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「せかいはまわるよどこまでも〜12〜(GS)」

拓坊 (2005-11-03 23:17/2005-11-05 23:56)
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〜ナレーター視点〜


「さ、寒い…凍え死んでしまう……」


横島は今、吹雪の吹き荒れる山をロッククライミングで登っている最中だ。
右を見ても左を見ても一寸先は雪状態で十メートル先もろくに見えやしない。

何で彼がこんなところにいるかと言うと、それには深〜い訳がある。


このクリスマスに、幽霊のおキヌちゃんにも着れるエクトプラズムで作られた服をプレゼントしよう思い立ったわけだ。
因みに情報源はキイで、向こうに連絡はしてあげるよと笑いながら見送っていたと言う。


「こんなにキツイなんて聞いてないぞー!!」


横島はそう叫びながらもほぼ直角にそそり立つ岸壁をよじ登っていく。

そして、目の前に一軒の小さな小屋を発見した。


「や、やっとついた…」


横島はやっとの思いで小屋の入り口に立ち、軽くノックする。


「すいませ〜ん。連絡しておいた横島と申しますが〜」


「これはこれは、遠い所へはるばるようこそ…品物は此れに…」


そういって、扉の横にある小窓から包みが渡される。
そこからちょっと覗くては白くて小さく、綺麗なものだった。


「ありがとうございます、織姫様!」


横島は早く持って帰ろうと包みに手を伸ばすと、いきなりその手をガシッと掴まれた。
それに悲鳴を何とか飲み込む横島。


「此処まで登ってくるのにも疲れたでしょう。中で休んで行って下さい」


そう、綺麗な女性の声で誘われて横島はちょっと迷うが、家ではおキヌちゃんも待っていると何とか自制した。


「いえ、急いでますんで…」


と、断った瞬間。横島を掴んでいた腕がぐいっと引かれ、横島は咄嗟のことでつんのめる。

そして、くるりっとその壁の部分が横に回った。
いわゆるどんでん返しと言うものである。

横島は小屋の中に転がりながら入り、壁にぶつかって止まった。


「いててて…織姫様一体な…!」


横島が頭を押さえながら振り返ると、其処にいたのは…


「あら、すみません。手が滑ってしまいまして…」


長い髪に、高級そうな着物を着た、シワシワヨボヨボのババアがいた。

横島の脳が一瞬でフリーズした。其処まで衝撃なことだったらしい。


「ふふふふふ、山に篭って60年でナマで男を見るのは初めてですわ。

ついでにめくるめくイヴの夜はいかが?」


そう言って横島に詰め寄る織姫。
横島の脳は即効で再起動した。


「い、嫌やーーー!!!」


横島はずざざっと距離を取り、扉に向かって一直線。そして取っ手に手をかけて引くのだが…


「な! 開かない!?」


「ふっふっふ、逃がさないわよ。マイダーリン〜」


ハートを飛ばしながらにじり寄って来る織姫。
横島の本能が危険だとアラートを鳴らしていた。


「うおぉぉ! サイキック猫騙し!!


横島は、その貞操の危機に底力を発揮した。
何時も以上の眩い光を発し、織姫の視界を遮る。
そして霊波を極限にまで右腕に集中させて、


はあぁぁ! サイキックスラッシュ!!


鋭利の刃物と化した霊波で壁をぶった斬って外に飛び出た。
だが、横島は忘れていた。


「うおおぉぉぉ! ……ってあれ?」


幾ら足を動かしても前に動かない。其れはそうだろう。
だって、ここはほぼ断崖絶壁と言っていい冬の山なのだ。

そう、飛び出した横島の足元には地面は無かった。


「ノオォォォォーーー!!!」


横島は数時間かけて登った山道を、僅か数十秒で駆け下りた。もとい落下していった。


幸福荘の蒼河霊能相談所、つまりキイ達の家ではクリスマスパーティーの準備が整えられていた。
グレンの前には豪勢にも一眼レフカメラが並べられている。勿論のことグレンは行儀良く御預けをして待っている。よだれをたら〜んと垂らしてはいるが。


