【 とある事情から己の魂と因果の消滅を求め、 】
【 時空消滅内服液で自殺した横島忠夫、 】
【 しかし、彼の魂は魔族として覚醒しており、 】
【厳密には横島とルシオラの霊気構造を持つ新たな魔族 】
【(つまり、産まれたのはルシオラが死んだあの時。) 】
【 と成っていた為、彼にとっては予想外な事に 】
【 過去の因果を断たれ、しかし消滅する事無く 】
【 いわば前世である過去の横島忠夫の許に、 】
【 その魂は放り出されてしまう。 】
【Side Bでは彼が主人公です(設定上では黒横島と呼称)】
〜筆力不足の為納得して頂けるかギリギリの設定です。
なぜこの時点に黒横島が現れたかは設定の穴となっております〜
単なる偶然か、運命の悪戯か、
それとも宇宙意思の介入によるモノなのか…
〜コレはッ!とゆう理由が思い付いたかたは
こっそり奇坊に教えてくれると嬉しいです〜
“彼”は自らの消滅を望み、
時空消滅内服液によって己の過去を追体験していた。
そこには愛しい人達との懐かしい思い出が、手を伸ばせば触れる事のできる実体として存在していた。
涙が止まららない程に懐かしかった、
狂おしい程に愛おしかった、
其れ故にこそそれらの思いは青年の胸を刺し貫き、
彼を増々“自身の消滅”へと駆り立てた。
あの日、あの時、あの場所で!!
其の参 Side B .運命の分岐路で/断章
〜運命の分岐路で./
(魂が…二つっ!?)
暗闇の中で立ち上がり予想外の事態に狼狽える。
(この魂は…?この時点での俺の魂か?)
今思えばあの時だったのだろう、
この世界が少しずつ別の方向へと歩み始めた瞬間は、
ほんの僅かな差違だ、俺があの肉体の内に留まった小一時間の内に、
未だ只の高校生に過ぎなかった横島忠夫の魂は、魔族の魂に曝され、にわかに活性化し、
俺とゆう仮の主人を得た肉体は霊力のラインを全身へと張り巡らせ、
…そして、俺の“護りたかった、護れなかった”と云う深い後悔の念は、その裏返しとして、この世界の横島忠夫に自我の奥底に、
“護る”
と云う強い遺志を刻み込んだのだ…
最初の変化は初めて妙神山修行場へ訪れた際に現れた。
俺との接触遭遇はシャドウにも変化を与えていたらしい。
奴はサイキックソーサーを創り出して見せたのだ。
(!?)
当初は記憶と異なる事態にひどく混乱もした。
思わず息を潜めるのを忘れて声をあげてしまったくらいだ。
『隱』『蔽』の文珠が造り出した隠行結界はそんな事では小揺るぎもしなかったが。
結局、この世界の横島は工事現場でバイトしていた期間の内に
サイキックソーサーをモノにしてしまった。
(いや、ソーサー、では無くスケイル、だったな。)
「‥その神通力、って奴で俺をメドーサに向かって投げ付けられるか?」
天龍童子に何事か囁いた後、横島は天龍族皇子の神通力に身を任せ、
上空で小竜姫、美神と交戦するメドーサに向かって突撃して行った。
「メドーサッ!」
スケイルを右手に構え、無謀な格闘戦に突入するかと見えた次の瞬間、
横島は携えた霊気の塊を、光の爆発へと変換した。
「ッ----サイキック猫騙しっっ!!」
閃光に視界を灼かれ、顔をおさえて悶えるメドーサにしがみつき、
必死の形相で叫びをあげる。
「今だッ天龍−−ッッッ!!」
天竜童子の竜気砲が直撃し、メドーサが撤退してゆく。
俺の知っている歴史通りの出来事だ。
結果だけを見れば何も変わらない。
“でも”
本当にそうか? メドーサに突撃したあの時、アイツが顔に浮かべていたモノ。…あれは、“覚悟”って奴じゃ無かったか?
