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「せかいはまわるよどこまでも〜7〜(GS)」

拓坊 (2005-10-28 00:53)
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〜ナレーター視点〜


それは何時もの様に平凡な日々、いつものようにキイは横島に向かって、


「忠っち〜今日は宇宙にお出かけだよ〜」


「何を唐突にアホなこと言ってるんだよキイ兄…」


キイの突然の発言に、横島は冷静に受け答えしていた。
これが彼らの日常の会話なのであった。


「はいっ! という訳で早速宇宙にやってまいりました!!」


「って、何かいろいろとすっ飛ばしてないか?」


横島が首を捻りつつ考え込む。

しかしちゃんとあの後、MHKの関係者が来て話しを聞いて。
さっそくと宇宙に行こうとキイが陣を書いて。
その中央に立たせた横島をバットで強打。
そしてその後、自分をも手加減無しで強打。
二人ははれて幽体離脱を成功させ、おキヌちゃんと共に宇宙に上がってきていた。


「風? いや、太陽の熱エネルギーの流れか…」


「きれい…地球って青いんですね」


おキヌちゃんは地球を見下ろしながら感動した様子でずっと地球のほうを見ている。

そしてキイはと言うと、


「激写ー激写ー!」


そういいながら太陽や月、地球なんかを写真に収めまくっていた。


「それで、問題の衛星は?」


「ん、そろそろ来るぅおあ!?


