<忠夫>
「助けてー!」
誰か、誰でもいいから助けてくれ。このままじゃ追い付かれる。なんだ、あの脚力は? どうして喋りながら全力で走って彼女たちは息一つ切らしてないんだ? 俺は、もうさすがに限界なんだが。諦めかけて空を見上げた時、二つの影が舞い降りた。
「そこまでよ!」
「えっ!?」
しゅたしゅたっと二つの影が俺と女生徒たちの前に立ち塞がる。
「恋の戦士! ミョージンブラァァァァァァァック!」
「愛の戦士! ミョージンブルゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
つ〜るつるで〜、ぺ〜たぺ〜た〜。ふ〜たりは〜。
「「二人はヒンニュー!」」
びしっとポーズを取る二人。
……なんか来た。
妙神山のただおくん〜おキヌちゃんの一日 昼ですよ〜
<ブラック>
ふふふ、ぽかんとしているわねヨコシマ。まずはヨコシマを謎の女性がピンチの時に助けて印象を深める。そして後にヨコシマにその女性への思慕の情が深まった時、正体を明かすの。
『まさか……あのミョージンブラックが君だったなんて……』
『黙っててごめんなさい、ヨコシマ。でもこれには事情が……』
俯く私に、ヨコシマがそっと私の肩に手をかけるの。ちょっとびくっとする私。
『いいんだよ、ルシオラ。本当は薄々気付いてたんだよ。君がブラックだって』
『えっ、いつから!?』
『つい最近だけどね。大体俺が君を分からないはずないだろう?』
『ヨ、ヨコシマ……』
『もう、君がその仮面を被る必要なんてないんだ。これからは守ってもらうんじゃなくて……俺が君を守るから』
そう言って男らしくヨコシマは私を抱きしめるの。ふふ、いつの間にか大人の男の身体になったのね。そして二人の顔は近づいていき、やがて……。
「ル、じゃくてブラックさーん。こっちの世界に帰ってきてくださーい!」
はっ、少し妄想が過ぎたわね。これも小竜姫の影響かしら? 私が女生徒たちに向き直ると、後ろに居るヨコシマが近づいてきたわ。
「あ、あの〜」
「大丈夫よ、ヨコシマ。私たちが守るから」
「いや、あのルシオラにおキヌちゃん……なにやってんの?」
すでにバレテルゥゥゥゥゥ!? このままじゃ私の壮大な計画が……いやまだ大丈夫。上手くごまかせばなんとか。私が言い訳を上手く考えていると、隣のブルーが
「ち、違います! 私は高等部の幽霊おキヌちゃんではありませんし、こちらもあなたと同じクラスで帰国子女のルシオラさんではありません!」
おキヌちゃん……。いくらヨコシマが純粋でもそれで騙せるわけが……
「あ、違うの? なんだ」
あったぁぁぁぁぁぁぁぁ!? ヨコシマ、あなたが純粋なのは嬉しいけど、少しは人を疑うことを覚えましょうよ……。
「で、あなたたちなんなのよ? 邪魔する気?」
しびれを切らした女生徒集団のリーダーらしき人が、私たちを睨んでくる。よく今まで口出さなかったわね。さすがに教育がしっかりしているのかしら。
「ふっ、愚問ね。私たちの許可なくヨコシマの写真を、しかも無理やり撮ろうなど!」
「そうです! 今度横断です!」
「ブルー、そこは言語道断」
「はっ、そうでした言語道断です!」
「私たちはヨコシマを害する物を排除するために存在するわ。故に、ヨコシマに無理強いする者から!」
「私たちは守ります!」
そうよ、ヨコシマとの甘い生活を邪魔させてたまるものですか! 大体本当なら今からヨコシマと一緒(コブ三人付くだが)にお昼を食べる予定だったのに……。
「そうですか、ですがお二人とも、少し考えて見ませんか?」
そう言って彼女たちの後ろから出てきたのは、入学式では男子排斥派の筆頭で、現在ヨコシマ派筆頭に鞍替えした生徒会長だ。
「なによ」
「考えてみてください。確かに無理やり写真を撮るのは本意ではありませんが……嫌がるのを無理やりという写真も中々良いとは思いません?」
………………………………………………………………じゅるり。
「今、少し良いと思いましたね?」
はっ!?
「そ、そんなことないわよ?」
「嫌がって撮られた写真。涙目になって紅潮した頬に、恥ずかしがる姿……ああ」
「……………………………………………………ち、違うわ! 駄目よそんなの! いい、無理やりなんてそんなの駄目! どんなことでも間に愛がなければそんな萌えは嘘っぱちだわ!」
ちょっとだけ、ほんのちょっとだけそれもいいかもなんて思ったのは内緒よ?
