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「せかいはまわるよどこまでも~17~(GS)」

拓坊 (2005-11-15 00:54/2005-11-15 10:37)
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~横島視点~


恋は何時だって突然だ…そんな言葉を聞いたことがある。
俺は誰かに恋したことが無いからその意見には賛否することはでない。

ただ、一つだけいえることがある。


「忠っち、降霊会をするよ!」


「はあ?」


キイ兄は何時だって突然だ…此れだけははっきりと断言できる。
そして俺は、学校帰りの制服の姿でキイ兄に拉致された。


キイ兄に車に乗せられて着いたのは、愛知県のとある神社…随分と遠い場所まで来たものだ。

ちょっと待っててねと言いながらキイ兄は神社の敷地の中へと入っていった。
暫くして、キイ兄は随分と長い布袋を持って帰ってきた。
その袋は質素でいながらかなりの存在感をかもし出している。
さらにその中のものが、それ以上に強烈な気を発していた。


「それじゃあ行こうか~」

キイ兄は持っておいてと俺にその袋を渡し、車のエンジンをかけて走り出す。
俺はそのびんびんと強烈な力を感じる袋をちょっと眺めた。


「なあ、キイ兄此れなんなんだ?」


「ふふっ、秘密秘密~」


キイ兄はこっちを見て微笑みながら車を運転する。
危ないからちゃんと前を見てくれ…


そしてやってきたのは、どっかの古い神社。
どうやら寂びれて放置されているみたいだ。
けど、雑霊が集まったりはせずまだ神聖な気が辺りを包んでいる。


「キイ兄、此処って何でこんなに神聖な気が満ちてるんだ? 普通管理とかされて無かったらもっと雑霊とか住みついて大変なことになるんじゃないか?」


「ああ、ここは前自分が御祓いしたとこ。ほら、あそことか…」


そう言ってキイ兄が指した鳥居の柱に『聖域』と書かれた霊符が貼られている。
成る程、アレが神社のそこらじゅうに貼ってあるから辺りに神聖な気が満ちて、雑霊も入ってこないのか。
キイ兄が言うには近々改装して新しい住職が来るらしい。


「それじゃあ準備しようか」


そう言ってキイ兄は円形になるよう、地面にミミズが這ったような文字を書き出す。
その間に俺はお神酒とかどっから持ってきたのか簡素な食事一式を並べて準備する。


「火打石? これも使うのか?」


「うん、それも今回呼び出す英霊に深い関係があるものだよ」


見つけるの苦労したんだよな~と言いながらキイ兄はさっきの神社から持ってきた袋を持ち出す。
そしてゆっくりと紐を解き、中身を取り出した。
キイ兄が取り出したのは一振りの剣だった。


「ん~、これはいいものだ~」


「ん、なっ…」


その瞬間、此れまで以上に圧倒的な霊気、いや神気がビシビシと感じられる。
俺はそれに当てられて体が金縛りにあったように固まってしまった。


「随分と溜め込んでるね…やっぱりずっと封印されてた所為かな?」


キイ兄はそんな中でも平然とした様子で、その剣を両手で天を向くように構える。
これで儀式の準備は完了らしい…
降霊の操作は全てキイ兄がやるから、俺はただキイ兄の書いた魔法陣に霊力を流すだけでいいらしい。


「それじゃあ…いくよ?」


俺はゆっくりと頷いた。


「いにしえに失われし魂よ…地上より消え失せし最古の英雄にして猛々しいに武の者、今此処に蘇り我らの前に現れいでよ!!」


儀式が始まり、キイ兄が降霊の祝詞を告げると魔法陣が光り輝き始める。
そして、俺の体からはどんどんと霊力が搾り取られていく。


「エロイムエッサイム…我は求め訴えるものなり! 黄泉の世界より降り来たれ!!」


最後に、キイ兄が手に持つ剣を地面に突き刺した。
その瞬間魔法陣の光が最高潮に達し、冥界と現世が繋がりあい強大な何かが現れた。


「我を目覚めさせるのは誰だ?」


現れたのは髪の毛を額の両側で棒状にまとめ、白い襦袢のような服を着たがっしりとした男だった。
随分と古い時代の英霊みたいだけど、一体誰だ?


「やっほう! 成功だよ忠っち」


「ああ、喜ぶべきなんだろけどさ。結局呼び出したこちらの方はどちら様?」


「あれ、分かんない? そうだな…ヒントとしてはこの剣は『天叢雲剣』って言うんだよ」


天叢雲剣ってどっかで聞いたな。たしか別名は…


「…草薙の剣……」


え? ってことはこれ、日本の三種の神器って呼ばれてるあの有名な?
それじゃあ此れにまつわる歴代の英霊って…あのお方?


「もしかして…貴方はヤマトタケル?」


「いかにも我の名は小碓命(おうすのみこと)、またの名をヤマトタケルノミコトと言う」


なんちゅう偉人を呼び出してるんだキイ兄…日本の最大級の英霊なんて……


「我を呼び出すとはなかなかの術者らしいが、如何なる理由があって呼び出しなのだ?」


あっ、ヤバ…キイ兄だったら何となくとか言い出しそう。
そんな事言ったら流石に温厚そうなこの人でもキレそうだぞ…
俺は最悪の状況を考えながら、キイ兄の答えを待つ。


「それは…鍛えて欲しいんです」


「ほう、我に武の道の師事を仰ぐか…死ぬぞ?」


うっわ、滅茶苦茶物騒なこと言ってるぞ。
そしてとっても嫌な予感がするぞ。もうアンテナがバリ三ぐらいに受信しまくってるぞ。


「覚悟の上です。なあ、忠っち!」


「そこで俺に振るか! てか、やっぱり俺なのかよ!」


予想通りに俺に話を振ってくるキイ兄を睨みつけると、無言でサムズアップする。
そして、いきなりガシッと肩を掴まれた。


「ほう、なかなか鍛えているようだな。だがまだまだだ…よかろう、我がじきじきに鍛えてやろう」


「いえっ、めっそーもないです! まだ未熟者なので!!」


「では、我が立派に一人前にしてみせようぞ」


ノオォォォォ! 墓穴掘ったぞ俺ーーー!!!