「どわあっ!?」


「キイさん! 横島さん!」


キイが全てを言い終わる前に衛星はものすごいスピードでキイに衝突した。
横島は何とか本体の方に掴まり、おキヌちゃんもアンテナに捕まっていた。


「あ〜〜〜れ〜〜〜〜」


そしてキイは、掴みきれずに宇宙に放り出された。しかも、その進行方向には真っ赤に燃える太陽がある。


「忠っちーー。後は頼んだよ〜〜〜」


キイはそう言ってきりもみ回転しながら遠ざかっていった。


「無茶言うなーー! 」


「…相手はグレムリンって妖怪で、弱点は……」


「待てー! 最後までちゃんと教えてからいけーーー!!!」


横島は叫び続けるが、キイは既に遥かかなた。到底聞こえるわけが無い。

そこで、衛星の影からぬっと角の生えた四足歩行の生物が現れた。


【シャーーー!!】


「ぎゃー! グレムリン出たーー!!」


横島はグレムリンの爪をサイキックソーサーで弾く。
その瞬間、体から力が抜けていくような気がした。


「ぐ、うお…キツイーー!! 力が抜けるー!」


グレムリンはさらに尻尾も交えての更なる猛攻を開始。横島は弾いてかわして健闘するが、


「ぐはぁ!?」


「横島さーん!!」


ついにサイキックソーサーが壊れ、尻尾で体を縛り上げられる。


「だー! 離せ! うわぁ!? 俺の魂の紐かじるなーー!」


横島大ピンチ。だがしかし、世界は横島を見捨てはしなかった。


『忠っち〜、グレムリンの弱点は綺麗な歌声だ〜』


「き、キイ兄! テレパシーか!?」


横島の頭の中にキイの声が響く。


『違うよ〜、これは前忠っちが寝てる間に脳に『埋め込んだ』物を介して放してるんだよ〜』


「って、待てい! 脳に埋め込んだって何だコラ!?」


『自爆そ…「言うなー! それ以上言うなーーー!!」…残念』


横島はガックリと項垂れながら、しくしくと泣いている。

しかしキイの声は横島にしか聞こえていなく、他から見れば横島は一人で叫んで勝手に項垂れて泣いているのだ。
それを見ておキヌとグレムリンは首を傾げていた。


「おキヌちゃん! 何か歌を歌って!」


「えっ! 歌ですか?」


「歌がこいつの弱点なんだ!」


「分かりました!」


結局、おキヌちゃんが歌った子守唄でグレムリンは退治された。
ほっと一息ついたとき、


「いや〜、今日も無事生還だよ」


そう言って帰ってきたキイ。霊体なのに彼方此方が焦げている。おそらく自分でやったのだろうが芸が細かいことだ。


「おっ、こりゃなんだ?」


「卵みたいですね」


横島は衛星のアンテナの上にある卵を持ち上げた。


「でっかいな。目玉焼きにしたらおいしそぶふっ


不埒なことをいうキイの胸に横島はバックスナップで突っ込む。ただしその手は握ったままで、つまりは裏拳を叩き込んだのだ。


「これ守るために襲ってきたのか…」


「可哀想なことしましたね」


二人が卵を見ながら離してるとき、キイはさっきの裏拳が鳩尾に入り思いっきり咳き込んでいた。だが、勿論のこと二人は無視している。

その時、ピシッと卵にヒビが入りその勢いでパカっと卵が割れた。


「み?」


中から出てきたのは小さな角に体の半分も無い翼、そしてぱたぱたと振っている尻尾、ぬいぐるみの様に丸っこい可愛らしいグレムリンだった。
チビグレムリン、略してチビグレは横島の顔をジーっと見たあと、ひしっと抱きついた。


「みーーっ」


「か、可愛いっ!! 横島さん私にも抱かせてください!」


おキヌちゃんは目を輝かせながらチビグレの周りを飛んでいる。

兎に角無事事件も解決し、一同は帰ることにした。


「わー! 忠っちの体が心停止してるーー!!」


「あっ、何だか天から光が降ってくる…」


「横島さーん! キイさん心臓マッサージです!!」


長時間身体のほうを放置しておいたので、横島の生命反応は極限まで落ちていた。


「忠っちー! 目を覚ませーー!」


「あははは〜、天使がいっぱいだ〜。え? どこかに連れてってくれるのか?」


「横島さんまだ逝っちゃ駄目ですーー!」


そんなパニックの中、グレムリンはウチにおいてある家電を悠々と齧っていた。


「こうなれば仕方が無い……」


キイは幽体の横島に向かって、諦めたように言った


「マウス・トゥ・マウス! 人工呼吸だ!!」


その瞬間、横島の身体は行き成り全機能を取り戻した。


「男は嫌やーーー!!!」


横島は自分の顔を見下ろしていたキイを今までに無いぐらいに圧縮した霊波で吹き飛ばした。


結果…


「うわあぁぁぁ! キイ兄の心音がどんどんゆっくりに!!」


「ぐふぅ、忠っち。なかなかの攻撃だった。その成長を見れて自分は満足だよ」


「キイさんしっかりーー!」


今度はキイがあの世に送られそうになった。キイがあの世にいけるかは分からないが…


あと…


「み?」


家においてあった家電は全滅していた。


せかいはまわるよどこまでも
〜〜海で見つけたのは?〜〜


〜横島視点〜


グレムリンは結局ウチのペットになった。家電をひたすら齧りまくり、お隣さんのものまで全滅させた時は追い出されそうになったが、キイ兄が何とかしてくれた。

新しいものと交換したら許してくれたといっていたが、それ以来お隣さんがとても静かになってしまった。何があったのだろうか?


ああ、それと霊体で戦っとき急に力が抜けたのは、もともと霊力は心と身体があって生み出せるものらしく。幽体離脱状態では肉体とは繋がりはあるもののあまり効果的には力を発揮できないらしい。


それから最近おキヌちゃんは事務の処理を覚えだした。マメな性格のおキヌちゃんはテキパキと書類を整理していく。
これではますます俺の立場が無くなって来た…俺も何か覚えるべきだろうか?

因みにチビグレは只今お昼寝中。ああ、もうチビグレじゃなくて『グレン』という名前がついたんだった。グレンは因みにオス。最近は食べていいと出されたスクラップしか齧らなくなってきて躾のほうも順調だ。


「たっだいま〜」


キイ兄が帰ってきた。今回は知り合いのGSの手伝いをしてきたらしい。


「いや〜、今日も十分に楽しましてもらったよ」


キイ兄は随分とご機嫌みたいだ。何でも今回はそのGSの不始末を手伝っていたらしく、口止め料をいくらか貰ってきたらしい。
GSなどの世界では信頼が第一なので口止め料などを払うのは結構あるみたいだ。


「それで疲れたからってこんな仕事貰ってきた」


疲れたからって、それは押し付けられたって言うんじゃないだろうか?


