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▽レス始

「せかいはまわるよどこまでも〜8〜(GS)」

拓坊 (2005-10-29 01:31)
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〜横島視点〜


今俺の目の前にかなり怪しげな壷が鎮座している。
いかにもブラックなオーラを放ってそうだ。


「おキヌちゃん、何なのこの不気味な壷は?」


「ゴミと一緒に出してあったんで、花瓶にしようかと思って…」


どうやらおキヌちゃんにも分からないみたいだけど、こんなのに花を入れたら直ぐに枯れてしまいそうだ。


「おっ、何だか珍しいもの拾ってきたみたいだね」


其処にキイ兄がやってきた。どうやらキイ兄はこれの正体を知っているみたいだな。


「此れは『精霊の壷』って言ってね。中に力のある精霊が閉じ込められてたりするんだよ。それで蓋を開けたりすると中から出てきて言う事を聞いてくれたりするわけだ。そうだな、時価にすると十数億はあるんじゃないかな」


へぇ、『アラジンと魔法のランプ』って奴と同じ奴なわけだ。
けど、何でそんなものが不燃物ゴミに捨てられてるんだ?


「ああ、けどそう言った壷に入ってる精霊って、悪さをして懲らしめとして封印されてるからあまり期待しない方がいいよ」


へぇ、そうなんだ。けどキイ兄本も見ずに良く其処まですらすらと答えられるな。俺も少しは本読もうかな…


と、そこで壷の方からなにやらカジカジと音がする。
そちらを見ると、やはりというかなんと言うかグレンが壷を齧っていた。


「ああ、こら! グレンそんなの食べたらお腹壊すよ」


「みぃーー!」


グレンはどうやら時価十数億の壷と聞いて齧ってみたらしい。どうやら価値が高いものほど美味しいらしく、壷の価値を知って味見してみたようだ。
キイ兄がグレンを引っ張るが、グレンのほうは壷を掴んで放さない。


「放しな…さい!!」


「みぃ〜〜〜」


ポンッという音共にグレンは壷から離れ、キイ兄は勢いあまってすっ転んでいた。その拍子に壁に頭を打って畳の上を転がっている。
くっ、キイ兄…何てベタかつおいしいんだ!
俺も精進しなければ…

と、その時壷から煙が溢れると中から髪をちょんまげ風に纏め、筋骨隆々の浅黒い変なのが飛び出してきた。


「なっ、お前は!」


「ボハーッハッハッハ!! そうだ! 私の名前は…」


「うわー! 上半身裸の露出狂だーーー!!」


「そう! 私は露出狂…って違うわーー!


うぬぬぬぬ! キイ兄またこんなところでボケるとは…しかも見ず知らずの相手に突っ込ませるという高等技術まで扱うなんて!


「あー、ゴホン。我が名はイフリート! 全知にして全能! 聖なる壷の精霊なり!」


俺がキイ兄のお笑いテクニックに気を取られている間に露出狂…改めイフリートがボハハハハーと高笑いしている。

其処にキイ兄、イフリートに近づきわき腹あたりを抜き手で軽く一突き。
イフリートはブホッと噴き出しむせている。


「何するんじゃコラ!!」


「それはこっちの台詞だよ。そんな高笑いされたらご近所迷惑だからやめてよね」


詰め寄るイフリートにキイ兄は冷静にそう返した。


「ぐぬぬ、まあ良い。ワシはアッラーの神の契約により蓋を開けたもの願いを3つ叶えることになっている!」


おお! やっと本物らしい発言だ。


「願い事って私達もいいんですか〜?」


おキヌちゃんがハイっと挙手して質問する。


「あー、原則として蓋を開けたときに壷に触れていたものだけじゃ」


蓋を開けてたときグレンも触れてたけど、グレンじゃ願い事なんてできないか。
そうですかー、残念そうなおキヌちゃん。何か叶えたいことでもあったのか?