俺はそのまま、ヤマトタケルの作り出した加速空間とやらに引きずりこまれた。
何でも魂を何倍にも加速させて、より効率的な修行が出来るらしい。
しかも加速空間の一日はもとの世界の一秒だとか…


「それ! 此れをかわしてみせよ!!」


「視界一杯に広がる霊波砲をどうやってかわせって言うんじゃーー!!」


「忠っち頑張れ~」


俺が加速空間から出られたのは、元の世界の六分と五秒後…
精神が肉体より一歳分多めになってしまった。
何度も死に掛けたけど、此れで少しは強くなったのだろうか……


「では、我は此処で失礼する」


「タケっちアリガトね~。あっ、これ御土産に持っていって」


「むっ、そうか。キイ坊よ感謝する」


ヤマトタケルとキイ兄はあだ名で呼び合う中になってるし。
こうしてヤマトタケルはキイ兄に貰ったお土産を片手に帰っていった。
なんだか旅行に来た観光客みたいな去り方だな…全然ありがたみってのが無い…


「そういやキイ兄、土産は何を渡したんだ?」


「ん、饅頭とか煎餅の詰め合わせ…」


何だ、意外と普通だな…
まあ普通が一番だしそれでもいいか。


「…の中に激辛風味のが入った『ザ・ロシアンな詰め合わせ~この辛さに耐えられるか!~』を渡したんだよ」


「日本を代表する英霊になんて物を土産に渡してるんだ!!」


俺の頭の中にハズレ…いや、ある意味アタリを食べて火を噴きながら悶えるヤマトタケルがよぎる。
い、嫌だ…嫌過ぎる……そんな英霊は見たくないぞ…


「因みに使った調味料の辛さは200万スコビルだよ」


「…凄いのか?」


「市販のタバスコは2千、ハバネロソースが4千で普通はここが限界なんだって」


それはつまりタバスコの千倍近い辛さだってことか?


「さらに話によると、その調味料を鍋に一滴たらして食べてみたら死にそうになる位悶えたらしいよ。もはや危険物なんだってさ」


「そんな物を土産に渡すな!!」


とっくに死んでるけど…冥福を祈っておこう……


せかいはまわるよどこまでも
~~ここはGS幼稚園? 前編~~


今日はキイ兄も出かけてて、おキヌちゃんも買い物に行っていて、何故かグレンはシメサバ丸を持って散歩に出かけてしまった。
グレンのことは近所では知られてるから大丈夫だけど、その手にシメサバ丸(包丁形体)があったら流石に怪しいよな。
大丈夫か?

まあそんなことで俺は今一人で家で留守番しているわけだ。
と、そのとき玄関から扉を叩く音が聞こえてきた。


「お届け物で~す」


「はいはい、ご苦労さんです」


俺は戸棚から判子を取出して玄関に向かう。
ささっと紙切れに判子を押して、配達人から荷物を受け取った。
あて先はキイ兄、大きさは片手に乗せられるくらいでかなり軽い。一体何が入ってるんだ?
俺はとりあえずその配達物をキイ兄専用の小さな机の上に置いておいた。


「あ~、暇だし俺も散歩にでも出かけようかな」


俺はGジャンを羽織って、適当な小物を付けて、財布の中を手にとって確認する。

よし、漱石さんが四人ほど生存しているぞ。そういや諭吉さんはこの前服を買いに行ったとき名誉の戦死を遂げたんだったな。

俺は四人小隊になった漱石さんを財布に戻して、玄関で靴を履いた。
そして、いざ出かけようと扉を開いたところで…目の前に変なのがいた。


「お前は確か横島だったかな? 悪いけどこのまま子供…へぶらっ!?


「ああ、すまん。ついやってしまった」


てっぺんハゲのピエロの格好をした変なおっさんがラッパを構えたものだから、つい条件反射で殴ってしまった。
それもこれもキイ兄が『怪しいのがいたら有無を言わさず黙らせるんだよ。その後ゆっくり対処すればいいからね?』何てことを言って聞かせるもんだから、ほぼ無意識のうちに体が動いてしまった。


「んで、お前は妖怪…いや、悪魔みたいだけど何のようだ?」


「ふっ、そう簡単に敵に情報を流すほどおいらは馬鹿じゃないさ。

さあ、大人しく此処に届いている『金の針』を渡すんだ!」


目の前のハゲピエロがそう言ってさあよこせと片腕を前に突き出す。
情報流さんといっておきながらそのまま目的行ってるんじゃん。こいつは馬鹿か?


「いや、自分で目的言ってるし。お前馬鹿だろ?」


だからそのまま率直な意見を述べてあげた。
ハゲピエロは『しまった!』と頭を抱えて大げさに驚いている。やっぱり馬鹿だな。


「ええい、目的を知られたからには見逃すわけにはいかない!」


「待てぃ! お約束的に自分で言っときながら何理不尽なこと言ってるんだハゲ!!」


ハゲピエロは聞く耳もたんと、手に持ったラッパを吹き始めた。
随分と外れた音がするな、だが魔力が篭ってるってことはなにやら危なそうだ。


「ヘィッルパラッツ!!


