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▽レス始

「あの日 あの時 あの場所で!! 其之拾 (GS)」

匿名奇坊 (2005-11-29 01:06/2005-11-29 02:12)
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「ちぃぃッ!」

 深紅の装甲---魔装術<紅衣>を身に纏い、
ゾンビーの胸板を貫いた雪之丞は、
舌打ちをしながら血混じりの唾を吐き捨てた。

 

「雑魚どもがぁ‥‥っ! 羽虫みてぇに湧いて出やがる」

 

 敵を薙ぎ払い、踏み砕き、
地下最奥部へ向かって突き進む。

 

 鏡で埋め尽くされた奇妙な部屋を蹂躙し、
霊波砲が効かないと見るや装甲を頼りに突き破った。

 
 装甲に無数の切り傷を負うが歯牙にも掛けない。

 

 

 

「くそッ‥‥!」

 

 息が上がるのに比例するように、
少しづつ焦りが膨らんでいく。

 

 これ以上霊力を無為に消耗する訳にはいかなかった。

 
 でなければ“奴等”の喉笛を喰い千切ってやれなくなる。

 
 最早雪之丞は、この場所から生還する事など意識の片隅にも持ち合わせていなかった。

  

 
 最後の鏡を突き破ったその先に、

 
 探し求めたかつての仲間、
そして今や仇敵となった男が待ち構えて居た。

 

 

 

 
「随分とお疲れの様ね? 雪之丞」

 
 十数体のゾンビを従えた勘九朗が、
魔装術を発動させ禍々しい魔力を身に纏う。

 

 

  
「どうかな? テメェをぶっとばせる位には残ってるかも、知れないゼッッ!!」

 

 雪之丞はそう嘯くと、
鬼人と化した勘九朗に突撃していった‥‥

 

 
 

 

 

 

  

 

あの日、あの時、あの場所で!!
        其の拾 死者の効能.















 敵のアジトはすぐに分かった。

 緑奥深い丘の上に位置する、大きな屋敷。

 
 そこから、幾筋もの黒煙が立ち上り、
戦闘の生み出す喧噪が地上にまで響いて来る。

 

 
「随分派手にやったな‥‥」

 

 
 獄炎砲でブチ抜いたのだろう、

 屋敷の外壁には焼け焦げた大穴が開き、
屋敷の外装にはそぐわぬ、薄暗い地下洞が露呈していた‥‥

 

 

 
 横島が確認するように振り返り、
後に続く面々が無言で視線を、あるいは頷きを返す。

 

「 突 撃 だァァ--ッ!!」


 各々が武器を構え、声を上げて
横島達は戦場へと突入していった。

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、美神除霊事務所

 

「〜というワケで、これから敵の牙城へ侵入すると、小竜姫様から‥‥」

 

 まるきりメン・イン・ブラックといった感じの風貌をした巨漢二人組みが、事務所の女所長にまくしたてている。

 
「ふ〜ん、原始風水盤にメドーサ、ねぇ、冥子の奴随分面白そうなヤマに首突っ込んでんじゃない‥‥ッッ!」

 

 

 
 ----笑顔が、怖い。

 鬼門達は心の中で小竜姫に泣き言を言っていた‥‥


 

 

 

 

 

 


「ぐっ‥‥!」

 
 ひび割れた肩の装甲が脱落する。
傷口から溢れだした血が、深紅の装甲をなおも赤く染めていく。

 

 

「‥‥随分マシのなったみたいだケド、強行突破した後についでで倒せる程アタシは甘くないワ‥‥ 雪之丞ッ!」

 
 振り下ろされた剣が、跳び退った雪之丞の脚を掠める。

 

 
「ち‥‥っ!」

 
(やはり正面からのぶつかった時の戦闘力はあちらが上かっ)

 

 持久戦やパワーでは、既に人間を捨てつつある勘九朗にはかなわない。

 

 
(一気にキメるしか無いが‥‥クソッ!)

 

 
 最大火力である獄炎砲はとんでもなく霊力を喰う。

 
 それどころか、今の雪之丞には
<咆牙>へと魔装術を再構成するだけの霊力も残っていなかった。

 
(手詰まりか‥‥ッ!)

 

 

 ゾンビーどもが道を塞いでいて、回避する事すらままならない。

 

(‥‥ならっ!)

 

 
 雪之丞は右手に霊力を集中し、
追い縋る勘九朗を迎え撃った。

 

 

 

(せめて 一太刀ッ!!

