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▽レス始

「妙神山のただおくん32(GS)」

のりまさ (2005-11-19 21:47/2005-11-21 09:55)
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<タマモ>
「お、横島、どこ行くんだ?」


「ん、雪之丞か。妹がデジャブーランドの家族招待券もらってな。三人で行こうってことになったんだ」


「ふうん。おっ、これ四人までタダじゃねえか。俺も連れてけよ」


「ああ、人数は多い方が楽しいからな」


 たらららららら〜たらららららら〜たららららららーんらーん


 雪之丞が仲間に加わった!


 ヨコシマの機嫌が10アップした!


 天竜の機嫌が5アップした!


 私の機嫌が5億ダウンした!


 ……なんで更に人が増えるのよ。


 私とヨコシマ(プラス2匹)は早朝、小竜姫たちの目を掻い潜りデジャブーランドに到着することに成功した。出かける時に小竜姫たちが起きなかったところを見ると、どうやら昨日夕飯に仕込んだ眠り薬はばっちり効いたようだ。
 だがなんの因果か、バス停に向かう途中で早朝トレーニングをしていた雪之丞と出会ってしまい、さらにお邪魔虫が増えてしまった。なぜ自分はこうもついていないのだ。あれか、今まで抜け駆けしてきた罰なのか?
 そんなこと考えながらデジャブーランドの門をくぐると、ヨコシマが楽しそうな声をあげる。


「それじゃあ、まず最初に何に乗ろうか?」


「余はあれに乗りたいぞ!」


 同じく楽しそうな天竜が指したのはジェットコースター。遊園地の定番ね。面白そうとは思うけど……でも私はあんたたちと遊びに来たわけじゃないの。ヨコシマとデートしに来たの。そこ分かってる?


「ヨコシマ、あれ入ってみよう」


 私が指したのはお化け屋敷。カップルが入るところの定番ね。


「お、お化け屋敷じゃと? い、いやじゃ! よ、余はあんな面白くなさそうなところは入りたくないぞ! のお横島、やはりジェットコースターよのお?」


「ははーん、天竜。さてはあんた怖いんでしょう?」


「そ、そんなわけなかろう! 余に怖いものなどない!」


 ふふんと勝ち誇った笑みを見せる私に、天竜が噛み付く。単純な奴ね。


「じゃ、ちょっと入るぐらい簡単でしょ? なんてたって天下の竜神王のご子息なんだから」


「ぐぬぬ……」


 言い争う私と天竜。やれやれといった顔をしているヨコシマ。早く遊びに行きたくてうずうずしている雪之丞。
 時間はいくらでもある、だからこんな馬鹿もしてられる。

 そう思っていた。

 だがしかし、往々にして時間とは無くなった後でその大切さに気付くものだ。


「見つけたよ、天竜童子」


妙神山のただおくん〜子狐の歌 中編〜


<忠夫>
 休日の遊園地だというのにいつの間にか周りに人がいなくなっており、代わりにそこにいるのは、魔族。目の前に現れた者がそうだと一目で分かった。多分、いつもは魔力を隠しているものの魔族であるルシオラとよく一緒にいるので魔力には敏感なのだろう。とはいえ魔族だからといって敵とは限らない。ルシオラは敵ではないし、今のデタントの流れから言っても魔族が全て人間や神族に敵対するとは限らない。


 だが、目の前の女から滲み出てくる殺気! これを敵と言わずして誰を敵と言おうか。


「タマモ、天竜を連れて逃げろ! 雪之丞!」


「おおっしゃ! ママ、俺に力を!」


 奴の狙いは竜神王の息子である天竜童子だと見て間違いない。デタントだからといって天竜を神族の護衛もつけずに連れまわしたのが仇となったか。


「……分かったわ。すぐに小竜姫たちを呼んでくるから、それまで無理しちゃ駄目よ!」


 タマモは自分と違って頭がいい。今自分が何をしなければならないのか、そして自分が直接戦闘には向いていないことを理解している。


「行くわよ、天竜!」


「嫌じゃ! 友が戦っているというのに余だけ逃げるなどと」


「私たちが居てもヨコシマの邪魔になるだけなの! 悔しかったら強くなりなさい! そして分かったらとっとと行く!」


 なんとか天竜を説得したタマモが手を引いて、全力で逃げていく。これでとりあえずは安心だ。後は……こいつをどうするかだ。


『主よ、こやつはその辺の魔族ではない。明らかに中級、いや上級魔族と見て間違いないだろう。少なくとも霊力だけなら小竜姫様に引けを取らぬぞ』


 戦闘になって起きてきた心眼が真面目な声で告げる。分かってる、こいつは強い。


『そうよ雪之丞。この魔族、今のあなたたちじゃ勝てないわ。なんとかして時間稼ぎを……』


「相談は終わったかい!?」


 早い。


 そう認識する間もなく迫ってきた魔族の三つ又の矛を、俺たちはほぼ直感で避ける。だが俺と雪之丞が、よく言えば相手を挟み撃ちにする形に、悪く言えば分断される形になった。