「そんな目の前で吹かれて止めないわけ無いだろうが」


やっぱりコイツは馬鹿じゃない。大馬鹿だ。
殴られた頬を押さえて演奏中に殴るなんて卑怯だとか言ってるが、俺は正義のヒーローが変身中に待っていてやる怪人みたいに優しくは無い。
どうせなら変身中に攻撃するな。きっとキイ兄もそうする。
いやそれ以前にキイ兄なら変身する前にトドメをさしかねないな。


「あれ? 横島さんそんなところで何やってるんですか?」


おおっとおキヌちゃん、何てバッドタイミングで帰ってくるんだ!
ハゲピエロもおキヌちゃんに気付き、ニヤッと笑うとその場から宙へと飛び立つ。


「まずはそっちの女の方から子供にしてやる」


ハゲピエロがまた音の外れたラッパを吹き始める。
ヤバイ! 空中じゃ殴れないし、今からサイキックソーサー作って投げても演奏が終わる!
俺は咄嗟に、おキヌちゃんの下に駆ける。おキヌちゃんはどういう状況なのか理解出来ていないのかオロオロしっぱなしだ。


「ヘイ!」


「サイキックソーサー!!」


演奏が終わると同時に、俺はおキヌちゃんの前に立ってサイキックソーサーを展開。
ハゲピエロの方から呪いに似た魔力が飛んでくる。


「ぐっ、なっ! ヤバッ強い!!」


予想以上に強い呪いにサイキックソーサーが削られていく。しかも相性が悪いのか呪いの方は大して威力が弱まっていない。


「ええい! 自壊せよ!!」


俺は最後の望みとしてサイキックソーサーを自壊させ、爆発させる。
それで思惑通り呪いを散開させた…んだけど……


「ヘイ!」


「二発連続は無理やー!」


既に演奏を終わらせたハゲピエロが更に呪いを放ってきた。
サイキックソーサーの展開も間に合わず。俺はそれを諸に受けた。


そしてそのまま、俺は意識が遠くなっていくのを感じた……


~ナレーター視点~


「うおぅ! 此処は何処だ!」


横島が寝かされている布団の中から跳ね起きた。辺りを見渡すと、そこには見慣れた家具が並んでいる。


「あれ? 俺なんで部屋の中で寝てるんだ?」


ハゲピエロと戦っていたはずなのにと首を傾げる横島。


「あっ、忠っち起きたんだ」


其処にキイが横島の後ろから声をかけた。横島はこの事情を聞こうと振り返ると…
でっかい猫がいた。そりゃ人間ぐらいにでかい黒猫が。


「キイ兄、なんなんだその格好は?」


黒猫だと思ったのは、きぐるみを着たキイだった。


「これ? お店の福引で当たったの」


そんなもんが福引の景品なのかよと横島はその店が何を取り扱っているのかちょっと不安になった。
横島は気を取り直して、此れまでの経緯を聞くことにした。


「と、その前におキヌちゃんは?」


あのラッパの悪魔と対峙して、横島が倒れるときにおキヌは横島の後ろにいたのだ。
今ここにおキヌがいないので横島はちょっと心配になる。


「ああ、おキヌちゃんなら平気だよ。今は買い物に行ってもらってる」


横島はそれを聞いてほっと胸を撫で下ろした。何を買いに行かせたのかは知らないが無事ならそれでいい。


「それで、あの後…俺が倒れた後なんだけど、どうなったんだ?」


「ん、その後すぐに自分が帰ってきたみたいなんだけど…あのハゲは自分見たら悲鳴上げて逃げてった」


「そうか…」


何故逃げたのかは分からないけど、とりあえず助かったらしい。
さらに横島は帰ってくるときからその格好だったのかと尋ね、キイは勿論と答える。
キイに横島の『恥ずかしくないのか!』という突っ込みは無駄なのだろう笑って回避し、『熱くないのかよ!』と言う突っ込みには帰ってくるだけで一キロぐらい体重減った気分とサムズアップ。


「キイさ~ん、買って来ましたよ~」


其処におキヌが買い物から帰ってきた。ふよふよと荷物を両手に持って横島とキイの下へ向かう。
おキヌはどうぞと手に持った荷物をキイに渡す。キイは中身を確認し、オッケイ流石おキヌちゃんと褒めている。
そして、キイは袋の中身を横島へと差し出した。


「…なして子供服?」


横島が手に取ったものは、黒いTシャツに紺色の半ズボン、その他もろもろだった。
その全てが子供サイズだったので横島は首をかしげている。


「気づいてないみたいなだから言うけど…忠っち今子供になってるよ?」


「はあ?」


横島は何を訳の分からないことをとキイに視線を向けると、そこには大きな鏡が一枚。何故か其処にいるのは外見5、6歳の男の子、しかも見覚えがあると言うかはっきり覚えているその顔。小さい頃のものとはいえ自分の顔を忘れることは無いだろう。


