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▽レス始

「あの日 あの時 あの場所で!! 其之八 (GS)」

匿名奇坊 (2005-11-21 20:10/2005-11-21 20:13)
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〜妙神山中腹〜 


 カツンッ  カラ カラ カラ カラ‥‥

 
 蹴飛ばした石くれが、ほぼ垂直に切り立った崖を転がり落ちてゆく。

 
「うぅ‥‥何度登ってもこの道(?)は辛い‥‥」

 横島はその日、殆ど崖にしがみつくようにして、幅の狭い登山道を登っていた。

 
「横島サンはまだマシなモンじゃいノー ワッシなんて‥‥」

 隣に居るのはタイガー寅吉。 
彼はまさしく崖にしがみついている様にしか見えなかった。

 青い顔をしながら、必死に横島の後をついて来る。

 
「「それにしても‥‥」」

 横目で他の同行者を見やる、

 
「「いくらなんでもコレは不公平ちゅーんじゃねーか」ノー!?」

 
 そこには各々バンパイアの能力で飛行するピート、
シンダラと夜叉丸に乗った冥子と鬼道の姿があった‥‥

 

 

 

   

 

 


 

 
あの日、あの時、あの場所で!!
    其之八 我ら極楽愚連隊

 


 

 

 

 

 

 

 
「え〜 そんな事言っても〜」

「あまり大勢で登ると、道が崩れてしまいそうですし‥‥」

「いざとなれば助けたるさかい、頑張ってや、」

 
 それぞれ上から冥子、ピート、鬼道の言である。

 確かに、<寅>のメキラによって短距離ワープ能力を備える夜叉丸なら、万が一横島やタイガーが滑落しても助け出す事は容易だろう。


「くそ〜余裕ぶりやがってぇ」

 
 自分もちゃんと飛べる様になりたい、
そんな事を思う横島であった。

 

 

 


 

 

 

 

 そもそもの事の発端は、鬼道が冥子を妙神山へ連れていく。
と言い出した事だった。

 

 最高峰の修行場へ連れていく事によって、冥子のレベルUPを図ろう。と言うわけだ。 

 
 “生きるか死ぬか”しばしばそんな形容が為される妙神山だが、かつて美神が行ったのは、管理人の小竜姫が行えるものの中では最も厳しいものである。

 まして冥子が必要としているのは精神修要の類いだ、危険だと判断すれば自分がとめれば事足りるし、少なくとも良い刺激になるだろう、と鬼道は考えたのだ。


 最近、各霊能事務所のアシスタント、という繋がりで懇意にしている横島によれば、妙神山の管理人(神?)の小竜姫様は、厳しいながらも優しく聡明な方らしいし、彼自身も相当お世話になっているそうだ。

 
 自分が冥子を教え導かねばっ、と使命に燃えている鬼道とすれば、今後の指導の参考に彼女の意見を聞いてみたい所だ。


 
 ついでに鬼道自身も、かの妙神山の試練とやらを受けてみたいと考えている。
(妙神山とは本来彼の様に長年厳しい修行に耐えてきた者が訪れる場所だ)

 
 さて、それを知った横島達は一緒に付いていく事にした。
横島は単純に小竜姫に会いたかったし、ピートとタイガーも噂の妙神山修行場に興味があったからだ。

 
 鬼道が車を出してくれる、というのも大きかった。
彼等は常に清貧を地で行く生活をしているので、たかが電車代といえどもバカには出来ないのである。

 

 


 

 

 

 

 

 
「留守ッ? 小竜姫様がか?」

 
 鬼門達の口にした答えに横島が問いを返す。

 
「うむ‥‥十日程前に、神界のヒャクメ様から香港に魔族の怪しい動きアリ、との連絡があっての、 小竜姫様は今、現地のGSを使って調査中なのだ‥‥」

「そろそろ定期連絡があるでな、小竜姫様の指示を仰ぐといい」

 
 なんだかんだ言って鬼門もヒトの子(いや鬼神なんだが)
知り合いにはガードも甘くなるらしい、
突っぱねる事はせずに中へと招き入れてくれる。

 

 タイガーと冥子は物珍し気に、
ピートと鬼道は幾分か緊張した面持ちでキョロキョロしている。

 

 横島はと言うと 勝手知ったるなんとやら、と言うやつで、
何故か机の上に置いてあったMY湯飲みにお茶をいれて、
縁側でマッタリしていた‥‥

  

  


 

 

 

