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▽レス始

「GSルシオラ?復活大作戦!!第14話(GS)」

クロト (2005-10-27 19:12)
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 カン、キン、カンカンカン!
 ひとけの無い夜の公園に金属音が響く。
「えーい、何でこんなかったるい事せにゃならんのじゃ!」
「何でって、大事なことでしょ?」
 現在私は実体化してヨコシマと剣術の修行中。
 今回の私の武器は夫婦剣(刃引き・白黒仕様)だ。別に趣味で色をつけたわけじゃなくて、黒い物は暗い所では見えにくい、つまり肉眼で捉えにくいものを他の感覚で捉える、そういう練習も兼ねてるわけ。ちなみにその方面のヨコシマのセンスは素晴らしく、背後や横から飛んで来る陰剣を3回に2回はきっちりかわすか受けるかしてくれる。
 ガンッ!
 私が投げた陽剣を栄光の手がかなりの力で弾いた。
 私の最初の見立ては正しかったわね。全体的な霊圧ではヨコシマはまだまだ美神さんに及ばないけど、「霊力の集束・具現化に特化してる」おかげで、栄光の手の部分に限ってならもう彼女の出力を超えてるわ。
 それはそうと、ヨコシマは今さら修行に不満を並べてるわけじゃなくて、
「せっかく実体化してるんだからもっと有意義なコトがあるだろー! 5分でやれることをーー!!」
 ということなの、念のため。え、もっとタチが悪いって? まあ、ヨコシマだから。
「それはこの前したでしょ! 今日は剣の練習!!」
 具体的に何をしたのかは追及しちゃダメよ♪
 それにこれは私自身の修行でもあるの。こうして少しでも出力と安定性を高めていくことは今後の事件に対応していくのに必須のことだから。
「ほら、またサーヴァ○トの情報が更新されたじゃない」
   パワー :200マイト
   持続時間:最長8分
 喜んでくれるかと思ったのに、ヨコシマの顔にはいくらか縦線効果が入っていた。
「確かに俺も強くなってきたしお前が成長したのも分かるけど……これって何だ? ネタなのか?」
「お約束なんだから気にしちゃダメよ」
 ……あら? ヨコシマの口から「俺も強くなった」なんて台詞聞くのは『前』から通しても初めてよね?
 そっか、何だかんだで自己評価の低いヨコシマだけど、精神的にも成長してくれたわけか。修行も勉強もうまくいってるし、美神さんとの仕事では単なる雑用じゃなくて除霊作業自体の一端を任されてる。1人の仕事のときは相手がそれよりずっと格下だからもう怖がることもない。そういう経験が自信になってきたのね。
「そーいうもんなのか……? まあ気にしたら負けって気もするけどよ」
「そうよ。じゃ、そろそろ時間だから」
「……ああ」
 ――まあ、それは今回来た依頼(?)とはあまり関係の無いお話。

 そういうわけで、私達は美神さんとおキヌちゃん、それに小笠原さんとタイガーさんと一緒に六道さんのお屋敷に来ていた。
 招待主は彼女のお母さんの六道女史。彼女が言うには、冥子さんは仕事中の暴走という不祥事を10回連続で敢行したためGS協会が免許停止を考慮中という事態になってしまったそうだ。
「というわけで〜〜〜。原因を考えてみたところ〜〜〜このコは式神を使いすぎということが明らかになりましたの〜〜〜」
 ……冥子さんの間延びした喋り方はこのひと譲りだったのね。
 彼女は普段から式神を出しっ放しにしてるせいで制御に必要なエネルギーをぎりぎりしか残してなくて、それがちょっとした動揺ですぐ暴走する理由らしい。
 それを治すには彼女の自立心を養わねばならないと言って、
「で、お2人の力を借りたいの〜〜〜。だって他に頼る人がいないんですもの〜〜〜」
 ……自立心はどこにいったの?
 美神さんと小笠原さんもあきれてたけど、女史が取り出した箱の中身を見たとたん2人の目の色が変わった。
「これは……式神護符!? それも12匹全部!?」
「これを私達に!?」
「しばらく式神を手元から離して冥子自身の力をみがくのです〜〜〜。手伝ってくれますかしら〜〜〜?」
 つまり12神将を貸し出すのが代価というわけね。
 護符を奪い合ってる2人を見れば答えは明白だけど、具体的にはどうするつもりかしら。ちなみに式神を取られた当の冥子さんはこの世の終わりみたいな顔をしている。
「承知しましたわ、おばさま。でも私がついていては逆に依存心が強まりますので、うちの横島クンを助手としてお貸しします」
 美神さんがそう言うと小笠原さんも尻馬に乗って、
「では私もタイガーをお貸ししますわ。いざというときは盾にしていただいて結構ですし」
 何だかヒドい待遇ね、タイガーさんも。
 しかしそんなことを言われて当人が黙ってられるわけもなく、
「ちょぉっと美神さんー!? それって酷いんじゃないですかー!?」
「エ、エミさん……それはあんまりじゃ……」
 2人が揃って泣きつくけどその雇用主たちは冷酷無情で、
「えーいうるさい! アンタはこの前の化猫の件で依頼パーにしたんだから黙って言うこと聞きなさい! 私だって好きで受けてるんじゃないわよ」
 美神さんがまだ根に持ってた(?)のは意外だったけど、ヨコシマの方も負い目があったのかおとなしくなって、
「じゃ、これが終わったらチャラにしてくれます?」
「上手くいったらね」
 隣ではタイガーさんもあえなく撃沈していた。
 すると女史は急に嬉しそうに、いや内心では予想通りの展開にほくそえんでるんだと思うけど、
「あ、横島クンね〜〜〜。最近がんばってるそうじゃない〜〜〜期待してますよ〜〜〜」
 とヨコシマの手を取って、
「それに心眼さんだったかしら〜〜〜。心の目を開くって聞いてるわ〜〜〜あなたも宜しくね〜〜〜」