「そろそろ包丁を買い換えようと思ってましたから、出してもらおうと思ったんですけど…」


何でも好きな願いを叶えてくれるって言われて、包丁を頼むのっておキヌちゃんぐらいなんだろうな。
でもそんなところがおキヌちゃんらしいか…


「さあ! 願い事を言うのだ!」


「別に願いは無いよ」


イフリートが高笑いをやめ、胸を張ったままのポーズで固まっている。
キイ兄はそれだけ言うと今日の仕事は何かなとファイルを読み始めた。


「ちょっと待ってくれー! 願い事を叶えないとワシの封印は解けないんだ!」


「そんなこと言ってもな〜。無い袖ならぬ無い願いは言えないよ〜」


イフリートも蓋を開けられた相手が悪かったな。キイ兄って基本的に無欲だからな。


「頼む! わしには帰りを待っている妻と子供が…!」


「もう、仕方ないな〜」


キイ兄はファイルを置いてイフリートのほうに向き直った。


「それじゃあ、ちょっと考えるから待ってね」


「わかった。それじゃあちょっと待とう!」


キイ兄が一指し指をこめかみに置いて考え始めたとき、


「よしっ! 少し待ったぞ。願いは残り二つだ!!」


イフリートがそんなことを言った。それに俺とおキヌちゃんがこける。
と、ここでキイ兄が静かなのに気付いた。こんなときは真っ先に突っ込んだりしそうなんだけど…

キイ兄のほうを見ると、


「ふ、ふふふふ〜」


キイ兄が無表情で笑っていた。かなり怖い。
…どうやらイフリートは地雷を踏んでしまったらしい。


「じゃあ、次の願いは質問だ。イフリート…」


キイ兄が幽鬼の如くゆっくりと立ち上がり、イフリートに詰め寄る。


「な、何だ?」


イフリートのほうもその雰囲気に呑まれたのか一歩下がってたじろいでいる。
そしてキイ兄は、口を開いた。


「自害しろって言ったら君死ぬ?」


キイ兄の口からとってもダークな質問が飛び出した。
部屋の中の気温が一気に下がった気がする。

イフリートのほうはダラダラと冷や汗を流している。まさかこんな質問をされるとは思いもしなかったんだろう。
それにこの質問なら曲解も仕様が無いし、素直に答えるしかないだろう。


