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▽レス始

「GSルシオラ?復活大作戦!!第18話(GS)」

クロト (2005-11-01 20:56)
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「だあああっ!!」
「うわおぉう!?」
 静かな河原に男性2人の叫びがひびく。1人は和服に白い仮面、道化師帽子の謎の人物。もう1人は悪魔のような姿をした黒っぽい影。
 私の旦那さまのヨコシマと、その自称ライバルの伊達さんね。
 あれからまた訪ねてきたので、あくまで「修行の一環」という体裁でこうしてバトルをしてるわけ。
 伊達さんはヨコシマとやる前に『私』ともやったんだけど、「アシュ様昇竜覇」で頭から垂直に地面にめり込ませたらさすがに私を「ライバル」とは思わなくなったみたいで、お互い休憩したあとこうして人間同士(?)の戦いをしているの。
 ドドドドドッ!
 伊達さんが得意の連続霊波砲を放つ。GS試験のときより威力も弾数も増えていた。明確な目標を見つけて修行にも身が入ったのね。
 でもヨコシマの成長ぶりはその比じゃなかった。
 私はあくまで魔装術の制御をしてるだけで戦闘そのものの手助けはしていないのに、ヨコシマは伊達さんの攻撃を的確に捌き切っている。しかもときにふっと移動して彼の視界外に出るや栄光の手(伸びる拳)で反撃する余裕さえあった。
 ヨコシマが前に読んでた漫画に出てきた剣士は室内を縦横無尽に駆け回って相手を翻弄していたけど、今はそんなこと出来ないということで逆にむやみに動かず静と動の落差をつけて撹乱する戦法をとったらしい。
 案の定、伊達さんはヨコシマの動きについていけずに何発かクリーンヒットをもらっている。
 正面からの戦いでもここまでやれるほど強くなったのね。
 悲鳴を上げながらだから格好良くはないけれど……。
「ぜぇ、ぜぇ……やるじゃねえか横島」
 荒い息をつきながら、むしろ嬉しそうに言う伊達さん。
 まるで手負いの獣のような雰囲気だわ。ダメージもなく疲労も少ないヨコシマが勝負を決めにいけないのはこれが理由だった。下手に近づいたら一瞬の隙にかみ殺されかねないもの。彼の防御力はGS試験のときに実証済みだし。
 そこへ人の声と気配がした。2人がそちらを見ると10人くらいの集団が手に模型のようなものを持って堤防の上を歩いている。こちらへ向かっているようだ。人が来なさそうな所を選んだつもりだったんだけどね。
「チッ、邪魔が入ったか……まあいい、今日は十分楽しめたからな」
 と伊達さんが魔装術を解く。2人のこの姿と戦いを普通の人に見られたら色々と面倒だから。
「そっか。じゃあ俺はもう帰るぞ」
 ヨコシマも同様に術を解いて軽く息をついた。

 その後2人はヨコシマの家に帰って、もう遅いので伊達さんは泊まっていくことになった。
 そして翌朝。ヨコシマはバトルで疲れたせいか寝過ごして、職場めざして走っていた。何故か伊達さんがついてきたのは、Gメンの件でもらえるようになった仕事が目当てだそうだ。
 バトルを挑んでおいて食事と宿に仕事までたかるなんて、このひともかなりいい根性してるわね。
 まあヨコシマは気にしてないし、一応仲間だからいいか。
 ところがいざ美神事務所についてみると、所長室に部屋の主はいなかった。
 代わりにマリアがぽつねんと椅子に座っている。
 伊達さんが何気なくそれに触れたところ、充電中か何かだったようでビリビリ来て感電してしまった。
「ぎゃあああ!?」
 反射的にヨコシマの腕を掴んでしまい、悲鳴が2倍になる。
「のわーーっ!?」
 伊達さんが手を離せばすぐ収まるんだけど……痺れて動けないようね。かく言う私も突然のことで声が出ない。
 そこへいいタイミングで(?)部屋に入ってきた美神さんに、ヨコシマが助けてもらおうとその腕を掴む。
 ――ッ!? ダメーっヨコシマ!!

 キィィィン……ヒュンッ!

