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▽レス始

「あの日 あの時 あの場所で!! 其之九 (GS)」

匿名奇坊 (2005-11-24 00:17/2005-11-24 01:15)
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『私は妙神山に括られた神なので、山から離れて長く活動できません。 こんな外国ではなおさらです』


『ここ香港では私のエネルギーは急激に消耗し、三分も動くとしばらく休まないといけないんです』

 突然角だけの姿になってしまった小竜姫が、その理由を説明する。


「ウ○トラマンみたいっスね‥‥」

 小竜姫の角を大事そうに掌の上に乗せた横島が、おもわずツッコんだ。

 

 
 
 

  

 

 

 

 

『敵の狙いは原始風水盤‥‥地脈の力を操り、地上に魔界を現出させる事さえ出来る、強力な魔導装置を発動させる事です‥‥』

 
 想い描いた事を直接伝える念話が、恐ろし気なイメージを伝えてくる。

 
『隙をついて作動の鍵となる“針”を奪う事が出来たのですが‥‥
追っ手を撒いている間に、別の部隊に先回りされてしまいましたね‥‥』

 

 横島達は、そのとばっちりを喰った形になる。

   


「まぁ、“針”がこっちに在れば風水盤は作動しねぇ。
アトは“針”を奴等に奪いかえされないようにしさえすればイイ」

 アジト(といっても彼の事務所なのだが)のドアから、“周りの様子を見てくる”と言って外に出ていた雪之丞が帰ってくる。

 開いたドアの隙間から、香港の湿度の高い風が吹き込み、横島の頬を撫でていく。

 

『そうですね‥‥明日の夜、満月の日を過ぎさえすれば、当分の間風水盤を起動させる事は出来ません。 ですから、‥れま‥時‥んを‥‥‥』

 ふっ と小竜姫の思念が途切れ、沈黙する。

 
 
 

 
 雪之丞が鼻を鳴らして、スプリングのイカれたソファに腰を落とした。

 
「眠っちまったか‥‥最近の人間界にはそいつほど強い神はザラにはいないんだが‥‥妙神山に括られてる以上、可愛いモンさ」

 

 
 
 




 
 そんな雪之丞を尻目に、横島はいかにも悔しそうに唸っている。

 
「それにしても‥‥なんて色気の無い寝姿‥‥」


 修行中に、偶然目にした小竜姫の寝姿を思い浮かべ‥‥





 
 瞬間

 




 “グワァァーッンッ”

 



 
 頭の中に、白い閃光が弾けた。

 



 『何時見たんですかッ!


     何故見たんですかッ!? 


        ナニをしたんですかァッ!!』

 




 大出力の念波によるホワイトアウトだ。

 横島はガンガン痛む頭を押さえ、涙目になりながら小竜姫に問い返す。

  

「お、起きてたんスか!?」

 

 

『起きてたんスか、じゃありませんッ!!!』

 

 

 角を直接手で持っていたからだろうか?
イメージまで正確に伝わったらしく、
小竜姫は(角だけの姿で)真っ赤になって怒っていた‥‥

(小竜姫の角が赤く染まって横島の掌の上でピョンコピョンコ跳ねている)

 

 

 

 

 



 
 


 

 

あの日、あの時、あの場所で!!
    其之九 死シテ屍拾ウモノナシ.



 

 
 
 

 

 

 

 

 

 “腹が減っては戦は出来ぬ”

 長い間マトモに食事をしていない、と言う雪之丞と、
普段から果てし無くエンゲル係数の高い生活を送っている横島達の為に、
冥子はポケットマネーをはたいて中華料理店“椎名大飯店”へと彼等を連れて来ていた。
 
 
 

 

「うまいっ こらうまいっ!!」

   モグモグ

         「うむ、なかなかコレは‥‥ッ!」

                     ガツガツッ

  「タンパク質は久しぶりジャー!!!」

 
 
 