「あ、ああ…それが願いなら、な」


「よし! イフリート、死「ちょっと待ったー!」もががー!!」


行き成り恐ろしいことを願おうとするキイ兄の口を、俺はすんでの所で抑えた。
だがキイ兄をはそれだけで抑えられるはずも無く。キイ兄はあっさり俺の拘束を逃れる。


「ああいう捻くれた奴は一回痛い目見ないと懲りないんだーー!!」


「死ねって命令したらそれ以前の問題だろうがーー!!」


俺が何とかキイ兄を鎮めようとしている間、イフリートは部屋の隅のほうでガタガタと震えていた。多分トラウマになってしまっただろう。


結局、イフリートはキイ兄に契約としてルビーの宝石を渡すことで決着がつき、イフリートは晴れて自由の身になった。


せかいはまわるよどこまでも
〜〜最凶の彼女来襲〜〜


〜ナレーター視点〜


蒼河霊能相談所。そこはキイと言うどう見ても14、5歳にしか見えない戸籍上20歳のGSが経営している。

実はキイには秘密があり、なんと彼は『世界』が(暇つぶしに)使わした『世界の欠片』だったのだ!
そんな彼は紆余曲折を経て現在の位置に落ち着いている。


そんな彼の周りにいるのはとても個性的な二人。


一人は横島忠夫。17歳で現在高校生の少年だ。
小さい頃にキイに弟子入りし、今は蒼河霊能相談所の助手一号として勤めている。

現在は霊能にも目覚め、キイの特訓のおかげで一流なりの実力を身につけているが本人はまだまだ三流だと思っている。


そしてもう一人が幽霊少女おキヌ。300年間も幽霊として彷徨っていたベテラン幽霊だ。

とある事件でキイと横島と出会い、現在は蒼河霊能相談所の助手二号として充実した幽霊ライフを送っている。


これは、そんな彼らが織り成すおバカ『8』にその他が『2』の割合で混じっているGSのお話である!!
そして今回、あらたな人物が参戦する。


その名は…


「あ〜ら〜、キイ君じゃない〜」


あまり紹介したくないかもしれない…


時間はしばし戻って…


〜横島視点〜


「共同作戦? 俺達も着いていっていいのか?」


俺はキイ兄にそう訊ねた。
これまで他のGSと組む共同作戦はキイ兄だけでやっていた。
これは認められ始めたのかなとちょっと気分がよくなった。


「うん、実はさ。今回の依頼は知り合いのGSに押し付けられてさ」


そういいながらキイ兄は普段は使わないような除霊道具を鞄に詰めている。
けど、攻撃用じゃなくて防御用とかばっかり入れてるんだけど、どうしてだ?

その答えは、目的地についてから知ることになった。


キイ兄に連れられて着いたのは新築のマンションの前。此れまで見たことも無い斬新なスタイルのマンションだ。
それで、今回共同作業をするっていうGSなんだけど…


「キイ君〜、来てくれて冥子嬉しいわ〜」


おかっぱ頭の、ちょっと間延びしているお嬢様風の女の人だった。

普通に可愛い人みたいだけど、キイ兄が何か警戒しているように思える。
他の人から見れば何時もどおりなのだろうが、長年連れ添った俺だけはその違和感に気がついた。どうしたんだろ?


「新築のマンションなのですが、建物の相が悪かったらしく周辺の霊が集まってしまい人が住めんのです」


今回の依頼主の男性が現在の状況だけ言うとお願いしますと去っていった。

しかし千体以上とはこれまた厄介だな。本当にこれだけで大丈夫なのか?


「けど、何で今回は自分が指名されたの? こういうのは令子ちゃんのほうが適任だと思うけど?」


「それが〜、令子ちゃん他の依頼で忙しいからって断られちゃったのよ〜。
どうしましょ〜って思ったら〜、令子ちゃんがキイ君に頼んだらって言ってくれたの〜」


令子って言う人がどういう人なのか分からないけど、キイ兄にも一目置かれてるみたいだし腕が立つんだろうな。


「それでキイ兄、そちらの方は?」


「ああ、彼女は六道冥子ちゃん」


「はじめまして〜、六道冥子です〜〜」


冥子…さんでいいのだろうか? 随分と幼い感じがするのだが…


「ところでキイ兄、冥子さんとは知り合いみたいだけど?」


「ああ、うん。ちょっと昔にお友達一号に任命されちゃってね。それ以来ちょくちょくと…」


何故か苦笑しながら話すキイ兄、本当に今日はどうしたんだろう?


「あなたが〜、横島忠夫君ね〜。キイ君から色々聞いてるわ〜」


「あ、はい。宜しくお願いします冥子さん」


「む〜、冥子ちゃんって呼んでくれなきゃ嫌〜」


いや、仮にも年上でGSとしても先輩の人を呼び捨てにするのもどうかと…


「呼んでくれないなら〜、私がたー君って呼ぶわね〜」


それだけは勘弁してくれ…恥ずかしくて死んでしまう。
キイ兄に助けを求めると、合点承知とサムズアップ。さすがキイ兄頼りになる。


「まあ、呼び名は後にして。冥子ちゃん式神の皆は元気?」


「とっても元気よ〜。ちょっと待ってね〜」


式神って、確か最初の修行の頃キイ兄が作ってたあの犬みたいのだよな?
確か陰陽師とかが使役していたもので、普通は霊符とかに特殊な技法などを施して作り出すんだったかな。


「皆でておいで〜」


冥子さんがそう言った瞬間、影が膨れ上がったと思ったら大小12匹の異形が飛び出してきた。
多分此れが式神なんだろうな。
けど何で…


「うっぎゃあぁぁぁぁ!!」


全部キイ兄に突っ込むんだ? キイ兄式神に埋もれちゃって見えなくなっちゃったよ。


「この子達もキイ君と会うのも久しぶりだから喜んでるわ〜」


喜んでるにしては過剰なスキンシップだな…でっかいのに下半身食われて(多分甘噛み)、体には蛇みたいなのに巻きつかれて、頭には目玉お化け見たいのとトカゲ見たいなのが乗っている。他の式神もキイ兄の周りを取り囲んで動物王国ならぬプチ式神王国の出来上がりだ。

ただ、その中央にいるキイ兄がとても哀れに思えてしまうのは俺だけかな?


