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▽レス始

「あの日 あの時 あの場所で!! 其之壱(GS)」

匿名奇坊 (2005-11-04 18:42/2005-11-07 02:51)
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 「勇気や愛や思いやりのない力は滅びるのよ!」

小竜姫は頬が緩みそうになるのを押し隠し、
悔しそうに歯噛みするメド−サに向かってたからかに言い放った。

自身の愛弟子がメドーサの策略を打ち破り、
更には彼女の直弟子をも圧倒しているのだ。
観客達を盾に取られ、メドーサに斬りかかることが出来ずに居る小竜姫にしてみれば、 
正直、胸のすく思いだった。
 
「まだ終わっちゃあ居ないさ。」 
 
メドーサが忌々しげに嘯く。

リング上では、サイキックスケイルの直撃を受けて片膝を着いていた
深紅の鎧を纏った異形の戦士が、
吹き飛ばされた装甲を再構成しながら立ち上がろうとしていた… 


 

 
 あの日 あの時 あの場所で!!
              其之壱


 


(おそらく心眼の指示でしょう、相手の消耗を待つ作戦ですね…)

 リング上では横島が紅い魔装術遣い…伊達雪之丞、といったか、
彼の連続霊波砲をサイキックスケイル一枚で凌ぎ続けていた。
全身の霊気を一点に集中し、霊波の盾を創り出す。という技の特性上、
防戦一方の横島は追いつめられている様に見える。
が、その動きに焦りは見えない。
 受け止め、躱し、いなして、相手の霊力と精神力を削り取ってゆく。
むしろ精神的には横島の方が優位に立っている。と言えるかも知れない。
 メドーサもそれが判っているのか、むっつりと黙りこんでいる。
 無論、余裕があるとは言い難いが、
横島は実戦の中で必要に迫られ,霊能を磨いてきた術者である。
 初めて訪れた妙神山でサイキックスケイルを発現させて以来、
幾つもの戦いをあの盾一枚で凌ぎ続けてきたのだろう、
付け焼刃で魔装術を身に付けた道場生とは潜り抜けてきた修羅場の数が違う。
 何せ彼は、まだ神通力に目覚めたばかりの天竜童子と連携し、自ら囮になることで、機転と度胸で目の前に居るメドーサを撃退してのけた事すらあるのだ。
 焦って大振りになった攻撃をかいくぐり、スケイルの一撃が
爆音と共に魔装鬼を吹き飛ばす。
派手さはないが着実に、横島はポイントを稼いでいった。

 


 やがて雪之丞の霊力が底を尽き、勝負の大勢は決したかと思われたとき、
雪之丞は魔装術を解き、右手に霊力を集中させていった。

 「サイキックスケイル…ッ!」
   (拙い…この状況は……ッ!)

 小竜姫が唇を噛む。

 「これでお互いに一撃必殺。勝負は五分と五分だね…!」

 キッとメドーサを睨みつけるが、
試合に介入するワケにもいかず、彼女に斬りかかる事も出来ない。
 小竜姫に出来る事は、横島を信じて御仏の加護を祈る事だけだった。


 
 横島と雪之丞が霊気の盾を構え、睨み合いを始めてから秒針が20ばかりの時を刻んだ頃、会場はピリピリとした緊張感を孕んだ静けさに包まれ、
小竜姫は、横島達との出会いに想いを馳せていた。


 〜回想〜


 「うぬ等が如き未熟者、この鬼門がおる限り、この妙神山修行場へは一歩たりとも入れぬものと心得よ!!」

 それは困る。 鬼門達は此処五年もの間、同じ様な事を云っては、
訪れた修行者の尽くを追い返してしまっていた。 
 斉天大聖老師はここ10年ばかり姿を見せないし。  
友人のヒャクメも、近頃魔族の動きがキナ臭いとかであまり遊びに来ない。
神族にとって差して長い期間でもないが、このままでは退屈で干からびてしまいかねない。

 (尤も、今回の修行者は大丈夫そうですけど…)
半年ほど前、鬼門に追い返された者とは比較にならない、
攻撃的で力強く、安定感の有る霊気。
正面から闘いを挑んだところで、鬼門達の勝ちは薄いだろう。

 (有望で鍛え甲斐の有る者となると更に久しぶりですね…)
             (ちょっと覗いてみようかしら…)

 「あらお客様?」
  


 こうして小竜姫は、美神除霊事務所の面々と忘れ得ぬ出会いを果たしたのだ…


 出会い頭に危なっかしくも小竜姫の剣をかわして見せた横島。
彼が素人だ、と言う美神達の言葉に首を傾げつつも、
キラリと光るモノを感じた小竜姫は、カトラスによって手傷を負った美神のシャドウへのハンデとして横島のシャドウを召喚した。