 

 深紅の爪が、勘九朗の脇腹を抉る。

 
「甘いのヨッ!」

 

 勘九朗は自らの腹に突き立った腕を鷲掴みにし、
もう片方の腕で剣を振りかぶった。

 
(くっ‥‥っ!)

 



 ギィィッン


 
 頭上を影が突き抜け、
勘九朗の剣を手首ごと斬り飛ばしてゆく。

 

「シンダラちゃ〜ん!」

十二神将の一鬼 <酉>のシンダラである。

 

 <午>のインダラに乗った冥子が姿を現し、
後に続く夜叉丸と横島達がゾンビ達を瞬く間に駆逐していく。

 

「グッッ !」


 霊波刀が聖撃が、爪が牙が、勘九朗に襲い掛かる

 対して勘九朗の攻撃はバンパイアミストとメキラのテレポートによってその殆どが阻まれる。

 
 タイガーの精神感応が横島達の脳裏に
深紅のラインを描き出し、射線上からの退避を促す。

 


 突然割れた戦線の向こうに、勘九朗は自分を睨み据える雪之丞を見つけ、


    刹那


 「獄炎砲ォォォォォォッ!!」


 <戌>のショウトラのヒーリングで傷を癒し、
残る霊力を全て<咆牙>に注ぎ込んだ雪之丞の全力攻撃。


 巨大な槍と化した地獄の劫火は、岩壁に勘九朗を叩き付け、
それごと貫いて大穴を開けた。

 

 

 
「こいつは‥‥」

 大穴の向こう側から魔力が溢れ出して来る。
低く無気味な唸りをあげる奇妙な円盤状の構造物。

原始風水盤


 
「既に低出力で起動を始めている‥‥っ!」

(もう一本の“針”を完成させたのか‥‥!)

 

 

「失態だねぇ 勘九朗?」

 
 壁を突き破って吹き飛んできた勘九朗を、
風水盤の傍らに舞い降りたメドーサが叱責する。

 

「まぁ いいさ」

 メドーサは勘九朗から視線を外すと、
その凶眼を横島に向けて己の得物を握り直した。

 
「あいつには借りを返しておかなきゃいけないからネェ」

 

 

「さっさと起きな、勘九朗」

 ムクリと身体を起こしたその姿を目にして、
横島達は絶句した。


「‥‥ッ!」


 マスク状だった顔が生々しい肉の質感へと変貌している。

 

「イイ気分よ雪之丞、‥‥思ったよりずっとイイ‥‥っ! とてもイイワ‥‥!!」

 魔族と化した勘九朗が、咆哮をあげて雪之丞に襲い掛かる。

 

 
 駆け寄ろうとした横島の前に、メドーサが立ちはだかる。

「あんたの相手は私だよ!」

 


 

 


 


「殺害の王子よキリストに道を譲れッ! 主が汝を追放する!!」

 勘九朗を灼き尽くさんとする聖なる光は、
しかし横薙ぎに振るわれた剣に吹き散らされる。

「奴はGSバスターの訓練を受けている。
比較的使う奴の多い聖句による攻撃じゃあ通用しない!」

 雪之丞がピートを押し退けて剣を受け止める。

 
「ピートはんは冥子はんのガードを! 式神と魔装術ならまだマシなはずやッ!」

 冥子を守護していた夜叉丸が前線へと進み出る。

 
 ----一刻も早く勘九朗を片付けなければ、
メドーサに集中攻撃されている横島が持たない。

 
 そんな鬼道の意志を嘲笑うかの様に五体から活力が抜けていく。
原始風水盤によって、地下空間が魔界と化そうとしているのだった。

 

 

 


 


(ちょ‥‥ ちょっと、小竜姫様ぁ!?)

 横島はメドーサの槍から逃げ回りながら、
小竜姫に助けを求めていた。

『私がこの国で活動出来るのはほんの僅かな間だけです。
確実を期す為に援軍を待って一気に攻勢を掛けます、それまで持ち堪えてください!』

 
(援軍っ?)

