インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

「GSルシオラ?復活大作戦!!第25話(GS)」

クロト (2005-11-11 19:21/2005-11-11 22:49)
BACK< >NEXT

「ベスパは死んだぞ……お前のためにな!」
 ああ、これは夢ね……あのときのこと、心が思い返してるんだ。
 バンダナでも夢は見られるのね。でもアシュ様が死ぬのとかヨコシマが哭くのとかは見たくないな。
 そんな私の気持ちとは裏腹に、芝居の上演はつづいていく。

「ルシオラも死んだ……でも俺に泣いてる暇はねえ。あいつの気持ちに応えるために……もう1度言う、俺がお前を倒す!」
 あれ? 何でおまえがそれ知ってるの? それにカッコ良すぎる……変な物でも食べた、いえ、1人で戦うのは無謀よ。まず先に美神さんを……。

「ほう、人間のお前がそこまで言うか。いいだろう、少しだけ付き合ってやろうではないか」
「ああ……人間の力、見せてやる!」
 ヨコシマ……気持ちはすっごく嬉しいけどどうする気なの? 文珠だけじゃ倒せないわよ……。


「体は煩悩で出来ている――――」


 ……は?
 な、何突然バカなこと言い出すの? せっかくBGMまで変わったのに、アシュ様も目が点になってるわよ?


「血潮は涙で 心は貧乏
 幾たびのナンパを越えて撃沈」


 ヨ、ヨコシマ……。
 とても哀れすぎて、何も言えないわ……。
 きっとアシュ様もそう思ってる。


「ただ一度の成功もなく、ただ一度のデートもなし」


 まあ、あのセクハラそのもののやり方じゃそうでしょうね。


「担い手はここに孤り。自分の部屋でエロ本を読む」


 おバカな独白ではあるけど、でももう気づいた。
 この詠唱によって、ヨコシマの中にある27のスイッチが次々と入り始めていることに――


「ならば、我が生涯に彼女は不要ず
 この体は、無限の煩悩で出来ていた――――!!」


 ゴウオッ!!
 呪文の完成と同時に、ヨコシマの心象風景が現実世界を侵蝕し、ひとつの『世界』をつくりあげる。
 固有○界『無限の煩悩』――!
 ヨコシマを中心にピンク色の暴風が吹き荒れた後にあったのは、すでに何度か見た荒野、そしてそこに立ち並ぶ数え切れないほどの美(少)女の群れ――――。

 ――――はっ!
 や、やっぱり夢だったのね。
 私は眼をあけ、きょろきょろと辺りを見渡す。
 暗い部屋の中、見慣れた天井が見えた。
 いやにはっきりしてたわね……まさか予知夢?
 いえ、違うわね。あれは啓示――警告みたいなものだわ。きっと私が死ぬとああいうことが起こるのよ。
 あれならアシュ様を倒せるかも知れないけど、でもダメね。あれを誰かに見られたら英雄どころか社会的に抹殺されるわ。
 ――絶対死ねないわね。
 私は拳を握り締めて(体ないけど)改めて自分に誓った。

