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▽レス始

「GSルシオラ?恋闘編!!第10話(GS)」

クロト (2005-11-28 18:37)
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「1年生の部第1試合! 1年A組対1年B組!!」
「「お願いします!」」
 互いに一礼し、いよいよ最初の戦いが始まる。
「クラス対抗とはいえ、ここでの成績は将来とても重要よ。私は勝ちます! くれぐれも足手まといにならないで頂きたいわね」
「誰に向かって言ってんだ、てめえ……!!」
 弓と一文字はしょっぱなから険悪ムード全開である。特に弓は気位が高く、仲間の2人など頼りに出来ない、自分だけで勝ってみせると思いつめていた。
(弓さん……)
 どうしてそんなにかたくななんだろう、とおキヌは胸がチクリと痛んだ。いくら強いからって1人で勝ち抜くなんてできるわけがないし、それじゃ『団体戦』の意味がない。
 しかし何と言っていいか分からない――そんな自分がもどかしかった。

 同時刻、会場内に設けられた審査員席には、
「おキヌちゃんがんばれーー!」
「うおーっ、じょしこーせー、コスプレねーちゃーん!」
 公私混同しておキヌに声援を送る美神と、公の立場を完全に忘却して私欲のみを追求している横島の姿があった。後ろの席にいた六道女史があきれて、
「コスプレじゃありません!」
「へ?」
「あれは霊衣というものです。あれを身にまとう事で精神を引き締め、戦いに向けた心構えをするのです。また物によってはそれ自体に霊能を備えたものもあるのです」
 感情が昂ぶっているのか、女史が一気にそこまで言い終える。横島は不思議そうに、
「あ、そうなんスか……なら何でみんなバラバラなんスか?」
 弓は僧兵のような服で一文字はレ○ィースそのもの。A組の3人も平安貴族風(村松幾乃)、仮面にレオタード(上田真紀)、普通の体操服(新開春海)、と全く共通点がない。同じ授業を受けている筈なのにこれはどうした事か?
「あのコ達は家伝の術を習ってるとか、自分なりに得意なやり方を見出したコ達なんですよ〜〜〜。特に1年だと他のコ達より強い場合が多いですね〜〜〜」
「なるほど……」
 1年では学校で習う事もまだそう多くはない。ならば元々何かを持っていた者の方が有利なのは当然だろう。
「とにかく、試合をちゃんと見て下さいね〜〜〜」
 冥子のパートナーとしてはともかく、学院の教師にはできませんね、と女史は内心で横島を採点していたがもちろん当人はそんな事に気づく筈もなく、
「は〜〜〜い」
 と女史の真似をして間延びした口調で返事をすると、言われた通りおキヌたちの試合を注視するのだった。