「ん、何だ?」


一匹、白い毛むくじゃらの式神が俺の方に近づいてきた。
そして、ぽふっと俺の頭の上に乗った。

な、何なんだろう?


「あら〜、ハイラちゃん横島君のこと気に入ったみたいね〜」


気に入られたって…まあ悪い気はしないけど頭の上に乗るのは親愛の証とかなのか?


「けど、一度に式神を十二体も使役するなんて冥子さん凄いんですね」


「そんなことはないわよ〜、たー君。皆大事なお友達だから〜」


…しまった。折角逸らしたと思ってたのに墓穴掘った。
『たー君』だけは、避けたい!


「へえ、いいお友達だね冥子…ちゃん」


ぐはぁっ!? 恥ずかしいわー!!
心の中で地面を転がりながら俺は勤めて冷静に対応した。


「ホント、その友達をちゃんと制御出来るようになってねって言ったよね?」


そこで、やっとキイ兄が口を開いた。

やっと式神達から解放されたのかなと思い、後ろを振り向くと…


「ちょっとは進歩したと思ったのに! 全然成長してないよ!!」


「ああ〜ん、ごめんなさ〜い。そんなに怒らないで〜」


キイ兄はでっかい口だけお化け(ビカラと言うらしい)に頭を残して飲み込まれていた。
その状態で冥子ちゃんを叱るキイ兄、ちょっと笑ってしまいそうな光景だ。


「こうなったら今回は罰としてお手伝いは無し!」


「そんな〜、キイ君見捨てないで〜」


涙目で訴える冥子ちゃん。何だかこの二人の言い合い見てると中のいい姉弟とかの喧嘩に見えてくるのだが…
冥子ちゃんが駄目な姉で、キイ兄がしっかりした弟だな。うん、いい得て妙な感じだ。


「しょうがないな、じゃあ忠っちは貸すから頑張ってよ」


「って、待てい! 何で俺レンタルされることになってるんだ!」


「忠っち! 自分は忠っちの力を信じてるよ!! 主に耐久力とかで!!」


どういう意味だそれは! 全面的に被害があるってことなのかそれは!?


「嬉しいわ〜、キイ君好き〜」


「えぇっ! キイさん冥子さんとそういう仲なんですか!」


おキヌちゃんが口に手を当てて驚いてる。俺も同じ心境だ。ってか、キイ兄って俺と同じくらい浮いた話聞かないからな〜。

…う、自爆………虚しくなってきた。


「あ〜、冥子ちゃんの好きは須らく『Like』だから気にすること無いよ。冥子ちゃん、他に好きな人は?」


「え〜と〜、お母様に〜、お父様に〜、令子ちゃんに〜…」


そう言って何人かの人(人じゃないのもいるけど)の名前を挙げていく。
キイ兄がほらねとジェスチャーして見せた。
確かにその通りみたいだ。


「え〜っと、要は8階の鬼門になっているところに封印を張ればいいんですよね?」


「そうよ〜、その後残った霊を除霊すれば完了よ〜」


俺はマンションに入る前に霊力を均等に体に流す。こうすればムラ無く体中が強化されて動きやすいのだ。
冥子ちゃんのほうはバサラと言うでかくて黒い式神をだした。
此れで準備は万端だ。

そして、俺と冥子ちゃんだけでマンションの中に足を踏み入れた。


【誰だ…! 近寄れば殺す!!】


「へっ! やれるもんならやって…」


「ンモーーーッ!」


その瞬間、バサラの口が開き雑霊どもを飲み込み始めた。さしずめバキュームだ。


「す、凄まじいな…」


その光景に俺は冷や汗が流れた。こんなに凄いもんなんだな式神って…


「インダラ! サンチラ! ハイラ! 出ておいで〜」


冥子ちゃんの影からさらに三匹の式神が現れる。
インダラは馬型の式神で、冥子ちゃんを背中に乗せている。
サンチラは蛇みたいな式神で前方にでてあたりを警戒し、


「何でまたお前は俺の上に?」


ハイラは何故か俺の頭の上。そんなに乗り心地がいいのか俺の頭の上は?