 変な夢を見はしたけれど、その後しばらくは平穏な日々が続いた。
 バンダナの中でヨコシマと一緒に学校やバイトに行って、ときには実体化して2人で修行したり除霊を手伝ったり、彼の部屋の中で新婚さんみたいなことをしたり(きゃあ)して、不自由な身体ではあるけどそれなりに、いやとても充実した日々を送っていた。
 最近顔を見せてなかった流浪のバトルマニア・伊達雪之丞さんがまたヨコシマの家を訪ねてきたのはそんなある日のことだった。
「……妙神山?」
「ああ、俺が今まで学んで来たのは邪道ばかりだ。このままじゃ近いうち限界が来るからな、正道で力をつけたいのさ」
「そうか……で、それでなぜ俺ん家に来るんだ?」
「あそこは紹介状がなきゃ絶対ダメってお堅いとこだろ? お前らに書いてもらおうと思ってな」
「俺が? 言っとくが俺はまだ見習いだぞ」
「それは美神の旦那が……いや。お前の額にはお前以上の使い手もいるじゃねーか」
「ルシオラのことか? 確かにルシオラなら問題ねーが……」
「つーわけだ。書いてくれるか?」
 伊達さんの視線がこちらを向く。
 そうねぇ。
 ま、いいでしょう。実力は十分あるし、何かあっても後でとやかく言ってくる人じゃないから。
 それにヨコシマもそろそろ文珠を覚えてもいい頃だわ。
『いいわよ。せっかくだからヨコシマも一緒に行きましょう』
「へ、俺もか?」
「ええ。フェンリルのときのお礼もしてないし、いい機会じゃない」
 するとヨコシマはちょっと顔に縦線効果を入れて、
「お礼って、また乗られるんじゃねえだろうな? ヒャクメも何か変なこと言ってたし」
『ん〜〜、伊達さんもいるんだし大丈夫だと思うわよ?』
「何の話だ?」
「イヤナンデモナイ」
 ……。
 話が変な方向に行ったけど、そのおかげで(?)うやむやのうちに3人で妙神山に行くことになった。
 翌日、妙神山の門の前で。鬼門の2人が、
「おお、横島か。ん? 隣の三白眼は誰だ?」
「!?」
 彫刻のように見えていた鬼の顔がいきなり話しかけてきたことに驚く伊達さん。私が仲介して、
「この人は伊達雪之丞さん、ヨコシマの友達よ。今日はここに修行しに来たの。で、こちらは妙神山修行場の門番、鬼門の2人よ。ここで修行を受けるには、この2人と戦って倒さなきゃいけないの」
「なるほど、ザコに用はねえってわけだな。面白ぇ」
 バトルの匂いを感じて、さっそくネクタイをゆるめる。
『……。魔装術はいらないと思うわ』
 伊達さんが全力を出したら、たぶん彼らの方が可哀想なことになりそうだから。
「……そうかよ」
 急に気の抜けた顔をする伊達さん。鬼門2人が心外なような不安なような複雑な表情で、
「ルシオラ殿、この者はそんなに強いのか?」
『そうね、霊的格闘と霊波砲については日本でも第一人者と言えるレベルだと思うわ』
 すると鬼門は急に顔色を変えて、
「……お主ほどの者がそう言うなら試しは要るまい。さあ通るが良い」
『…………いいの?』
 いっそ私の方が心配になったんだけど、まあ通してくれるんならあえて戦うこともないし、
『じゃあ行きましょ、2人とも』
「「あ、ああ」」
 バトルが出来なかった伊達さんはちょっと残念そうな顔つきだったけど、戦う甲斐のない人にまで挑むタイプでもなく、素直に私達についてきたのだった。