 箸と箸のぶつかり合う、熱い闘い‥‥じゃ無かった、でもそんな感じ。

 
 固定式のテーブルががたがたと揺れ、
料理が凄まじい勢いで消費されてゆく。


 ピートと鬼道は絶え間なく食べ続ける三人に呆れている様だったが、
冥子はニコニコと積み上げられてゆく大皿の数を数えていた‥‥

 

  
 


 主な会話は、お代わりが運ばれてくるまでの間に交わす事となる。、

 
「俺はメドーサを裏切った後、ある人の伝手をつかって香港でモグリのGSをやってたんだが‥‥」

 
 蒸し物が入っていた蒸籠が次々と積み上がってゆく、 

 
「小竜姫から、達成すれば日本GS協会のブラックリストから外してやると言われて、このヤマを調査する事になってな‥‥」

 
 店員を呼び、メニューを片っ端から指差しながら、
横島は思い出したように疑問を口にした。
 

 
「お前、前に見た時と、魔装術のカタチが随分違ってねーか?
ソレにあの、どでかい霊波砲は‥‥」

 
 雪之丞がニヤリと口の端を吊り上げる。

 
「お前との差が、実戦経験の量だってのは感じたからな‥‥
こっちへ来てから、ガムシャラに仕事をこなしたのさ‥‥」

 
 

「ある時、双頭の魔犬“オルトロス”を追い詰めたコトがあってな、
奴は俺が魔装術使いだと知ると、契約する代わりに見逃せ、と言ってきたのさ、 俺の目的は強くなる事であって金じゃネェからな、二つ返事でOKしたよ‥‥」


 小皿に海老チリをたっぷり取り分けながら、得意げに箸で円を描く。
 


 「今じゃそれまでの魔装術‥<紅衣>(くれない)と、場合によって使い分けてる。  “獄炎砲”は奴の炎の吐息‥‥地獄の劫火を俺の霊気で練り上げ、集束させたモンだ。 半端じゃ無く霊力を喰うし、隙もデカいが、威力は折り紙付きってとこだな‥‥」

  
 


 
 ちょうどその時だった。
そのニュースが飛び込んで来たのは‥‥
 
 

 

 
 
 
 
 椎名大飯店のロビーには、大形の液晶TVが備え付けてある。

 
 横島達には内容は解らなかったが、
突然画面が切り替わり、ニュース速報を流しはじめれば、何か大きな事件が起きた事くらいは解る。

 
 それは、どうやら殺人事件のニュースらしかった。

 顔写真の数からして被害者の数は六人、
次々と写真とテロップが切り替わってゆく。

 
 
 

「全員、 風水術師だ‥‥っ!
奴等、“針”を取り戻せないと踏んで新しく“針”を作り直していやがるんだ‥‥‥‥っっ!」

 しばらく香港を活動拠点にしていた雪之丞は、このメンバーの中では唯一広東語のニュースの内容を把握できた。

 湧き上がる怒りを隠そうともしない雪之丞だったが、
画面が五人目の被害者を映し出すと、凍り付いたように動きを止めた。

 

「糞ったれがぁっ!」

 
 雪之丞はまだ何かを早口で伝えてくる画面に見向きもせず、
イスを蹴り飛ばして店の外へと飛び出していく。

  
 

 咄嗟に止めようとしたピートはアッサリと弾き飛ばされてしまった。

 
 (こいつは‥‥ちょっとばかしマズイ事になったぞ‥‥)


 
 薄汚れた香港の空に、にわかに雷雲が垂れ込めようとしていた‥‥

 

 

  

   
 
 


 

  

 

  
 
 


 

 雪之丞は香港の街を疾走していた。
霊力を脚にまわし、常人には不可能なスピードで、
猥雑で活気に溢れる通りを走り抜ける。

 
「勘九朗のヤロウ‥‥っ!」

 

 脳裏によぎるのは先程ニュースに流れた老人の顔。
ソレを見た瞬間、世界から音が失われ、イヤな汗がヌルリと背中を伝い落ちた。 彼が風水師である事など知りもしなかった。
 
 
 


 (畜生がぁ‥‥っ!)
 