「横島さん遅いですね……何か予定でも入ったんでしょうか?」


しかし、なかなか帰ってこない横島におキヌは心配そうに呟いた。


「それは無いと思うよ。一応家でパーティーするって言ってたし」


キイは、おキヌの言葉に笑いながら答えた。因みに視線の方は料理に釘付けで微動だにもしない。


その時、扉がかちゃっと開いた。
そして、どこかボロボロになった横島がふらふらとした足取りで中に入ってきた。


「これっ…」


「えっ! 私にですか?」


横島は手にした包みをおキヌちゃんに手渡す。
中にはいっていたのは女性物の服にスカート、靴などの一式だった。


「わあっ、お洋服。横島さんありがとうございます…!!」


「い、いいってことさ……」


横島はおキヌちゃんからマフラーを受け取りながら、何とか笑顔で返事した。


「いや〜、忠っち織姫に食べられなかったんだね」


「やっぱりキイ兄知ってたんかい!! 危うく俺の貞操のピンチだったわ!!」


横島が叫ぶが、キイはまあまあと宥める。そしてキイは一つの包みを横島に渡した。
どうやらプレゼントらしい。
横島がその包みを開けると、中に入っていたのは一冊の本。


「『サルでも分かる漫才芸』?」


「最近突っ込みばっかりの忠っちにぴったりだね!」


「誰の所為で突っ込みばっかりしとると思ってんだ!!」


横島は本をキイに叩き返した。
冗談だよと言いながらキイはもう一つの包みを手渡した。

中に入っていたのはリストバンド。横島の頬がちょっと引き攣った。
この前修行で使った一つ20キロのものを思い出したらしい。


「ああ、それは厄避けのリストバンドだからね」


そう言ってキイはリストに縫われている奇妙な象形文字を指した。
横島のほうはどんな意味があるのか分からないがとりあえず有難く貰っておくことにした。


「それで、自分へのプレゼントは?」


「あっ、忘れてた…」


キイのその言葉に、横島はキイのプレゼントを準備するのをすっかり忘れていたのに気がついた。

その呟きを聞いて、キイは…


「いいっていいって…まあ、期待してたけど次まで待つよ」


そういうキイがどこか悲しそうな顔をしていて、横島は少し心が痛んだ。

そしてキイは戸棚から一冊のノートを取り出すと、


「忠っちの給料ハーフカット…っと……」


「待ていっ! 思いっきり根に持っとるやないか!!」


ギャーギャーと騒ぎ出すキイと横島を尻目に、カメラを食べ終えたグレンの魔の手が家電へと伸びてたりした。


せかいはまわるよどこまでも
〜〜それいけ道楽愚連隊!! 前編〜〜


〜横島視点〜


「凄い雨ですね〜」


おキヌちゃんが窓の外を眺めながらそう呟いた。
確かに外は真っ暗で、雨の音がざあざあと部屋の中へまで聞こえてくる。


「いや〜今日は依頼が無くてよかった〜」


寝そべったキイ兄がそう言いながらグレンを上に投げて掴んでと遊んでいる。
ちょっと危ない気がするが、グレンのほうも楽しそうなのでまあいいかな。


「本当にキイに言ってGSを道楽商売にしてるよな」


俺はため息混じりにそう言った。


「そう? 令子ちゃんは雨が降ったら仕事入っててもキャンセルしてるけどな」


それはまた…キイ兄以上だな。大名商売ってやつか。
っていうか、俺の知ってる一流GSって皆一癖も二癖もある人たちばっかりだな。
これが日本を代表するGS達なのか? 何だかとっても不安なんだけど…


そこでコンコンっとドアをノックする音が響いた。


「は〜い」


それにおキヌちゃんが応待する。最近はおキヌちゃんも事務能力がどんどん上がっていくな〜


「『蒼河葵依』さん…ですね? 唐巣神父の使いできました」


「唐巣さんの?」


尋ねてきたのは、金髪碧眼の美少年…つまり異邦人だ。


美形…美形か……


……………ふっ……


「ちくしょー! 美形が何ぼのもんじゃーい!!」


俺は即興で作り上げたわら人形に『体調不良』と書いた霊符を貼って念を込めた。


「うっ、何だか突然気分が……」


そして頭を押さえてよろめく美形の外人。


「霊符が勿体無いでしょうが!!」


そしてキイ兄の霊波ハリセンで張り飛ばされ、壁にめり込んだ。
だが俺はキイ兄に突っ込ませたことに大満足だ。

しかしキイ兄、呪いかけた俺が言うのもなんだが心配するのはお客じゃなくて霊符の方なのか?


暫くして壁から引き抜かれ、やっと落ち着いて話す事になった。


「僕はピエトロ。今、先生の弟子をしています。ピートと呼んでください」


「ぐぬぬぬぬ! 西洋かぶれな名前なぞしよって!」


「西洋の人なんだって忠っち」


しつこく食い下がる俺にキイ兄が頭をスパンと叩く。
ぐぉ、脳が揺れる…視界がぼやけるぞ〜


「先生からの貴方へのメッセージを預かっています」


「はいはい。じゃあちょっくら拝見…」


そう言ってキイ兄は手紙を開けた。中に入っているのは一枚の紙だけで俺もキイ兄の後ろに回ってその手紙を読む。


「こんだけか? 何処で何するかも書いてないぞ?」


これじゃあどうしようもない気がするんだが?