「よーし、それじゃ行くでー! 始め!!」
 鬼道が試合開始を宣言すると、記録係の生徒がストップウォッチを押し、ゴングを鳴らした。
 すると一文字がいきなり、
「先鋒行かせてもらうぜ!!」
 と結界の中に飛び出した。対するA組の先鋒は真紀。
「ファントムの仮面、力を……!」
 かぶった仮面が光り、霊圧が急激に上昇する。どうやら一時的に潜在霊力を引き出すもののようだ。
「うおらぁぁぁっ!!」
 委細構わず、一文字が手に持った角材に霊力をこめて振り下ろす。それを真紀は自らの腕で防いだ。素人なら腕が折れかねない威力なのに、真紀は無傷だった。相当のパワーである。
 しかし体術の方はケンカ慣れした一文字の方がはるかに上で、すかさず横に回りこむと真紀の顔にパンチを入れた。
「きゃあっ!」
「落ちなッ!」
 クリーンヒットを受けてよろめき後退する真紀に一文字が霊波砲を連射する。
 ドムドムッ!
 何とか防ぎはするものの、あっという間に結界間際まで押しやられる真紀。
「とどめだ!」
 追いかける一文字、だがそれは真紀の罠だった。彼女はどうせ押されるならと自軍のコーナーへ退いたのだ。すかさずタッチして幾乃と交代する。
「――っ、バカ! ほんとに単純なんだから……!」
 弓は気づいて注意しようと思ったのだが間に合わなかったのだ。
 結界内に飛び込んだ幾乃が大きな扇を開き、一文字を思い切りはたいた。
 パアアン!
「ぐあっ!」
 一文字がその一撃で反対側まで吹き飛ばされて倒れこむ。それでも闘志は衰えず起き上がったが、後ろから弓がその肩を掴んだ。
「交代よ! おどきなさいっ!!」
 一文字をいたわろうとすることもなく、幾乃に突進する弓。
 普段はもっと冷静なのだが、自分を無視して勝手に先鋒になった一文字に、そして(彼女主観で)自分よりレベルの低い2人に付き合わされている状況に腹を立てていたため、とにかく自分が勝負をつけようとがむしゃらに突っ込んでいったのだ。
「その程度の術、私には通用しませんッ!」
 迎え撃ってきた幾乃の扇を右腕で受け止め、続けて左手の薙刀で強引に床に叩きつける。
 もちろん全ての動作にはフルパワーの霊力がこもっており、倒された幾乃はそのまま5カウントまで起き上がれなかった。
 ゴングが鳴り、B組の勝利が宣告される。
「み、みんな何て強いの……こ、こんなのついてけない……」
 その迫力とレベルの高さに思わず弱音が出たおキヌだったが、
(でも、確かにみんな私より強いけど、横島さん達に比べたら……)
 そう、自分が美神事務所にきて以来ずっと見てきた数々の戦い、そして毎回文珠《硬》を使ってもらってまでした組み手に比べればたいした事はない。
 だから――怯えなくていいんだ。

「な、何だぁ、レベル高けぇ……?」
「さすがに全国から選りすぐられた連中だけあるわね。GS試験合格者の3割がここの出身なのよ。将来ライバルになるかと思うと複雑だわね」
 横島の嘆声に美神が答える。が、彼が感じ入ったのはそういう事ではなかった。
「こりゃ他の試合も見とかないとな。1番胸が大きいコの試合はどこで……」
「「内容を見なさい内容をっ!」」
 真顔で六道女史に訊ねる横島に美神とルシオラのダブル突っ込みが炸裂する。頭蓋骨を左右から殴られた横島はそれでも何故か平気な顔で、
「み、見てましたって。えーと、A組はともかくB組は作戦とかチームワークとか全然ダメだったっスね。あれじゃちょっと強い敵が来たらすぐやられちゃいますよ」
「あら、ちゃんと見てたんだ」
 ちょっと意外そうな顔をした美神にルシオラが続けて、
「まあ地力に差があったからB組が勝ったけど、特にあの弓って子かなり無茶したわね。わざわざ腕で受けてダメージかぶる事なかったのに」
「でもそれで勝負つけたんだから別にいいんじゃない?」
「決勝戦ならね」
「……そうね」
 まだ試合はあるのだ、なるべく傷を受けずに勝ち進む方が良いに決まっていた。美神は頷きながらも手元の紙にペンを走らせる。後で講評をしなければならないのだ。
「……A組のコ達はどうでしたか〜〜〜?」
 美神達がB組の生徒の話ばかりするのが不満になった六道女史が話に割り込む。美神が振り向いて、
「そうですね、試合運びなどはうまく考えていたと思いますわ。それでも負けたのは単に力が足りなかったと言うしか……」
 ある意味もっとも辛辣な意見だが、美神としても他に敗因を見出せなかったのだから仕方が無い。女史の方も同感だったので沈黙した。