 
 思わぬ単語に狼狽えるも、考えるていられるような余裕は無い。

 霊刃を敢えて短く、しかし強靱に構成すると、槍の間合いの内側の死角へと潜り込む。

 
「っ! チョロチョロとっ!」


 穂先の内側へ入り込んだ横島を、メドーサが蹴り飛ばす。


 

『いけないッ!』
「超・加・速!」 

 


 反応出来るはずも無い横島を庇って、小竜姫が忽然と姿を現す。 


 ガキンッ 


 
「やはり貴様かッ小竜姫ッ!」

 
 メドーサが憎々し気に小竜姫を睨みつける。

 刃と刃が軋みをあげ、せめぎあう竜気と魔力が、オレンジ色の火花を散らした。

 

 

「クッ‥‥!」

 拮抗は一瞬、力の削りあいになる事を恐れ、剣を引いた小竜姫にメドーサが口許に嘲りを浮かべる。

「威勢良く出て来たはイイが、妙神山から遠く離れ更に魔界と化したこの場所でどれだけ私と渡り合えるかねぇ?」


 時間稼ぎをするまでも無い、
地に溢れる魔力はメドーサの力をいや増していた。


 横島を庇いながら攻撃を捌く小竜姫は神剣を盾として耐え凌ぐ。

 

「あんがい頑張るじゃ無いか、」

 メドーサの目にサディスティックな光が宿る。

「でもっ!」

 腰だめに構えた槍の先端に、
渦巻く魔力が集束し、余波が紫電となって具現する。

(これで‥‥終わりだよっ)


 メドーサが魔力を解放しようとした、その時

 

 「「まてまてまて〜いっ!」」


 空間の歪みから二体の鬼が割り込んで来る。

 
「「妙神山守護鬼神 右の鬼門(同じく左の鬼門)! 姫様の命を受けて届け物を持って参ったぞ!!」」

 
 ‥‥イマイチ決まらないのはこの二人の宿命か、

 彼等の抱えたクリスタル状のコンテナ
(“人間兵器”“守銭奴”その他諸々の警告文が染め抜かれている)
が弾け、二つの人影が飛び出して来る。

 

「冥子〜っ! 随分面白そうなヤマに首突っ込んでるじゃないッ!!」

       「ひとくち噛ませて貰うワケっ!」

 


 それに続くように、天井の岩肌を突き破って三体の影が突っ込んで来る。

「マリア! お客サンは丁重になっ!」

   「イエス・Dr.カオス」

 


 マリアの肩口に掴まっている人物を見て、雪之丞が惚けた顔で硬直する。

 


「フェ、 フェイの爺サンっ!?」


 目を丸くする雪之丞に横島が苦笑を堪える、

「ちゃんと最後までニュースを確認しないからですよ、」

 制止しようとして突き飛ばされたピートが解説する。

 
 「風水師の集会が襲撃されたみたいで‥‥
死者二名、重傷者一名、軽傷者三名。 ‥‥フェイさんは幸い軽傷ですんだんです」

 

「鬼門どもが直々に儂を迎えにきての、
治療を施した後、こうしてココにお連れしたと言うワケじゃ」

 
 大口を開けて鷹揚に笑うカオス。

 雪之丞は目を白黒させるばかりだ。
弔い合戦のつもりで敵陣に乗り込んだら援軍として本人が現れたのだから無理もない。


 


「Dr.はフェイさんと共同して原始風水盤を逆操作して! 皆さんはDr.を援護して下さい!!」

 

 小竜姫が指示を飛ばし、GS達が持ち場に散る。

 
「久々に危険と戯れた若い頃を思い出すワイ!」

 カオスの目が妖しく輝き、メドーサの顔が悔し気に引き攣った‥‥

 


 

 


 


 


 メドーサが脱出した後、巨大な<火角結界>がアジトの周りを取り囲むように姿を現す。

 
 GS達を道連れにしようとする勘九朗、しかしその狂笑は、さして間を置かずに凍りつく事となる。

 
「無駄じゃよ‥‥」

 
 フェイ・タオロンが存外に鋭い光を目に宿して勘九朗に告げる。

 
「とうの昔に引退したとは言え、本職の風水術師を舐めん事じゃな。
‥‥この結界兵器は地脈からエネルギーを吸い上げて使用する物。  原始風水盤を使って流入を止めれば無効化する事など容易い」

 
 愕然とする勘九朗に、カオスが薄笑いを浮かべて最後通告を言い渡す。


「観念するか? 若僧」

 

 




「ク‥‥‥‥クソがァァァっ!」

 
 凶眼を見開いた勘九朗が、剣を振りかざして小柄な老人‥‥フェイに飛びかかる。

 
 だが、フェイはさして慌てる事もなく立ち尽くす。


「させるかよっ!」

 
 横島のサイキックスケイルが勘九朗を弾き飛ばし、

 
「馬鹿ヤローがっ!」


 雪之丞の声とともに、勘九朗の意識は刈り取られた。

 