 誰よこのひとに私のこと教えたの!!!

 式神決闘のときは知られてなかったはずなのに。まさか私が本当の目当てってわけじゃないでしょうね!?
 ……待って、落ち着くのよルシオラ。とりあえず返事をしないと。妙な期待はされないように、
『いえ、私はあくまでヨコシマのためにつくられた存在ですので、あまりお役に立てないとは思いますが宜しくお願いします』
「ええ〜〜〜お願いね〜〜〜タイガーさんも〜〜〜頼みますね〜〜〜」
 ……聞き流されてそうね。
 こうして、当人の意向を全く無視した新チームが結成された。

 さっそく持ち込まれた仕事に行く前に、私達は以前冥子さんがやった仕事の報告書を見せてもらった。補佐する相手のことを知っておくのは当然だから。
「冥子ちゃんって……俺1人でやるような仕事でもプッツンするんだな」
『それさえ無ければ強力だと思うけど……誰がこの人に一人前のお墨付き与えたのかしらね』
「まあこの仕事の間はプッツンはないし、それだけでもマシってことにしとくか」
『そうね。でもヨコシマを式神扱いしたのには正直腹が立ったけど』
 あの後冥子さんはヨコシマとタイガーさんを12神将みたいに自分の影に入れようとしたのだ。ヨコシマは式神でもペットでもない、『人間の』助手として扱え、とあのとき私は実体化までして抗議した。まあ彼女に悪気は全く無くて、きちんと分かってくれたから許してあげたけど。
 という経過で2人は普段は通勤、必要があれば六道邸の空き部屋に泊まる、ということになっている。

 その後冥子さん達の所に戻って。開けてみた依頼書に書いてあった仕事の内容は、マンホールに棲みついてときどき暴れ出す水の妖怪を退治するという単純なものだった。霊力レベルはB−、人語を喋るものの意思疎通は不可能、特殊能力の類はおそらく無し……という親切な解説を読んで、
『じゃ、ヨコシマとタイガーさんが前衛で冥子さんをガード、冥子さんがその間にお札で除霊……いえ、駄目ねこれじゃ』
 依頼の目的上、大前提として、ヨコシマとタイガーさんが妖怪を退治してはいけないという条件がある(対象が複数ならボス以外は別だけど)。
 で、この作戦では2人の役目は冥子さんが妖怪を倒すまで彼女を守ること。つまりそれまでに受ける攻撃は「防ぐ」しかないというわけで、いくら何でもそれは危険だわ。
 ――ところで、作戦考えるのはあなたの仕事じゃないかしら冥子さん?
『敵が現れたら私が実体化してヨコシマと2人で足止めするから、冥子さんがその間に除霊して。タイガーさんは冥子さんの護衛、必要に応じて精神感応を使ってね。ただし私は長時間もたないから素早く決めるのよ。……何か意見あるかしら?』
 これなら攻撃を受ける量は格段に減るはずよ。
「は〜〜〜い。よろしくねルシオラちゃん〜〜〜」
「……そうだな、頼むぞルシオラ」
「分かりましたケンノー」
 1番考えなきゃいけない人が1番何も考えてないと思うのは私の気のせい?
 まあ深く追及するのは止めて、夜になってから現地に向かう。
 敵の接近を感知したのか、マンホールの蓋がいきなり真上に飛びあがったかと思うと、そこから大量の水が噴き出してきた!
 水の柱の表面に人の顔が浮かび上がり、2m程もある巨大な人面瘡ならぬ人面水(?)となって憤怒の表情で、気配を抑えてる私を除けば1番霊力が高い冥子さんに襲い掛かる。
「きゃーーーっ!!?」
 冥子さんはすぐ逃げるかお札でも使うべきなのに泣き出すばかりで動かない。
 私はとっさに飛び出して、

