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「妙神山のただおくん 番外編3(GS)」

のりまさ (2005-10-27 21:43/2005-10-27 21:48)
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<小竜姫>
「あら、これは……」


 自分のお部屋をお掃除していた時、本棚から一つののーとが落ちてきました。少し薄汚れて埃が被っていますが、これは確か……


「確か忠夫くんがここへ着てから書き始めた、日記帳ですね」


 懐かしいです。子育てなんて初めてでしたから、あの頃は老師とヒャクメと一緒に毎日が右往左往の日々でした。


「偶には読み返してみましょうか」


 私は少し黄がかかった最初のぺーじを開きました。


妙神山のただおくん〜小竜姫様の育児日記 その一〜


<5月11日>

 今日は大変なことがありました。なんといきなりよそ様の、しかも人間の赤子を預かることになったのです! なんでこうなるんですか?って感じです。いや、確かに承諾したのは私ですけど、いきなりすぎでしょう。
 とはいえこの子が魔族に狙われているというなら放っとくわけにはいきません。今老師は神界にいらっしゃるので明日帰ってきたらとりあえず相談してみましょう。老師も若い頃ならともかく今はそこまで鬼じゃないので、事情を聞けばそう簡単にあの子を追い出したりしないでしょう。
 それにしても……子育てなんて初めてです。そりゃそうでしょう、私は未婚ですし、そもそも修行以外で男性の手を握ったことすらありませんし。いきなり未婚の母になるとは思いませんでした。まあ、過ぎてしまったことは仕方ありません。それにあの子の寝顔はとても可愛らしく、こっちもつい笑顔になってしますし。ですが今は寝ているからいいですが、起きたらどうしましょう……。子育ての仕方や戸籍諸々は一緒にもらったのーとに書いてあるとはいえ、子育てがそう簡単にいくはずが……

「うえーん、うえーん!」

 あ、あの子が目を覚ましたようですね。しかも盛大に泣いています。


「ああ、ほらほら、泣かないでください! お母さんですよー!」


 私は忠夫くんを抱き上げると、心臓の音が聞こえるぐらいに抱きしめました。
 少しすると泣き止み、やがて私が自分の母親ではないことに気付いたのか、こちら見上げました。……涙目で可愛いです。


「かーしゃん、どこ?」


 やはりこの年頃の子には母親というのが絶対的な存在なのでしょうね。ですが居ないと言えばさらに泣いてしまうかもしれません。


「私が、今日からお母さんですよー!」


「……ちがうもん。かーしゃん、だっこしてもらうと、もっとやわらかいもん


 ふふふ、まずはこの子に胸の大きさが女性の魅力の決定的差ではないことを教えてあげなければいけませんね。それにしても、お母さん、じゃ駄目ですね。……よし、今日から私はこの子のお姉さんになりましょう!


<5月12日>

 老師が神界から帰ってらっしゃいました。早速事情を説明しようと思ったのですが、老師は全て神界から見ていらっしゃったらしく、


「ああ、構わん。今神界でもその赤子について揉めとるところじゃ」


 なんでも、この子を狙っている魔族は神魔族両方から指名手配されているらしく、仮に戦い討つことになっても特に大きな問題にはならないらしいです。


「神魔族の最高指導者も自ら会議に赴いて賛成しとるらしいからの。さて、その子はどこじゃ?」


 老師は忠夫くんを見ると頬を緩めて好々爺といった感じで抱き上げます。そのまま嬉しそうに高い高いを始めました。……それはいいですが老師、うっかり手を離さないでくださいね。もし力加減を間違えたら忠夫くん、天井を突き抜けていっちゃいますから。


「……さるさん?」


「おお、忠夫は偉いの。そうじゃそうじゃ、猿のジジイじゃ」


「さるのじーじ?」


「うむ、そうじゃ。忠夫は賢いの」


 老師、爺馬鹿丸出しです。老師を猿と呼べる人なんて、忠夫くんぐらいですよ。


<6月9日>

 忠夫くんがようやくここ妙神山にも慣れ始めた今日、それは起きました。忠夫くんがなんと、高熱を出しているのです! ど、どうしましょう、今は夜中で病院など開いていませんし、よく考えればお金も小判しか持っていません! い、一体どうすれウあhgぱfぽあjひごあー329r9いヵjぎ@−p30いらpk……落ち着きなさい、私! そうです、まずは病気の原因が何かを調べなければ!


「ヒャクメー! どうせ覗いているんでしょー! 十秒以内にここに来なさーい! でなければ仏罰ですよー!」


 こういう時こそヒャクメの出番です。普段役に立たないんですから。


「10、9、8、7、654321!」


「ま、待つのねー! 今、今来たのねー!」


 必死の形相のヒャクメが神通力を使ってやってきました。初めからとっとと来ればいいんですよ。早速ヒャクメを忠夫くんが寝ている部屋へ連れて行きます。


「これが神界でも噂の忠夫くん? 小竜姫が裏光源氏計画を始めたっていう」


 どんな噂が立っているのですか、神界では! 