「場所は地中海の小さな島、ブラドー島といいます。それ以上は僕からはお話できません。後は直接先生からうかがってください」


「ん〜、まあ良く分からないけどオッケーって言っておいて」


キイ兄は軽い調子で返事した。そんな安受けあいしていいのかよ…
まあ、キイ兄が軽い調子なのは何時ものことだけどさ…


「それでは僕は此れで。他にもスイーパーに当たらなければいけないので」


「そっか、まあ人が多い方が楽も出来るしいいかな」


ピートはトレンチコートと帽子をかぶり、玄関先で一度だけ振り返った。


「相手はとても手強いです。貴方も十分に注意してください」


そう言ってピートは出て行った。
随分と意味深げな去り方だな〜


「しっかし、大変な仕事みたいだな……キイ兄?」


おれが隣にいたはずのキイ兄に話しかけたんだが、いつの間にか姿を消している。
何処いったんだ?


「あっ、横島忠夫君は数日学校を休ませていただきます。……ええ、はい。それでは…」


キイ兄はいつの間にか受話器を手に俺の学校に電話をかけていた。
ってか、何で勝手に休み取ってるんだよキイ兄!


「さあ忠っち。旅行の準備してね〜。一緒に行くから」


「俺も行くのかよ! ヤバイ仕事なんだろ!?」


「大丈夫さ、死にはしないだろうから」


「滅茶苦茶不安なんだけど!」


そうして俺も、ついでにおキヌちゃんもこの依頼についていくことになった。


「わぁ〜、外国だ〜。ちちゅうかいだ〜」


おキヌちゃんは飛行機に乗ってから常にこの調子ではしゃいでいる。飛行機に乗るのも初めてだし、さらに行くのが外国だからな。興奮もするかな…


「もしゃもしゃ……あっ、スチワーデスさんご飯御代わりね!」


そして俺は機内食がタダだと言うことで食いまくっていた。現在三食目だ。
キイ兄のほうはなにやら雑誌を読んでいる。その背表紙をチラッと見ると…


『衝撃の写真・事故が物語る悲惨さ…』


ちらっとキイ兄が見ているページを見ると飛行機が真っ二つに折れてて炎上している。
そして、説明っぽいところに乗員乗客全員死亡、生存者は無しと書かれていた。

なんちゅうおっかないもの見とるんじゃキイ兄…


「あ〜、そういやキイ兄って唐巣神父と知り合いだったんだな。何処で知り合ったんだ?」


「ああ、一回共同で除霊したことがあってね…」


何でも、除霊は成功したのだがその直後唐巣神父は空腹で倒れてしまったんだそうだ。
それからキイ兄が食事を奢って、まるで仏…神父ならマリア像か?…一応そんなものをを拝むが如く感謝されたらしい。
それ以来キイ兄はちょくちょく神父に食糧援助してるんだとか。どうやら資金だと断られてしまうらしい。

けど、あの唐巣神父って結構強かったよな? 俺はそのことについてもキイ兄に聞いてみた。


「うん、唐巣さんはこの世界じゃトップ10に入る実力者だよ」


それに加えて、昔は教会に所属していたんだけど悪魔祓いは認められなかったから破門になったんだそうだ。
それなのに貧乏なのかよ…お人よしも過ぎればいいもんじゃないな……


「へぇ、いたりやって『空港』ってとこにそっくりですね」


「おキヌちゃん、ここはまだ空港だよ…」


天然発言をする俺は軽く突っ込んでいた。


「皆さんいらっしゃいましたか…」


そこにピートが迎えに来た。どうやらここでチャーター機に乗り換えてまた空の旅らしい。


「ところでキイさんはどちらですか?」


「あれ? さっきまで此処にいたんだが…」


空港の中を見渡す。そしてすぐに見つけた。
キイ兄は目を放した数分のうちに、


「いや〜、バローロはいいね〜。流石はイタリアワインの王様だよ」


いつの間にかワインを買って帰ってきた。

ってか、そんな高級なワイン空港で売ってるのか? つーかキイ兄みたいな見た目完全子供なのにワイン売ってくれるのか?

そんなことを思っていたら、キイ兄たちが先に歩いていた。は、薄情者!


空港の滑走路を歩いて、一機の小型飛行機の前に案内された。

ピートのほうはもう一人のGSを探してくると空港のロビーへと戻っていった。
とりあえず俺達は飛行機の中に入ることにした。


そして、飛行機の中では……


「あんたレズじゃないの!」


「黙れこの色ボケ二重人格!」


美神さんとエミさんが口喧嘩をしていた。なんでまたこんなところで?