「やっぱり〜、一人より二人のほうが心強くていいわ〜。ありがとね横島く〜ん」


「はははっ、でも俺何もすること無いわ」


うーん、そういえばキイ兄と冥子ちゃんってどこで知り合ったんだろう?


「冥子ちゃん、キイ兄とはどこで知り合ったの?」


「え〜とね〜、キイ君とあったのは〜…私がGS試験を受けに行ったときのことよ〜」


〜冥子回想〜


あの時は〜、初めての試験だったから緊張していたの〜。
しかも〜、GS試験会場に向かう途中〜、迷っちゃったの〜。


「ここどこかしら〜?」


どこに行っていいか分からなくて〜、寂しくなっちゃたのよ〜。
それで〜、わたし石に躓いちゃって〜、ころんじゃったの〜。
とっても痛かったのよ〜。


「ふ、ふええぇぇぇ〜〜〜ん」


それで私泣いちゃって〜、式神の皆が暴れだしちゃったの〜。

そんな時だったわ〜。急に皆の動きが変わり始めたの〜。
私泣いてて分からなかったんだけど〜、後から聞いたらその時キイ君が近づいてきて〜、皆がそっちに集中しだしたらしいの〜。

それからちょっとして〜、私の肩がポンって叩かれたの〜。それで顔を上げてみたら〜。
血まみれの男の子が立ってたの〜。それがキイ君だったのよ〜。
それで〜、私にこう言ってくれたの〜。


「大丈夫かな? 怪我は無い?」


私嬉しかったわ〜。お家の人以外で私のことを心配してくれたのはその時が初めてだったのよ〜。暴れていた皆も縛り上げられただけでかすり傷一つ無かったわ〜。


「もう大丈夫だね。良く分かんないけど『強い心』を持つようにね」


そう言ってキイ君は去って行ったわ〜。


〜冥子回想終了〜


「キイ君は怪我までして見ず知らずの私のことを心配してくれたの〜。
それなのにわたしったら〜、お礼も言ってなくて〜。お母様に怒られちゃったわ〜」


キイ兄、そんな壮絶な出会いしてたんだ…けどキイ兄らしいって言ったらそうかもな。


「それから何回か会って〜、今は除霊を手伝ってもらったりしてるのよ〜」


じゃあ良く、共同の除霊だって出て行くのは冥子ちゃんなのかな?


「あの時はホントに嬉しかったの。キイ君は何でもないって言ってるけど、私は本当に嬉しかったの」


冥子ちゃんがちょっと寂しそうな顔でそう呟いた。

そっか、小さい頃から友達ができなくて寂しかったんだな…よし!


「でももう大丈夫だよね。友達だって増えたし、俺とかさ」


「横島君、ありがと〜。冥子嬉しいわ〜。

けど何で他の人は私を避けるのかしら〜。いまだに分からないわ〜」


あ〜、多分さっき行ってた『式神が暴れた』ってのがヤバイんだろうな〜。
何たってあのキイ兄を怪我させて流血させたみたいだし…


もはや災害レベルなんだろうな〜


と、その時!


「! でぇいっ!」


俺はバサラに吸い込まれずに迫ってきた雑霊をサイキックソーサーで叩き潰した。
吸引力が弱まったのかな? 此れは急がないと…


目的の8階へと着き、俺はキイ兄に貰ったお札を壁に貼る。


「よし! 後三枚だ」


「急いでね〜。そろそろ皆バテてきたわ〜」


さすがに冥子ちゃんの式神達もそろそろ限界か…
これは早く仕上げないとな。


【あっちじゃ! あっちの女じゃ!】


【連れ取る化け物は強いがあいつは弱いぞ…!! 殺せ…!!】


まずいな、雑霊たちが冥子ちゃんを狙い始めたぞ…
今はまだハイラとサンチラでどうにかなっているがこのままじゃ突破されるな。


「ど、どうしましょ〜〜」


冥子ちゃんがパニックになりかけてるな。此れはまずいぞ!