 各学年の第1試合が終わった後、昼休みになった。
 生徒達はおのおの昼食を楽しんでいる。しかし横島は悩んでいた。
 それも、己の存在意義にかかわる重要な問題だ。
 漢として戦場に出るか、負け犬として安全な暮らしに甘んじるか。
 今まさに、横島は究極の選択をしいられていたのだ。
 具体的には、昼休みになった今ナンパや覗きをしに行くか、おとなしく美神達と一緒にいるかということなのだが。
 彼の煩悩回路は、迷うことなく前者を選んだ。しかし彼の隣には有能無比の番人が片時も離れず控えている。
 もし逃げたら今日の修行は比○清○郎コースだと言われていた。それは刃引きとはいえ容赦なく剣でぶっ叩かれる過酷なコースなのだ。いくら横島でも下手すれば死ねる。
 そしてもう1つ、この前見たおキヌのステータス表。『この世全ての黒』あれだけは発動させてはいけないと横島の本能が最大音量で告げまくっているのだ。
 それでも脱走してパライソを目指すか、今日は真面目にしているか――
 それが今の横島の脳裏を占める全てであった。
 そして出た結論は。
「俺は漢や! 漢はフロンティアを目指すんやーー!!」
 というわけでトイレと称して席を立ち、教員用の男子トイレに入る。当然ルシオラはそこには入っていけないので入り口で待っていたのだが、いつまで待っても横島は出てこない。
「逃げたわねーーーーーー!」
 横島はトイレの窓から逃走したのだ。そう言えば前にもこんな事があったような、と呟きつつルシオラは猛追撃を開始した。

「さて、どこから回るかな」
 後のことは後で考えるとして、とりあえず今は女子高巡りを堪能することにした横島だが何故か校舎裏の辺りに辿りついていた。
「こんなとこにいても仕方ねーよなあ。もっと人がいそうな所に行かないと。更衣室とか」
 と踵を返しかけたのだが、向こうから女の子が罵りあうような声が聞こえる。
 興味本位でそっと近づいてみると、
「……本当は少し疲れてるんでしょう?」
「そんな事あなたに心配される必要ないわ! いいこと!? 勝ちたいなら私1人に任せなさいっ!」
(おキヌちゃん!?)
 それが知り合いの声だったため、つい身を乗り出してしまう横島。こちらに顔を向けたおキヌと目が合ってしまったので、仕方なく自分から声をかけてみることにした。
「やあおキヌちゃん、何かあったの?」
「あ、横島さん……」
「え? 美神おねーさまの付き添いの?」
 立ち去りかけていた弓がぎゅんっと振り向いて横島に声をかける。横島に対してはおキヌに対するのと同様非好意的なのだが、だからこそ無視はできなかったのだ。
「付き添い? いやむしろパートナーだよ。公私ともの、ね」
 フッ、と鼻で笑いつつ前髪をかきあげる横島。妄言もここまでいけば立派なものである。
 というか自分に恋の告白をした少女の目の前でこんな事ができる辺り、よほどの大物か、あるいは何らかの深慮遠謀でも秘めているのか……。
「というわけで、どうだい。お昼でも食べながらいろいろ語り合ってみないか? おキヌちゃんの知り合いなら遠慮はいらないよ」
「バカ言ってないで戻るわよヨコシマ!」