 

 
「いいさ‥‥ゃってやるぜ‥‥っ!」

 
 
 

 雪之丞の目に剣呑な光が宿り、
ぐらぐらと煮え滾る破壊衝動が身体を満たしてゆく。

 

「奇襲だの抜け道だの、面倒な小細工は抜きだ‥‥っ!
正面から喉笛を喰い千切ってやる‥‥ッッ!!」

  
 

 
 
 


 
 疾走する雪之丞、
その進路上には、森の中にそびえる大きな屋敷‥‥
おそらくはその地下に破滅を呼び込む風水盤を飲み込んだ、
メドーサ達のアジトがあった‥‥


 

 

 

 

 
 
 
 
 

 

 小竜姫の思念波が、横島達の脳裏にイメージを描き出す。
先程ニュースに流れた老人の面影。

  
 

「彼の名はフェイ・タオロン。
雪之丞さんがこの街に流れて来たばかりの頃に、行き倒れていた彼を拾ったのがフェイさんです。 雪之丞さんは随分お世話になっていたみたいですね‥‥雪之丞さんの事務所も、名義は彼の物になってます。
 10年程前に引退していますが、若い頃は実力派の風水師で、今でも香港のオカルト業界に顔が利く人物です」

  
 

 雪之丞からしてみれば恩人、という訳だ。

 
 小竜姫が全員に思念を向ける、

 
「敵が新たな“針”を造っている以上、 
これ以上の暴挙を許さない為にも私達は原始風水盤そのものを破壊しなければなりません」

 
 思念が一旦途切れ、躊躇うような心のざわめきを伝えてくる。
 

 
「‥‥雪之丞さんが向かったのは、おそらく厳重に警戒された地上部分、怒りに我を忘れて正面突破を強行するでしょう。 それに続くとなると大きな危険を伴います」

  
 

 小竜姫の無言の思念が横島達全員に問いかける。
行くか行かないか、雪之丞を援護するか囮とするのか、或いは抜け道から潜入するか、

  
 

「僕は、たとえ一人でも彼を援護しにいきますよ」

 

 
 意外な事に、その問いに即答したのは雪之丞とはGS試験の一件でわだかまりのあるピートだった。

 
「僕だって唐巣神父が魔族に襲われれば、我を忘れて敵陣に突っ込むかも知れない‥‥‥‥彼の気持ちは理解できますよ‥‥」

 ピートは立ち上がってトランクから十字架を取り出した。
本当に一人でも行くつもりらしい。

  


「ワッシも、エミしゃんにもしもの事があったら黙っては居られませんノー」

 タイガーも席を立つ。
早くも頭髪が逆立ち、虎人へと姿を変えつつあった。

 
「俺だってそうさ」
 

 椅子の縁に脚を書け、靴紐を結び直しながら横島が応じる。

 

 
 (俺だって小竜姫様が殺されそうになった時‥‥)

  
 

 自分の身体の奥に、ゾワリと蠢く“なにか”を感じる。

 
 GS選抜試験の試合会場で、暴走する寸前に感じた、あの感覚。 
 

 (イカンな〜縁起でも無い) 


微かに感じる“ソレ”を抑え込み立ち上がる。

  


 「しゃあないな〜」「いきましょ〜か」

 鬼道も冥子も、躊躇する様子さえ無い。

  
 

「‥‥分かりました」

 
 小竜姫が、何処か嬉し気な念波を送ってくる。
  
 

 

「さあ、行きましょうか、雪之丞さんを助けに」

 

 

 

 

 

 

 

 
 
 
 
 
 

 「往くか‥‥っ」

 
 雪之丞はメドーサ達のアジトを睨み据え、
今まで立っていた樹の枝から宙に身を躍らせた。

  
 


「魔装術 <咆牙> 」
 
 

 
 魔力が身体に纏わり付き、
冥い輝きが吸い付くように一つのカタチを成していく。
 

 肩や脚周りを鎧う、鋭角的な装甲、
魔犬の上顎を思わせるバイザーが両目を覆う。
 黒くつややかな下地は、よく見れば硬質化した毛皮である事が分かるだろう。
 

 
 双頭の魔犬オルトロスの魔装術、 吼え猛る魔獣の牙。

  
 

 創り出された肉体に漲る力を、
睨みつけた高い外壁に向かって解き放つ。

 

   「獄炎砲」

 

 

 


 

 


 
             ‥‥to be continued!!