「おキヌちゃ〜ん。海行くよ海〜。一緒に土左衛門ごっこしよ〜」


「私もう死んじゃってますよ?」


「じゃあ一緒に怪談話でもつくろうか」


除霊しに行く場所で怪談作ってどうするよ。
とりあえず俺は水着を探すべく押入れを開けた。


そして、キイ兄の怪しい発明品の雪崩れにあった。


〜キイ視点〜


「そういう訳なのです」


「醜い怪物に、水の跡ですか…」


今回の仕事の依頼者であるホテルの担当者と話をしている。どうやら海の妖怪らしいな。
今のところ人が襲われたとかは無いらしいけどやっぱり評判が悪くなるのを危惧して依頼したらしい。


「横島さん。これ何? これ何?」


「うわっ、フナムシじゃん!」


後ろのほうから忠っちとおキヌちゃんの掛け合いが聞こえる。
おキヌちゃんはさっきから興奮しっぱなしであれこれと忠っちに聞いている。
やはり今まで山で暮らしていた分、海は物珍しいんだろうな。


「さ〜て、それじゃあ遊ぼうか」


「って、遊んでていいんか?」


「まあね、どうやら夜にしか現れないみたいだから」


それなら大丈夫かと、忠っちは納得したみたいだ。どうやら海で一泳ぎするみたいだな。
それじゃあ自分はっと…


「ふっふっふ、ついにこいつを試すときが来たな…」


ついこみ上げてくる笑いを漏らしながら自分の鞄をあさる。
おっ、あったあった。
取り出したのは、見た目魚に似た機械だ。


「さあいけー! 己の役目を果たすのだー!」


自分はそういいながら魚ロボを海に放り込んだ。
魚ロボは海につかるとヒレをうまく使ってすいすいと泳いでいく。見ただけでは本物の魚と間違ってしまうだろう。


「それでキイ兄。アレはなんなんだ?」


忠っち疑わしげに自分に聞いてくる。むぅ、別に悪いものではないんだがな。


「アレは漁業用魚ロボ『お魚ゲッター君』達だよ」


「まんまやん…まあ今回は普通みたいだし……」


その瞬間、ドコンという音共に沖の方で海面で海水がはじけた。
プカーっと何匹か魚が浮かんで来て、ついでに何人か人も浮かんでいる。
あーいうのを土左衛門って言うのかな?

そしてそれを網に回収していく魚ロボたちが小さいながら見えた。
あ、人間もそのまま網に入れられてる。まあ大丈夫かな。

ちょっとした満足感に浸りながら隣にいる忠っちを見る。なんか呆然と立ち尽くしてるけど、きっとあの大収穫にびっくりしてるんだな。


「忠っち、今日は大漁だよ。人間も何人かかかってるしついでに食べちゃう?」


そしたら卑猥なこと言うなと拳骨された。かなり痛い。


「ちぇ〜人肉って食べたこと無いのにな」


「キイ兄。マジで洒落にならないから本気で勘弁して」


後ろの方でおキヌちゃんも涙目になっていたので冗談だといっておいた。さすがに人肉は食べたいと思わない。現代社会人の肉っていろんな意味で不味そうだし。


因みに、その後忠っちに今の漁法、『発破漁法』って言うらしいけど禁止されているって言われた。手っ取り早くて確実なのに…


「あ〜、なんか疲れた。俺少し休むわ」


忠っちは海から上がってパラソルへと向かう。あれ? そういや何か忘れているような…

忠っちがパラソルの下に敷いてあるシートに座った瞬間、忠っちの姿が消失した。


〜横島視点〜


一瞬何があったのか分からなかった。パラソルの下に座り込んだら何故かそのまま落下したのだ。
上を見ると、三メートルほども高さがある。砂場でどうやってここまで掘ったんだ?普通崩れるだろ?


「忠っち〜、大丈夫か〜?」


穴からキイ兄がこちら覗きこんできた。その顔には何とも言えないといった表情だ。
今回はキイ兄が仕掛けたんじゃないのか?


「実はさ〜、穴掘ったこと忘れてて忠っちが落ちた瞬間思い出したんだよ。
あ〜、決定的瞬間だったのにな〜」


結局キイ兄の仕業かい!
今畜生、一発殴ってやる!

壁に手を書けたとたん、ザザーっと崩れてしまった。
あ、そういや壁は全部砂なんだっけ。ん、あれ? 待てよ? すると俺ここから出られないんじゃ?


「忠っち〜、出られないでしょ〜」


キイ兄が満面の笑みでこちらを見下げてくる。

己! こうなることまで計算ずくか!

だがしかし! 『漢』横島忠夫の辞書に諦めの二文字は無い!


