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▽レス始

「GSルシオラ?恋闘編!!第8話(GS)」

クロト (2005-11-24 20:24/2005-11-26 18:17)
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 妙神山から帰って1週間ほどが過ぎたある日。美神事務所は朝から少々うわついた雰囲気が漂っていた。
「やっとおキヌちゃん戻ってくるんですね。何時ごろでしたっけ?」
「もうそろそろ着くはずよ。くす玉の準備はいいわね?」
「バッチリっス」
「――オーナー、おキヌさんが見えました」
 タイミングを計ったかのような人工幽霊1号の注進に、美神はにこっと微笑んで、
「噂をすれば、ね。じゃあここに来てもらってちょうだい」
「了解しました」
 待つ間もなく扉が開く。美神とルシオラがクラッカーを鳴らし、横島がくす玉の紐をひいた。
 ぱんぱんぱーん!!
「「「おキヌちゃん、お帰りなさい!」」」
「……!?」
 いきなりの派手な歓迎にびっくりしたおキヌだったが、すぐ気を取り直して、
「はい、ただいま帰りました……美神さん、横島さん、ルシオラさん!!」
 めいっぱいの笑顔とちょこっとの嬉し涙でそう答えた。

 その後美神はおキヌの体をじっと観察して、
「……ふむ、問題なさそうね」
 うんうんと1人何度も頷く。
「「問題って?」」
 横島とおキヌのユニゾンに美神はぴっと指を立てて、
「今回のおキヌちゃんみたいなケースだと、普通は幽体と肉体が完全に重なり合うのに時間がかかるのよ。その間にタチの悪い霊がそれをかぎつけて寄って来て、肉体を奪おうとする事例があるわ」
「……え!? ってことはおキヌちゃん悪霊に狙われるんですか?」
 横島が青ざめて問い返すが、美神は何を聞いてたの、といわんばかりに、
「だから問題ないって言ったでしょ。まだ完全に重なったわけじゃないけど、幽体のエネルギーが大きいし記憶も持ってるからまず大丈夫よ。ね、ルシオラ?」
「ええ。それにここで暮らすんだから心配ないわ」
 おキヌの住処となる事務所の空き部屋は人工幽霊1号の結界の中である。これほど安全な場所は他にない。
「でももうだいぶ安定してきてるわね。霊力もかなり強いし……横島クンと同じくらいね。中堅GSクラスだわ」
 するとおキヌは急に眉をひそめた。てっきり喜ぶと思っていた美神が不思議がって、
「どうしたのおキヌちゃん、何か気になる事でも?」
「あ、いえ……私は何もしてないのに、ずっと修行してた横島さんと同じっていうのが何だか申し訳なくって……」
「何言ってんだおキヌちゃん。おキヌちゃんは300年も封印の仕事してたんだから、そのくらいのご褒美当然だって」
 肩をすくめるおキヌに当の横島がそう言って背中をたたく。
「……はい! ありがとうございます、横島さん」
 少女は心からの感謝の気持ちをこめて、幽霊時代から淡い想いを向けていた少年に頷き返したのだった。

「……というわけで、我が美神令子除霊事務所もフルメンバーが揃ったわけだけど」
「「だけど?」」
 きょとんとした顔で聞き返す横島とおキヌ。
「おキヌちゃんはあまり現場には連れて行けないかなあ、とね」
 それはそうである。生身の肉体である以上ケガもするし、幽霊のときのように飛んで逃げたりはできない。霊力は強くても実技が素人では危険すぎるのだ。かって美神はバイト入りたての横島を平然と現場に連れて行ったが、それは横島だからこそ可能だったことである。
「え……」
 おキヌが沈んだ表情を見せる。せっかく戻ってきたのに仕事についていけないのでは寂しすぎるではないか。
「それなんだけどね、美神さん。おキヌちゃんにはネクロマンサー(死霊使い)の才能があると思うの」
 ルシオラがそう言ったのは本当に才能を見抜いたのではなく、『前』の記憶によるものだ。しかし『心眼』である彼女が言う分には怪しまれる恐れはない。
「何しろ300年も幽霊やってたわけでしょ? 彼女くらい霊の気持ちが分かる人っていないんじゃないかしら」
「なるほど……そうかも知れないわね。物は試しっていうし、『ネクロマンサーの笛』調達してみるわ」
 ネクロマンサーといえば文珠使いほどではないが超希少な才能である。おキヌはそこまで知らないが妙な見込まれ方をした事に不安になって、
「あ、あの、私そんな才能なんて……」
 あわあわしながら横槍を入れたが、
「心配することないわよ。出来なきゃ出来ないで、普通のやり方勉強すればいいんだから。それもダメなら事務員するって手もあるし。まあ軽い気持ちで試してみなさい」
 あっさり却下されて、次の仕事で試すことになってしまった。