「あー! 美神ちゃんとエミちゃんも呼ばれてたんだ!」


「「ゲッ! キイ…」」


キイ兄の存在に気付き、二人は顔を顰めている。どうやら前の仕事のことをまだ引き摺っているらしい。


「そんなに喜んでもらえて嬉しいよ」


「いや! 喜んでないから!」


「ええい! うるさいぞ!」


俺がキイ兄に突っ込んだところでトイレから怒鳴り声がしてきた。


「いったいなにを……うわーー!! 蒼河葵依!!」


出てきたのはドクターカオスだった。けどベルトくらい締めてから出て来いよ。


「おう、カオス爺さん。マリア元気か?」


「ぬぬっ、小僧か。マリアなら其処の中じゃ」


そう言ってカオスが指したのは、『精密機械』『ワレモノ』『天地無用』と書かれた札が貼られたでかい箱を指した。
そして声が聞こえていたのか、蓋を開けてマリアが出てきた。


「横島・さん・こんにちわ」


「おおっ! 相変わらず元気そうだな」


しかし凄い面子が揃ったな。こんな一流のGSばっかり集めるなんて結構ヤバ目な仕事なんじゃ…

そして、最後の一人を連れてピートが戻ってきた。


「令子ちゃん会いたかったわ〜」


「ああ! こんなんばっかし!!」


最後の一人は冥子ちゃんだった。そして久しぶりの再開なのか美神さんに飛びついている。
そして、毎回恒例で…


「ぎゃああああぁぁぁぁぁ!!」


キイ兄が冥子ちゃんの式神たちに襲われていた。
俺は一匹だけこっちに来たマコラを撫でながらその様子を苦笑しながら見ていた。


そして、全員揃ったと言うことで飛行機は発進したんだが…


「ちょっと私降りる! こんな仕事ゴメンよ!!」


「わがまま言うな小娘! わしだって借金さえなければー!」


「ピート。こっちで一緒に座りましょ」


「令子ちゃん怒っちゃいや〜」


本当にこの面子で大丈夫なのか? それよりこれが一流GSとして通っていていいのだろうか?

ふと、キイ兄のほうを見るとカバンの中身をチェックしていた。
おお! キイ兄が真面目に…


と、思ったところでその荷物に目を向けてみると…


「着替えに枕にお弁当でしょ〜あとお菓子に敷き物も入ってるし全部オッケーかな?」


…キイ兄、遠足にでも行くつもりなのか?

そして、キイ兄はもう一つのリュックの中も確認する。


「えっとグロック17二丁に予備の弾薬が500発。H&K MP5A5に予備マガジンが二十個。閃光・焼夷・炸裂手榴弾共に5個づつにM79ランチャーと予備弾薬10発でしょ〜……」


出るわ出るわ恐ろしいほどの銃火器の数々。これからどこかに戦争にでも出かけるのかキイ兄?

ってか最後にC4とか出してたけど何に使うつもりなんだ?


ある意味心強いんだけどそれ以上に歩く武器庫みたいで怖いんだけど。


と、そこで急に飛行機が大きく揺れた。そしてどんどん高度を落としていく。


「な、何がおきたんだ!?」


「!! コウモリか! 昼間だと思って油断しました!」


と、ピートが言ったところでその視界から飛行機の操縦士がパラシュートを背負って飛び降りていった。


「パイロットが逃げたぞー!」


「任せて!」


そう言ってキイ兄は何故か狙撃用ライフルを片手にドアから身を乗り出し、


銃声が二発…


そして急に落下速度が速まったパラシュートが二つ。


「ふっ、裏切り者に制裁を…!」


キイ兄の奇行に皆が冷や汗をかいた。


「よし! ここはわしに任せろ! こんなこともあろうかとマリアにジェットエンジンを組み込んでおいたのだ!!」


棺桶っぽい箱の中からマリアが出てきてカオスの隣に立つ。
そしてカオスの合図と共に、何故かカオスの胸倉を掴むと…


「行きます・ドクター・カオス」


そのままジェットエンジンを噴射した。
マリアとカオスは飛行機の天井を突き破って、コウモリの群れを抜け出した。
そして数十メートル言ったところで、ボンッと爆発した。