「うおおぉぉぉぉ!!」


俺は砂の壁にアタックを仕掛けた。


「それで忠っち。どうして欲しい?」


結局崩れ落ちる砂に勝てず、しかも上のほうからも崩れてきて、頭以外は生き埋めになってしまった。


「なんてったっけこういうの?」


「さらし首ですよキイさん」


「どうでもいいから早く助けてくれ」


成るほど〜と頷いているキイ兄にHELP要請をする。


「じゃあ三回まわってワンってないて」


「この状況でどうやってまわれと?」


「それじゃあ靴でもなめる?」


「今履いてるのサンダルだろ? そんなのいいから早く助けてって!」


しょうがないな〜とキイ兄はさらにバックから何かを取り出した。

それは先端が尖っていて、ぐるぐると渦巻くように波が彫られていて。しかもキイ兄がそれについている紐を引くとブオンッという音と共に高速回転しだした。


「ちょっと待てー! 何でドリルなんか取り出すんだ!!」


「なんでったって『漢』のロマンでしょ?」


「確かにそうだがそれはロボにつける場合だけじゃーー!!」


はあ、はあ、何とか無事生還だ。もうちょっとで身体に穴開けられるところだった。
おキヌちゃんにも手伝ってもらって穴から抜け出して、今度はキイ兄を埋めてやった。勿論晒し首スタイルだ。


キイ兄はおキヌちゃんに任せて、今は海岸沿いを歩いている。
相違や最近こうやってゆっくりしたこと無かったな。
学校行って、帰ったらキイ兄に除霊に駆り出され。休みの日はキイ兄の発明品の実験台にされたり、まあたまには修行もしてくれたけどさ。

けどそろそろ彼女くらい欲しいよな〜。彼女いない暦=年の数だもんな。
でも俺もてないからな〜。学校じゃあ日々の鬱憤を晴らすべく、奇行を繰り返してるから嫌われてるもんな〜、特に女子。
ちくしょー! ここはいっちょ海に叫ぶか。


「俺は突っ込みや無い! ボケ役なんやーーー!!!」


日々の鬱憤、それはキイ兄に突っ込んでばっかでボケられないことだ。
くそ〜、何時の日かキイ兄からボケの座を奪い取ってやる。

そんな決意を固めていたところで、誰かがこちらにに近づいてくる気配を感じた。


「あの、お一人ですか?」


そう声をかけてきたのは髪の長いをした、長袖のシャツを羽織った水着姿の女性。結構美人だ。

右を確認、左を確認…どうやら誰もいないな。やはりこれは俺に話しかけているのか?


「くす、面白い方ですね。あ、私ナミコと申します」


「あ、俺は横島忠夫っス」


何だこれは? あれか、噂に聞く逆ナンパと言うやつか?


「実はちょっと話し相手が欲しくて、ご迷惑だったかしら?」


「い、いえとんでもないっス! ナミコさん見たいな美人な人と話せるなんて光栄です!」


「ふふっ、美人なんてお世辞でも嬉しいわ」


ぐう、なんだか緊張しまくりだ。そういやまともに女の人と話すなんてどれ位ぶりだ? しかも年上なんて母さんぐらいしか思い当たらないぞ!

ナミコさんのほうはなんだか余裕そうだし。うわ〜、何話せばいいんじゃー!

頼む〜、誰か助けてー!


そしてそんな時、望まれぬ救世主が現れた。


「うっわー! 忠っちが女の人と逢引してるーー!」


「ええっ! 横島さん付き合っている人いたんですか!!」


一番来てはならない人が来てしまった。
それとおキヌちゃん。俺に彼女がいたらそんなに意外なのか? 確かにいないけどさ、ははっ、潮風が目にしみるな〜


「へぇ、それじゃあお二人はバカンスでこちらに?」


「うん、たまには羽を広げてゆっくりしようって」


キイ兄がナミコさんと話している。流石はキイ兄だ。女性と話しても全然動じてないな。

因みにキイ兄がバカンスだと嘘をついているのは勿論のことこれ以上いらぬ噂を立てないためだ。
こういった所でもしっかり考えているのにはちょっと尊敬した。


「横島さんどうかなさいました?」


「忠っちったら女性慣れしてないから、緊張してるんだよね」


そして余計なことを言うキイ兄、やはり素直に尊敬できない。
それより気になるのは、


「あ、あのおキヌちゃん? どうして肩にのっかるかな?」


「私の勝手です」


何故か不機嫌なおキヌちゃん。さっきから肩に取り憑かれて身体がシビシビと痺れてきた。これが金縛りの第一段階だろうか?