    ロ ー ア イ ア ス ? ?
「どうでもいいひと守る七つの円冠!!」

 投げやりな真名を唱えつつ、霊力を集めてつくった七枚羽の(?)盾で冥子さんをかばった。
 バーン!!
 水妖の顔面が盾にぶつかる。いったんは止めたけどこのままで防ぎ切れるわけはない。でもそれは想定済みのことで、

    ブロークン・アシュタロス・ミニ
「壊れたアシュ様・極小版!!」

 七枚羽のさらに前方につくっておいたもう1枚の小さな盾を爆発させた。こんなやり方はやたら消耗するけど仕方ない。死なない程度に吹き飛ばす。
「栄光の手ッ!」
 すかさずヨコシマが栄光の手を伸ばし、上から地べたに押さえつけて突進を阻んだ。上手いわ、やっぱり私達は最高のコンビねヨコシマ!
「今だ冥子ちゃん!」
「吸〜〜〜印〜〜〜!!」
 ヨコシマの声でようやく再起動した冥子さんがお札を構えて気合をかける。12神将を扱ってた霊力は伊達じゃなく、水妖はあっけなく本体を水の塊から引き抜かれてお札の中に吸い込まれた。
「わ、私にもちゃんと使えた……!?」
「本体はこんなにチビだったんですノー」
 とお札を使った事がないらしく感動している冥子さんと今回出番が無かったタイガーさん。
「そうね、式神を出してない分の霊力があるんだからお札くらい使えるわよ。ヨコシマもいいサポートだったわ。
 ……それじゃ、後始末も要らなさそうだし帰りましょ。タイガーさん次はよろしくね」
 何故か私が場を締めて、新チームの初仕事は完了した。
 ほんとに何で私こんなことしてるんだろう?

 さて、昨日の仕事で冥子さんについて分かったことと言えば、
   1.霊力は美神さん以上。ただし使えるのはお札くらい。
   2.精神年齢が低い。
   3.性格が平和的で戦闘に向かない。恐怖や予想外の出来事に弱い。
   4.反射神経と運動能力もかなり疑問。
   5.2〜4の結果として素早く適切な対応ができない。
   6.5の結果理性が切れて暴走する。
 美神さんとは正反対ね。
 この様子だと昨日みたいに普通に仕事やるだけじゃ(ヨコシマが)危険なだけで成果は少ないでしょうね。何かいいアイデア考えないと。
 ……プッツンしなくするのが目的なら、要するに悪霊や妖怪に対する恐怖感を無くせばいいのよね。それなら実物と戦うより、まずTVや映画で免疫をつけるというのはどうかしら。
 ヨコシマに提案してみると、
「そだな、それなら危ないことしなくていいし」
 と賛成してくれたので、タイガーさんと3人で冥子さんを説得して(脅迫とも言うわね)、レンタルビデオ店で何本かのホラー映画を調達した。
「きゃーーっ、きゃーーっ!!!」
 暗くした冥子さんの自室に彼女の悲鳴がひびく。しかし左右をヨコシマとタイガーさんが固めているので逃げられない。
 ――ところで冥子さん、怖いからってヨコシマにしがみつくのは止めてくれない? ヨコシマも鼻の下伸ばさないの!
 冥子さんは単にタイガーさんよりはましだと思ってるだけなんでしょうけどヨコシマの方が、
「くくぅ、これは役得! 凹凸は少ないがこのぷにっとした感触がたまらん! 美神さんは鉄壁だったがやはり冥子ちゃんはガードが甘い。冥子ちゃんが耐えられなくなった所で俺が優しくフォローして後は一気に……!」
 聞こえてるわよヨコシマ。だいたい昨日だって私と(中略)のに何でこのぷっつん娘まで口説こうとするわけ……?
 1本見終わって冥子さんがまいってきた所で一旦休憩。
「ひーん、怖かった〜〜〜」
『とりあえず騒がなくなるまで続けるからね』
「そんなの無理〜〜〜」
『式神戻って来なくていいの?』
「ひーん、ルシオラちゃん怒ってばっかり〜〜〜」
 泣きたいのはこっちよ……。
 なので、冥子さんはしばらくホラー映画漬けにすることにした。
 次の日に仕事が1件来たけど、タイガーさんが精神感応で妖怪をぬいぐるみみたいな外見に変えてくれたおかげで冥子さんが立ち直って、この前と同じ吸引のお札で除霊できた。
 そんなこんなで1週間が経過した。