 私達4人と1体は妙な光と暗闇に包まれて――次の瞬間、見知らぬ暗い森の中に現れていた。
 感電したのがきっかけで美神さんの時間移動能力が目覚めたんだわ。問題はいつのどこに来たのかだけど……。
「な、何……? ここはどこ!?」
 美神さんが周囲を見回しながら呟く。倒れていた私達と伊達さん、それにマリアが起き出してきたのに目をとめて、
「みんな無事だったのね、良かった。そうだマリア、ここがどこか分かる?」
 するとマリアは夜空を眺めながら何やら計算を始めて、
「西暦1242年11月2日、スイス・イタリア国境付近!」
 なんて、想像もつかなかった答えを返してくれた。

 しばらく呆然としていたけど、夜中に森の中でこうしていても仕方ないので、とりあえず人里を目指そうと歩き出す。
 マリアはバッテリーの残りが少ないのか、しきりと警報音を発していて動作も鈍い。ヨコシマと伊達さんが交代で肩を貸して歩いていた。
「全くどうしてくれんのよー! こんな寒い森の中であんたらなんかと一緒なんて……!」
「俺達のせいばっかじゃないっしょ!? 時間移動は美神さんの能力じゃないっスか。つーかもう1度移動して帰れないんですか?」
 ヨコシマに事態の本質を突かれ、ふと冷静になって考えこむ美神さん。
「そうね……ママは雷のエネルギーで移動してきたし、さっきの私のも感電が原因だわ。だから強い電気があれば何とかなるかも……」
「電気っスか……ルシオラ、お前電撃技とか持ってないか?」
『さすがに無いわね。仮にあったとしてもそれで上手くいく保証はないわよ。美神さん、もう1度電撃受けたとして確実に元の時代に戻れる自信はある?』
「……ないわ。確かにただ電気受けるだけじゃ難しいかも」
「それじゃもう帰れないってことっスかー!?」
「落ち着きなさい。とにかく今はここを出るのが先決よ」
 歩きながらそんな話をしていると、近くの茂みからガサリと何かが動く音がした。
「――! 獣か何かか!?」
 伊達さんがそちらを向いて戦闘体勢に入る。が、それは私達ではなく別の誰かを襲撃したようだった。
「何だありゃ……?」
 慎重に後を追ってみると、石で造られたと思われる巨大な鳥のような怪物が地元の住民らしき人達と戦って、もとい、逃げ回る住民達を追い掛け回していた。住民達は質素な服装で、それぞれ農具を武器にしてはいるけど戦いの心得はゼロみたいだった。
「ギョアアアーッ!」
「うわーっ!」
「た、助けてくれーっ!」
 伊達さんが美神さんを顧みて、
「怪物に襲われてるみたいだな。どうするよ美神の旦那?」
「そうね、お金は持ってなさそうだけど恩を売れば今夜の宿くらいは貸してくれるんじゃない?」
「よっしゃ、じゃあちょっとさっきの借りを返して来るぜ」
 相手が何でもバトルができれば嬉しいのね、この人は。
「待ちなさい雪之丞。それはいいけどあんた魔装術は使っちゃダメよ!?」
「なに? 何でだ!?」
「バカね、ここは中世ヨーロッパよ。あんたのあれ見たら悪魔だって思われるじゃない」
「えっ、するとルシオラも無しっスか!?」
「うーん、何が起こるか分からないし彼女は最後の手段にしときましょ。あんたの神装術は微妙だけど、ま、できるなら使わない方向で。にしてもあれは動く石像(ガーゴイル)だわ……何でこんなモノがいるのかしら」
「おい、それより早くしないと死人が出るぜ?」
「そうね、じゃあ行くわよ!」
「あぅ、あんな怪物とやるんスか〜〜」
 というわけで、何故か強い人ほど戦意が弱い新チームが結成された。まずはリーダーの美神さんが、
「この……!」
 跳躍して、怪物に渾身の一撃を加える。
 キンッ!
「え!?」
 しかし怪物は思ったより頑丈で、ほとんど傷をつけられず跳ね返されてしまった。美神さんはとっさに下がって、
「こいつ、装甲が分厚くて、神通棍じゃ歯が立たない!」
「香港で見たケルベロスみたいなヤツっスか?」
『違うわ、それなら神通棍でも効くはず。あれは単に硬いだけだから、弱点を狙うか1ヶ所を集中攻撃するべきね』
「分かった、俺に任せな。横島は援護を頼むぜ!」
「おう、後方支援なら任せとけ!」
 格闘しなくて済みそうで嬉しそうなヨコシマとは反対に、戦いたくてうずうずしていた伊達さんが突進して怪物の右脚に拳を押し付け、
「おらぁ!!」
 ゴッ!
「クェッ!?」
 その一撃で怪物がよろけてたたらを踏んだ。
 たぶん、ソーサーの要領で拳に集めた霊力を一気に叩きつけたんでしょうね。昨日の戦いのとき迂闊に近づいてあれくらってたら危なかったわ。
「ホーミングソーサー!」
 ヨコシマがすかさずソーサーを投げた。ハーピーのときよりさらに高めた追尾性能で、伊達さんが攻撃したのと同じ場所を正確に捉えて爆破する!
「クケッ!?」
「うまいわ横島クン!」
 片脚を折られた怪物が転倒した。空は飛べないらしくじたばたともがいているのを注視しつつ、どう仕留めようかと3人が考えていると、茂みの中から突然犬のような何かが現れた。
「「『新手!?』」」
 と思ったけど、そいつ――どうやら機械で出来てるっぽい――は怪物に駆け寄ると口から光線を発射してその頭部を破壊してしまった。それで怪物はあっさり動かなくなってしまう。すごい威力だわ。
『味方かしら?』
 状況はよく分からないけど、この機械犬は住民達を守ろうとしたみたいだった。その住民達はというと、私達を遠巻きにして警戒した視線を向けている。
「こいつら、魔女か……?」
「妖術みたいなの使ったしな……」
 やっぱり疑われてるわね。
 すると美神さんがずいっと進み出て、
「誰が魔女よ、失礼ね!!」
 大声で怒鳴りつける。その剣幕に住民達がたじろいだところへ、