「そうだ、皆さん、私の部屋で夕食をご一緒いませんか?」


日も暮れてきた時、ナミコさんがそう持ちかけてきた。
でもこの後除霊もあるんだし、ここは断…


「いいね〜。それじゃあ皆で一緒に食べよう」


って、キイ兄! この後仕事って分かってる?
キイ兄に目配せすると、ぐっとサムズアップしてきた。
いや、それじゃあ分からないから…本当に大丈夫か?


日も暮れてから、俺とキイ兄、おキヌちゃんはナミコさんの部屋を訪ねた。


「いらっしゃい」


「おじゃましま〜す」


キイ兄、完全に子供モードに入ってるな。周りから見れば俺には分からないけど全然違和感ないんだろうな。


「もうお腹ぺこぺこだよ〜」


「ふふっ、それじゃあまずはお食事にしましょうか」


普段のキイ兄を見ているだけあって、違和感がありすぎる。っていうか『アンタ誰?』って聞きたいくらいだ。


数分して食事が運ばれてきて、俺達は夕食を取り始めたのだが、


「うん、美味しい。うん、美味しい」


キイ兄は何時も通り、つまりひょいひょいと食べ物を口に放っている。
毎回思うんだが何時飲み込んでいるんだ?


「キイ…、もうちょっと行儀良くしろって」


あぶね、もうちょっとで『キイ兄』って呼ぶとこだった。
今は俺の方が年上になっているんだから気をつけないと。


「そういやナミコさんご家族は? 今回は一人旅ですか?」


「ええ……私、ずっと付き合っていた人がいたんですけど。
その人浮気ばっかりするんで別れてきたんです」


うわ、何だか気まずいこと聞いちゃったな。

それにしても何だかとても身近にそんな話があったような…
あっ、母さんと親父のことか!
そういやあの二人良く別れないもんだよな。まあ母さんが主導権握ってるってのもあるだろうけど、男ってやつは何で浮気なんかするかね〜


「ナミコさん! そういう時はパーッと食べて嫌なことは忘ちゃおう! 代金は全部忠っちが持つし!」


「って、俺持ちかよ!」


今持ち合わせそんな持ってないぞ!


「ルームサービスですか? メニュー二ページ目の料理全部お願いします」


って、キイ兄何凄い注文の仕方してますか!
しかも二ページ目って高級食材使った料理ばっかじゃなかったっけ!?


「くぅ〜! あの人ったらもうしない! もうしないっていっておきながらー!」


ナミコさんもお酒そんなに飲んでないのに出来上がっちゃってるし!
ああ、サザエを殻ごと食べちゃ…ってはい!? 殻ごと食べてる!?


「忠っちも食べる? 歯ごたえ抜群だよ」


「食えるか! つーかキイ兄は食えるんかい!?」


キイ兄の方を見ると、ロブスターを殻ごと食っていた。本当に食えるのかよ…


「へぇ、今の人たちはこうやって食べるんですね」


「おキヌちゃん! それは違うよ! 普通は殻まで食べない、と言うか食べられないんだよ!」


おキヌちゃんが誤った知識を覚えてしまう前に訂正した。もしこのまま覚えていったらおキヌちゃんまで毒されていってしまう。
それだけは避けたい、唯一の心のオアシスがなくなってしまう。
そうなったらもう死活問題だ。


「忠っちも食えー!」


キイ兄がテーブルの上に身を乗り出してフォークに刺さった貝殻を向けてくる。


「やめんかー! 食えるわけないだろーー!!」


テーブルの上で暴れたものだから、バシャッとコップの水が零れてしまった。
しかも運悪くその方向にはナミコさん。


「しまった!」


「うえっ!?」


水がかかった瞬間、ナミコさんの足が魚のヒレになってしまった。
こ、これは一体どういうことでせうか?


「足に水が…見られてしまったわね」


「あらら〜、それじゃあ椅子座りにくいね。忠っちソファーに運んであげて、おキヌちゃんはバスタオル持ってきてあげて」


あ、あれ? キイ兄全く動じてない?
しかもおキヌちゃんもはーいってそのまま行っちゃうし、もしかしてこの状況でおかしい乗って俺のほうなのか?