「うっそぉぉぉぉぉぉぉぉーーー!!」


「ホント」


横島が見つめている鏡の後ろから、キイがひょこっと顔をだして一言告げる。


「な、何がどうなってるんだよ!」


「ほら、さっきハゲに変な攻撃されたでしょ? あれは相手を子供にしちゃうものだったわけ」


「す、するとまさか!!」


横島は慌てた様子で、まだ布団の中に入っている下半身を確認する。
勿論子供になってしまった其処には…


「は、生えてないぞーーーー!!」


ガーンとショックを受けて布団に突っ伏す横島。
横島の叫びを聞いて、おキヌがキイに何が生えていないのか聞くがもうちょっとしたらねとはぐらかした。


「まあ、とりあえずその格好じゃなんだしそれに着替えてよ」


キイがそう促す。横島の服は何故かそこらじゅう破けたりしていて随分とみすぼらしいものだった。


「ああ、けど何でまた服がこんなボロボロに?」


布団の中でごそごそと服を着替えつつ、横島は当然の疑問をキイに投げかけた。
あのラッパの悪魔とは肉弾戦をしたわけでもないのに服がこうなるなんて変だろう。


「忠っち厄除けのリストバンドつけてたでしょ? あのクリスマスにあげたやつ」


「そういやつけてた気がする…」


キイが言うには、その厄除けのリストバンドが子供にするという呪いをレジストして、その際に生じた衝撃で服が破けたらしい。
だがレジストも完璧ではなく子供の姿になってしまったのだという。


「本当なら記憶や経験も吸い取られちゃうんだけど、レジストのおかげで年齢だけ吸い取られたみたいだね」


「そっか…ところで今更だけどキイ兄あのハゲピエロって何者?」


「ん、パイパーって言う国連が指名手配している悪魔だよ」


普通最初に聞いておくようなことを、横島が今更聞き、葵依がそれに答える。
指名手配と聞いて確かに強かったなハゲだけど、と納得する横島。


「多分あのハゲは『金の針』を狙って此処に来たと思うんだけど、それらしきもの届いてない?」


「ああ、宅配便がきて受け取ったのはキイ兄の机の上」


横島に言われて、キイは自分の机からその荷物を持ってくる。
包装紙をささっと開いて、中から一つの小さな袋を取り出す。


「うん、確かに此れみたいだね」


キイは袋の中から細い針を取り出して、確かに此れだと確認する。


「何でまたそんなもんが家に?」


「これもともとは令子ちゃんが取り寄せたものなんだけどさ…」


美神は念には念を押して、自分のところには一旦ダミーを遅らせ、キイの下に本物を送るように細工したとキイが説明する。
それじゃあ何故パイパーは此処を襲撃に来たのか? それは考えればすぐに分かることだ。


「令子ちゃんに何かあったみたいだね。行ってみよう」


キイは金の針を懐にしまって、小さなリュックを一つだけ背負う。
横島もそれじゃあ俺もと布団から抜け出したところで、何故か身動きが取れなくなった。


「あの、おキヌちゃん放して欲しいな~って思うんだけど?
ってか何故抱きつくの?」


「えぇ~、だって小さい横島さんって可愛いんですもん♪」


やけに上機嫌なおキヌが小さくなった横島を抱き上げ、ぬいぐるみのようにぎゅっと抱きしめている。
横島のほうは可愛いと言われて、精神的に大きなダメージを受けていた。
やはり17歳にもなって可愛いなんて言われるのは嫌なのだろう。
そのまま横島の『放せ』とおキヌの『もうちょっと』が延々と繰り返されて、見かねたキイが、


「令子ちゃんの所までは歩いていくけどその姿じゃ遅いし、自分におんぶされるのとおキヌちゃんに抱っこされるのどっちがいい?」


「おキヌちゃんでお願いします!」


横島は暴れるのを止めて即答した。
決して男より女の方がいいにって理由で選んだのではない。
まあそれも多分に含まれているだろうが、横島はキイと合って間もない頃に何度か背負われたりしたことがあるのだが、その度に車酔いならぬキイ酔いをしてしまうのだ。
別に揺れてたりするわけでもないのに何故か酔う。原理は全く不明だ。
しかもその酔いが降りても二、三時間続くので横島は思い出しただけで顔色がブルーになっている。


「それじゃあ出発~」


「「おお~」」


蒼河霊脳相談所一同が出動した。


「よしっ、ここが令子ちゃんの事務所だ!」


「早っ! 来る間の描写一切無しかよ!」


来る途中は特に何も無かったので完全にカットされていた。
キイは横島の突っ込みをスルーしてお邪魔しますと美神除霊事務所の扉を開く。
そーっと三人が覗き込むと其処に広がるのはぐっちゃぐちゃに荒らされていた。


「うわっ、令子ちゃんったら散らかしすぎだよ」


「違うだろが! どう見たって荒らされたんだろう!!」


キイから美神究極の片付けベタ説が浮上した瞬間、横島がすぐさま否定する。
兎に角パイパーに襲われたのは確実だろうから、調べるために慎重に中へと入っていく。
そしてオフィス辺りに入ったところで、人影が一つあった。


「あっ、令子ちゃん発見!」


「うえっ! マジですか!?」


其処にいたのは、どう見ても今の横島より一個くらい年下の女の子がソファーに座っていたのだ。
横島の記憶の中では美神はあの抜群のプロポーションでクールビューティーだった女性しか思い浮かばなく、目の前にいる可愛らしい少女とイコールで繋がらなかった。