「へえ、今のを避けるかい。忠夫はともかくそこの坊やまで避けるとは思わなかった。ちょっと面倒だね。……来な!」


 奴が合図すると、魔族らしきのっぽの男が影から現れる。いや一見魔族に見えるがよく見ればその気配は人間だ。以前小竜姉ちゃんに見せてもらったシャドウに似ている……これはもしかして!?


『魔装術よ雪乃丞! しかも私たちのと違って本物の魔族を使いこなした完全な!』


「おや、魔装術を知ってるのかい。まあそこの坊やも魔装術のぱちもんを使っているみたいだから知ってても不思議じゃないでしょうけど。さ、そこの坊やはこいつが相手してくれるわ。そして忠夫、あんたは当然……私と戦いな!」


 俺の、初めてかもしれない勝ち目のない戦いの始まった。


<雪乃丞>
「く、どけよ! ダチが危ねんだ!」


 ママ装術をフルに使って、横島と俺との間に立ち塞がるのっぽを攻撃する。だが俺の渾身の拳は奴の手で軽く受け止められ、逆に蹴りのカウンターを食らった。

 顎に鈍い痛みが走り、目眩がする。脳が揺れたのか?


 だがそのまま怯まず拳の連打。手数で勝負だ。


 しかし手打ちで力の篭ってない攻撃ではまともに当たってもダメージすら与えられない。


 逆に奴の振り下ろした両拳で俺は地面に叩きつけられた。


「ぐっ……」


「…………」


 奴は無言で俺を見下ろしている。気に食わねえ。絶対その魔装術の仮面を剥いで、その面を見てやる!


「オラァ!」


 近距離からの、それも俺の得意な霊波砲の連続発射。しかしそれすらも奴の圧倒的な魔力の前に弾かれていく。

 奴の使っている魔装術は下級とはいえ本物の魔族。それに比べて俺のママ装術は融和性が高く暴走の心配がないとはいえ、元々は人間であるママの霊体の更に一部でしかない。その差はパワーにして数百マイト以上の差。


 奴は悠然とこちらに向かってくると霊波のサーベルを作り出し、振り下ろす! 俺はなんとかそれを避けるが、すぐに横からの第二撃が俺を吹っ飛ばす。


「がっ!」


『雪乃丞!? きゃっ……』


 ママ装術となっているママの霊体の一部が弾け跳んだ。もしママ装術を使っていなかったら大怪我をしていただろう。


 大怪我?


 相手は自分の数倍のパワーを持っているのに、その一撃がママ装術を使っていないとしても大怪我で済む程度の攻撃でしかない?


「どういうことだ!? てめえ、手加減でもしてるつもりか!?」


「…………」


 奴は相変わらず何の答えも返さず、代わりに霊波砲を俺にプレゼントしてくれた。俺のそれよりも重く厚いそれは、簡単に俺を飲み込んでいく。


『雪乃丞、避け……』


 ママの声が届く前に俺はその霊波砲の直撃を受け、ママの霊体ほとんど全てが弾け跳んでいき、ママ装術が完全に解ける。


 悪いわね、雪乃丞。


 そして俺の意識が闇に消えていくその一瞬、どこかでそんな、聞いたことのある声が聞こえた気がした。


<忠夫>
「ほらほらほらほら! 小竜姫仕込みの剣技、見せてみな!」


 魔族の矛が鋭く襲ってくる。回避に専念することでなんとか持っているが、このままではいずれ直撃を受けるだろう。

 相手は強い。霊力は小竜姉ちゃん並みだが槍術も小竜姉ちゃんの剣技に勝らずも劣らない。


「く、無限……」


「遅い!」


『主!』


 無限拳を繰り出そうとした俺を、魔族はその振りかぶった隙を突いて攻撃してくる。心眼の叫びに気付いた俺はぎりぎりのところで防御するが、そのまま流れるような動きで蹴りが鳩尾に入れられ、吹っ飛ばされる。


「無限拳だっけ? その技は面白い技だけど、あまりにも隙が大きすぎるね。それじゃあ自分よりも技量の高い相手には通用しない」


「…………」


 俺はぺたんと座り込んだまま、動かない。


「もう諦めたのかい? つまらないねえ」


 魔族は油断して矛を下ろしたまま歩み寄ってくる。……今だ!