 そこへ早くも追いついたルシオラが背後からダッシュで突っ込みを入れる。後頭部を強打されて前のめりに倒れた横島だが3秒後には何事もなかったように立ち上がって、
「い、いきなり何するんだルシオラ……」
「それはこっちの台詞よ! 私がお弁当つくってきたの忘れたの?」
「え? ああ、そう言えばそうだったな。すまん」
 今朝彼女がしていた事を思い出して申し訳なさそうに謝る横島。
 おキヌに向き直って、
「そーゆーわけだからまた後でね。応援してるよ」
「え、あ、はい。それじゃまた後で」
 おキヌはついて行きたかったがそうもいかず、手を振って2人を見送る。しかしこの一連の推移に納得できない者が約1名いた。
「ちょっとお待ちなさい。あなた、横島さんとか仰いましたわね」
「え、俺?」
 自分の顔を指さす横島に弓は見下した視線で、
「1つお伺いしたいんですが、あなた本当にあの美神おねーさまの助手なんですの? どこからどう見てもバカにしか見えませんが」
「……」
 まあ客観的に見ても彼女の言い分はもっともなのだが、初対面の相手にそこまで言われてさすがの横島も鼻白む。しかしケンカになりそうだと思ったおキヌが割り込んで、
「横島さんはほんとに美神さんの助手ですよ。今朝だってそう紹介されてたじゃないですか」
「ああ、それは確かに聞いたけどさ。でも実際あまり強そうには見えないし」
 めずらしく一文字が弓に同調した。もっとも横ルシの実力はワルキューレでさえ見抜けなかったのだから、これは当然の意見である。
 おキヌはさらに何か反論しようとしたがルシオラが手で止めて、
「気にしないでおキヌちゃん。私達は別に強く見られたいなんて思ってないから。
 でもちょっとだけ言っておくわね。あなた達、表面上の見掛けや態度だけで相手を判断してたらいずれ足元すくわれるわよ。弱そうな外見でとんでもない隠し札持ってる妖怪なんて珍しくもないんだから。
 まして、いがみ合いを戦いの中にまで持ち込むようじゃいつ殺されてもおかしくないわよ。それじゃ、お騒がせしてごめんなさいね」
「「……」」
 ルシオラの言葉には体験した者のみが持つ重みがあった。弓も一文字もとっさに言葉が出ず、2人が去っていくのを黙って見送る。
 やがて弓が重い口を開いて、
「……一文字さん」
「な、何だよ」
「あそこまで言われては黙っていられないわ。お互い気に入らないところもあるけど、今日だけでも休戦ということにしない?」
 と右手を差し出す。
 弓は絶対自分からは折れて来ない、と思っていた一文字は驚き、しかし会心の笑みを浮かべて、
「おうよ、あいつの鼻を明かしてやろうぜ!」
 と弓の手をがっしと握り返したのだった。
(……ありがとうございます、ルシオラさん)
 それを眺めながら心で恋敵にお礼を述べたおキヌに、
「それでさ、あの横島ってやつホントの所はどうなんだ?」
 やっぱり気にはなっていたらしく、一文字がそう訊ねてくる。
「あ、はい、すっごく強いですよ。GS資格も持ってますし。普段はああですけど、いざって時は本当に頼りになるんです」
「そっか。まあホントに弱っちいだけだったらGSの助手なんてつとまるわけないもんな」
 からからと豪快に笑う一文字だった。