 そしてその数日後。美神からネクロマンサーの笛を渡されたおキヌは、いよいよ現地での実験にのぞむことになった。
 事務所でやってみた限りではうまくいった。美神も横島もルシオラでさえも鳴らせなかったのに、おキヌがかっての自分の姿を思い出しながら吹いてみたところ、みごとに音が霊波に変換されて広がったのだ。
「すごいわ、バッチリよ!」
 美神はそう太鼓判を押してくれたが、それでも実際にやるとなると不安はある。
「えっと、横島さん、ルシオラさん……私、大丈夫でしょうか」
 今回の仕事に美神はついてきていない。普段は横島とルシオラだけでやっている難度の低いものだったし、彼女には別の仕事が入っていたから。
 で、2人がおキヌの護衛という次第である。
「心配することないって。もしダメだったら俺達でやるから」
「そうそう。気楽にやればいいのよ」
「……はい」
 おキヌは覚悟を決めて頷いた。そう、いつまでも躊躇していては、『あのとき』ルシオラがかけてくれた言葉に応えることも、美神や横島の隣に立つこともできないのだ。
 古びた廃屋の扉を開けて中に入る。
「来るなーーー来るなーーー」
「いやだーーー死にたくないーーー」
 入ったとたん、理性をあらかた失った亡霊たちの怨嗟の声が木霊のように響いてきた。しかしパワーは弱く自分から攻撃してくるわけでもない。ネクロマンサーの初陣にはうってつけの仕事であった。
 おキヌはそっと笛を唇にあてて、

 つらいんだね……苦しいんだね。分かるよ、私も幽霊だったから。
 でも、そんなことしてても苦しいのは終わらないよ。もうやめて……みんな、お帰り……。

 ピリリリッ、キィィィィン!!

 はるか高く、どこか物悲しい音色が建物全体に響きわたって、こめられた想いが霊たちを浄化していく。
 それは断末魔の悲鳴を伴いながら。でも、その中には、

「ありがとう……これで、眠れます……」

 そんな感謝の言葉が僅かだが混じっていた。

「「やった(な)(わね)、おキヌちゃん!」」
 緊張の糸が切れてぺたんと座り込んだおキヌを横島とルシオラがささえて起こす。
「はい……これで私もみんなの役に立てるんですね」
「ええ。でもあなたの能力はあくまでも後衛用だから、むやみに前に出てきちゃダメよ」
「あ、はい、それは分かってます。美神さんやルシオラさんの真似はできませんから。でも……」
 とおキヌはゆっくりと立ち上がって、
「これで、私も……ルシオラさんと同じ場所に立てました……」
 そっと横島に抱きついたのだった。

「はえ!?」
「ええ!?」
 事態は急転直下、横島もルシオラも口をぱくぱくさせるばかりで言葉が出ない。しかしおキヌは横島の首すじの辺りに顔をうずめたまま静かに話し続けた。
「今日のお仕事がうまくいったら言おうって決めてたんです。横島さんとルシオラさんが恋人同士なのは知ってます。でも私も横島さんのことが好きなんだって、地脈堰の中で気づいたんです――――」
 いったん言葉を切り、潤んだ瞳をあげて2人をじっとみつめる。
「ルシオラさんも『そう簡単に諦められちゃつまらないんだけど』って言ってくれましたし。だから私、がんばります!!」
「「……!!」」
 横島とルシオラが石化する。だって、いきなりこんなきれいな笑顔、反則以外の何物でもないんだから――――。

(ちょっと塩送りすぎちゃったかしら)
 霊が残っていないかどうか念のため部屋を見て回っている最中、ルシオラはふとそんなことを思った。まさか彼女があんなに積極的になるなんて。それにしてもあの場で横島が陥落しなかったことは本当に僥倖であった。
(ま、それだけヨコシマが魅力的だってことよね。私もがんばらないと)
 と新たなライバルの参入に気合を入れ直したルシオラの前に、またしても例の表示が現れた。
「え、また……?」

  クラス :ネクロマンサー/アヴェ○ジャー
  マスター:横島 忠夫
  真名  :氷室 キヌ
  性別  :女性
  パワー :60マイト
  持続時間:制限なし
  属性  :天然、巫女、癒し系
  スキル :死霊術A+、幽体離脱A、霊視B、ヒーリングD、霊撃拳D、料理B、家事B、黒化EX
  宝具  :ネクロマンサーの笛、妖包丁シメサバ丸、この世全ての黒