 道化師と歌舞伎役者を掛け合わせたような奇妙な風体、とても戦士とは見えない彼のシャドウは、
しかし、カトラスの刃肢を阻む強固な盾を顕現させ、
黒刃と戦乙女の間に身を割り込ませて、美神のシャドウの窮地を救った。

 「こんなんワイのキャラちゃうんやけどな〜」

 などと嘯きながら。

 (やはり…)

 小竜姫は、彼のシャドウが見た目通りのモノではないと勘付いていた。
たとえ制御が外れていようと、まるで独自の意思を持つかのように振舞い、人語を解する。その特殊性、その奇妙さに気を取られがちだが、よくよく見ると衣装の造りもしっかりしたモノだ。
なにより、小竜姫の霊的視覚は、彼のシャドウの霊核が放つ、力強く温かな霊光をハッキリと捉えていたのだ。 


 
 
 美神達が妙神山を後にして一週間、妙神山修行場は急速に復興していた。
彼の才能を確信した小竜姫は、一人山に残り、工事現場でのアルバイトに精を出す横島に、折りを見ては話し掛け、夕食をご馳走し、呼吸法や内気の練り方,歩法などの基礎を伝授していった。
 当初半信半疑で、(いや、一信九疑くらいか)覗きやセクハラに情熱を燃やしていた横島だったが、小竜姫の熱意に押されて、それらの修練は真面目にこなしていた。
…覗きに対する情熱は、結局最後まで燃えっ放しであったが…

 本来、妙神山に訪れる修行者は、己の限界に突き当たり、それを打破すべく、この修行場の門を叩く。(そして、門と闘う。)
彼等と違い、横島はこれまで修行した事も無く、妙な癖も持っていなかったため、ストレートに小竜姫の技術を吸収していった。
 教えたのはほんの基礎、ごく僅かな期間だったが、
他の誰の弟子でもない、純粋な自分の弟子というものを持ったことの無かった小竜姫は、今迄得たことの無い、新鮮な喜びを感じていた。


 
 横島が妙神山を下山する日、(当初の予定より随分長引いたらしかった)
彼は初めて生身で霊波の盾を創り出して見せた。
曰く、“サイキックスケイル”スケイル=鱗とは、師匠たる小竜姫が竜神である事にあやかったものらしく、照れ臭そうに頬を掻きながら由来を話す横島の姿は、彼女のささやかな自尊心と、教師としての充実感を大いにくすぐった。

 


 (師として、私は彼の闘いを見届けなければ…)

 回想を終えた小竜姫は両手を胸の前で合わせ、
結界の張られたリングの上、対峙する二人の戦士を見据えた。

 (彼の戦士としての資質は本物です…そうそう負ける事はありません…!)

 歯痒い事に、彼自身や彼に周囲は未だその才に気付いては居ない様だが…
しかし、私だけが彼の才に気付いているのだ。彼を見つけ出したのは私なのだ。という事実に、密かに自負心を刺激され、皆に見せびらかしたい様な、それでいて誰にも秘密にしてしまいたい様な、そんな、独占欲にも似た、奇妙な興奮を感じてしまう小竜姫であった。
 あるいは…小竜姫は横目でメドーサの様子を窺いながら考える。

 (あるいは、私以外で最も彼を評価しているのは、この女蜴叉かも知れませんね…あるいは彼と共に彼女と戦った天竜童子様か、それとも今彼と相対している魔装術遣いか…)

 憎々しげにリング上を見つめるメドーサの視線の先で、
横島と雪之丞の闘いは遂に決着を迎えようとしていた。


 
 (もーアカン…胃ぃに穴開くっちゅうねん…!)

 目の前では、 霊気の盾…俺の虎の子であるサイキックスケイルを構えた伊達雪之丞が、俺を睨み付けていた…

 俺と雪之丞は二人共サイキックスケイルを構え、睨み合っていた。
互いに一撃必殺。傍目には互角のように見えるだろう…


   が、


 (アカン…奴の攻撃を受け流し続けとったせいで腕が痺れて…)

震えそーになる腕を押さえ込み、顔には努めてシリアスな表情を貼り付けてはいるものの、よ〜く見れば滝のよ〜に脂汗が流れ落ちている事が分かるだろう…

 『敵の霊力も限界なのだ、踏ん張り処だぞ。』

 なんて云われてもな〜
心の中で心眼に愚痴をたれる。

 (昨日は忍者のネーちゃんの霊刀白羽取りして、散々力較べしたかんな〜)
   (ハッキリいって、筋肉痛で腕が鉛のよ〜に重いぞ!)