(あの頃の俺はただ逃げ回っているだけだった…)
(その事に疑問すら感じていなかったのに、)
この頃からだ。俺が自分自身に疑問を抱き始めたのは、
俺は過去の自分を憎んでいた、何も出来なかった自分を、
ルシオラを殺した無力さを、
だから常に俺はこの世界の横島忠夫の傍に身を『隠』していた。
奴が過った決断をくだした時、 今度こそあの肉体を奪い取る為に、
“死ぬべきは無力な俺だったんだ”
“惚れた女も護れないで何が英雄だ”
“俺は‥俺だけはっ!世界よりも彼女を選ぶべきだったのにっ、”
かつて口にした緋色の叫びが、俺をその場所に縛り続けていた。
‥だけど…
GS試験会場 上空200メートル、
俺はぼんやりと夕日を見つめながら漂っていた。
この世界の俺‥否、“アイツ”はニ時間程前、
小竜姫の胸に抱えられ、妙神山の方角へ飛び去ってしまっていた。
「妙神山で霊能力に目覚め、天龍の時には覚悟を決めた、
そして今回は‥絶望的状況から、大切な人を護り抜いた、か…」
俺の知っている歴史からのズレは、少しづつ、着実に大きくなっている。
(最早俺とアイツは似て非なる存在だ、)
アイツは大切な人を護り抜き、俺は犠牲にした。
切っ掛けは俺だったかも知れない、
…だが逆に言えば、それは切っ掛け以上の何かでも無い。
(アイツになら出来るかも知れない、俺に出来なかった事が、)
(俺に救う事の出来なかった誰かを、アイツなら救えるかも知れない。)
「一つだけ確かな事が有るとすれば、
俺にはアイツを消してしまう権利なんて無い、 って事か…」
(カオス、結局、アンタは正しかったよ…)
「なら俺は…精々足掻くさ、可能性を殺す為じゃ無く、可能性を生かす為にな?」
自然と口元に笑みが浮かぶ、
こんなふうに笑えたのは、随分と久しぶりだ。
【 時系列的に黒横島君の過去(主観)が 】
【 下の“断章”となります。 】
【ダーク指定となっているので御注意下さい。】
/断章.〜
湿っぽくカビ臭い秘密研究室、その薄暗い闇に亀裂が入り、
一人の青年が厳重に隠蔽された地下アジトに足を踏み入れる。
「…Dr、 一つ頼まれてくれないか?」
逞しく無駄の無い体躯、精悍な顔立ち、…そして瞳に宿る、深い闇、
「小僧か…随分ぶつしけじゃな、 まぁ、そろそろ来る頃じゃろうとは思っていたがの‥」
この場所の主人、Dr.カオスは青年--横島を奥へと招き入れた。
「時空消滅内服液。…そうじゃろ?」
半ば確信している口調でカオスが切り出し、
青年は、無言のまま首肯した。
横島忠夫、という存在は、奇跡的バランスの上に成り立っていた。
人間としての霊基、魔族としての霊基、本来相反するはずの二つの要素は、
しかしお互いを支えあい、一つの魂を構成していた。
幸せな偶然か、そこの込められた想い故か、
だが幸せな時間は終わりを告げる。 魔族因子の活性化である。
悪意ある魔族による故意のモノだった。
ルシオラの魂の消滅、そして人間としての横島忠夫の終焉。
その二つを天秤に掛け、当然の帰結として横島は後者を選んだ。
しかし狂ったバランスは加速度的に状況を悪化させてゆく、
文珠遣いの魔族の出現を忌避する過激派神族、アシュタロス戦役の英雄として神族に保護されていたが故に手を出しかねていた旧アシュタロス派魔族
(魔族が魔族に攻撃しても、神界や人界は介入出来ない)
それらの動きは、一部の上級神魔をも巻き込んで加速してゆく、
聖書級崩壊の引き金となりかねない程の混乱をもたらし、
かの神魔界最高指導者をして、抹殺もやむなし、と言わしめる程に…
無論、その理不尽に異を唱えるものも在った、しかし大きな流れはそれらすら飲み込み、更に巨大な激流となって当事者達に襲い掛かった。
彼をよく知る者達は、皆彼の為に闘った。
人、魔、神を問わずに引き付ける、一種のカリスマ、
それすらも、滅すべしと叫ぶ者たちにとっては彼の危険さを示す論拠となった。
Dr.カオスを前にして横島が血を吐くような叫びをあげる。
「俺の為にみんなが傷付くなんて…ッ! そんな事あっていー訳無いだろうがッ! ワルキューレやベスパは軍籍を、小竜姫様は神族で在る事を捨てた!俺なんかの為にだぞ!?それだけじゃない、美神さん達や唐巣神父達だってこのまま戦って行けばいつか必ず死ぬ。そんなの…そんなの間違ってるじゃね−かよぉ!」
脳裏によぎるのは親友達の姿、両腕を失い力無く笑う雪之丞、精神感応を封じられ、血塗れになりながらも肉弾戦を挑むタイガー、かつて父だった灰に縋り付き、涙するピート、最も彼の為に憤り、最も戦い、最も傷付いた者達。
ヒャクメは洗脳処置を施され、斉天大聖は封印された。
土塊となってなお猛々しいその姿は、しかし凄惨なまでに傷だらけだった。
「ただ俺が死ぬだけじゃ何も戻らない!…でももし俺という存在にまつわる全ての因果を断ち切る事が出来るなら…」
悲愴な目をした横島に見据えられ、カオスが溜め息を漏らす。
「お主、平行世界、と云う概念が理解できるか?」