「なら仕方ありません……皆さん! やっておしま〜〜〜〜〜〜〜〜い!」
「「「「「「「イー!」」」」」」」
どこの戦闘員よあんたたち! いいわ、ミョージンブラックの力、見せてあげる。
「いくわよ、ブルー! さっさとこいつらをのして、ヨコシマとお昼を……」
そう言ってヨコシマとブルーがいるはずの場所を振り返ると……
『横島さんを連れて先に避難しておきますね♪ 後はよろしくお願いします。 ぶるーより』
と書かれた紙が壁に貼られてあった。
謀ったな、ブルゥゥゥゥゥゥゥ!?
<ブルー>
「うんしょ、うんしょ」
「助かったよ、おキヌちゃん」
説明が面倒だったので正体を(自分だけ)明かした私は横島さんを屋上まで避難させようと、なんとか横島さんを抱いて空を飛びます。昔からどちらかというと小柄な横島さんですが、今は細身の中に筋肉が付いて結構重いです。初めて会った時はまだ小さな子供だったんですが……このままじゃ(見た目の)歳も身長も、追い抜かれる日は近いですね。呼び方もいつの間にか「キヌ姉ちゃん」から「おキヌちゃん」になってますし。腕で抱くと引き締まった筋肉の中に少年らしい柔らかさがあって……役得ですね。
「あの人は大丈夫かなあ」
「大丈夫ですよ。ぶらっくはみょーじんじゃーの中で二番目に戦闘力が高いんですから」
横島さんと私は眼下で数百人の女生徒を蹴散らしているぶらっくを見ました。ちぎっては投げる、ちぎっては投げる繰り返すぶらっくと、やられても立ち上がる女生徒たち。ぶらっくももちろん凄いですけど、一応上位の魔族であるぶらっくにやられて無傷で何事もなかったかのように立ち上がるみんなって……。どこの人外さんですか?
屋上に降りると、美神さんと冥子さんが待っていました。
「おキヌちゃん、横島くん、遅いわよ」
「私〜もうお腹ぺこぺこよ〜」
「「あ、ごめんなさい」」
律儀に私たちが来るまでお昼を食べずに待っていた二人に、謝る私と横島さん。あっ、台詞が被っちゃいましたね。なんか嬉しいな。
「あれ、ルシオラはまだですか?」
「さあ、まだ来てないわよ?」
「おかしいなあ。まだトイレから帰ってないのかなあ?」
「ルシオラちゃん、トイレ長いのね〜」
首を傾げる三人に、私は何も言えません。……ごめんなさいルシオラさん。あなたにトイレの長い人というスキルが付いてしまいました。
「まあ、しょうがないか。後で来るでしょう。先にもう食べちゃいましょう」
「そうっすね。じゃあ、いっただき「ああー!」……ふえ?」
横島さんが私のお弁当を食べようとした時、美神さんが大声を上げました。どうしました? お弁当に虫でも入ってたんでしょうか?
「あー、冥子! そう言えば私たち昼休みに理事長に呼ばれてるんじゃなかったっけ!?」
そう言えば朝にそんなこと言ってましたね。でもお昼の休憩時間が始まってから結構時間が経ちましたし、今からお昼を食べてたら間に合いません。確か次のGS試験のことでしたっけ。二人とも優秀ですから、上級生でなくても特別に出れるかもって噂になってましたね。
「あ〜大変大変〜。どうしよう〜令子ちゃ〜ん〜」
そんなうるうるされても……。
「仕方ないわね。今日はお昼抜きだわ」
「え〜ん〜。お腹空いたのに〜」
泣きじゃくる冥子さんを引きずりながら出て行く美神さん。
「美神さんたちも行っちゃった。まあいいか。それじゃあ食べようかおキヌちゃん」
「はい、では……」
「「いっただっきまーす」」
そういえば、こうやって二人っきりでいるのもかなり久しぶりな気がします。今日は本当に役得の日ですね。私のお弁当を美味しそうに頬張る横島さんを見ると、目が合っちゃいました。
「どうしたんですか?」
「ん、そういえばおキヌちゃんと二人でのんびりするのも久しぶりだなあって思って」
照れくさそうに頭をかく横島さん。そうか〜、同じことを考えてたんですね。私は嬉しさを隠しながら、私(幽霊)用のお弁当を広げて食べ始めました。
今日は本当に役得ですね。
おまけ
その日の妙神山です。
「おキヌちゃん……よくも抜け駆けしたわね……。しかも新しいスキルまで勝手につけて! 誤解解くの大変だったわよ!」
背中から光を放ちながら迫るルシオラさん。
「おキヌちゃん……信じていたのに……」
周りに十数もの炎を浮かべながら仁王立ちするタマモちゃん。
「ミョージンジャー同盟規約その6783条。全員の了解なしで横島忠夫と一対一で御飯を食べることを禁ずる、に違反しますね。おキヌさん……覚悟は出来てますね?」
逆鱗にあと三せんちですいっちおんな状態の小竜姫さん。
「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
私ってやっぱりオチキャラなんですかー?