 最早腕を掲げてスケイルを構える事すら辛い。殆ど半泣きである。
かといって、構えを解けば眼前の敵はその隙を決して見逃さないだろう。

 (しかし!負ける訳にはゆかんっ!小竜姫様その他女性陣に俺のカックイー所を見せつけねば!!)

 …所詮横島は横島である…

 雪之丞から視線を外し、チロリと観客席へと目をやる横島。


 「余所見たぁ余裕だなァァ横島ァァーーッ!!」


雪之丞が、その隙を見逃す筈も無く、スケイルを撃ち放つ。

 (引っ掛かったァッ!) 

内心ガッツポーズをしながら快哉を上げる。 

 解説しよう!! 横島は現在、小竜姫によって竜気を授けられ、額のバンダナに“心眼”を宿している。
この心眼、自我を与えられ主にアドバイザーとしての役目を果たしているが本来は其の名が示す通り、“心の眼”横島自身の霊的感覚器官なのだ。
横島が精神を集中すれば、視覚の外に在っても霊的存在をハッキリと知覚できる。


 露骨に余所見をして見せたのは、横島が敵の暴発を誘うために仕掛けたブラフだったのである。

 …が…心眼を使う為に知覚に神経を集中させた結果…

 「って、スケイルが無ぇーーーッ!!」

 右半身に構えた横島の右手から、スケイルは雨散霧消してしまっていた。

 『我に相談もせず慣れん策を弄するからじゃ…』

心眼が呆れた様に言って来る。

 (いかん、これは死ぬ 本気で死ぬ 絶対死ぬ 死んでしまう〜ッ!)

 背中に氷の刃を突き立てられたかの様な悪寒。  
世界が色を失い、奇妙に間延びしたテンポで時間が流れ出す。

 考えて動いた訳では無い、もう一度やれ、と言われても絶対無理だ、と断言できる。

 左前方に体を投げ出しながら身を捻る。

 暴力的な霊力の塊が、頬を、最近厚くなり始めた胸板を掠めてすっとんでゆく。

 (躱したっ!)

ヘナヘナと腰が砕けそうになっていると、 

 『後ろだッ!!!!』

突如として響く心眼の怒鳴り声、半ば反射的に、後ろに蹴り足を突き出す。

 爆発的に前方へ押し出される感覚、

 (大砲から打ち出される砲弾ってこんな気持ちかも知れん)

雪之丞の“顔”が、一瞬で眼前に迫る。

 (うわぁ!)

 攻撃の為、というより激突の衝撃を和らげる為、霊力の集中した右腕で
雪之丞を殴り倒すっ!!

 「勝者 横島っ!」

審判の声が朗々と響き、

 「…へっ?」

横島は信じ難いものを見るかの様な顔で、審判の顔をまじまじと見詰めた。

 


 (やはり彼を見込んだ私の眼に狂いはなかった…!)

 ものの数瞬の攻防だった。この会場の中に内容を理解できた者がどれだけ居るだろう?或いは本人達にも完全には把握出来ていないのかも知れない。

 横島は敵の放ったサイキックスケイルをギリギリでかわして
カウンターを仕掛けたのである。
それも、恐ろしく高度なカウンターをだ。

 彼は突き抜けた相手の霊力の塊を蹴りつけ、足場にする事で
爆発的な加速を得たのだ。離れた間合いを一瞬で詰めた後、
新たに創り出した霊気の爪を一閃し、雪之丞をKOした。

 (やはり彼は、度重なる実戦の中で急速にその能力を進化させている…)  

     (…でも)

 (少しばかり無茶をしすぎです…後で少したしなめておかないと…) 
              (まったく、…心臓に悪い…)

 ともあれ

 「ちぃぃぃッ!」

 小竜姫は忌々しげに舌打ちするメドーサに向かって会心の笑みを浮かべ、
誇らしげに宣言した。

 「横島さんの勝ち…ですね。」

 

 

 

            …to be continued!!

 

あとがき(言い訳?)
 はじめまして匿名奇坊と申します。
やってしまいました…
皆さんの素晴らしい作品に触発されて筆を取り、
何を血迷ったか長編の、それも本編再構成物に手を出してしまいました。
 ハイ、バカですね
そもそも私は今迄エヴァ、ナデシコ等の長編に手を出して2、3話で行き詰まり結局投稿せずじまい…
と、ゆー惨々たる過去をもつ人間でして
今回、プロット立てして何話か書いて、これはいけるかもとゆう感触を得て投稿したわけですが、
書いてて気付くのは、皆さんペース速いすっねー尊敬してしまいます。
そんな訳で、遅筆ながらも完結を目標に頑張っていくので
生暖かい眼でご指導、ご容赦いただけたら幸いかなと。
 最後に、こんなヘタれな私を投稿に踏み切らせてくださった
この掲示板と、皆様の作品に感謝を!

                  奇坊

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