「食らえ!」


 今込められる全霊力で作り上げた特大のサイキック・ソーサー。使い勝手では栄光の手の方が上だが、ソーサーは最大まで霊力を込めればその威力は栄光の手のそれを上回る。俺はそれをほぼノーモーションで投げつけた。


 が。


「甘いねえ。ばればれだよ」


 予想していたのだろう、素早く矛を振り上げるとサイキック・ソーサーは簡単に弾かれた。あれだけの霊力を込めても、傷を与えることすらできない?


『主、ここは引くのだ! 今の主では勝てん!』


「駄目だ心眼。今逃げたら天竜とタマモが危ない」


 心眼の言葉は正しいが、俺も引くわけにはいかない。子供の足じゃまだ遠くまで逃げてはいない可能性もある。だが今の特大サイキック・ソーサーで霊力が尽きかけているのも事実。

 打つ手のないまま、俺は魔族を見上げるしかなかった。


「まだまだだね。いいかい? 不意打ちってのは……こうやるんだよ!」


 言葉共に俺の影から白い蛇が現れ、絡みつく。嘘だ。使い魔の召喚は自分の影からしかできないはずだ。俺は驚愕の眼差しで奴を見る。
 そして奴の矛の影が先ほど振り上げたために太陽の角度の関係で伸び、俺の影と重なっていることに気付いた。まさか……


「気付いたかい? さっきのあんたの霊波を私は避けることもできた。だが私はあんたに気付かれないように影を重ならせるためにわざと振り上げて弾いたのさ」


 圧倒的な霊力差に、戦闘技術は段違い。そして経験や勘はもはや天と地の差。俺は初めて“越えられない差”というものを感じた。


「さあて、あんたの絶望の表情はずいぶん楽しませてもらったからね。次は……泣き叫ぶ顔でも見せてもらおうか!」


<タマモ>
「いい天竜。ここまでくればもう大丈夫。だからあんたは小竜姫たちを呼んできて。奴らはなぜか私たちの方を追ってきてないから、一人でも多分大丈夫だと思うから」


 ある程度まで逃げた私は、人ごみの中で天竜に伝えた。初めは奴らが天竜を狙っていたと思ったし、あの魔族もそのような発言をしていたから疑わなかったが、よく考えればおかしい。逃げても全然追いかけようとはしなかったし、そもそもそんな簡単に逃がすだろうか?


 そこまで考えて、私の脳裏に嫌な考えが浮かぶ。


 奴の本命はヨコシマ?


 ならば自分は戻らなければならない。確かに自分は直接戦闘には向いてないが、幻術や狐火による援護なら力にはなれるだろう。私が一番に優先することはヨコシマを守ること。天竜がもう安全なら私が今ここにいる理由はない。


「待てタマモ! 余も……」


「馬鹿言わないの! なんのためにヨコシマたちが残ったと思っているのよ」


 天竜にとってヨコシマは初めてで、無二の親友。その親友が自分のせいかもしれない事件で自分のために戦っているのだ。助けに行きたい気持ちも分からなくはないが今は冷静になってもらわなければ困る。


「いい、あんたは小竜姫たちを呼んでくるのよ? いいわね!」


 私は鳥に変化すると、すぐさまヨコシマのもとへ向かった。


 そして全力で飛びこと数分、なんとか元の場所へ戻ってこれた。


 なにこれ?