「あ、あの……これ、何なんですか?」
「…………」
 ルシオラに続いてそれを見たおキヌが素っ頓狂な声をあげた。横島は何かを諦めたような表情で沈黙している。
 ルシオラが本当に仕方ない、といった様子で、
「……えっとね。ヨコシマに憑いた人外はサー○ァントというものに認定されるのよ。おキヌちゃんは人間だけど元幽霊だし、ネクロマンサーなんて希少クラスだからOKってことなんでしょうね」
「はあ……それで、そのサーヴァ○トになるとどうなるんですか?」
「ヨコシマと霊的な繋がりができて、霊力がなくなったときは供給してもらえるわ。デメリットは特になし」
「よ、横島さんと霊的な繋がりですか……」
 きゃっ、と頬を赤らめたおキヌだったが、
「……でも。この『黒化』とか『この世全ての黒』っていったい何なんですか? これじゃ私すごい腹黒みたいじゃないですか」
「……私に言われても。たぶん何かの才能なんじゃないかしら?」
 それが今すでに発動しかけているということは、ルシオラも怖かったので言わなかった。
 おキヌはあっさり機嫌を直して、
「あとこの霊撃拳って何なんでしょう?」
「それは霊力をこめたパンチってことね。拳に精神を集中してみて」
「こうですか?」
 とおキヌが拳を握って気合を入れる。以前の横島のソーサーのように全力を集めるわけではないが、それでもすごい力が右手にこもった。
「そう、いざという時はそれで殴れば霊にも効くわ。そうならないのが1番いいんだけど、保険みたいなものね」
 それを聞いておキヌはぱっと明るい表情を見せた。自分を守れるからではなくて、仲間に余計な負担や心配をかけずに済むからだった。
「……はい。ありがとうございます、ルシオラさん……あ、でもどうしてサ○ヴァントのこと知ってたんですか? もしかしてルシオラさんも……?」
「そういうこと。私だけじゃなくて小竜姫さまとヒャクメさんとワルキューレもそうよ」
「……」
 トンデモ話の連続でいい加減声も出ないおキヌだった。ルシオラはクスッと笑って、
「それだけヨコシマが凄いってことよ。だって私の旦那さまだもの♪」
 と話に参加できなくてやさぐれていた横島の背中にいきなり抱きつく。おキヌも慌てて、
「あ、ずるいですルシオラさんー!」
 と少年の正面から抱きついて、
「私はルシオラさんみたいにすごくないですけど、でもずっと横島さんのこと見てたんですから。私のこともちゃんと見て下さいね……」
 耳元にささやいて体をすり寄せた。美少女2人にサンドイッチされた横島はもう至福絶頂状態で、
(くぉぉぉぉ、お、俺が、俺がこんなにもてるなんて! ふおおおおーーっ!!)
 横島のソウルが激しく震え、リミッターカットが発動しかかったところで、

 プルルル……。

 ポケットに入っていた携帯電話が鳴った。
(く、こ、こんなときに誰やーーっ! 男だったら殺す!!)
 ぶっそうな事を心に誓った後、血涙を流しながら通話ボタンを押す横島。
「はい横島ですが。……あ、美神さん。……はい、大成功です。1発で全部浄化されましたよ。いま念のため見て回ってるとこです。……おキヌちゃんですか? はい、代わります」
 かけてきたのは美神だったらしい。この絶妙なまでのタイミングの良さ、やはり超一流の名を欲しいままにするだけのことはあった。
「あっ、美神さん。はい、できました……はい、ありがとうございます。……はい、これからもがんばります!!」
 おキヌがにこにこ笑って横島に携帯電話を返しながら、
「心配してわざわざ電話してくれるなんて、やっぱり美神さんやさしいですね」
 何とも邪気のない微笑みを見せるおキヌだったが、横島にとってはとんでもない話で、
(何がやさしいんやー! 美神さんのどあほーー!!)
 その叫びを口に出さずに済んだのは、一応彼も成長したということだろうか。
 しかしついさっきまで幽霊屋敷だった場所で平然とラブコメをかます辺り、やはり現役GSの感覚は一般人とは異なるようだった。
 とぅびーこんてぃにゅーど。


 ――――つづく。

 予告通りおキヌちゃん再登場&サーヴァ○ト化です(早!)。
 次は六道女学院かな?
 ではレス返しを。

○ゆんさん
>小龍姫は自分の体はメリハリがないってことを知っててジェラシーなのか、横島が他の女性を褒めたのがジェラシーなのかわからんな〜
 たぶん両方ですね〜。なので特訓も2倍でした(ぇ

○拓坊さん
 今回はちと話が平坦になったかも知れませんが……。

○無銘さん
>このノリで逝けるところまで突っ走ってください
 うい、おっけいです。ならば逝きます(ぉぃ
>「こんなこともあろうかと」というセリフ自体はヤマト2の10話が初出で、しかもこの1回しか使われていないそうです
 たった1回ですか。
 よほどインパクトがあったんでしょうねぇ。

○遊鬼さん
>いやいや、ワルQ帰っちゃうんですね(w
 さすがに報告せずに居残るわけにいきませんしw

○ト小さん
>「ブロークン・アシュタロス」の技名等は敵や、事情を知らない仲間に疑心をいだかれませんかね?
 その辺はお約束……もとい、爆音で聞こえないとか、他にもいろいろやってるから気にされてないというところでしょうか。

   ではまた。

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