 中に入ると、小竜姫さんが嬉しそうな笑顔で出迎えてくれた。
「横島さん! 雪之丞さんも!? 久しぶりですねえ。ルシオラさんもお元気でしたか?」
『ご無沙汰してます。先日はどうもありがとうございました』
「よう! とうとう来ちまったぜ」
「小竜姫さまー!! あ、えっと、この前はお世話になりました。これお土産です」
 とヨコシマが折り詰めを手渡す。
「あら。そんなに気を使わなくていいですよ」
「そうなのねー。小竜姫は一緒に遊んであげた方が喜ぶのねー」
「「あ、ヒャクメ(さん)」」
 神族の調査官ってヒマなのかしら?
「ヒャ、ヒャクメ! いきなり何を言いだすのですあなたは」
 小竜姫さんが真っ赤になって抗議するけど、ヒャクメさんはどこ吹く風で、
「怒るとしわが増えるのねー。それより仕事さぼっちゃ駄目なのねー」
「くっ、覚えてなさいヒャクメ」
 小竜姫さんは仕方なく伊達さんの方に向き直って何か話を始めたけど、ヒャクメさんはまだヨコシマに興味があるらしくにこにこしながらこちらを見ている。
「……遊ぶって、アレはヤだぞ? 俺が乗るんならいーけどよ」
 普段のヨコシマならあんなこと言われたら喜んで突進してる筈なんだけど、お馬さん扱いされたのが結構気になってるみたいね。ある意味ぜいたくだと思うけど。
「うわー、横島さんってエッチなのね」
『何をいまさら、って感じだけどね』
「ひ、ひでー」
 とまあそんな調子で、退屈してたらしい3つ目娘の無駄話に付き合っていたら、
「おい横島! サインだってよ」
「んー、なに? 外泊証明書か何かか?」
 伊達さんが出してきた書類を、ヨコシマがよく読みもせず記名する。あ、そういうのはダメだっていつか言ったのに……。
「ウルトラスペシャルデンジャラス&ハードコース2人前! 契約完了だな!」
「へ?」
 だから言ったのに、でももう手遅れ。小竜姫さんの背後に、前に見た円形の闘技場が現れた。
「まずはテストをさせてもらいます。妙神山修行場最高にして最難関に挑むに値するかどうかをね」
 言葉の通り、挑むような視線を向けてくる小竜姫さん。さっきまでのほんわかムードは微塵も無い。
「いいぜ。時間のムダだとは思うがな」
 伊達さんの反応は予想通りだったけど、ヨコシマの反応も予想の範囲内にあった。
「最高にして最難関って、そんなの俺にできるわけ……いや待て。テストって事はこれに落ちれば……」
『落ちたらおしおきだからね』
「鬼かお前はーーー!!」
 魔族よ。
「それじゃいきますよ。準備はいいですね? 禍刀羅守(カトラス)! 剛練武(ゴーレム)!」
 小竜姫さんが闘技場の前に立って手をかかげると、闘技場の中に2体の式鬼らしきモノが出現した。
 1つは巨大な昆虫みたいな姿で、4本脚が刃物になっている。これが禍刀羅守ね。もう1つは岩で出来た1つ目の巨人、こっちが剛練武かな。
「こ、こいつらは前に美神さんと戦ったーーー!?」
『知ってるのヨコシマ?』
「あ、ああ。美神さんが前にここの修行受けたときに戦ったんだけど……」
『つまり見覚えのある相手ってことね。好都合じゃない』
「そ、そういう見方もあるのか?」
 こちらが相手の戦い方を知っていて、相手はこちらの手の内を知らない。これは大きなアドバンテージだわ。
 私はヨコシマにそう答えて、
『それにそのとき美神さんは勝ったんでしょう? 今のおまえなら楽勝よ』
「そ、そんなわけねーと思うけど……」
「2対2です、制限時間は60秒……そうそう。ルシオラさん、あなたは手助けしてはいけませんよ」
 私達が脳内会議をしているうちに、すでにテストは始まろうとしていた。
『はい』
「では、始め!」
 小竜姫さんが手を下ろすと同時に、目の前の2鬼、それに伊達さんが進み出る。
「2人ともがんばるのねー」
 ヒャクメさんの声援を背中に受けながら、
「よし、俺はあのゴツい方をやる! あっちのガリガリ野郎は任せるぜ!」
「あーちくしょー、やればいいんだろやりゃー!!」
 始まってしまったらもう仕方ない。闘技場に入ったヨコシマに禍刀羅守が襲い掛かってきた。
「キイイイーーッ!」
 奇声をあげながら刃の脚を振り下ろす。
「うわーっ!」
 ヨコシマの悲鳴は大声だったけど、逃げる動作はあっさりしたものだった。
「あれ、こいつ……こんなもんだったっけ……?」
 不思議そうな目で禍刀羅守を見上げる。次の攻撃もひょいっとよけると栄光の手を構えて、
「ヨコシマンカッター! いやむしろ斬刑に処す」
 矢のような速さで伸びたYの字形の刃が禍刀羅守の右前脚の付け根を鋏み切る、いやガラスのように砕いた。続けて左前脚も破壊すると、両前脚を失った禍刀羅守は前のめりに倒れて戦えなくなった。
「えっと……これで終わりか?」
 最初に怖がってた分、逆に物足りなさそうな顔をしているヨコシマ。
『そうね。伊達さんももうすぐ終わるわよ』
 伊達さんの戦い方は力任せの拳打づくしだったけど、剛練武にはそれでよかったのか、最後は足払いで転ばせて1つ眼を上から殴りつけると、びくびくっと痙攣して白旗を上げた。
「倒すまでの所要時間32秒。合格です!」
 小竜姫さんが手を挙げて終了を宣言する。
「2人とも成長しましたねぇ。特に横島さんの成長ぶりはすごいですよ、これならいけそうですね」
「いやぁ、それほどでも……」
 女神様に誉められて照れるヨコシマ。んー、何だか複雑な気持ちね。
「これで文句はねえだろ。修行の方を頼むぜ」
「ええ。こちらにどうぞ」
 と小竜姫さんが手で示した先には、文字通り扉ほどの大きさをした空間の歪みができていた。
「仮想空間です。この中では魂が加速されるので、感覚的には現実よりも非常に速く時間が流れます。そこで私の上司であり師でもある方に修行をつけていただきます」
『つまり、いくら向こうで時間をかけても現実の世界ではすぐ戻ってきたことになるわけですね』
「ええ、といっても数ヶ月程度ですけどね。さあ行きましょう」
 ……。
 そこは8畳ほどの殺風景な部屋で、3つの椅子が互いに向かい合うように置かれていた。
 リラックスして腰掛けるように、という彼女の指示で2人が座ると、次の瞬間には部屋の模様が一変して中華風の造りになっていた。
 そして小竜姫さんに案内された大きな部屋の中にいたのは……。