「えーん、怖いのきらいーー!!」
 冥子さんが悪霊に破魔札を投げつける。
 バシュッ!
 技術的には美神さんどころかヨコシマにも及ばないけど、発動に使われた霊力だけは強力で、周りにいた数体を同時に消滅させた。
 かなり取り乱してはいるし、(1週間映画で見続けさせられた分の)嫌悪感が攻撃に向かってるだけだけど、硬直したり暴走したりしてたのに比べればずっとましになったはずよ。
 お札の威力と相手の強さの兼ね合いを考えずに使いまくってるから費用対効果の面で問題があるけど……。
 新チームの3件目になるこの仕事は、廃工場に居ついたボス悪霊とそいつが呼び込んだ雑魚霊を退治するというわりと一般的なものだった。
 雑魚をいくら祓ってもボスが残っていては問題解決にならないので、雑魚は身を守る程度に祓うだけに抑えて、まずボスを目指して前進している最中なのだ。
 ヨコシマとタイガーさんが不意打ちを警戒しつつ気配を頼りに奥の一角、たぶん一番えらい人の部屋だったろう場所にたどり着いた。
「やっぱこの中か」
 ヨコシマが呟き、2人にアイコンタクトを送る。私も実体化して不慮の事態に備えた。
 バンッ!
 ヨコシマが栄光の手を構えて扉をはね開けると同時に中に転がり込む。と、その頭上を飛び越えて悪霊が冥子さんに飛びかかった。霊圧から言ってこいつがボスに間違いない。
「っきゃ〜〜〜!!」
 さすがに動転してしゃがみ込む冥子さん。しかし悪霊の攻撃は彼女には届かなかった。何故なら私の七枚羽に道を阻まれ、タイガーさんの霊力がこもった拳で殴り倒されていたから。
「今ですジャー!」
 タイガーさんの声で我に返った冥子さんが立ち上がって、
「えーい、よくも〜〜〜」
 いつも通りの間延びした口調ながらも吸引札を発動してボスを吸い込む。
 すぽんっ!
 ……ふう。後は残ってる雑魚を退治するだけね。
 実際、ボスを失った雑魚を祓うのは手間がかかるだけで簡単なものだった。

「これで3件目よ〜〜〜私も結構やるじゃない〜〜〜」
 冥子さんも少しは自信がついてきたらしい。サポートなしではまだ無理だけど、暴走せずに仕事を終えたのは事実だものね。私もそろそろ帰りたいし。
「これだけやればお母さまもきっと式神返してくれるわよね〜〜〜」
「どーだろなー。お母さんはともかく美神さんが素直に返すかどーか……」
「ううう……エミさんも多分……」
「そんなぁ……しくしく……お母さまなんか……お母さまなんか……」
 仕事はうまくいったのに帰り道で泣き出す3人。何だかなー。
 でも結果的には杞憂だった。
 12神将を使いこなせなかった美神さんと小笠原さんが式神護符を返しに来たのと、冥子さんが一応は仕事を3件続けて成功させたことで、とりあえず今回は依頼(?)完了ということになったのだ。
 まあ、何時までもつかは分からないけれど。
 帰り際に六道女史が何か言ってたけど、聞こえなかったわよ。うん。何も。
 今回はいろいろ大変だったわね。お疲れさま――私。


 ――――つづく。

 冥子の扱いがちょっと悪いような気もしますが、原作でもこんな行動してましたし(^^;
 ルシオラは彼女をお荷物だとは思ってますが悪意まではないです。悪い娘じゃないですから。
 ではレス返しを。

○ゆんさん
>ということはアシュタロスのときには美神と同期合体できるんですか?
 うーん美神は足引っ張るかも知れませんねぇ……。
 まあそのときは横&ルシとかWルシオラとかありますし(ぇ

○貝柱さん
>優しさのあるいい話ですよね??ね??
 表現が素直じゃなかっただけですよ、きっと!

○ジェミナスさん
>既にGSトップクラスのマイト数になってるって事かな?それともコントロールがベテラン並に洗練されてきたって事?
 えーと、本文でちょっと触れてるように、横島君は集束・具現化に限っては同じ効果を出すのに他の人と同じマイト数は要らないわけです。某セイギノミカタとあかいあくまの関係と同じですね(ぉ
 ま、ルシオラの指導あってのことですがw

○遊鬼さん
>それだと文珠の習得ができない???
 ま、その辺は経過を知ってるルシオラがいるので大丈夫です♪

   ではまた。

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