よ」
「……はあ? って何!?」
 室温低下、瘴気濃度上昇中。デンジャーゾーンです。
 妖狐の霊感が激しく危機を訴えるが、体は凍ったように動かない。
 ルシオラがゆっくりと近づいてきた。


「部屋のすみでガタガタ震えて命乞いする心の準備はOKかしら?」
「ひええええ!?」


 命乞いしたって許さないでしょアンターーーっ!と叫びつつ逃げ回り、しかも実際に部屋の隅に追い詰められてしまうタマモ。
「質問よ。右の拳で殴るか左の拳で殴るか当ててみなさい」
「そのネタは知ってるわよ。両方とかオラ○ラとか言うんでしょ?」
「あら、よく分かってるじゃない」
「きゃーーーっ!」
 無数の拳が雹のように降ってくる。タマモは思わず両手で頭をかかえてしゃがみこんだ。が、何故か痛みはやってこなかった。
「……あれ?」
 顔を上げて周りを見渡すと、目の前にいた筈のルシオラが、いつの間にかちゃんと服を着た横島のそばで砂糖水を飲んでいる。
「……?」
「今のは私がつくった幻影よ。気に入ってもらえたみたいね」
「なっ……」
 タマモの顔色が青から赤に急変する。九尾の狐ともあろう者が人間(?)ごときに化かされるなど、何と言う屈辱!
 しかしルシオラは平然と、
「化かされる方の気持ちも分かったでしょ。おまえは殺されたことになってるから、何もしなければ狙われないわ。どっかの田舎でおとなしくしてなさい。せっかく助けてあげたのにまた退治されたんじゃつまらないから」
「……」
 それを言うためにわざわざこんな手の込んだ事をしたっていうの?
「……フ、フン。今日のところは引き分けにしといてやるわーーっ!」
 何だか気恥ずかしくなって、タマモは夢中で部屋のドアを開けて走り去ったのだった。


 ――――つづく。

 むう、ルシオラ独壇場……。
 まあ、主人公はルシオラだし(ぉ
 最近面白いと言ってくださる方が多いので嬉しいです。
 ではレス返しを。

○無銘さん
>ネタ技
 今回は相手がタマモなので行使するところまではいきませんでした(^^;
>この話の横島君は、評価を下げる行動(トランペットとか覗きとか)を一切していません
 そうですね、してないと言うよりできなかったのですがw
 1回ではファンまではできないかな?

○ゆんさん
>横島とルシオラなら雑魚だったかな?
 横島はアルト○アコースですしルシは上級魔族ですからね〜。
 当然の結果です。
>自覚して尚、発言はヤバイでしょ!!横島!!!
 自分が作中の存在であるという自覚が足りないです、全く(ぇ

○怪猫さん
>クリリ〇のことかぁーっ!?
 ネタはやれんと言っていたので、たぶん違うでしょう(ぉ
>気になったのが桁外れの強さを示してしまった横ルシへのフォローですが
 憧れの美神おねーさまの弟子ということで何とかなったみたいです。

○貝柱さん
>いっそのこと「壊れたアシュ様」で結界ごとドッカーンってぶっ飛ばしちゃって
 結界の修繕費を美神に請求されるのでまずいですw

○花翔さん
>このまま行けば横島のファンクラブできたりしてwww
 この調子であと何回か行けばできるかも……。
 おキヌちゃんが恐いですが(^^;

○拓坊さん
>横島ももうネタ技に染まっちゃってるんですね
 師匠に染められましたw
>横島のほうは確実にレベルアップしてるし、今どれ位強いんだろう?
 うーん、文珠なしでも下級神魔の防御の弱いタイプなら先手を取れば倒せるといった感じでしょうか。
 霊力自体は横島とおキヌと弓はほぼ同じ(約60マイト)なのですが。
>次回、どんなネタがでるか期待して待ってます(笑)
 あう○(_ _○)

○遊鬼さん
>いつもこうだと誰も馬鹿にしないのに(w
 そうですねぇ、しかしそんな横島は横島じゃないとか言われそうですしw

○わーくんさん
 はじめまして、宜しくお願いします。
 ネタ関係はFA○E以外は分からなくても文意は通じるのではないかと……。
>発動されたら(横島君の)世界が闇に包まれちゃいますからね
 何しろ最強のスキルですから(^^;
>って、いつも真剣な状況だっけ?
 現場は真剣勝負なんですからその通りなんですが、問題は横ルシの場合ネタ技を使った方が強いということで<マテ

   ではまた。

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