「たまや〜」


キイ兄花火じゃないって…


「アホかあいつはー!」


「誰よあいつ呼んだのは!」


「どうするの! このままじゃ墜落よ!」


どんどん高度は下がってもう海面がかなり近づいている。


「それじゃあ自分が…」


「「「「絶対に駄目だ(よ)(なワケ)(です)!!」」」」


キイ兄は俺・美神さん・エミさん・おキヌちゃんに同時に止められた。


そして、そのまま飛行機は海へと落ちた。


「いや〜、近くに船通ってて良かったね」


俺達は偶然近くをクルージング中だった船に乗り込んでいた。
皆は大体の荷物をなくしていたが、キイ兄だけはちゃっかり自分の荷物を確保していたりした。


「何なんだお前らわーー!」


この船の持ち主が叫ぶが、


「ピートそろそろ本当のこと言ってくれてもいいんじゃない?」


「…今回の相手……奴の名前はブラドー伯爵。元も古くもっとも強力な吸血鬼の一人です」


完全に無視して話を進めていた。


何でもそのブラドーとやら中世ヨーロッパで色々と悪さをして、結構な被害をだしているらしい。
その話をしているときキイ兄がポツリと呟いた、


「ふっ、まだまだ手口甘いな……スコアも全然たいした事ないね」


キイ兄、あんた過去に何やってるんだ? 何かすっごい物騒なこと言ってる気がするんだけど?


「――というわけでこの船は徴発します!」


何かもう犯罪を犯罪と思ってないな皆。実はこの中で一番まともなのって俺なのか?


そんなこんなで何とかブラドー島についた俺達。船の持ち主はばかやろーと言いながら去っていった。


「島中が強力で邪悪な波動に包まれてるわね」


「これじゃ吸血鬼が隣にいても気付かないわけ」


確かに、霊視しようとしても霧がかかったみたいに見えて集中しないと何も見えないだろうな。


「!! 誰か来ます!」


おキヌちゃんの言葉に皆身構える、


「遅かったな!」


だが出てきたのはカオスだった。ああ、爆発してからすっかり忘れてた。生きてたんだな。
爆発したマリアの方もぴんぴんしてるし、ホント如何してだ?


「それにしてもこの島には何故人がおらんのだ? お前の師匠とやらも影も形もないぞ?」


「何ですって!」


「ああ、だが食いもんだけは沢山あったぞ」


そういって懐から食料を取り出すカオス。あんたそれ空き巣ドロボーだって…


俺達は急いで町にやってきた。寂れた雰囲気だが人がいた形跡が彼方此方にある。
しかし人っ子一人どころか動物の気配すらしなかった。

手分けをして村中を探してみたが結局誰もいなかった


「一足遅かったようです…」


そう言ってピートは壊れたメガネを美神さんに渡した。どうやらそれが唐巣神父のメガネらしい。
と、いうことはこのメンバーでこれから戦わないといけないのか?


「とりあえずまずは休むことにしましょう」


ピートの言葉に、俺達は一軒の家で休憩をとることにした。


「あっ、こら小僧! ソーセージは一人三本までじゃ!」


「何言ってんだ、早いもん勝ちじゃー!」


「うん、おいしいよ〜」


夜も更けて、俺達はおキヌちゃんとマリアが作った食事を取っていた。
もはや食事を通り越して宴会状態になっていたが…

冥子ちゃんのキャンプ見たいね〜と言う言葉がしっくり来るな。


「いや、皆さん流石は唐巣先生が指名した人たちですね。凄まじいほどまでの余裕です」


ピートが頼もしいとか言ってるけど多分皆素なだけなんだよな。絶対今行き成り襲われたら混乱するぞ?


「それではちょっと村の見回りに行ってきます」


そう言ってピートは外へと出て行った。
そしてそれを見たエミさんが、ブラックなオーラを背負ってその後を追う。エミさん随分とピートにご執心なんだな…


「あれ? 令子ちゃんも良くの?」


「ええ、アレをあのまま方っておくと面倒なことになりそうだしね」


どうやら美神さんはエミさんの後を追うらしい。
けど、口では面倒くさいとか言ってるけど…エミさんの事が心配なんだろうな。


「友達の心配なんて美神さんって優しいんですね。ちょっと意外ですよ」


「なっ…! そんなんじゃないわよ! それに意外は余計よ意外は!!」


美神さんが顔を真っ赤にして否定してくる。あ〜、照れ隠しか。美神さんって天邪鬼だな〜

俺がくすくす笑っていると美神さんはさっさと、エミさんを追っていってしまった。

ん〜、何か新鮮な感じがするな…付き合いまだ短いけどさ…


「それでキイ兄。これから俺達は如何する?」


「ん? 今は冥子ちゃん達とUNOしてるけど?」


いや、本当に緊張感ないな皆……


「そうじゃなくて相手は吸血鬼なんだろ? 何か対策とかないのか?」


吸血鬼っていや人間よりはるかに高位で真祖って言うさらに上位の吸血鬼は不死を司るほどの存在らしい。たぶんブラドーってやつも真祖だろうし何か対策を立てていたほうがいいと思うのだが…


「そうだな〜。けど真祖って万全な状態なら銀もニンニクも太陽も大して効かないんだよね〜」


おいおい、それって結構まずくないか? 何だか勝てる気がしないんだけど?