常識と言うのがどういうものなのかと考えながら俺はナミコさんをソファーまで運んだ。


おキヌちゃんがバスタオルを持ってくるとキイ兄は慣れた手つきでナミコさんの足(尾ひれ)を拭いている。
暫くするとポンッと音を立ててナミコさんの足は人間のものになった。


「なあ、キイ…ナミコさんって……」


「人魚でしょ? あれ、忠っち気付いてなかったの?」


いや、普通霊視でもしない限り気付かないでしょ? キイ兄が鋭すぎるだけだって。
ナミコさんのほうもこの対応にどうしていいか分からずキョトンとしてるし。


「あの私、人魚なんですよ? 気にしないんですか?」


「いやおキヌちゃんだって幽霊だし、自分だって人間じゃないよ?」


うぉ、そうなるとこの中で人間って俺だけじゃん!
何だか俺の周り人外ばっかだなおい!!

ん、なんか変な気配が近づいてきてるような…


「お、忠っち気付いたみたいだね。どうやらお仕事みたいだよ」


「仕事…ですか?」


「ええ、自分たちは実はGSですから。最近このホテルに出没する妖怪を退治するように雇われたんですよ」


キイ兄の言葉を聴いて、ナミコさんの顔色が悪くなる。
キイ兄もそれには気付いているはずなのに、気にせずに続ける。
おかしい、普段のキイ兄ならこういった事には必ず対処するのに…


「ナミコーーーっ! やっと見つけただーーー!!」


そこに、ベランダの窓を破って一つの影が進入してきた。
魚の尾ひれにいぼいぼだらけの身体に背中にはとさかみたいな背びれ…半魚人か!
俺はとっさのことだったが、すぐに霊気を纏い戦闘体勢…


「あんた! 来ちゃ駄目!!」


ナミコさんがその影に叫ぶ。
へ? あんた? もしかして既婚者だったんですか!?


瞬間、ぞわっと鳥肌が立った。
身体中に電気が走っているかのように痛みがはしる。
動けない、動かない。指一本どころか目を動かすこともできない。
喉が焼ける。息ができない。苦しい…


「さあて、それじゃあちゃちゃっと消そうか〜」


俺の後ろからそんな声が聞こえてきた。
何時も聞いているはずのその軽い調子の声が、今とてつもなく冷たく感じる。
すうっと、『何か』が俺の横を通り過ぎて行った。
其れはやっぱり、どう見ても…


「…キイ……兄…」


『キイ兄』の手には一振りのナイフ。
『其れ』で何をしようとしている? 『其れ』を誰に向けている?
『其れ』は…白銀の刃を大きく振り上げた。


「やめてっ!」


その時、『其れ』の前にナミコさんが庇うように覆いかぶさった。
すっと、一瞬重圧が下がった。この隙に!


「キイ兄! やめろ!!」


俺はキイ兄を抑えようと駆け出した。


「うぃ、了解」


だがキイ兄は何の抵抗もなくナイフを懐にしまった。
あ、れ? 随分とあっさり…
今までこの部屋を支配していた重圧もまるで幻かのように消えている。


「ど、どうなってるだ?」


半魚人のほうはまるで状況が飲み込めずおろおろしている。


「あんた! この人たちはあんたを退治に来たのよ! 早く逃げなさい!!」


「そ、そんな! 駄目だ! ナミコを置いて逃げるなんてオラには」


「バカ!」


ナミコさんの右フックが半魚人の頬に突き刺さる。うわ、痛そう…


「ここで二人とも退治されたら子供たちのことをどうする気なの!」


「それならナミコが逃げるだ! ここはオラが!」


そのままどっちが逃げるとか何とか争っている。
其れなのに、その原因となったキイ兄は…


「おお〜、こりゃ面白い。人魚と半魚人の子供か〜」


「「「ママとパパは?」」」


「ママとパパは今お話中だからちょっと自分と遊んでようね〜」


チビ魚人達と遊んでいた。ホントに何考えてんのさ。


「よ、よこしまさ〜ん」


そこでおキヌちゃんが何故か外から帰ってきた。そういやいつの間にか部屋から消えてたけど何で?


「良く分からないんですけど、急にお部屋の外にはじき出されちゃったんです。その後どうやっても入れなくて…」


そういや、あのチビ魚人達全然キイ兄のこと怖がってなかったな…何かしたのかキイ兄?