「もう、おちょいわよキイ。はやく令子をつえていくの!」


腰に両手を当ててぷんぷんと怒りながら少女姿の美神がソファーから飛び降りる。
そして散らかった部屋から一つの鞄をキイに持たせた。


「なあ、キイ兄…美神さんキイ兄のこと覚えてるっぽいぞ?」


「多分、襲われたときに忠っちみたいに抵抗したんだと思う。あまりうまくいかなかったみたいだけど…」


「あれ? あなただあれ?」


美神がキイの後ろにいる横島を見て首を傾げる。
どうやら横島についての記憶は奪われてしまっているらしい。


「えっと、俺の名前は横島忠夫、宜しくね。れ、令子ちゃん」


「よこちまただお…うん、よろちくねよこちま!」


にっこりと笑う美神に、あのクールな美神さんにもこんな可愛い時が合ったのかと思わず横島も微笑んでいた。
そんな二人の様子を微笑ましく眺めるおキヌ、そしてカメラ片手に激写しまくっているキイだった。


横島とキイ達はとりあえず今後の方針を決めるため、一旦唐巣の教会へと向かった。


「成る程…するとパイパーにやられて美神君と横島君はこんな姿に…」


キイの説明を受けて唐巣が横島と美神のほうを見る。
今二人はおキヌと一緒におままごとをして遊んでいた。


「よこちまがお父さんでおキヌちゃんはお家のお手伝いさんね。それで令子はお母さん」


「それじゃあ此処はまず家に帰ってくるところからかな?」


横島は一旦その場から離れて、そしてまた戻ってくる。


「ただいま~」


「美神さん旦那さんが帰ってきましたよ~」


「ありゃ、今日は早いのねぇあなた」


横島がドアを開けるように手を動かし、おキヌが横島の帰宅を伝える。それに令子が満面の笑みで出迎えた。


「あなた、お疲れれしょ? ご飯にすゆお風呂にすゆ?」


「それじゃあお風…」


「それともわたし?」


ずしゃーっと地面にヘッドスライディングをかます横島。おキヌの方も宙でこけている。


「どこでそんな言葉を覚えたんですか!」


「皆が来ゆまで読んでたご本よ」


多分、随分と古いネタだが大人の令子が購入してあった雑誌に載っていたのだろう。
そしてそれの意味も特に理解せずに使う令子は何故横島とおキヌが転んだのか分からなくて首をかしげている。


「と、とにかくまずはご飯が食べたいな…」


「分かったわ。おキヌちゃん料理を準備してね」


「分かりました~」


おキヌはそう言ってお菓子の入ったお皿を持ってくる。
そしてパクパクとお菓子を食べ始めて、ご満悦な美神だった。


「しかし、美神君にもあんな可愛い頃があったなんて…」


唐巣がこめかみを押さえて涙を流しながらそう呟く。


「まあ、令子ちゃんが何時何処であんなひん曲がった天邪鬼になったかという話は後でするとして、今後どうやってあのハゲ倒すか考えよう」


キイの中でパイパーの呼び方はハゲで決まったらしい。
唐巣もそれもそうかと、今後どうやってパイパーを退治するか考える。


「問題はパイパーが今何処にいるかだね。それが分からなければ何処へ行けばいいか見当も付かない」


「あっ、令子遊園地に行くの」


おままごとを止めて、美神は片手を大きく上げて大きく宣言する。


「あのねぇ…今は大事な話してるから……」


「よし! 遊園地に行くよ忠っち!」


「って、キイ兄まで何言ってるんだよ!!」


キイまで馬鹿みたいなことを言い出して横島が突っ込む。だが身長差も合って足にぺしっと叩く程度にしか威力も無かった。
それにキイは横島の頭にポンッと手を置くと一言、


「ふっ、忠っちはもはや突っ込み役としても……


役者不足だよ!!


「ぐはぁ!?」


キイの強烈な口撃に横島は気持ちで吐血しながら倒れこんだ。
どうやら自分の大切なアイデンティティを失ってしまったようだ。
横島はそのまま教会の隅の方で体育座りをしながら、壁に『の』の字を書き始めた


「よこちま、元気だちて」


「ボケどころか突っ込みも出来ない俺なんて……」


「突っ込みが出来なくても横島さんは横島さんですよ」


そして落ち込んだ横島を美神とおキヌが慰めていた。


その時、教会の中にラッパの音が響き渡る。
それに唐巣が慌てて立ち上がった。


「いかん! 皆逃げろ!!」


「ヘイッ!」


何処からか聞こえた掛け声とともに、唐巣の姿が子供へと変化した。


「ホッホッホ…油断しすぎだよ」


体を半透明にさせて頭だけを現したパイパーが姿を現した。
奇襲されたことに身を構える一同、そしてキイがパイパーを指差した。


「怪異! 空飛ぶハゲ頭!!」


一瞬、教会の中に沈黙が降り、室内にもかかわらずひゅ~っと風が吹いたような気がした。
全員がパイパーに注目する。そう、その髪の無い頭のてっぺんに。


「ハゲ、ハ~ゲ」


「確かに宙に浮いてるな」


「頭しか見えませんし」


「「「「あはははははははは」」」」


皆パイパーの頭を指して笑い出した。


「ふ、ふざけぶはっ!


