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▽レス始

「あの日 あの時 あの場所で!! 其之弐(GS)」

匿名奇坊 (2005-11-06 13:35/2005-11-15 18:08)
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 「う…んっ…」

 「横島君〜気が付いた〜?」

 目を覚ました俺を待って居たのは、
またしても眠ってしまいたくなる様な冥子ちゃんののんびりした声と、


 ベロリンッ


 「‥‥‥‥‥」

涎まみれの、巨大な犬(ショウトラである)の舌であった。


 あの日 あの時 あの場所で!! 
          其の弐 剣と遺志 


 「…とゆ〜訳で〜横島君が疲れて寝ちゃったアト〜マコラちゃんがメドーサに化けて、雪之丞君から証拠を聞きだそ〜としたんだケド〜アッサリばれちゃってね〜」

 横島は黙ってフンフンと頷いていたが、内心

 (あの戦闘バカって感じの奴にマコラの変身能力が見破られたのか?…ソレってマコラの存在意義無くねーか?)

などと、かなり失礼な事を考えていた。

 「でも〜雪之丞君がアッサリ白龍GSとメドーサの関係を教えてくれたから〜いまエミちゃん達が証拠を大会本部に持って行ってるところよ〜」

 横島は雪之丞がメドーサを裏切った事を知らない為、
内心首を傾げていたが…

 「取りあえず、一件落着って事スね。」

 白龍GSとメドーサとの関係を示す証拠を掴めたのなら、
一応は、小竜姫の依頼を達成できた。と云う事だ。

 ひとまず安心していると、横島は冥子が何時にも増してニコニコとしているのに気が付いた。

 「どっ…どうかしたんスか?」

おづおづと問う横島に、冥子は満面の笑みを浮かべて応える。

 「なに言ってるの横島君〜自分の事じゃない〜GS資格取得おめでと〜」


 「あ…」

色んな事があり過ぎて忘れていた、
そういえば雪之丞に勝ったのって俺だっけ。

 『何を今さら惚けた事を云っておる。』  

今まで黙って居た心眼が、呆れた様に言って来る。

 「へ〜それが令子ちゃんがいってた小龍姫様のアイテムなのね〜」

 式神を十二匹も連れている冥子はバンダナが喋った程度では驚かない。


 『ところでヨコシマ、』  

 「ん?」

 『試合の最期に出した爪、もう一度出せるか?』

 「? なにソレ?」

 「横島君覚えて無いの〜?試合の最期に横島君、霊気の爪を出したでしょ〜
盾は見たコトあったけど〜あんなの見た事無かったわ〜」

 冥子の台詞に雪之丞との試合を思い返す。

 (そう云えばそんな事もあったような…)

 『思い当たるフシがある様だな、試しに一度、出してみろ。』

 正直出るとは思っていなかったが、心眼に促されるまま、
右手に霊力を集中させると、比較的あっさりと
肘までを覆う手甲と、霊気の爪が現れる。 

 「これは…」

 『追い詰められた状況で、新たな霊能に目覚めた様だな。』

 横島は新しい玩具を手にした子供のように、爪の付いた手を握ったり開いたりしている。 色々と試している内、指先に意識を集中すると爪の鋭さが増す事に気が付いた。

 『ふむ、なかなか自由度も高い様だな、 その気になれば剣や斧の形態にも出来る様になるだろう。』

 それを聞いた横島は、小龍姫の神剣をイメージして霊力を流し込んだ。
霊力が足りないのか、実物より幾分か短いが、霊気の爪が淡く輝く直刀の刃へと姿を変える。

 「おお!!」

 サイキックスケイルは盾としては強固な反面、盾以外の霊的防御力は激減してしまう。

 (修行して霊力の基本値が上昇すれば、いづれ解決するんだろーけど)

 故に敵が大きな隙を見せるか、そもそもこちらに注意を払っていない状態でしか攻撃に移れないし、格下の相手にも常に緊張を強いられる。
格上の相手となると言わずもがなで、妙神山から帰って以来、
パイパー、ナイトメア、雪之丞、と、やたらハードな敵とばかり戦って来た横島にとって、新たな武器は正しく希望の光だった。

 「コレは栄光の手っ!俺はこいつでGS資格のみならず、富みも!女も!その他諸々まとめて手に入れちゃる!」

 云っている事はデカいが、

 「当座の目標は、脱!美神さんの奴隷!」

 志しは“人並みになりたい”と云う切実なモノだった。
                  (かつ、実行困難)

 (それに剣や爪なら使い減りしないしな!)