「あそこまで言って良かったのか? 俺達一応審査員なんだから、おキヌちゃん達だけ肩入れしちゃまずいだろ」
 横島も知能が低いわけではない。ルシオラの台詞が単に彼をかばったものではない事くらい理解していた。一応自分も似たような事を言おうと思ってはいたのだが……。
「まあいいじゃない、ヨコシマだっておキヌちゃん達に勝ってほしいんでしょ? はい、あーん」
「んー、そりゃそうなんだけどさ。って、それ恥ずかしいから止めてくれ」
「だーめ、逃げた罰なんだから。デザートもあるからたくさん食べてね」
「……」
 どうやら逃げ場はないらしい。○古○十郎コースよりはマシだ、と横島は諦めてルシオラが差し出してきた卵焼きをぱくつくのだった。
 ちなみに、味は、いい。

「六道女学院クラス対抗戦、1年生の部2回戦! 1年B組対1年D組!」
「「お願いします!」」
 挨拶の後、弓はやはり前に出たが、続けた台詞は先ほどとは様相が違っていた。
「私はあなた達よりは守りも強いから先に出るわ。状況を見て交代するからしっかり見てるのよ」
 自分達はD組代表の能力を知らない。それを探るには猪突猛進型の一文字やネクロマンサーのおキヌより自分が向いている、と冷静に判断したのだ。
「……おう、任せたぜ!」
 一文字も今回は張り合おうとはしない。むろんおキヌにも異存はなかった。
 D組の先鋒は幽○道士っぽい衣装の娘、東祐子。
 鬼道の合図と同時に素早く札を取り出し、
「行け! イー、アル!」
 その命令に応じて2枚の札から1鬼ずつ小さなキョンシーが現れ、空中を翔けて弓に襲い掛かる。
「――!」
 しかし弓もこれ位では慌てず騒がず、薙刀を振るって防戦する。そこへ祐子はさらに札を2枚出して、
「サン! スー!!」
 と同じキョンシーを2鬼追加した。
「なっ、4鬼も!?」
 いくら弓が長年修行に明け暮れた優秀な術士といえども、腕が傷ついた状態で4鬼を同時に相手では分が悪い。奥の手もあるが、まだここでは見せたくなかった。
(よし、ここは一旦交代を……)
 1回戦のときの弓なら、意地を張って戦い続けていただろう。しかし今の彼女はむしろルシオラへの意地の方が勝っていた。ここで交代せずにもし負けたらあまりにも恥ずかしすぎる。
(どっちに……ここは、氷室さんね!)
 祐子が使役しているのは「キョンシー」つまり死者である。ならばおキヌは彼女の天敵になる筈だ。
 4鬼の一斉攻撃を片手をついてのバック転でかわし、自軍コーナーに駆け戻っておキヌにタッチする。
「頼んだわよ……ネクロマンサー!」
 それだけ言って結界の外に出た。自分の考えはそれで伝わった筈だ。
「はい!」
 弓が仲間と助け合える心境になったことを心から喜びつつ、彼女の言葉通り笛を出して結界内に入る。
「逃げたわね。でもどっちにしろ同じよ! すぐ終わらせてあげるわ!」
 祐子が弓にしたのと同様、4鬼のキョンシーを操っておキヌを襲わせる。しかしすでに笛を構えていたおキヌの方が早かった。
 ピリリリリ……!!
 数十もの悪霊を一気に浄化した笛の音がひびき渡る。しかし今度の狙いは敵を消し去る事ではなくて、
「う、うそ? 私からキョンシー達を取り上げるなんて……!?」
「ギィーーッ!」
 狼狽した祐子にキョンシー達が襲い掛かった。洗脳ではなく無理やり言う事を聞かせているだけだが、何故かキョンシー達の攻撃にためらいや葛藤は見られない。
「わーーーっ!?」
 こりゃダメだ、と祐子は尻尾を巻いて逃げ出した。コーナーに戻って六女制服姿の娘、早瀬カナと交代する。
「はぁっ!」
 カナは結界に入ると、すかさず破魔札を投げてキョンシー達を倒していく。あっさりと4鬼を仕留め終わると、今度は神通棍を取り出して霊気をこめる。素早く無駄のない動作だった。
「神通棍?」
 美神さんに似たタイプだな、とふと思ったおキヌに、
「正攻法ってのはどんな相手にもオールマイティーなのよ!」
 ドンッ!
 打ち下ろした神通棍の一撃はなかなかの破壊力を持っていた。さらにそのまま斜め上に振り上げる。それをおキヌは何とか避けたが、結界の際まで追い詰められてしまった。
「もらった!」
 カナが突っ込んでくる。なるほどこのままいけばおキヌは薙ぎ倒されてお終いだろう。
(ううん、そんな事になってたまるもんか――!)
 自分を応援してくれている美神と横島、稽古をつけてくれたルシオラ、自分を信じてタッチしてくれた弓、最初にできた友達の一文字。ここでやられたら、そのみんなの気持ちを全部ムダにしてしまう――!

「驕る平家は久しからず、って言えば分かるかしら、おキヌちゃん」
「あ、はい。思い上がった者は早く滅びるっていう意味ですよね」
「戦いでもそうなのよ。自分が強い、これで勝った、っていう慢心や油断が隙を生むの。だから完全に勝負がつくまで気を緩めちゃダメっていうことと、負けそうになっても諦めちゃダメ、っていうことよ」

(確かに私はもう負けそう――でも、だからこそ今早瀬さんは――!)
 後ろ足に力を入れて、全力で前に出る。
「え!?」
 今の今まで押されっ放しだったおキヌが逆に突っ込んでくるなどと考えもしなかったカナの反応が一瞬遅れた。
 その隙にもう1歩前に出る。そこはもうおキヌの間合いだった。