「まあ、いざとなったらどうにかするから安心してよ」


キイ兄が自信たっぷりにそう言った。キイ兄がそういうなら大丈夫かな。
これでも頼りにはなるし…


「あははは〜ウノであがりね〜〜」


キイ兄は二枚のカードを同時に出して上がった。


「キイ君早いわ〜」


「また負けちゃいましたね〜」


「キイさん・勝率・100%・です」


って、マリアも参加してたのかよ。しかもロボットのマリアにまで連勝しちゃうなんてキイ兄って何者?

と、俺はそこで足元に何かが転がっていることに気付いた。
それを拾い上げてみると、瓶だ。しかも空っぽの…
中からは仄かにアルコール臭…


「あはは〜、おキヌちゃんウノ〜」


「あっ、油断しました〜」


キイ兄、実は酔ってるね? 何時もの同じテンションに見えるけど何時も以上に感とか運とか強いぞ。

しかし、見た目俺より年下なキイ兄が酒で酔ってる姿って普通に犯罪だよな。絶対補導されるぞ。


「生体反応・多数接近を・確認・しました」


その時マリアが立ち上がり、扉の方に視線を向けた。
そうか、霊脳は働かないけど普通の科学的なレーダーは働いているんだな。

その瞬間、小屋の扉が勢いよく開いた


「皆! 来たわよ!」


美神さんが飛び込んでくる。その手には神通棍、服のほうがちょっと破けたりしている。


「待つワケ、令子!!」


そしてエミさんも屋敷に飛び込んできたんだけど、何だか様子がおかしいぞ?


「皆! エミは吸血鬼にやられているわ!」


「そういうことなワケ! あんた達もすぐこっち側に来て貰うワケ!」


うっわ、まさかエミさんがやられているなんて。そんなに強い相手なのか?


「どうせ相手が美形だったからってホイホイ近づいたんでしょ!」


「うっ、近いけど違うワケ!! ふいをつかれただけよ!」


近いけどって…エミさんカッコ悪いよ…


「グワァァァッ!」


小屋の二階の窓が開かれ、一人の吸血鬼が飛び掛ってくる。格好からして村人の一人みたいだ。キイ兄はその相手に、


「おっと…!」


テーブルにあったパイを顔にぶつけて撃墜した。
それを機に、扉から窓から吸血鬼になった村人たちが侵入してくる。
そしてそのまま大混戦となった。

ただ、冥子ちゃんの周りにだけは最初だけ襲われた後誰も近づかない。まあ、最初にあの式神の暴れっぷり見たら誰も近づきたくないよな。


「敵の数が多すぎるわ! 脱出口は!!」


「小娘こっちじゃ! 地下室に一時退避するぞ!!」


カオスの指示で、俺達は真っ暗な地下室に逃げ込んだ。
しかし、勿論だが村人たちは地下室の扉を壊そうとする音が響く。


「令子ーっ! 出てきなさい!!」


「これじゃ、もって五分ってとこ…」


美神さんが其処まで言いかけて、言葉を止めた。


「あははは〜! 進入禁止だよ〜〜」


キイ兄がどっから持ってきたのか鉄板で扉を補強している。
てか、キイ兄まだ酔ってるだろ?


「…まあ、結構持ちそうだけどこのままって訳にもいかないわね」


美神さんが苦笑しながらさっきの言葉を訂正しながら言った。
確かに、このまま此処で待ち続けるわけにもいかないよな。


「こっちです!」


そこで、地下室の片隅から声がする。そこからひょこっと頭を出している人影が一つ。


「早く!」


「あっ、先生!」


美神さんが先生って呼ぶってことは…もしかして唐巣神父か?