その時、一期は大きな霊が冥子ちゃんに迫るのを見つけた。
アンチラとハイラは手一杯で動けない!


ドクンと心臓が跳ねた。


「冥子ちゃん!」


俺は、結界用の札を投げ捨てて冥子ちゃんと雑霊の間に走る。

間に合わないタイミングじゃない!

俺は霊波を右手に集中させた。


「サイキックスラッシュ!」


一際大きな雑霊は霧の如く消え去った。

右腕にズキンッと痛みがはしった。ぐぅ! 流石にちょっときつかったか。
血は流れているが別段深くはない。まだ大丈夫だ!


「冥子ちゃん大…じょう……ぶ?」


俺が冥子ちゃんのほうを冥子ちゃんの目じりに涙が浮かんでいた。

あれ、何で? ちゃんと庇えたよね? 怪我してないよね?
それなのになんで泣きそうなんですか?


「ま、また…やっ……ふええ〜〜〜!!」


冥子ちゃんの瞳から大粒の涙が零れ落ちた。
それを見た俺の心臓がギュッと締め付けられた気がした。


【ぐわぁ!】


【ぐわわーーっ!!】


冥子ちゃんが泣き出した瞬間、影から全ての式神が飛び出した。
そして無秩序に、敵だと判断するものを排除していく。

これは…ある意味壮観なんだがこのままじゃ建物まで壊しちゃうぞ!
ん、あれ? 一匹だけ暴れてない式神がいる。アレは確かビカラだっけ?


「おえっ」


そんな声(音?)と共にビカラは口から何かを吐き出した。


「あ〜、真っ暗だ〜。ここは何処だろ〜?」


吐き出されたのは、キイ兄だった。

ってかいつの間にビカラのお腹の中に! もしかしてあの話が終わった後からずっと入ってたの!!

ええい! 今はそんな事はいいからキイ兄にも手伝って貰うしかない!


「キイ兄!」


「あはは〜、自分は何処〜? 此処は誰〜?」


「サイキックインパクト!」


「おでぶっ!?」


キイ兄の顔面に思いっきり打ち込んだ。その辺の悪霊なら一撃ぐらいの威力なのだが…


「はっ! いつの間にこんなところに!!」


キイ兄の気付けにはちょうどいいくらいなのだ。


「キイ兄! 早いとこなんとかして!」


「むむっ! 良く分からないが合点承知!」


キイ兄は懐から、お札を何枚か取り出した。


此処に在りし御魂を縛れ! 此処へと向かう御魂を弾け!


札が四方の壁と天井と床、計六枚張り付き結界を展開する。

流石キイ兄だ。この短時間で此処までの結界を張れるんだから…


「あっ、しまった…結界の種類間違えた」


「って何ーー! 何やってんだよキイ兄!」


「だ、大丈夫! 単に外からは入れず中からはエネルギーを逃がさないだけだから!」


それってどういう意味だ?


「えっとな。式神のエネルギーがこの中で暴れまくるんだなこれが…」


「それって…」


トッテモアブナクナイデスカ?


「うっひょー!」


「キイ兄のアホーー!!」


「仕方ないじゃーーん! 急なことでよく分からなかったんだよーー!!」


「でぇい! どうすればいいんじゃーーー!!」


「「HELP USーーー!!」」


俺はキイ兄と一緒に、式神達が鎮まるまで。約1時間12分もの間式神の猛攻から逃げまくっていた。
因みに冥子ちゃんは俺が小脇に抱えて、結局飛び回っている間中泣いていた。