次の日の朝…


「どうやら元の鞘に戻ったみたいだね。良かった良かった」


ナミコさんと半魚人はあの後自分がどれだけ相手を思っているかの言い合いになって、其れをキイ兄が録音なんかしてたりして、実はキイ兄のあの行動が演技だってカミングアウトして、俺が全力で頭を叩いたりした。


「その、ご迷惑をおかけしました…キイ君にはあんな事までしてもらって」


「気にしないで。やっぱり『家族』は一緒が一番だよ。子供たちのためにも夫婦円満を心がけてね」


そう言ったキイ兄の顔が、とてもやるせないような、それでいてやり遂げたような顔をしていた。


「「「兄ちゃんバイバーーーイ!」」」


「立派な魚人になるんだぞーー!!」


海に帰っていくチビ魚人達手を振って別れを告げた。
その顔はやっぱり何時ものキイ兄の顔で、俺はただ頭を捻るしかなかった。


「さ〜て、依頼も終わったし最後に遊んで帰るぞー!」


再度ビーチにやってきて、キイ兄は高らかに宣言していた。
けど俺にはどうもそんな気になれない。

キイ兄の昨夜のアレがどうしても頭から離れなかった。


「忠っち。昨日の事自分のこと考えてるでしょ?」


いつの間に、キイ兄が目の前に立っていた。別に考えに集中していたわけでもないのに全く気付かなかった。


「忠っち、昨日の自分見てどう思った?」


「それは…」


昨日のキイ兄は、恐ろしかった。
まるで別人みたいで、何時も一緒にいるキイ兄がどこかへ消えていってしまうような気がした…


「自分が昨日発してたの何か分かるよね?」


「…殺気だよな」


今まで悪霊などと戦っているとき何度か感じたことはあった。だが、昨日のアレはまるで次元が違った。自分に放たれているわけでもないのに、心臓を鷲掴みにされているかと思ったくらいだ。


「昨日の感覚、ちゃんと覚えておいてね。何時か役に立つよ」


キイ兄はそういうと砂の城を作るといって去っていった。
そして俺は、先ほどの言葉の意味が分からずただ立ち尽くしていた。


「横島さーん! ヤドカリ捕まえました〜」


そこにおキヌちゃんが片手に大きめの貝殻を持って飛んできた。

キイ兄はキイ兄だよな。

俺はそれ以上考えないことにして今この時間を楽しむことにした。


〜おまけ〜


「出来たーーー!!」


「これはまた…」


「すごいおっきいですー」


キイ兄が作り上げた砂の城は、高さ10メートル横15メートル四方の立派なものが完成していた。
周りには観光客も集まり、近くにいた子供達が城に登っている。


「過去七番目ぐらいのできかな!」


「これ以上のをあと六つも作ったのか!」


「キイさん凄いですね〜」


「まあ対衝撃耐震耐熱耐水設計だから最低でも一年は持つかな」


「砂でそんなもの作れるんかい…」


結局この砂の城、この夏の客寄せのために崩れるまでホテルが管理することになった。




あとがき


レス返しさせて頂きます!


>masa様
>いやはや、やっぱりおキヌちゃんは幽霊で天然な方が味がある。
>・・・そう考えてしまう私は病んでるんですかね?
大丈夫です! masa様は正常だと私は判断します!
だってそうじゃないと自分も病人だし(笑)
アシュタロス達については暫くは出てきませんが出るときは超活躍させます。
でもどれだけかかるか分からないので気長にお待ちください(汗)


今回の話なのですが、とりあえず謝ります。ゴメンナサイ!
うわぁ〜、何だこの話笑いが全然ない気がするよ!
しかも色々と伏線張ってこの時点では意味分からなくなってる気がする!
終わりの方も超微妙だし!

今回はもう辛口批評覚悟であります。てか褒める部分がまったく無い!
うわー! 次こそは! 次こそは何とかしますのでどうぞ平にご容赦を!


次回はやっとキャラ追加だ! これで少しはマシになるかも!
そしてもう少しはオリジナルの要素を入れようと思いました。
このままじゃあ原作を良く知っている人面白くありませんよね。反省です。


あと、一つ質問なのですが『効果音』についてはどうでしょうか?
ちゃんと爆発音等は

ドゴォォォォン

のように表記したほうがいいのでしょうか?
これを読んでくださっている希少かつ親切な方がいましたら教えてください。


ではこの辺で失礼いたします…

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