「時空消滅内服液、という奴は、無数に枝別れした宇宙樹の枝を遡り、その人間の存在を因果の生まれる以前から抹消する、という代物じゃ。」
「しかしお主は多くの存在に深く関わり過ぎた。“世界”そのものにとって“横島忠夫”というのは最早代わりの効かぬ重要なファクターなのじゃ。」
(或いは以前、小僧がこれを飲んだ時、偶然に助けられて還って来おったのは、あれは、世界の修正力によるものやも知れぬな、)
「大きく枝を広げた樹が倒れれば、からみ合う枝を持つ別の樹、寄り添って立っている小さな樹をも傷つける。」
----そして彼は、これ以上無い程の大木だ。
「お主が“居なかった”事になってしまえば、通常では考えられぬ程多くの“枝”が枯れ果てるだろう、お主と関わる事で救われた“樹”も数多い。いつか話した猫叉の親子然り、狐の嬢ちゃん然りな。…螢の嬢ちゃんを救う事の出来た“枝”も有るじゃろうし、他の誰かと結ばれた世界も有るじゃろう。」
「だが、お主がその因果を根本から断ってしまえばそれらの可能性の世界をも根こそぎ殺してしまう事になる。 幹を無くして、枝だけで存在する事など出来んからな。」
「いかにお主自身の決断で在ったとしてもそんな事は赦されん。」
(少なくとも、儂は…)
どれだけ言葉を尽くして説得しても、横島は結局最期まで諦めなかった。
「なら他の宇宙に影響を与えない方法は?この世界の俺だけを無かった事には出来ないのか?文珠や金が必要なら俺がなんとか都合を付ける。なんなら俺自身で人体実験をしたって良い、
俺は…俺にはもうっ…こんな方法でしか、皆を救えない」
横島が去った実験室で、
実験器具と魔導方程式を睨みながら、カオスは去った相手に向けて言葉を紡ぎ続けていた。
「ばか者、ばか者がッ…」
なぜアヤツは、ああも生きる事に不器用なのだ…
横島が世界から消えるその日、その事実を唯一知る人物 Dr.カオスは、
地上に出て、公園から夜空を見上げていた。
静かな瞬きの中に動くものが一つ、また一つ。
「星の涙、か…」
降り注ぐ流星群を見つめながらポツリと呟く。
おそらくは偶然の符号、関連性など有るはずも無い。ただ二つの事が、たまたま同じ日に起きた、ただそれだけの事。
だがカオスには、あの青年の消滅を世界そのものが嘆き、涙しているとしか思えなかった。
不意にこみあげる物は悲しみか、あるいは理不尽で残酷な世界への怒りの念か、
「小僧ぉぉ---っっ!! ワシはッ ワシは忘れんっ! 忘れんぞっ 忘れてなるものかァ-----------っっっ!!」
カオスは声が枯れ果てるまで吼え続けた。己が空しい虚言を吐いている事は自覚していたが、それでも叫ばずにはおれなかった。
理不尽で残酷な世界に、挑むように、
慟哭の叫びを、上げ続けた。
…to be continued!!
いいわけ
最早あとがきですら無い!
突然毛色の違う作品をupしちゃって申しわけ無い。
(今回、冒頭から言い訳という情けない仕様の)奇坊でございます、
さて、あまり伏線を引っ張ると
奇坊自身記憶の彼方になっちゃいそうなんで(!)
早々に曝してしまう事にしました、黒横島君。
其の弐のサブタイにある、“遺志”とは彼と心眼、両方の物を指します。
彼を曝す為に急遽でっち上げたのでアラが目立ちますが…
彼は当初、設定のみの裏キャラにするつもりだったんですが、
これからは積極的に暗躍してもらいます(笑)
アシュタロス編では大暴れする予定なので無印の横島君にも頑張ってもらわなくちゃなあ…
でわでわ、
☆Ism様
え〜妙神山編も頑張ってUPするんで見捨てないで下さいね?
タイピングゲームも余裕が出来たらトライしてみたいと思います。
後タイピング関係で一つ…ほぼ完成って時に
保存しようとしたら“戻る”を押してぱーにしちゃいました…
カオス…あんた説明長いよ!
☆孔明様
こんな感じでした、今イチひねりが足りないかなッとも思うんですが…
…どっかに“独創性”とか売って無いかしら?
あのフラッシュバックは黒君が一時体を乗っ取った時に思い浮かべた情景が、脳にログとして残っていたもの。とゆうことになります。
☆なまけもの様
御指摘の通り、心眼の死に様(?)はルシオラを意識した物です
と同時にルシオラは助けるぞッ、という布石でも有りますね、
ってゆうか原作でも心眼は横島庇って死んだんですけど…扱い軽く有りません?そこらへん、せめて横島には泣いてもらわにゃ、とも思ってます。
☆しらたま様
もっとこー切ない感じで心眼に餞を送るつもりだったんですが、
ワッシの筆力ではこれが限界でした…そう言ってもらえると凄く励みになります。
しかしワッシの力じゃどーしても小竜姫に出て来てもらえない回も有るんですよね、まあ立場上全ての事件に関わってるのも不自然ですが…
☆ジェミナス様
メドーサには完全に悪役に徹してもらいます。善玉メドーサも好きなんですけど、アシュが死ぬまではあり得ない、と思ってますから‥
雪之丞は現在香港で修行中(笑)、妙神山療養編+修行編(前後編になるかどうか微妙)、ハーピー編と、黒君の暗躍を挟んで(たぶん)の登場となります。