「いたたたた、キイ兄もっと優しく…」


「ほい、此れで終わり。後はこのお札貼っといて」


キイ兄に渡されたお札を貼ると、痛みが嘘のように消えた。けど怪我は治ってないみたいなので傷みを和らげてくれるものらしい。

マンションの方は8階のワンフロアが壊れただけで済んだ。もともとそこは改装するつもりだったらしいので特にお咎めはなかったらしい。


「ごめんね〜。私興奮しちゃうと式神コントロールできないのよ〜」


冥子ちゃんが謝ってきた。暴走しちゃったことに対して謝ってるんだな。
随分と落ち込んでいる様子で、しょんぼりしている。


「気にすることないよ冥子ちゃん。こうして忠っちも自分も無事なわけだし」


「そうそう、せっかくの美人さんなんだから可愛く笑ってくれてたほうが嬉しいしな」


「ありがと〜。やっぱり二人は大切なお友達だわ〜」


その後冥子ちゃんは迎えの車がやってきて帰っていった。

いや、しかし今日は大変な一日だった。


「いや〜、しかし大変なことになったね」


キイ兄も俺と同じ感想みたいだけど…何だか文法が変じゃないか?


「忠っち、六道の女の人はね。とっても怖いんだよ」


「どういう意味だ?」


「そうだな。多分これからことあるごとに連れまわされるんじゃないかな。強いて言うなら地獄の果てまで」


何だかとっても怖くなったんだけど…

俺は流れてくる冷や汗を拭きながら乾いた笑いをあげていた。


〜おまけ〜


「ただいま〜」


「あら、お帰りなさい冥子〜。今日のお仕事はどうだったの〜?」


冥子が自宅に帰ったところで、冥子の母親である六道冥音が出迎えた。


「お母様〜、今日はキイ君と一緒だったわ〜。それに新しいお友達も増えたのよ〜」


「あらそれはよかったわね〜。なんて子なの〜?」


「横島忠夫君っていうの〜。キイ君の所で助手さんをしているんですって〜」


「そうなの〜。そうだわ冥子〜、そろそろ夕食ですから先に着替えてきなさ〜い」


冥子はは〜いと返事をして自分の部屋へと向かった。


「フミさ〜ん」


「はい何でしょうか?」


行き成り柱の影から姿を現したフミさん。ずっと其処に隠れていたのか?


「横島忠夫君って子のことお願いね〜」


「分かりました」


一礼するとフミさんはまた柱の影へ。そしてそのまま姿を消した。
あなたは忍者ですかフミさん?


「キイ君については〜、全然情報が集まらなかったのよね〜」


冥音の手には『蒼河葵依』と書かれたレポートが握られている。
中身は、大体八年ほど前から始まっており、それ以前の経歴がまったくの謎だった。

因みに『葵依』ってのは外国人が日本人に帰化する場合に漢字を当てるのと同じである。例としてはラモス瑠偉。


「ふふふ〜、面白いことになってきたわね〜。おばさん楽しみだわ〜」


冥音はそう笑いながらその場を後にした。




あとがき


では早速レス返しからさせて頂きます。


>masa様
ストーリーの方はキイ君が前に出ますがあくまで横島君が主人公です。
某タイトルが四字熟語の影の薄い主人公のようであっても彼が主人公なのです!(笑)

効果音についての御高察ありがとうございます。
とりあえずはこのまま頑張ってみることにしました。
また質問などをするかもしれませんがその時はまた何卒ご教授くださいませ。


>zero様
>グレン一体居るだけで、この世のゴミ関係綺麗に掃除できますね〜
一家に一匹グレン君ですね。(笑)
そのうちこの子の関わる話も書きたいかも。

今後の展開は暫く頑張って登場キャラ増やします。
じゃないとネタが尽きちゃいますから(汗)


はい、今回は冥子ちゃん登場!
彼女はGSの中でも上位に入るお気に入りキャラです。
そして十二神将のなかで一番お気に入りなのが分かったと思いますがハイラ(羊)です。
今後も頑張って出してあげたいと思います。

今回の話の要らない補足
冥子ちゃんはキイ君とGS試験会場で迷ってたとき遭遇したとありますが、あの時はキイ君も迷っていたのです(笑)

何だか細かい設定をちゃんと書き込んでなくて分からないかもしれません。
どうしても何故そうなったのか知りたい場合は思いっきり書き込んじゃってください。
できるだけこじつけお答えしたいです。


それではこの辺で失礼致します…

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