続く
あとがき
今回も結構難産でした。おキヌちゃんメインって私にはなんか難しいようです。いや、まあ私が下手なだけなんですが。
皆さんいつもレスありがとうございます。つーことで今回もレス返し。
>黒覆面(赤)様
>そりゃそうと、アシュの娘達のうち他の二人は?
前回のレス返しにちょこっと書きましたが、パピリオは自分の番が来るのを楽しみに、ベスパは父親を更正させようと必死です。無理ですけどね。
>ヒロヒロ様
>ピカピカ光るのは雄・・・・・・・・・・・ルシオラは女の子・ルシオラは女の子・ルシオラは女の子!!!胸はな(ポキャメソ!!)
そういや光るのは雄でしたっけ。胸はまったくな(以下自主規制)
>神曲様
>まあ、何にせよキーやんでも倒せそうな感じで爆笑しました。
ここまで来ると忠夫くんが関われば倒せるかもしれませんね(汗)。
>ジェミナス様
>女性陣の前では無力ですが・・・
まあ、あまりに女性が強すぎるのでこの作品。ある意味今のところ美神さんが一番弱いとも言えますしね。
>もも様
>六道の中等部が妙にパワフりゃーですね。
今回もパワフりゃーです。
>masa様
>次回もおキヌちゃんメインですよね;;彼女の出番を信じてまってます。
期待に添えたかどうかは……微妙です。
>D,様
>てか陰念・・・・・もしや横島を狙ってるのか?それとも友達が欲しいのか?
もちろんギャグですが、ガチです。
>マヒマヒ様
>私としては、東方不敗よりギム・ギンガナム派です。
私は両方大好きですね。二人とも数々の名台詞を残してくれた人なので。「ガンダムが量産できるわきゃねーだろ!」とか。
>B様
>あと蛇の人の真意は?
もうちょっと後で出ると思います。多分。
>柳野雫様
>しかしおキヌちゃんはやっぱり和むんですが・・どーしてこんなに影が薄いのか・・。が、頑張れー。
どうしてでしょうか? なぜか筆者ではこれが限界です。
>斬切舞様
>陰念哀れw
陰念は燃えキャラになる予定なんですが、このままでは……。
>tomo様
誤字報告ありがとうございました。
>それにしても、小竜姫様もルシオラも、朝駆けは良いんですけど、いつも朝失敗しているのなら夜討ちすれば良いのに
一応ミョージンジャーの中では淑女協定がありますので夜這いは無理です。基本的には忠夫くんがしたくないことはしないと。まあほとんど守られてませんが。
>弧枝様
>全部、同じに持っていくのは話の流れからいって、不可能のような気がします。
それは確かに無理ですが、また違う横島らしさを出していきたいと思います。
>54様
>決め手はやはり某戦闘用アンドロイドでメイドさんなあの方の自爆技を先に使ったほうでしょう。w自らの業を使った技、同属なら一撃で倒せます!同属でなくても倒せます!
ああ、あの稼働時間一年のま○ろさんですね。そういえば貧乳ネタでありましたね。忘れた頃にいつか出しましょうかな。
>シヴァやん様
>あれは慣れなんでしょうか?それとも諦めでしょうか?どちらにしても素質はあったんですね。
両方ですね。そして素質もばりばりです。性格が邪魔してますけど。
>ゆん様
>銀ちゃん、陰念、アシュタロスの三つ巴もいいかもしれんがw
う〜む、ここまでやると野菜な忠告が入りそうですな。
>わーくん様
>お久しぶりです。最近忙しくて、久しぶりに来てみるとなんかすごいことになってますねぇ〜。
お久しぶりです。ええ、本当に凄いことになってきました。
>干し柿レベル孫愛爺様
>色々砕けてきてますが、また育児日記と爺馬鹿のお話も期待してます。
こちらこそ初めまして。育児日記はまたそろそろ書こうかと思います。本編ではなかなか出せないおじいちゃんもそっちで出そうかと思います。
最近少し更新が遅くなってきています。今度から一日おきになりそうです。申し訳ございませんが二日連続で更新されたらラッキーぐらいに思ってください。
ではこの辺で。
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