 
「横島さんッ?」

 伝影鬼(通信鬼の上位種。 要するにテレビ電話)
を使って定時連絡を入れてきた小竜姫は横島が妙神山へ来ている事を知って目を白黒させていた。

「後ろに居るのはピートさんに六道さん‥‥と、タイガーさんですね‥‥‥‥? えぇっと、彼は?」

 この面子の中では、鬼道だけが小竜姫に面識が無かった。

 
「鬼道政樹といいます、 冥子はんの助手をやらせてもろとります。」

 

 ひとしきり話が終わると、小竜姫は何かを思案するようにしばし黙り込んだ。

 「どうかしたんですか?」

 横島が気付かわげに声をかけると、
小竜姫は若干迷いながらも、こんな話を切り出した。

 

 

「六道さん、 GSとして、私の依頼を受けていただけせんか?」

 
 話はこうだった。
最近、香港での魔族の動向がキナ臭い、という天界からの報告を受けた小竜姫は、土地勘の有る現地のGSを雇い、近頃頻発している風水師を狙った連続殺人事件を調査していた。

 しかし、事件の全貌が明らかになるにつれて、そのGS一人では手に余る、という結論に達した、と言う事だ。

 幸い、妙神山から転移を使えばすぐにでも香港に跳ぶ事ができる。

 横島達の妙神山来訪は渡りに船、と言う訳だった。 

 

 

 

 

 


「所長! ココは受けておくべきですよ!」


 尻込みしている冥子とは対照的に、鬼道の方は興奮ぎみだ。

 
 六道事務所は最近、鬼道の涙ぐましい努力によって、
(他でも無い、今回の妙神山訪問もその一環だ)
依頼の達成率を急激に伸ばしているが、やはり以前の悪名が轟いているので、仕事の依頼そのものが少ない、と言うのが現状なのである。

 鬼道は“神族からの依頼を達成した”という実績を作り、
六道GS事務所の看板にハクをつけよう、と言うのである。

 

「う〜ん、マー君がそう言うなら〜冥子、がんばってみるわ〜」

 その問答を見て、小竜姫の表情はそこはかとなく不安そうだ。

 小竜姫の様子を察した鬼道は先手を打った。


「そうや、君等も手伝うてくれへんか?」

 鉾先を向けられたのは、無論横島達である。

 小竜姫の方も“そのほうが良い”といわんばかりの顔をしている。
(具体的には、やはり横島の存在が大きいのだろう)

 しかし、当の横島達の反応は鈍い、

「小竜姫様の手伝いをするのは異論ないけど‥‥美神さんがな‥‥」

 と歯切れが悪い、

「ワッシの場合もエミしゃんが‥‥」

「おそらく神父は了承してくれるでしょうが‥‥」

 

 
 だが、これらの問題は意外にもアッサリと解決した。

 
「あ〜 令子ちゃ〜ん?」

 冥子が携帯電話から彼等の雇い主に一報入れると、二つ返事でOKが出されたからである。

 
 これは冥子が掛けた電話が、

「令子ちゃ〜ん手伝って〜」

 
 ではなく

 
「難しい依頼が有るから〜横島君を借りてもい〜い?」

だったからだろう。

 
 それならば自分は冥子の“ぷっつん”に巻き込まれる事は無い。
逆に断ってしまえば、今度こそ自分達が手伝うハメになるやも知れない、

 
 美神達とて、自分の身は可愛いのである。


 かくして、

 六道 冥子
 鬼道 政樹
 横島 忠夫
 タイガー 寅吉
 ピエトロ・ド・ブラドー の総勢五人が、助っ人として香港へ向かう事となった。


 これが後の世に言う、
六道 冥子と愉快な仲間達の長征である(嘘)

 


 


 

 

 

「ここが、小竜姫様の言ってた待ち合わせ場所か‥‥」

 横島一行は、尖沙咀の裏路地から、更に奥に進んだ場所に有る、うらぶれた教会へと辿り着いた。

 植民地時代の物なのだろうか、薄汚れた教会内には、神秘的な空気と、忘れ去られた物の持つ、独特の寂しさが混在していた。

 

 この多彩なメンバーの中にも広東語を操る者は居なかったので、この場所に辿り着くまでには随分と苦労もした。

 ピートの英語も思った程の成果を挙げられず、結局タイガーの精神感応で道行く人々の頭の中を、片っ端から覗き込んだのだ。

 