「これは神の御業よ!!」


 ……さすがだわ。
 見たところ純朴で教養もなさそうな人達だから言い切っちゃえば信じそうだものね。
 半信半疑でざわめいている住民達に、
「だいたい私が魔女だったら化物使ってアンタたち襲うのが普通じゃない。逆に助けたんだから悪党なわけないでしょ!?」
「そ、それじゃあんたら何者なんだ!?」
「私達は……旅の悪霊退治よ! 今夜はちょっと道に迷っちゃってね、偶然ここに出くわしたってわけ。とりあえず助けたお礼に一夜の宿ぐらい提供してくれるわよね!?」
 それが当然、といわんばかりの美神さん。住民達はすっかり飲まれて、その後二言三言の交渉の末、私達は彼らの村で泊まらせてもらえることになった。

 そういうわけで、一応は拘束もされずに近くの村に案内されて民家の一室をあてがわれはしたけれど、美神さんはかなり不安げな顔をしていた。
「どうかしたんですか美神さん?」
「ええ、とりあえず寝床と食事にはありついたけど、長居するのは危険かなって思ってたとこ」
「何でです?」
「あいつらさっき『魔女』って言ってたでしょ。魔女狩りが盛んになるのはもっと後の時代だけど、この時代だって魔女にされたらただじゃ済まないのよ。だから私も神の御業なんてでたらめ言ったわけ」
「魔女狩りって……あの魔女狩りっスか?」
 少しは(オカルト関係の)歴史も勉強したヨコシマが青ざめる。この時代のヨーロッパでは、カトリックの教えからはみ出しているものはそれだけで罪になったらしい。GSの能力なんかは異端以外の何物でもないから、さっきはうまく誤魔化したけど魔女だと決めつけられたらそれまでだわ。
 カトリックって「キーやん」の教えよね。確か「汝の敵を愛せ」とか「右の頬を打たれたら左の頬を出せ」とか言ってた筈なんだけど……。
 そこへ来客が現れた。
「話は聞いた。みなを助けてくれたそうだな。まずは礼を言うぞ」
「姫さま!?」
「え!?」
 見張りの村人にそう呼ばれた女性は、確かに彼らとは雰囲気が違っていた。衣服も高級で、後ろには先ほどの機械犬を連れている。
 そして何より、部屋の隅でスリープモードになっているマリアに瓜二つだった。
「ここは私の父の領地じゃ。お前達の正体は知らぬが、たとえ魔女であったとしても私も父上も魔術には寛容ゆえ、悪しき者でないなら非道はせぬ」
「じゃ、あんたはこの辺の領主の娘ってわけね?」
「左様じゃ。それでお前達、あそこで何をしていたのだ? あとそこに置いてある人形は何だ? 見た目は人間そっくりだが、あれは鉄で出来ていたと聞いたぞ……!」
 お姫様だけにちょっと高飛車な感じはあるけど、話し合いは十分できそうな人だわ。よかった、この人と仲良くできれば当座の安全は確保できるものね。
 美神さんはすっかり冷静になってて、
「1つ目の質問の答えは最初に言った通り、悪霊退治の旅で道に迷っただけ。2つ目の質問の答えは、ドクター・カオスがつくったアンドロイドよ。人間なみの心を持ってはいるけどね。名前はマリア。今はエネルギー切れで動けないのよ」