長い困窮生活の末、横島はすっかり貧乏性が板に付いていた。  

 『この男は…』

心眼はすっかり呆れて溜め息を付いた。


 「横島さぁんッ!!」

横島と冥子が話し込んでいると、幽霊のおキヌが息せき切って救護室に飛び込んで来た。

 「どうしたんだっ!」

おキヌの様子に異変を察し、横島のテンションが一気に戦闘時のそれへと変化する。

 「資格を剥奪された勘九朗って人が暴れてるんです! もうほとんど魔物になってて、このままじゃ美神さんが…!!」

 「っっ!!」

 切羽詰まったおキヌの口調に、かなり状況が悪い事を悟った横島は救護室を飛び出してゆく。


 「冥子ちゃんは美神さんのところへっ!俺は小龍姫様を!!」


 (クソ クソ クソッ クソッ クソッッ!!)  


 観客席のスロープを全力疾走しながら、横島は心の中で盛大に毒ずいていた。

 左手に視線を移せば勘九朗とGS達が戦っているのが見て取れる。
遠目に見ても明らかにGS達が劣勢だ。
 先程、冥子ちゃんが戦列に加わったが、ビカラを一撃されて すぐに離脱してしまっていた。

 (このままじゃラチが明かない!)

走りながらも小龍姫を求めて視線が彷徨う

 


 (確か次のフロアの下層ブロックに ― ッッッ!!)  

 

  


 

 

 
 「勘九朗を退かせて欲しいなら、貴女の命を差し出しなさい。」

 メドーサの眼が吊り上がり、瞳孔が細く引き絞られる。

 「私は人間がいくら死のうと構わないけど、貴女は構うでしょう?」

ニヤリと歪められた唇から鋭い牙が覗いている。

 「計画は失敗したけど、貴女の首が貰えるなら悪く無いわ。」

刺す叉の切っ先を突き付けられても、観客達を人質に取られ、小竜姫は相手を睨み据える事しか出来ない。

 小竜姫の白い首筋を、真紅の血が伝い落ちる。

 と、 不意に眩しいライトの光が遮られ、二人の頭上に影が落ちる。

 

 「メドォーーサァァァッッ!!」


 その光景を前に横島は愕然としていた。 
小竜姫の首筋にメドーサの槍が突き付けられている。 

 一瞬、目の前が真っ暗になったかの様な錯角に陥った。
いくら武神 小竜姫と云えども完全な死に体、しかも相手はメドーサ。

 状況は絶望的だ、奴なら躊躇う事無く小竜姫様の首筋に、その刃を突き立てるだろう。  
 横島の心臓は恐怖に縮こまり、鼓動の度に鋭い痛みを伝えてくる。  

 脳裏に幾つもの影がよぎる。美神とこなした除霊の数々、 
お茶を入れるおキヌ、 熱心に横島を諭す小竜姫、
   お互いを支えあって辛うじて立っている美神と絹、
     傷だらけの小竜姫とワ◇キュ−■、 
       倒れ伏すシ◆に◯マモ―――!!?!?  


  ――ドクンッ、

  横島の目に、小竜姫の首を濡らす、紅い血が映る、

  ――ドクンッ、 

 何かが焼き切れる様な感覚と共に、 
         横島はスロープの手摺に足を掛けて跳躍した。 


 「メドォーーサァァァッッ!!」 

 不意を打たれたメドーサは、それでも咄嗟に跳びさすった。

 「チィィッッ!」

相手を捕らえ損ねた霊気の爪は、プラスティック製のベンチを粉々に粉砕する。 

 「んナッ!?」

 メドーサが声を漏らす、頭上のスロープから飛び込んで来た横島の霊圧は、先の試合で見せたモノよりケタ違いに強大で 人間のモノとしては、ほぼ限界に近かった。

 「ウォォ−−ッ!」 

 横島はささくれたベンチの断面に足を掛け、メドーサに向かって突進する 

 「っく!」 

 大きく振り降ろされた霊爪(一本一本が大振りのサバイバルナイフ程もある凶悪なモノだ)を見切り、バックステップで躱すも、返す刀で切り返された爪が、突如身の丈程も有る霊波刀に姿を変えると驚きと焦りに眼を見開いた。

 “ガギンッ”  