パイパーはハゲと笑われて怒りを爆発させようとした瞬間、横から破魔札をぶつけられて怯む。


「皆さん! 此処は僕に任せて逃げてください」


ピートが片手に破魔札を構え、パイパーを牽制する。


「ピートお前……いたのか!!」


「最初からいましたよ! ただ会話に入れなかっただけです!」


横島の言葉に今まで一言も喋ってなくて存在を気付かれていなかったピートが吼える。
さあ、とピートが促し横島たちは教会から飛び出す。


「いくよ令子ちゃん!」


「うん!」


横島は美神の手を引いて、おキヌはその後ろから、そしてキイは自分のリュックと美神の鞄を持って最後に教会から飛び出した。


「さあ来い!」


「たかがバンパイアハーフに何が出来る!」


パイパーがピートに飛び掛る。
そしてピートも破魔札で迎撃しようとした瞬間、突然天井からタライが落ちてきてパイパーの頭を直撃した。
頭を押さえて震えるパイパーに、ピートは一体何がおきたのかと暫し呆然とする。
そして、ひらっとピートとパイパーの手元にそれぞれ一枚の紙切れが舞い落ちる。


「ははっ、キイさんらしい……」


ピートの手に取った紙切れには、『ハゲに負けるな、負けたらピートの髪剃っちゃうぞ♪ byキイ』と書かれた応援(脅迫?)メッセージが書かれていた。


「あ、あのガキがー!」


そう言ってパイパーは手にした紙切れを破り捨てた。
因みにパイパーのほうは『ハ~ゲ~ハ~ゲ~ハゲハゲハ~ゲ』とびっしりと隙間無く書かれていた。


そして、負けるわけには行かないと意気込むピートと、頭に血が上ったパイパーの対決が始まった。


教会から逃れた横島とキイ達は、街を走っていたのだが横島はともかく令子の体力が続かずに一旦近くの公園で休んでいた。


「それじゃあそろそろ遊園地に行こうか」


「キイ兄、遊園地に行くのはいいけど何でまた?」


横島は流石のキイもこの状況で何の考えもなしに言っているわけではないと思っていた。
しかし、やはり何で遊園地に行くのかが分からずに理由を尋ねる。


「令子ちゃんが遊園地って言ってたでしょ? 令子ちゃんは多分受けた依頼の中でパイパーの仕業だったものがあって金の針を取り寄せたんだろうね」


「つまり、その依頼を受けた除霊場所にパイパーが?」


「そういうこと。きっとどこかの遊園地にいるんだろうね」


だが、遊園地といってもこの近辺だけでどれだけあるか分からない。しかも美神は日本各地から出張依頼が来るほどのGSでその索敵範囲は恐ろしく広いものになる。


「けど、どこに行けばいいんだよ? 場所分かってるのか?」


「勿論だよ~。ほらこれ…」


そう言ってキイは一枚のところどころ汚れた紙切れを懐から取り出して横島に渡した。


「…別に遊園地とかの名前は無いけど?」


「ほら、ここだよ」


横島がキイの指したところを見ると其処には字がぐちゃぐちゃになって読みにくいが『遊園地…依頼……六道』と書かれている。


「日付も最近だし、きっとその依頼は六道を経由したんだろうね」


GSの業界には政治などと同じでいくつかの派閥がある。
もちろん派閥に属さないGSもいるが極少数だ。
美神は冥子の関係で(ほぼ無理矢理)六道の派閥に入っていたのだ。
因みにキイは自由気ままがいいから無所属だ。もう少しで六道に入れられそうだったが、今のところ何とか回避している。


「それじゃあ冥子ちゃんのところに行けば分かるって事か?」


「まっ、そういうこと」


キイがそう言ったところで休憩を止め、横島とキイ達は六道の屋敷へと向かった。


そして、何事も無く六道の屋敷にたどり着いた一同を待ち構えていたのは…


「きゃ~、横島君と令子ちゃん可愛いわ~~」


キイがいつの間にか連絡をしてあった冥子が迎え、小さくなった二人を思いっきり抱きしめたのだった。
美神の方は、冥子の事は記憶にあまり残ってないようだが、危険な人物であると言うことは残っていたのかちょっと引いてキイの後ろに逃げ出した。
そうなると冥子の餌食になるのは横島しかいなく、それに気付き逃げようとした横島だったが冥子の影から飛び出てきたサンチラが足に巻きついて合えなく御用となった。
冥子はそのまま横島を抱っこして可愛いわ~とくるくる回っている。
横島のほうは、体は子供精神は青春真っ最中の青少年な某ちっちゃな探偵状態なため、冥子に抱きしめられて顔を赤くしてわたわたと慌てている。


「忠っち、顔にやけてるよ」


「不潔です横島さん!」


おキヌは冥子から横島を奪い取って、キイ特性『煩悩退散ハリセン君』で頭をパシンパシン叩いていた。


「ちょっ、おキヌちゃん痛いって!」


「あ~ん、もうちょっと抱かせて~」


横島はハリセンから逃げて、それをおキヌが追いかけて、更にその後ろから冥子が歩くようなペースでゆっくりと追いかけていた。


「よこちま、人気者?」


「そうだね~、令子ちゃんも忠っちのこと好き?」


「うん! よこちま面白いから好き」


「じゃあ令子ちゃんも言っておいで、はいこれ」


美神はこくりと頷くと、キイに渡されたハリセンを手に横島を追いかけ始めた。


「待てー、よこちまーー」


「何で令子ちゃんまでー!」


横島の泣き言をBGMに横島はもともとの目的である遊園地の名前を調べるために冥子が準備してくれた資料に目を通し始めた。
ただ、その背後から、


「キイ君、これで貸し一ね~」


「思いっきりストレートですね冥音さん…」


「だって言っておかないとキイ君ったら忘れて踏み倒しちゃうんですもの~」


「何度もやっかいごとに巻き込んで借り返してないのはお互い様でしょ?」


キイと冥音はあはは~とかうふふ~とか全然感情の篭ってない笑みで激しい攻防を繰り返す。
その向こうではほぼ逃げ1、鬼3の鬼ごっこになった横島たちが笑って(一部叫んで)いる。