「「『猿?』」」

 その正体にはさらに驚いた。
 この人民服を着たメガネ猿があの斉天大聖だなんて……。

 なのに毎日やることと言えば、
「ウキッ!」
「勝てん……何度やっても……!」
 TVゲームばっかり。うーん、この生活のどこが「最高にして最難関」なんだろう。まあ猿神と小竜姫さんがそう言う以上何か意味があるんでしょうけど……。
 ヨコシマは平穏な生活で小竜姫さんお手製のご飯も食べられるから結構満足そうなんだけど、実体化を禁止された私と修行らしい事が何もできない伊達さんはそろそろストレスがたまってきていた。
 で、2ヶ月半が過ぎた頃。痺れを切らした伊達さんが暴れ出すと、猿神はすっと立ち上がって、
「ふむ。人間にはこの辺かのう……」
 と掌から伸びてきた長柄の棒でいきなり部屋を切り裂く。
「「!?」」
 次の瞬間、私達は最初の部屋に戻って椅子に座っていた。


 ――――つづく。

 あとがき

 眠れる美少女は後にして老師修行編です。ワルキューレ達は別の機会に出てきますので。
 ではレス返しを。

○皇 翠輝さん
>態々ネタを使うために四苦八苦するクロトさんに敬礼!
 それもまた楽しみの1つです♪

○貝柱さん
>この小竜姫さま壊れなの?それともフラグ立っちゃってるの?
 うーん、どっちなんでしょう<マテ
>仰向けでなくともうらやましいぞーーー!
 作者もです(ぉ

○ゆんさん
>それにしても、まさか使ってくれるとは
 可能な範囲のリクエストは受け付けてます♪
>そんな日本じゃ法律違反よ!!
 2人とも人外なのでたぶんOKかと(ぇ

○遊鬼さん
>それにしても分配された賞金はいくら横島君の元に入るんでしょうか
 入りません(ぉ
 1人でやった仕事ならいくらか入りますが、今回のは普段の依頼と同じですから(哀れ)。
>それにしても神父のところに1千万ですか
 ようやく2人も人並みの生活ができそうです。
 死津喪編でまた泣きそうですが(ぉ

○tomoさん
>シロの台詞の「そこにシビれる、あこがれるゥ!」はかなり違和感がありますねぇ
 やはり悪乗りが過ぎましたかねぇ。
 ちょっと反省します。
>横島とムフフな関係になれば何度でも乗れるような(げふんげふん)
 あるいは乗られ(以下検閲により削除)。

○ジェミナスさん
>ヒャクメフラグに乾杯!!
 うーん、下手すると人外娘全員フラグ立ちそうな(汗)。

   ではまた。

BACK< >NEXT

△記事頭

▲記事頭

yVoC[UNLIMIT1~] ECir|C Yahoo yV LINEf[^[z500~`I


z[y[W NWbgJ[h COiq O~yz COsI COze