 辛うじて霊波刀を槍の柄で受け止めると、みしみしと軋む槍に慌てて魔力を流し込む。

 「バカなッ、人間如きにこんなッ!」

 霊気と魔力が拮抗し、バチバチと火花をあげる。
その向こう側から、怒りに燃えた横島の瞳が、灼け付く殺意を叩き付けてくる。 

 「ち……」

 一瞬、人間相手に怯んでしまい、プライドを傷付けられたメドーサは、
槍から渾身の力を放出する。

 「生意気なんだよッ!虫ケラ風情がァ!!」

 槍と刃の間で魔力が爆ぜ、メドーサと横島は弾かれた様に距離を取る。

 (超加速で一気にカタをつける!)

 人間相手に切り札を切る事を決意したメドーサは、
しかし、爆炎の向こうから現れたサイキックスケイルに、術を中断せざるを得なかった。

 「ナニィ!?」

 炎を割って現れたサイキックスケイルは総計六つ、
各々が別々の軌道を描き、メドーサへ向けて殺到してくる。


   ズバアァァン! 


 六つの内五つを躱し切ったものの、一つを避けきる事が出来ず、手にした槍で迎撃したメドーサ。 しかし、スケイルは槍に触れた瞬間に爆発し、 メドーサは大きく体勢を崩してしまう。
 後方では、狙いを外したサイキックスケイルが試合会場へと降り注ぎ、
その内一つの直撃を受けたらしい勘九朗が、美神令子によって右腕を切り落とされていた。

 「くっ‥」

 (どのみち計画は失敗だ…だがッ コイツだけはここで…ッッ!)

 横島を抹殺すべく超加速を使おうとしたメドーサだったが、 
術はまたしても中断を余儀無くされる。

 「其処までです。」

 メドーサの首元には、超加速を解いた小竜姫の神剣が光っていた…


 「形勢逆転、ですね。」


「まっ、メドーサには逃げられちゃったけど、
                今回は一件落着ってコトね。」

 火角結界の残骸を前にして、美神が宣言する。

 GSの面々がヘナヘナとその場に腰を下ろす。
ついさっきまで火角結界に閉じ込められていたのだから無理もあるまい。

 「ヤレヤレ、今回は死ぬかと思ったワケ、」

 「心臓に悪いですけんノー、」

一番心臓が強そ−な師弟二人がこんな事を言っている。

 「今回は色々とギリギリだったわねー」

 緊張感が解け、にわかに平和な雰囲気がその場を満たす。
ある者は大きく息をつき、またある者は仲間と手を打鳴らしている。


 が、状況は再度一変する。

 「横島さん? 横島さんッ!?」

 今まで無言で立ち尽くしていた横島が体を傾がせ、
ゆっくりと膝を付くと、脱力して床に身を投げ出したのだ。


 「ヨコシマ君!?」 「横島さんッ!」

 美神達が駆け寄り横島を抱き起こす、

 「…気を失ってるわ…ナニこれ、霊力が異常に弱まってる!?」

 各々がヒ−リングを施すが殆ど効果が見られない。
その事実が示す可能性に、その場にいる全員が身を震わせる。
すなはち、“致命傷を負った人物に対し、ヒ−リングはその効力を大きく減ずる。”と云う事。

 「横島さん? 横島さんっ!?」

 小竜姫の呼び掛けにも横島は反応しない。
代わりに、横島のバンダナから声が返って来た。

 『小竜姫様…』

 心眼である。

 「心眼、状況を説明しなさい、横島さんに何があったの!?」

 小竜姫が今迄に無い焦った声で心眼を促す。

 『小竜姫様も美神殿も、この男に随分慕われておりますのぉ、この男、美神殿の苦戦に焦り、小竜姫様が追い詰められておるのを目にして、己が潜在霊力を無理矢理に引きずり出したのです…本来なら意思の力でなんとかなるモノでは無いのですが…その無理を押し通した結果がこの有り様にございます。 私とて制止はしたのですが… 半ば正気を失っておったのでしょう、そのせいでこやつのチャクラはズタズタに傷付き、生存に必要な霊力も殆ど枯渇しかかっておるのです。』

 「ッ!ヒ−リングが効かないのもそのせいね、どれだけ他人の霊力を流し込んでも、それによって活性化するはずの本人の霊力が殆ど存在しないんだわ…っ!」

 美神が苦々しい声をあげる、

 魂を人体に例えるなら、霊力は血液、チャクラは心臓にあたる。 血液が枯れ果ててしまえば人間が生きて行く事は不可能だ。血液型とは違って霊力のタイプは千差万別、どれだけ他人のモノを流し込んでも、それを受け止めるべき本人の霊力が存在しなければ意味が無いのである。