「大○ーグパンチ1号ーーーっ!」
「はぶっ!?」


 おキヌの霊撃拳がカナの顔面をまともにとらえる。年頃の乙女にあるまじき叫びをあげてカナがよろめいた。
(なっ、何で!?)
 何とか倒れずに踏みとどまったカナだが、状況が全く理解できない。確かにおキヌの行動には驚いたが、体術そのものは自分の方が勝っている。かわせると思って避けたのに、それでもクリーンヒットされたのだ。いわば不意打ちのようなもので、身構えた状態で受けるよりダメージは大きかった。

 説明しよう!
 大リー○パンチ1号とは、パンチを放つ前に相手の反応を先読みし、それに合わせて拳打の軌道を調整するという技である!
 非常な精神集中を要するという欠点はあるが、よほどの格差がなければ防御も回避も不可能な必殺拳といえよう。
 本来長期の修練が必要な技ではあるが、おキヌの優れた「霊力の流れを感じる」センスと、ルシオラの「貴い幻想」級の特訓によって、1週間という短期での体得が可能になったのである。
 なお、こうした特訓の内容は秘密というのが常識なのでルシオラもおキヌも語らないが、全身にエキスパンダーのようなギプスを付けたまま料理をつくらせたり、それがちょっと不味いからと言って卓袱台ごと引っくり返したり、タイヤを引き摺ってマラソンさせたりしたのは、それが人々の想いによって神秘にまで高められた術式だからであって、決してルシオラが意趣返しをしようとしたのではない。

(勝負がつくまで気を緩めちゃダメ、ですよね!)
 さらに1歩追いかけて、渾身の右ストレート。美神の突っ込みパンチにも匹敵するその一撃でカナは結界中央辺りに倒れ伏し、KO負けを宣告されたのだった。


 ――――つづく。

 予告通りおキヌちゃんのバトルまで書いたらちょっと長くなりました。1回戦ではおキヌちゃん出なかったのね……。
 なお、A組とD組の代表達の名前は原作で出てこなかったので、適当に命名しました。
 ではレス返しを。

○貝柱さん
>ラブラブ天○拳
 それはむしろ横島だけに習得させたい技と認識されてますw

○ゆんさん
>オキヌちゃん!いったれ!弓をへこましたれ!このころの弓はどうも好きになれないからな〜
 タカビーでしたからねぇ。
 この対抗戦で一皮むけて成長できるでしょうか。

○無銘さん
>○方コースを皆伝したら、ゴーレムだろうがガルーダだろうが一撃で粉砕しそうで
 師匠を超えられても困りますしねぇ。

○拓坊さん
>しかし六道女学院にて、横島がこの後大人しくしている筈がない!
 せっかく脱走してもいい事はなし。
 運命なんでしょうねきっと(ぉぃ

○遊鬼さん
>おキヌちゃんが早々と黒化を発動させてますが(w
 EX全開で使う日が来ない事を作者も祈ってます(ぇ
>やっぱ東方不○コースが受けてみたいかな(笑)
 ある意味師匠の鑑ですからねぇ。

○花翔さん
>後は、美神さんも強くならないんですかね?
 おキヌちゃんが美神さんより強くなるというのはさすがに無いので、彼女も危機感は持たないでしょう。
 というか美神さんが地道に修行する話って聞いた事ないですし(^^;

○kichiさん
 雪之丞もシロもまんま似合いそうですねぇ。
 飛天横島流、九頭狼閃ー!とか。
 ○徹コースの内容は一部明らかになりましたw

○なまけものさん
>おキヌちゃんが弟子4号ってのはルシオラのですよね
 そうです。1〜3号ともそうですが、2号には自覚はないかも知れません(^^;
>アル○リアコース
 防具なしで寸止めなしの組み手ですが、得物は竹刀ですし横島君なので何とかやれてます。
 最上級は……むしろイ○ヤ?

   ではまた。

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