パイパーが出て大変なのに微妙に平和なキイ達なのであった。


「それじゃあN県のバブルランドに出発!」


「「「「おお~」」」」


そして、目的地目指して出発する冥子を加えた計五人。
何故冥子まで付いてきているかと言うと、


『お母様~、私も一緒に行って来ていいかしら~?』


『そうね~、横島君に聞いてみたらどうかしら~』


『横島く~ん』


『ああー、そんな縋るような目で見んといてー』


そんな会話があって、折れた横島がキイに頼んで冥子も同行することになったのだ。


「忠っちの意思は藁以下の折れ易さだね」


「ぐさっ!?」


胸を押さえて痛みを表現する横島。
キイの言葉に身に覚えがありすぎて横島はがくっとうなだれる。
それもこれも、女性には優しくと母親に体に直に教え込まれた所為であろう。

と、そこに…


「やっと見つけたぞーー!!」


ハゲピエロことパイパーが現れた。


「うおっ! 出たな悪魔『頭土器男』!!


「何だその変な名前は!!」


キイがつけた変な名前にパイパーが頭に血管を浮き上がらせて叫ぶ。


「因みに『土器』の読み方は『かわらけ』でその意味は今で言うと…」


「それ以上その口を開くなー!」


キイが全てを言わぬうちに横島の渾身の蹴りがキイの脛、つまり弁慶の泣き所に直撃した。
キイのほうはその地味な痛みに言葉も無くうずくまる。


「横島さん、かわらけって何ですか?」


「いい子は知らなくていいことです! っていうかお願いだから俺に聞かないで!!」


実は横島、昔その言葉の意味をキイに教えてもらっていて覚えていたのだ。
ここに書くにはちょっと躊躇われるので、本当は女性に使われるものとだけ言っておく…


「ええぃ! 何だかよく分からいけど食らえ!」


パイパーがラッパを吹き始めた。それに横島はキイが動くだろうとそっちを見るが…


「………痛い」


まだ足を押さえて蹲っていた。


「こんなときに何やっとるかー!」


「忠っちが蹴ったんでしょう!」


横島とキイは醜い師弟喧嘩を始める。
けど、そんなことをしている間にパイパーの演奏が終わった。


「ヘイ!」


その掛け声とともに、子供化の呪いが放たれる。


「なんとー!!」


キイは、その呪いが放たれると同時に懐から一枚の霊符を取り出す。
其処に書かれているのは、『反射』。
だがキイへの呪いは反射はしたものの、完全に制御しきれず…


「きゃぁっ!?」


冥子へと返されてしまった。
ポンッと冥子は美神と同じくらいの子供になってしまった。
そして、冥子は突然何が起こったのかわからずに目じりに涙が溜まっていく。


「げっ! ヤバ…」


「ふええぇぇぇぇぇぇん!!」


冥子は泣き出した。それと同時に冥子の影にいた十二神将がいっぺんに飛び出してくる。
逃げる間の無く、半径十数メートルが地獄絵図と化した。
バイパーは真っ先にその餌食になってあっさり退場。
それでも冥子は泣き止まずに暴走し続ける。


「ふえええぇぇん!」


「冥子ちゃん泣きやんで!」


横島は果敢にも冥子をなだめようと奮闘する。


「ふわあぁぁぁぁぁぁぁん!!」


「あ、危なっ! 冥子ちゃんお願いだからさ!」


アンチラの刃が横島の頬に掠って肝を冷やす。


「うわあああぁぁぁぁぁぁん!」


「どうすりゃいいんだーー!!」


暴れる十二神将に横島は完全にお手上げ以上だった。


「冥子ちゃん、この忠っちが友達になって遊んでくれるってよ~」


「ふえぇ……本当?」


ぴたっと泣き止んでキイに肩に手を置かれた横島を見る。
横島のほうは友達ならとっくの昔になったんだがと思ったが、そういや子供にされると記憶とか奪われるんだったと思い出した。


「グスッ…本当に……私と友達になってくれるの~?」


「勿論、俺は横島忠夫。友達になってくれる冥子ちゃん?」


「あ、ありがと~横島く~ん」


そう言って冥子は横島に抱きついた。
横島のほうはちょっと驚いたが、すぐに頭をポンポンと軽く撫でてやる。
こんな子供の姿になっていても、女子供には優しい横島だった。

それを見て動くのは小さな影。


「むぅ~、よこちまは私のなの!」


美神が二人の間に割って入り二人を引き離す。
小さい子供特有の独占欲か、はたまたその他なのかは分からないが、美神はガシッと横島の左腕に抱きつく。
引き離された冥子が一瞬キョトンとするが、すぐに状況を理解…


「じゃあ私は横島くんのものね~」


出来るわけもなく、なかなかに子供だから出来る大胆発言をしながら横島の右腕に抱きついた。
可愛い女の子二人に抱きつかれた横島だが、流石に年齢一桁の女の子に欲情するケダモノではない。だが今の状況にはかなり困っていた。
む~と頬を膨らませる美神と、ほんわかにこにこ笑う冥子、そしてその上でおキヌが皆仲良くねと微笑んでいる。
それをちょっと離れたところで見ているキイは…


「うん、まるで幼稚園だね。あとはエミちゃんあたりを巻き込めば…」


「キイさん、エミさんが子供になる前提で話さないでください!」


物騒なことを言うキイに、それを聞いていたおキヌが突っ込んだ。
呪いのスペシャリストのエミならパイパーの呪いも何とかしてしまいそうだが、まあいいかとキイはエミのところに行くことは諦めた。