 


 


 


 


〜翌日〜

 
 雪之丞は、“聞きたい事がある”と言って横島から小竜姫の角を借り受けていた。

 隣を歩くピートを一瞥し、公園の木陰で立ち止まる。

 
「妖怪になる事で強くなる事は出来ませんよ‥‥ 恩に報いる為に敵陣に突っ込む‥‥そんな人間の部分に勝つ事は決して出来ないんです‥‥」

 ピートが遠い目をして空を見上げる。

 

「小竜姫‥‥勘九朗の奴は‥‥これから、どうなるんだ?」


 勘九朗はあの後、意識を取り戻さないまま小竜気の術によって神界へと護送されていた。

 
「少なくともいきなり処刑。 なんて事にはなりませんから安心して下さい‥‥もっとも、無罪放免、と言う訳にもいきませんけど」

 小竜姫(の角)は、少し考えこんで言葉を付け加える。

「当面の内は、人間に戻る治療の為の施設に入る事になるでしょう。
‥‥あそこには確か、まだ陰念さんと白龍GSの和尚が入院していたはずですから、案外バッタリ会う事になるかも知れませんね」

 
 小龍姫の言葉に一応は安堵の息を漏らす雪之丞。

 
 「そうか‥‥」


 皮肉げに歪められた口許に、微かな笑みが浮かぶ。

 


 

 

 
「コラ〜ッ! アンタ達もサッサとこ〜い!」


 「「ウッ」」

 
 冷や汗を垂らした雪之丞達の視線の先には、

“雇い主を差し置いてこんな面白そうな事に首を突っ込んでいた”罰として、散々こき使われて目を回しているタイガーと横島の姿があった‥‥

 

 

 

 


 

 
        ‥‥to be continued!!





あとがき
 いやはや、やっと更新できます
原始風水盤編完結です。
(御無沙汰してます)奇坊でございます。
 オフが忙しかったモンで更新が延び延びになっちゃいました、
‥‥忙しかった理由の半分が新作ゲームやり込んでたからだ、って言ったら怒ります?‥‥怒りますよね 堪忍や〜しかたなかったんや〜(土下座)
 紙媒体の方に連載が追い付いて来た影響で多少更新が不定期になるかも知れませんが、当分の内はリタイアする予定無いんで、生暖かい視線で見守っていただけたら幸いです。
 さて、次回は原作から外れて◯◯○◯編(全部伏せ字)

 
でわでわ、

 
★拓坊様
 初めまして、奇坊は愛子すらまともに出せてない作者なので、
拓坊様の作品をいつも指をくわえて読んでいマスです‥‥
 角真っ赤は奇坊作の中で(人間形態時も)ローカルなスタンダードにしよーかなーなどと計画中です。

★しらたま様
 な、ナンもして無いッスよ。ホントですって!by横島
と、言う訳で(どんな訳だ)真実は闇の中‥‥(笑)
 レジェンドラはオススメなんですがねぇ、いかんせん独特すぎの戦闘システムが難易度高過ぎで友人に貸す度に文句言われます(そのくせクリアするまで借りっぱだったりしますが‥‥)

★天浪様
 ううっ、学の無さを露呈してしまいましたな‥‥
誤字(?)報告、有難うございました(ポリポリ)
 雪之丞はある程度“らしさ”をだし易いキャラですよね、
動かし易くて重宝してます(小竜姫とは段違いだ‥‥)

★foaotoeo様
 チャイナ服って言われてサモン3の最強防具ドラゴンチャイナを思い浮かべた奇坊はゲーム脳なのでしょうか‥‥

★緋皇様
 一応“紅衣”がソードにあたる、と言う事で、
原作より格闘寄りに書いていくつもりッス。
初期装備が紅い格闘戦型なので、ユッキーはもしかすると
ストラ○クと言うより○ンパルスなのかも‥‥

★鳴臣様
 実はユッキーが契約する悪魔(?)はもう決まってるんです、
半分くらいはその為の強化案ッすね。
 ちょっとビックネームすぎるかな‥‥とも思ってるんですがオルトロスも大概有名なのでこのまま突っ走ります(笑)

 
★花翔様
 鬼道はそのまま冥子に香港を連れ回されてます‥‥
ユッキーがシリアス寄りなのと対照的に、鬼道は間違い無く(ラブ?)コメディー路線を突っ走る事になりそう‥‥

 

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