「まだ、小竜姫様と例の現地GSってのは来て無いらしいな、」

 横島が教会内を見回す、

「なんか、さみし〜ところ〜」


 ピートは朽ちたキリスト像に十字を切っている。
殊勝にも、タイガーがそれに倣って仕草を真似ていた。

 
「へぇ、タイガーもキリスト教徒なのか?」

 虎人のキリスト教徒も、バンパイアハーフのそれに負けず劣らず珍しいだろう。

 しかし、タイガーは横島の問いに首を振った、

「ワッシは別になんかの宗教を信じとるワケじゃないですケン、
自分が神聖だと思ったモンには、とりあえずなんでも拝んどくんジャー」

 そんな風に言われてみると、
全くの無神論者(いや、知り合いに一人居るが)の横島にも、
そのキリスト像には、朽ちてなお慈愛とか、威厳とかいったものが備わっている様に見えるから不思議だった。

 

 

 

 

 
 ズガァァン

「きゃっっ!?」

 突然激しい振動が教会内を走り、古い建物全体が軋みをあげる。

「「「「ンなっ!?」」」」

 脆くなった煉瓦の壁、そこから人間の腕が突き出している。


 ズガガガガッガガガガガッ

 それが合図だったかのように、周囲の壁から無数の腕が突き入れられる。

 
 (まるっきりホラー映画だな、こりゃ)

 

 
 自然、冥子を中心に囲むように立ちはだかり、
男四人が冥子を背にしてガードする。

 いつのまにか現れていた夜叉丸がぼんやりと光を放っている。
神将を憑依させているのだ。

 黒い上衣に白くタイガーパターンが浮かび上がり、
腕に手甲が、右手に剣が、額に宝玉が現れる。

 タイガーが虎人へと変化を遂げ、
ピートが神聖な気を集中させ始める。

 横島も、栄光の手を顕現させて身構えた。

 

 “腕”の持ち主達が壁を突き破って姿を現す。

 がらがらと音をたてて壁が崩れる。

 無惨にも石材の支柱があらわになり、
“奴等”が瓦礫を踏み越えて教会の中へ侵入してくる。

 顔面をマスクで覆った怪人達、

 

 奴等の間から、一人の人間が進み出る。


「あらあら、何処かで見た様な顔じゃない?」


 件の男が口の端を歪める。

 
「鎌田 勘九朗‥‥っ!」

 GS試験に潜入した、メドーサの私兵。


 (なら‥‥裏に居るのはメドーサか!?)


 近寄ってきた怪人を斬り倒しながら思いを巡らす。

 ピートの聖撃が、タイガーの爪が、神将達と夜叉丸が、
敵を穿ち、貫き、灼き尽くしていく。

 
「くっ こいつらゾンビーですっ キリがありませんよっ!」

 ピートが切羽詰まった声をあげる。


ゾンビの腐肉が辺りに散らばる。

「うげっ エンガチョ!!」

 

 
 第一陣を叩き潰し、膠着状態に持ち込んでも、いっこうに敵の勢いは衰えない。

「素直に“針”を渡せば生かして置いてあげるわよ‥‥」

 勘九朗が余裕の声でニヤリと唇を吊り上げる。

 
(“針”!? “針”って何の事だよ!?)

 
「素直に渡す思とんのかっ!」

 横島が混乱していると、隣で夜叉丸を操っていた鬼道が声を張り上げた。

 一瞬、耳を疑ったが、その真意に気が付いてハッと口をつむぐ。

(知ってるふりをして時間を稼ぐ気か‥‥)

 鬼道のこめかみに汗が光っている。

 

 そうこうしている間にも ゾンビーどもはわらわらとその数を増やしていく。

 横島達はジリジリと後退し、遂には肩を密着させるまでに追い詰められる。

 
(コイツは‥‥ちょぉっとばかりヤバいんじゃねえか?)

 
 冷や汗を流しながら栄光の手を構え、イチかバチかで勘九朗相手に斬り掛かろうとした、その時、

 

 

  「獄炎砲」

 
 突如キリスト像を吹き飛ばして撃ち込まれた特大の霊波砲、

 ---闇そのものを炎に喰わせた様な、深紅の輝きを放つ光の奔流がゾンビー共を飲み込んでいく。

 吹き飛んだゾンビーの残骸は炎を吹き上げて融け崩れる。


 霊波砲は敵諸共 教会の支柱を薙ぎ払い、暴虐に曝され続けた建物が遂に崩壊を始める。

 
「こっちですっ!」

 炎を吹き散らして小竜姫が飛び込んでくる。

「小竜姫様っ?」

 混乱しつつも小竜姫の下へ駆け寄り、炎の切れ目から崩れ行く教会を脱出する。 

 霧と化したピートがタイガーを伴って実体化し、続いて夜叉丸と鬼道が転がり出してくる。 

 夜叉丸の腕には気を失った冥子が抱えられていた。

(‥‥成る程、それで“ぷっつん”が無かったんだな)

 

 




「さぁ! とっととズラかるぞっ!」

 背後から何処かで聞いたような声がする。

「やり方が乱暴ですよっ!!」

 小竜姫が声の持ち主に文句を言っている。

 そいつを目にして、横島は目を見開いた。

(‥‥ってことは、えっ、 嘘ぉ!?)