 しかし現状は更に悪い。
横島は、先の戦闘で本来不可能な程の霊力を引きずり出した。
その結果、大きすぎる負荷を掛けられた“心臓” チャクラがズタズタに傷付いているのだ。
 壊れたポンプは大量の霊力を吐き出し、一時的に戦闘力を増大させ、
その代償に横島から生存に必要最低限の霊力をも放出してしまったのだ。

 「そんな…」

 沈黙が落ちる、自分の霊力なら幾らでも差し出せる。しかし横島の霊気を放出できる者は横島以外には居ないのだ。


  だが、横島の霊力を保持している者ならば、居た。

 『小竜姫様、』

 「えっ?」

 『早くコヤツのチャクラを一時封印してくだされ、このままでは折角己の霊気を手に入れても、そのまま放出してしまう。』

 小竜姫の瞳に、理解の光が広がってゆく、

 「心眼、貴方は…」

 小竜姫が、己の竜気を使って横島のチャクラを優しく包む。 
仮の弁を手に入れた“心臓”は、しかし“血液”が満たされなければ直に壊死してしまうだろう。

 横島のバンダナが光を放ち、 光の粒子が横島の中へと流れ込んで消えてゆく。

 心眼が、この数日の間に少しずつ横島の霊気へと置き換わったその霊気構造を解きほぐし、横島のチャクラへと流し込んでいるのだ。

 『小竜姫様…こやつには“心眼とは、この試合が終了すれば、自然と消えるモノだったのだ。”とお伝え下さい…我がこうやって消えた事を知れば…こやつは自分を責めるでしょうからな…』

 「・・・・・」  

 小竜姫は沈黙したまま、横島の額のバンダナに優しく手を添える。  


 『お主と過ごした時間は楽しかったと、 己が力を信じろと…』


 最期迄言葉を紡がぬまま、心眼は横島の内へと融けて、消えた。


                   …to be continued!!


 あとがき
  紙媒体で既に完成していたにもかかわらず、
 キィタイプが遅過ぎな為、UPするのにこんなにかかってしまいました!!
 (一本指打法初級)奇坊でございます。
  さて今回はGS試験終了編、
 さりげに独自解釈満載です。
 〜数日間の内に少しずつ置き換わった〜のくだりは
 新陳代謝のような物と理解頂けると幸いかと、
 人体に例えると、の辺りも自己解釈です、
 粗が目立つかも知れませんが、笑って赦して頂けると嬉しいです。


◎ジェミナス様 
 素早い応援レス有り難うございます〜
奇坊はジェミナスさんの御期待に添えましたでしょうか?
ユッキーに関しては横島復活編を挟む為、
登場は多少遅れる筈ですが、彼にも頑張ってパワーUPしてもらう予定です。 
(引き分けより惜敗の方が修行に力が入る筈←キャラ任せ!?) 

◎孔明様
 うう、先達様の言葉は身に染みます〜
 それと、お察しの通り奇坊は小竜姫嬢のファンです。
   拙い筆力で無事くっ付いてくれるのか少々不安ですが‥(爆)

◎しらたま様
 うう…しらたまさんの期待を裏切ってしまいましたかね…
心眼消滅、心が痛いです…しかしこれは横島の成長を促し軽く伏線も入っていたりいなかったりする運命(プロット表に載っているコト)なのデス…

◎なまけもの様
 一応この変化には原因、とゆーか、きっかけみたいなモノはありますがまだ秘密です(笑)

>魔装術が紅い
 これは奇坊の手許にある資料がワイド版のみな為です。
これの10巻?の表紙では紅いんですよね、腕にしか展開していないので詳細は不明ですが…ワッシはモノクロでしか見た事無かった頃、トーンの感じからザクみたいなモスグリ−ンを想像してました。公式にはどうなってるんでしょうか‥ 

>霊気の爪
 これは名前は一緒ですがスケイルとは逆で見た目がちょっと異なります
爪が大型化し篭手も肘まで。イメージはARMSのジャバウォックの腕×鬼武者の篭手(質感は普通の霊波刀と一緒)。石破天驚ガンダムのグローブア−マーも好きなんですけど描写が難しくて…

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