俺達は唐巣神父が顔を出している場所からさらに地下に逃げ込んだ。


「先生、この通路って何なんですか?」


「君達が来る直前に見つけてね。吸血鬼が住み着く以前に作られたものらしい」


「そう…けど先生ったらまた一段と頭の方も進行したようで……」


「ほっといてくれたまえ!」


美神さん、自分の師匠にそれはないでしょう。もうちょっと労わる様な挨拶はないのかな…


「あれ? 唐巣さん俺が渡した増毛…もががっ!」


「はははっ、さあ先に急ごうか!」


唐巣神父…やっぱり気にしてたんですね……
皆の瞳は唐巣神父に哀れみの視線を向けていた。主に頭の方に…


「先生、通路を塞ぎます」


「あっ、ピートは無事だったんだ」


ピートが隠されているスイッチを押すと岩が上のほうから降りてきて今来た道を塞いでいった。

それから道を歩く途中、ピートが吸血鬼だとカミングアウトした。

それと同時にキイ兄が実はレズなんですとカミングアウトして、なれるかと俺が突っ込んだ。


「お主、昼間も外を歩けていたところを見るとハーフバンパイアか」


「ええ、母は生粋の人間です」


「実はこの島には純潔の人間は一人もいないんだよ。皆吸血鬼かバンパイアハーフなんだよ」


そうなのか…じゃあ此処はさしずめ吸血鬼のしまって訳なのか…

それから、通路を抜けて開けた空間に着いた。
そこには何人もの村人たちが集まって、食事をしたり縫い物をしていたり思うがままのことをしている。
人数的には、およそ半分ほどの村人がここに集まっているそうだ。
此処の村人たちは血を吸うことなく平和に暮らしたいと言う温厚な人たちなんだそうだ。


「それなのにボケ親父のブラドーが…13世紀のノリで世界征服なんて考えているんです!」


世界征服なんて…今の世の中じゃ吸血鬼一匹で世界に挑むのはきついだろう…


「ふっふっふ、自分を征服なんて…やらせないよ」


何かキイ兄がぶつぶついってるけど…一応やる気になってるみたいだし放っておこうかな。


「しっかし、今回の敵の親玉が父親なのか……大丈夫なのか?」


やっぱり父親と戦うなんて普通きっついものがあるよな〜。


「いいんです! この島がニンニクまみれになるくらいならあんな父親!」


そりゃニンニクまみれになったら凄いことになりそうだけど…それで完全に見限られる父親も惨いな。


「皆平和を願う善良な人々なんだ! 美神君力を貸してくれるね!」


「お願いします!!」


気がつくと美神さんのほうが村人たちにあがめられていた。
皆に詰め寄られて流石の美神さんがたじろいでいる。


「わ、分かったから皆落ち着いて…」


美神さんが了承しようとしたその瞬間、


「うわあああぁぁぁ!!」


「な、何だ!!」


不明がしたほうを振り返る。するとそこでは村人が村人に襲い掛かり、その牙を突き立てていた。


「マズイ! 此処もばれてしまったようじゃ!!」


カオスがそう言った瞬間、彼方此方の通路から村人たちが侵入してくる。
見張りも置いていたはずなのに知らせることもなくやられてしまったようだ。
手際よすぎだろ! さてはエミさんが指揮を取ってるのか!!

そうこうしている間にどんどん村人たちが襲われていく。


「くそっ! 誰が敵なのか分からないから下手に攻撃できんぞ!」


さっきまで仲間だったのに、目を放した隙に敵になっている。これじゃあやばすぎだろ!


「皆一旦バラバラに逃げるわよ! 体勢を立て直すまで潜伏するの!」


美神さんの言葉に、皆がそれぞれこの包囲を突破するべくに駆け出す。

美神さんと冥子ちゃんと唐巣神父が右へ、カオスとマリアとピートが左へ、俺とキイ兄とおキヌちゃんが正面を突破する。


「うおーーー! キイ兄追いかけてくるぞ!! 何だか大半の奴らこっち来てる!」


俺たちが選んだ正面の道は、幅がかなり大きかった。そりゃこっちに皆来るよな。


「忠っち此れを使えーー!」


そう言って、キイ兄が投げてよこしたのは銀のナイフでも十字架でもない。
俺が両手に抱えたのは、ポンプアクションのついた銃。

そう、銃なんだが…銃は銃でも……


水鉄砲だった


「こんなもので如何しろって言うんじゃーー!!」


「目標に狙いをつけて引き金を引く! それだけだよ!」


そういいながらキイ兄は小型の水鉄砲を両手に持ち、吸血鬼に向けて撃ちだす。


「うぎゃあああぁぁぁ!!」


「って、効果覿面なのかよ!」


何で水鉄砲なんかで…って、何か臭うぞ?


「おりゃー!」


キイ兄が手榴弾を投げる。そして爆発、というか変な煙が飛び出した。
ま、まさかあの粉末は……


「特性大蒜手榴弾! 威力は見ての通りです!!」


と言うことは…この水鉄砲の中もニンニクエキス入りか?