「それより早く、忠夫くんを診てやってください!」


「分かったのねー! ちゃんと見るから、お願いだから首に添えてある神剣をしまってほしいのねー!」


 その後、ヒャクメの診断ではどうも忠夫くんの高熱の原因は身体の不適応であったそうです。忠夫くんの身体が普通の場所からいきなり竜気や神気の濃い場所に移ったので、身体が混乱しまったと、ヒャクメは言っていました。普通の成人ならそんなことは起こらないのですが、忠夫くんはまだ体の出来上がっていない赤子。無理もありません。


「どうやったら治りますか!?」


「うーん、この子の身体が妙神山の神気に適応すれば自然と治るでしょうけどー、その前に高熱で身体が持たないほうが先かも」


 な、なんてことでしょう! 私の放つ竜気のせいで忠夫くんが危険になるなど……。


「あ、そうだー。天狗の持っている万能薬なら治るかもー」


「天狗ですね? 分かりました!」


 一分で私は天狗の住む森に着きました。天狗は確かによい薬をたくさん持っていますが、確か勝負をして勝たないと分けてもらえません。とにかく急がないと!


「天狗さん! 薬を分けてください!」


「ふわぁ〜、何用じゃこんな夜中に? 今日はもう店じまいだ。明日の朝にでも出直して……」


ゴキリッ


「あっ、これですね。忠夫くん、待っていてください!」


 天狗の家で目当ての薬を探し当てると、私は大急ぎで妙神山へと戻りました。

「おーい。せめて首を元通りの方向に治してからいってくれんかー?」


 薬を飲ませると忠夫くんの熱は落ち着き、翌朝には元気に走り回っていました。よかったです。


<8月28日>

 忠夫くんと一緒に下界へ降りました。所謂公園でびゅーというやつです。忠夫くんは最初不安そうにして私に抱き付いていましたが、やがて他の子とも打ち解け、砂山で遊び始めました。他の子供たちも可愛いですが……やはり忠夫くんが一番ですね。赤子だから可愛いのではなく、忠夫くんだからこそ可愛いのです。


「まあ、可愛いらしいお子さんですね。でもまだお若いのに大変ですね」


 同じく今日が公園でびゅーだったお母さんが話しかけてくれました。よかったです。雑誌などを見るに公園でびゅーで初めから受け入れられるのは難しいらしいですから。……それにしても、私があなたよりも何百歳も年上ですって言ったらどういう顔をするんでしょうか? それに私が忠夫くんのお母さんだと思っていらっしゃるようですが、私はお姉さんです! まあ別にわざわざ訂正はしませんが。

 忠夫くんは初めての砂遊びに夢中で、まだ砂をいじっています。ああ、もうあんなに泥んこになって。もう日が暮れちゃいますよ?


 ……ちょっといたずらしてみましょう。私は夢中になっている忠夫くんに気付かれないようにその場を離れ、物陰に隠れました。どういう反応をするんでしょう?

 あ、私がいないことに気が付きました。さて、私を探せますか?


「ふ、ふえーーーーーーーーーん!」


 い、いきなり泣き出してしまいました! こ、こんなに悲しませるつもりではなかったんですが……。私はすぐさま物陰から飛び出し、忠夫くんが座り込んでいる砂場に走ります。


「あ……おねーちゃん!」


 忠夫くんは私の姿を見つけると、途端に泣き顔をさらに崩して私に抱き付いてきました。


「おねーちゃん、ここにいる? いなくならない?」


 とても悲しそうに忠夫くんが呟きました。……私は母親としても、姉としても失格ですね。ちょっとしたいたずらのつもりでこんなに悲しませるなんて。この子は両親がいなくなったことをやはり覚えているのでしょうか? それで私までもがいなくなるのが怖かったんでしょうね。


「ごめんなさい。あと、大丈夫です。私はここにいますよ。あなたが望む限り、ずっと……」


 その晩は老師から忠夫くんを泣かしたことでこっぴどく怒られてしまいました。忠夫くんが取り成してくれたのでそんなに長い説教ではありませんでしたが。
 夜は忠夫くんを今日のお詫びの意味も込めてとっても甘やかしてあげました。……いや、まあ、確かにそれは自分の願望でもありましたけど……忠夫くんも幸せそうにしてたからいいじゃないですか!


<小竜姫>
「ふふふ、そうですね、こんなことがありましたね」


 あの頃は子育てなど何も分からず、下界に行って様々な雑誌を買い込んだりして本当に必死でしたね。
 それにしても懐かしいです。もうちょっと読んでみましょうか?


「ただいまー。小竜姉ちゃーん、御飯はー?」


 あら、いけない、もう忠夫くんが帰ってくる時間でしたね。つい読み耽ってしまいました。続きはまた今度読むことにしましょうか。

 私は日記を手に取ると、元あった場所へ大切にしまいました。


 続く


あとがき
 番外編3は前から予告していた通り育児日記編です。これからもちょくちょく話の合間に入れると思います。基本的に壊れは少なめなほのぼのです。今回は忠夫くんが一歳の頃の話なんですが……一歳でどれぐらい喋るんでしょうか? 正直よく分かりません。一歳なのに喋りすぎだろ、と思った方は、まあ霊能力持ちだから早めに喋れるようになったとか、適当な理由をつけてください。
 明日もバイトで更新は出来るかどうか……。でも土日は暇なのでちゃんと更新できますからご安心ください。


 短いですが、今日はこの辺で。

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