 倒れているのは雪乃丞。おばさんの霊体の意識もないのか沈黙したままだが、死んではいないだろう。


 そしてヨコシマ。私を助けてくれた男。私が魅入られた男。今、一番愛しい人。


「なんだい、中々泣かないねえ。我慢強いのはいいことだけど、それじゃあつまんないじゃないのさ」


 それが一方的にいたぶられている。


 傷だらけで。


 あちこちから血が出て。


 それはとても痛そうで。


 でもそれは私たちを助けるためで。


 でもそれは私の大切な人で。


 だから。


 燃やしてやる。全てを炎で炎で炎で炎で炎で炎で炎で炎で炎で炎で炎で炎で炎で炎で炎で炎で炎で炎で炎で炎で炎で炎で炎で炎で炎で炎で炎で炎で炎で炎で炎で。


 染めてやる。血の赤で赤で赤で赤で赤で赤で赤で赤で赤で赤で赤で赤で赤で赤で赤で赤で赤で赤で赤で赤で赤で赤で赤で赤で赤で赤で赤で赤で赤で赤で赤で赤で赤で。


「ん、なんだいおちびちゃん。たった一人でお兄ちゃんを助けるためにってかい? だが残念、今からお兄ちゃんは私と一緒に……」


 うるさい、喋るな。


 今黙らしてやるから。圧倒的な力で力で力で力で力で力で力で力で力で力で力で力で力で力で力で力で力で力で力で力で力で力で力で力で力で力で力で力で。


 鍵は知っていた。


 ただその扉を開くのが怖かっただけで。


 だが彼を失う以上に怖いことなどあるのか?


 いや、ない。


 だから私は、この扉を開けることにためらいはない。


 開けば私は私でなくなるだろう。いつか来るとは思っていたが、こんなにも早く来るとは思わなかった。


「燃やす」


 そして私はその扉のノブに手をかけた。


 往々にして時間とは、無くなった後でその大切さに気付くものなのに。


 続く


あとがき
 忠夫と雪乃丞、初めての完敗、そしてダークタマモ。今回は完全なシリアスバトルです。まあ、所詮は「ただおくん」なので底は知れてますがね。

 ではレス返し。

>拓坊様
>竜神王様…別のベクトルで逝っちゃってるんですね
 偉い人ほど逝っちゃってます。竜神王はそっちになっちゃいました。そしてそのベクトルが修正されることはないでしょう。

>黒覆面(赤)様
>天竜、女の子でも野菜でもなかったんだ……良かったね忠夫くん!ユッキーに次ぐ数少ないまともな友達じゃないか!
 天竜はまともです。後女性化は面白いんですが元がないので上手くできる自信がありませんので止めました。基本的にTSは扱いきれる自身がないのでやらないつもりです。ギャグとしてならやるかもしれませんが。

>D,様
>天界の道具使って性別を変えるとか・・・・
 いや、一応天竜は本当の友情を感じているのでそれはさすがに……。銀ちゃんや陰念の一発的なギャグとして面白いかもしれませんが。

>ジェネ様
>利用されてるのは真友君なのでしょうか…?誰にせよ哀れですね。
 いえ、ただのエキストラBです。真友くんは一応タマモより下ですからね。まあ、彼が哀れなことに変わりはありませんが。

>イース様
>...まともでいてあげてね。頼むから。
 まともです。というか今まで一番まともかもしれません。

>雪龍様
>・・・でも角、生え変わりから性反転してしまうかも
 いえ、ですから天竜は(以下略)。みんな女の子を願ってたんでしょうか? 

>ジェミナス様
>そこでメドーサと遭遇の可能性有りですか!?
 ずばりです。今回は分かりやすかったかもしれませんね。

>神曲様
>竜神王、お前もか…
 というか大人はほぼ全員です。

>ゆん様
>男の子だと思っていたら女の子でした♪なんて場合もあるからな。シロがそのパターンだったし・・・
>角が生えて成長した天竜は体も大人になりナイスバディに、そしてヨコシマに熱い思いを・・・なんて!
 だから(以下略)。そんなにみんな天竜女性化を求めているとは……。恐るべし、maisen氏! 

>柳野雫様
>天竜は普通に健全な友達の様で。何となく安心(笑)
 そうです、そうなんです。天竜は普通のお友達なんです(泣)。

>わーくん様
>番外編でいいんで、忠夫君と天竜の初対面のシーン見てみたいですね。よろしく!
 いつか入れると思いますので楽しみにしていてください。

>シヴァやん様
>お前は一体何考えとるんや! 竜神族はこんなんばっかりなのか!
 こんなんばっかりです。天竜一番まとも。


 それにしても、天竜女性化希望の数にびっくりしました。いや本当に。自分は基本的に根本的な設定を変えるのは苦手なので、女性化は少し難しいです。だからケイとか出てきても女の子になる予定はありません。期待してくださっていた方はごめんなさい。

 次はもう決まっているので結構早めに更新できるかも? ちなみにタマモの前世関係は前にあとがきで書いたとおりです。

 ではこの辺で。

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