 

 

 

 

あとがき
 原始風水盤編第二弾、
今回はどっちかと言うとバトルシーンへの導入部みたいな感じですか、
妙にあざといシーンで切れちゃいましたね。
(次は全編戦闘です。今からヒヤヒヤしてます)奇坊でございます。 
 さて、雪之丞の強化案は大体こんな感じです。
見た事あるSSでは大抵一つの武器を研ぎすます方向で強化される事が多いように感じたので、敢えて意外性を狙ってストラ◯カーパック方式にしてみました。 なんとか空戦装備もGETしてもらいたい所ですね(笑)
好きなんです。 ガ*バーとかドラ*ーン(レジェン*オブドラグーンってゲーム、分かる人居ます? 奇坊のPS初RPGなんですが)とかの生体鎧系。
色んな魔装術のパターン見てみたいって個人的な願望も混じってます(笑)

 
 でわでわ、

 
*眞様
 実は意識してやったんじゃ無いんです。
どうも無意識にネタをかましてしまったようで、
‥‥習慣ってオソロしいですねぇ。
名曲です(謎)

*アクセル・ウェイカー様
 黒君と言うよりGS試験で負けちゃった影響ですね、
五話ばかりの空白の間、ユッキーは随分無茶をしていた様です(笑)
<咆牙>はこれからも砲戦仕様みたいな扱いで使っていく事になります。

*foaoteoe様
 ごめんなさい(_◯_)
ミニスカート、チャイナ云々以前に
今回小竜姫様はずぅ〜と角でした、というオチです(笑)

 メドーサとの闘いについては香港編はほぼ書き上がってるんで無理ポですね、
月かぁ、遠いですよネェ・・其之三は今でもちょっと悔いの残る回なので、その内落ち着いたら改稿しようかと思ってるんですが‥‥

*しらたま様
 実は新婚旅行編(笑)は当初から“原作では置いて行かれたタイガーも連れていってやろう”というのが念頭にありまして。
 ただ、影が薄いのはそれなりに理由が有るみたいで、なっかなか活躍してくれ無いンです、このキャラ(笑)

*ジェミナス様
 実はユッキーのこの強化は先のエピソードの展開にも絡んでくるんですよ。
 没ネタを例に挙げると、オルトロスは月に居た造魔の元になったであろうヒュドラの兄弟にあたったり、色々とイジリ易かったりします。
 この先、原作よりもアシスタントチームで動く事が多くなるんで、
あんまり横島だけを高性能にするのは避けたい状況なんです。
ピートはともかくタイガーは素直に強くなってくれるかなあ‥‥

*花翔様
 六道除霊事務所の二人は、この先主役級の働きをするエピソードが一つ用意されてます。 
 ちょっと先なのでその頃には多少なりとも冥子も成長している事と思われます。
 折角強化したのでもっと使いたいですしね(笑)
鬼道は苦労には耐性があるハズなので見事冥子を幸せにしてくれるでしょう。

*緋皇様
 美神さんを登場させるとどうしても人質になっちゃうんです(なんでだろ?)
タイガーの代わりに神父は割を喰って未登場ですね、
小竜姫様に関しては、時間切れって事で今回はずっと角です(笑)

 買い物については独立したエピソードにしようか迷ったんですが、
そんなにネタも無いしオマケを付けないと次回全編バトルになっちゃうので
次回のお尻にくっつく事になりますね。

 


 

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