「よ~し蒼河幼稚園GS組、N県のバブルランドに出発~」


「「「は~い」」」


「そんなノリでいいのかよ」


キイの言葉に女の子組は元気よく返事、横島は気楽過ぎる雰囲気にとりあえず突っ込んでおいた。


「あっ、忠っちおやつは300円までだよ? バナナはおやつに入らないからね?」


「んなこと聞いとらんわぁ!!」


横島の叫びを無視して、女の子組とキイは近くにあったスーパーに突撃していった。


~おまけ~


蒼河家から散歩に出たグレンとシメサバ丸。
今一匹と一本は…面倒なので二人は現在東京新宿区に訪れていた。


「みゅ~?」


【うむ、ここは昔試衛館という場所があってな。ここに新撰組と言う治安を守るために結成された、国の組織があったのじゃ。今で言う警察じゃな】


『「試衛館」跡』とかかれた標柱の前でシメサバ丸がうんうんと頷いている…かのようにカタカタ震えている。
グレンのほうも成る程と頷いている。
どうやら二人は東京近辺の名所めぐりをしているようだ。


「みみぃ~~み?」


【ん、そうだな…局長・近藤勇昌宜や一番隊隊長・沖田総司房良はなかなかの腕だったな】


どうやらグレンはどんな人がいたのか聞いたらしい。シメサバ丸は懐かしむように主だった人物の名を上げていく。


【特に副長・土方歳三はなかなかの武士でな。そいつの持つ刀『和泉守兼定』が色々と教えてくれたものだ】


「みゅみゅ?」


【ワシはある程度の力を持った刀の記憶を見ることが出来るのだ。そうでなければワシも此処まで歴史に詳しくはない】


ここでシメサバ丸の新能力が判明、どうやら刀が持つ記憶などを読むことか出来るらしい。
生き物以外が記憶を持つというものは珍しいことではなく、昔から其処にあったりする岩や、長く使用された道具には魂が宿らないまでも記憶が宿ったりする。


【一度手合わせ願いたかったのだが、あの頃は色々と慌しくてな。一度も交えることなく別れ、後に奴は戦死したと聞いた。いや、惜しいものを亡くしたな】


「みみっ?」


【その頃私が誰に持たれていたかだと? 名も残らんただの平隊士だ】


それでもその平隊士はシメサバ丸を振るい、その数々の戦場を生き残った数少ないものだった。
グレンは面白かったとコクコク頷いて、次は何処に連れて行ってくれるのかと期待している。


【そうじゃな、次は江戸城にでも行って徳川家の歴史でも話すとしよう】


「みみ~♪」


こうして二人はその場を発ち、江戸城へと向かっていった。
だが入る前に警備の人に見つかり、包丁を持った悪魔がと叫ばれて急いで逃げることとなった。


【己、許しが在ればたたっ斬ってくれるのに!】


その扱いに憤慨している二人。まあ、二人への扱いは仕方ないと言えば仕方ないだろう。
けどそんなことは知ったこっちゃない二人は、


「みみぃー!」


【おお! それなら約束を違えるわけでわないな】


グレンが急旋回して追ってくる警備員にシメサバ丸を掲げて飛び掛る。
そして、今新たなる奥義が発動する。


【布切塵芥!!】


その奥義、呼んで字の如く『布』を『切』裂き『塵芥』と帰す技だ。
つまり、洋服を細切れにさせて素っ裸にさせる恐ろしい(?)奥義なのである


「いやん! まいっちんぐ~」


慌てて大切な場所を手で隠す警備員だが、ここでボケるとはなかなかの強者である。
ただ、そのギャグは二人には不評らしく。


「みぃ!」【つまらんわ!】


意識をシンクロさせた二人の同調攻撃(シメサバ丸の峰打ち)がきまり、警備員はそのまま大の字で倒れ付す。
それを見た二人は、


「みみぃっ」


【うむ、確かに我が家の二人に比べると極小だな】


何処がとは明言しないが、聞いてたら激しく落ち込むだろう言葉を残して二人はその場を立ち去った。

後に全裸で発見された警備員は悪魔が包丁持って襲ってきたと証言するも、そんな包丁持った悪魔がいるかと一蹴され、勤務中に酔っ払って寝ていたとされ、向こう数ヶ月の減棒になったとか…




あとがき


毎度御馴染みのレス返しをします。


>狛犬様
読んでいただいてありがとうございます。
ご指摘の方はすぐさま直させて頂きました。ご報告ありがとうございます。


>黒覆面(赤)様
マイナーな話って、何となくちょっとでいいから触りたいんですよね。
いろいろと面白いし(笑)
そして今回縮んだのはご覧の通りです(苦笑)


>ジェミナス様
笛ネズミ編に冥子ちゃん急遽参戦!
そしてすぐさまご覧の通り(笑)
>PS(以下略…
そうですね。早く雪之丞君をだして全力で突っ込ませたいです。
それまで後…何話だろう?(汗)


>八尺瓊の鴉様
横島とおキヌちゃんがいつの間にああいう雰囲気になっちゃって…
マネキン、確かに哀れですね(苦笑)


更新遅れました。読んでくださっている方申し訳ありませんです。
笛ネズミ編、やっぱり二つに分かれてしまいました。

此れを書くためにワイド版を読み直していたのですが、
「へぇ、悪魔パイパーか…何だか<以下四文字検閲削除>みたい名前だな。だから頭ハゲなのか」
とアホみたいな理由で無駄に納得してしまいました。
そしてあのネタな訳です…
機嫌悪くした方ごめんなさい。

次回は笛ネズミとの直接対決です。
小さくなった彼らがどう活躍するかはまだ未定(汗)


それではこの辺で失礼致します…

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