 
 そいつの纏っているのは艶やかな黒いボディアーマー、
肩や肘、脚周りの鋭角的な装甲に、スマートなシルエット、

 以前目にした物とは全く異なっていたが、確かに魔装術だ。

 
 ガラの悪い口調、良く言えば精悍な、悪く言えば目付きの悪い顔立ち、

 
「「「「伊達 雪之丞!?」」」く〜ん?」
             (気が付いてたのか、冥子‥‥)

 

 

 
 一人、話の見えない鬼道が、
所在無さげな様子で横島達の顔を見比べていた‥‥

 

 

 

 


            ‥‥to be continued!!

 



 

あとがき
 やっと、というか漸くと言うべきか、(同じか?)
突入しました原始風水盤編。
(ちょっと御無沙汰かな?)奇坊でございます。
 普段は一話完結を目指してるんですが今回は無理。
後最低二回は香港ですね、
おかげで随分中途半端な所で切れちゃいました。
 前回に続いて鬼道登場、順調に苦労してる模様ですネ(汗)
次回は魔装術の変貌の種明かしとユッキー暴走です。

 でわでわ、

 
#foaotoeo樣
 え〜冥子の順位については完全に奇坊の勘違いです。(_◯_)
ぷっつんで吹っ飛ばされたのはエミでしたね‥‥
 御都合主義にならないように気を付けてますから、
原作との差は黒君の存在と横島の行動(戦闘力)、及びその影響に集約されます。
一見単なる偶然に見えても(最低こじ付け程度には)原因があります(と、言う事になってます)。
 横島と小竜姫の進展については‥‥なぜ横島のmy湯飲みが机の上に出してあったのか?あたりで脳内補完かな?←バカ

#しらたま樣
 実はテレサ云々はアシュ編に繋がる伏線で、次のSideBがテレサ編ってワケじゃ無いんです。
 ただ、この伏線はアシュ編のヤマ場の一つに絡むんで、あんまりネタバレ出来ません。あえて一つだけ言うなら、テレサは生存(?)しますよ。

#ジェミナス様
 そのアイデア(女子が十二神将で〜)いただきです!!
おもわずPCの前から立ってネタ帳とりに走っちゃいました(笑)
 プロットはアシュ編までしか無いんで、そこから後はつらつらとそのまま独立ものかなんか書けたらイイっスね〜(気ぃ早すぎ)

#緋皇様
 黒君誰かとくっ付くのかな〜?
鬼道は未来がほぼ確定してしまったので、
覚悟を決めて“ある意味光源氏計画”に邁進してもらいましょう。
 あえて私見を述べるならば「ワッシは羨ましい」
いや、代わって欲しくはありませんが(笑)

#なまけもの樣
 いやハーピーの件は(多分)黒君は噛んでません。
黒君は基本的にあんまり無印チームには介入しないんです。
あんまり甘やかすのもナンなんで(笑)
ただ、『心』『導』は相当便利ですね、あんまり使うと話が破綻するんで基本的にメインキャラには使いませんが。

 さて、実はユッキーの魔装術は最終到達点まで含めて種ネタ満載です
(バレバレかな?)次回それを意識して読むと面白いかも知れません。

#花翔様
 原始風水盤編以降は小竜姫が全然出てきてくれません(涙)
プロットに重要事件と小竜姫の登場する回しか記されてませんから、そのツケですね。
挫けそうな時に“おもしろい”といってもらえると凄く励みになります。
 これからも頑張るんで宜しくお願いします〜

>鬼道と横島が〜
 女性で苦労しそうな所は同類ですよね(笑)
後、関西弁な所もそう見えるのかな? 奇坊は大阪在住なので、微妙に使われてる地域が異なるのが分かるんですが‥‥

#天剣様
 実は次のSideBは‥‥アワワ ネタバレネタバレ

 おっしゃる通り、小竜姫には頑張ってもらわなければなりません
でもな〜どーやっても中世にはついて行けそうにないんですよね、
 改めて冥子の妙神山修行編もやろうかな?

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