キイ兄、アンタ鬼や。しかもちゃんと不純物混ぜて致死量には達しないようにしてるし。
けどそのもがき苦しんでいる様は見ているだけで痛々しい。

しかもおキヌちゃんも渡された水鉄砲容赦なく撃ちまくってるし…


「やっぱり悪魔や。人でなしや…」


「まあ、人じゃないし」


「私も、幽霊ですから…」


そうだった…此処で人間なの俺だけやったんや……

けど何でまたこんなに用意がいいんだキイ兄は?


「だって、あのピート君に最初に会ったとき吸血鬼だったから一応…」


ピートが吸血鬼だって最初から気付いてたんかい! てか、これピートに使う気で作ってきたのか?


「うん、ちょっと胡散臭かったから準備しといた」


「そうなのか…って俺口に出してないよな? キイ兄俺の思考読んでない?」


「ソンナコトナイヨ、ナニイッテルノサ…」


「キイ兄! 言葉がカタカナになってるぞ! めっちゃ動揺しとるやん!」


キイ兄、鋭い以前に人の心読めるのかよ…

キイ兄の更なる力を知って俺は脳内にある『キイ兄の秘密と謎』というページに書き込んでおいた。もうそろそろ大台の三桁目に突入しそうだ。この秘密と謎が解明される日は来るのだろうか?


〜おまけ〜


そのころお留守番中のグレン君は…


「み〜…」


退屈で部屋の中をうろついている。まだ皆が出発して一日も経っていないのだが、グレン君は暇を持て余していた。

ちゃんと餌のほうは部屋の隅のほうにガラクタが山のように積まれていて食事には困りそうもない。


「み〜…みぁ?」


グレン君、どうやらTVに目をつけたようだ。グレン君はほとんどお家にいるので、TVがいろいろと面白いものを写す物だと理解していた。

日本語の方も理解は出来るようでその辺も問題はない。

ただ、TVの使い方が分からないグレン君。テーブルの上に乗っかってひょこっと首を傾げる姿が可愛らしい。


「みぃぃぃ…みっ!」


グレン君、なにやら思い出したらしくTVの上に飛んでいきます。そして手にしたのはTVのリモコン。どうやら此れを使うということを覚えていたようです。


「みっ…みっ…みっ…」


そしてボタンを一つづつ押していくグレン君。なかなか賢いところを見せてくれます。
そして、数回押したところでTVの電源が入りました。
グレン君、それを見て満足げです。


『ハァ〜イ、ボビー! 今日は何を紹介してくれるのかしら?』


『やあ、ジェシー! 今日は取って置きの商品を用意してるんだ!』


そして始まったのは深夜特有の妙にテンションの高い通販番組だった。
だがグレン君はそれでもいいらしく。わくわくと目を輝かせながらTVに釘付けだ。


『今日の商品は、この何でも切れちゃう【関六の孫】だよ!』


『おおう! どっかで聞いたことのある言葉を文字っただけねボビー!』


『それは言わない約束さジェシー!』


『『ハッハッハッハッハ!!』』


「みぃ〜〜〜♪」


正直、普通の完成の人間が見ていたら即効で呆れるかチャンネルを変えるかしそうだ。
だがまだ何もかもが新鮮なグレン君はそれに大いに喜んでいた。


つづく……ことはないだろう多分……




あとがき


レスを返しますね〜


>眞様
>いしかわじゅんネタなんて分かる人いるんかなぁ(汗
すいません、分かんないっス(汗)
まだまだ突っ込みの世界は広いようですね!


>黒覆面(赤)様
>関節外しには大うけしました。
笑っていただけて何よりです。
やっぱりロープに縛られたら一度はやりたいネタですね(笑)


>海流様
>撮影したエミの写真をどうするのかが気になりますね〜。
何時か写真集にでもするかも…

>「助六」ではなく「宿六」ですね
ああ、そうでしたか! 報告ありがとうございます!


>ジェミナス様
美神さんとエミさんでも逃れられないキイ君と横島君の笑いの世界。
初の二人の心象風景を映した固有…じゃなくて共有結界発動か!?
その名も『ロード・オブ・インビテッド・ラフター(誘う笑いへの道)』だ!
…無理ですね(笑)


>masa様
やはり、そう言った点に考えがいっちゃいますよね?(爆)
くそぅ、絵が描けたら描いてみたいな〜(笑)


今回は一旦分けました。ちょっと長くなってしまったんで…(汗)
やっと入ったブラドー編。そして揃ったGSメンバー達!

しかしこの展開でギャグの渦中に引き込めるのか!?
精一杯頑張らせていただきます(汗)

次は直接ブラドーとの対決だ!
伏線逃さないようにちゃんと書かなきゃ!(汗)


それではこの辺で失礼致します…

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