「ドクター・カオス!?」
「マ……マリアだと!?」
 女性の後ろに控えていた村人達がざわめき始める。それを女性は手で制して、
「どういうことだ? 何故この人形が私と同じ名なのだ? この顔立ちから言って偶然とは思えぬ。それにドクター・カオスと言ったな? お前達、カオス様を知っておるのか!?」
 ――なるほど、分かったわ。
 マリアの外見はこのお姫様がモデルだったのね。
 私達がこの時代この場所に来たのも多分彼女が原因。
 ともあれ、共通の知人の名が出たことで女性――マリア姫の警戒心も薄らいで、和やかな雰囲気が出来上がった。

 マリア姫の話によるとカオスさんは彼女の父に保護と研究の後援を求めてやってきたらしい。
 この時代のカオスさんは相当の実力を持っていたらしく、マリア姫はべた褒めだった。この機械犬「バロン」も彼の作だという。
 残念ながら彼は今ここにおらず、1ヶ月ほど前に地中海の方に吸血鬼退治に出掛けたそうだ。
 そう言ったときのマリア姫は少し寂しそうだったけど、そんな雰囲気をぶち壊すようにして、屋敷の扉が荒々しく開かれた。
「何事だ! 騒々しい」
「大変です、姫さま! プロフェッサー・ヌルの部下どもがここを……!」
「なんですって!?」
 思わず立ち上がるマリア姫。
「ヌル!?」
「カオス様の留守中に現れた邪悪な錬金術師なのだ……!」
 美神さんの問いにそう吐き捨てて、マリア姫は屋敷の外に出て行った。


 ――――つづく。

 あとがき

 後回しにした中世編ですー。せっかく会得した神装術と主人公のルシオラに活躍の日はあるのか?(ぉ
 ではレス返しを。

○ゆんさん
>ついに結婚だ!! おめでと〜〜〜〜♪
 ありがとうございますー♪
 後は横島君に夫の自覚を持たせるだけ(ぉ
>オキヌちゃんと美神さんも貧に攻撃しちゃえばよかったのに
 ハーレムルート!?
 横島君鼻血出すぎで死んじゃいそうなw

○ヒロヒロさん
>もし実行してたら、ルシオラは最初の10分以降聞くだけプレイ突入ですが
 をぅっ、それは余りにも酷すぎる展開……。
 でも大丈夫。あの現場には美神もいましたから、それは物理的に起こり得ないのです♪

○遊鬼さん
>何気にルシオラの想いが伝わってくる話だったように思います
 多少(?)はっちゃけるのも愛あればこそです。

○ジェミナスさん
>ご近所付き合いをしっかりするのも良妻賢母の条件ですぞおおお
 近所付き合い! まあ小鳩ちゃんなら火花散る暗闘にはならないでしょうけど……(怖)。

○貝柱さん
>今のところ他の女性達の中では小鳩ちゃんを一番脅威に感じてるように見えますね
 十分な戦力に加えて、結婚と言われてすぐOKというこれまでのライバルには無かった展開が危険を感じさせたわけですな。

   ではまた。

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