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▽レス始

「GSルシオラ?復活大作戦!!第10話(GS)」

クロト (2005-10-21 18:54)
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 事態は芳しくないわね。
 小竜姫さんがメドーサを倒せるかどうかは疑問だし、ゾンビはともかく勘九郎もさっきまでとはレベルが違う。ましてここはだんだん魔界化していくわけだし。
 仕方ないか。小竜姫さんの前で本気は見せたくなかったけれど、ここを乗り切らなきゃその先はないもの。
『ヨコシマ、出るわ!』
 一声かけて実体化する。
 今までの説明とは食い違う事態に美神さん達の視線が集中するけどそれは後で説明するとして、まず小竜姫さんに念話を送る。
『小竜姫さま、少しだけメドーサを私に任せて下さい』
 答えを待たず、さりげなく移動してヨコシマから距離を取った。これから実行する作戦のために。
 メドーサから見れば私は配下2人を苦もなくあしらった相手だ。いくぶん警戒の色を表して、
「ついに出たね。あんたはボウヤの式神……いや使い魔の類だね。にしては霊力も主より強い……なんでこいつらと一緒にいるんだい?」
 さすが鋭いわねメドーサ。確かに普通は式神でも使い魔でも、自分より弱い者には従わない。でもそんな分かりきったこと聞くなんてまだまだね、今こそ宣言するときだわ!
「決まってるわ。私とヨコシマが愛し合っているからよ!!!」
 美神さん達にも聞こえるように大声で。
 主観的には真実よ? 客観的には私が心眼でヨコシマに括られてるからだけど。
「な、なに!?」
 メドーサが驚いてる。『前』はヨコシマをアホ扱いされたけど、今度はそういうところ見てないから普通の反応ね。
「人間と使い魔がかい!? 何かの間違いだろう?」
「人間と神様や魔物が結婚した記録はいくらでもあるわ! 大いに間違っていいのよ!!」
 西条さんの台詞を流用。このひとは美神さんのことが好きで、それで私達に便宜図ってくれてたのよね。こちらでも早く出て来てくれないかしら。
 メドーサと向かい合ったまま、すうっと一息入れて、
「じゃあ行くわよメドーサ。おまえに恨みは……あったわね年増」
 ない、と言いかけて訂正する。こいつもヨコシマを殺そうとしたのよね。それに私が『前』に死んだ一因でもあるわ。
 一拍置いて、


「化粧品を抱いて溺死しなさい」
「殺す!!!!」


 メドーサは思い当たることでもあったのか、顔中に井桁を貼り付けて爆発した。あ、血管が切れてる。
 ボッ!
 強烈な霊波砲がメドーサの掌から放たれ、圧倒的な威力で私の姿を飲み込んで通り過ぎていった。ヨコシマ達が思わず息を飲んだけど、自分から挑発したんだから予測済みのこと。そう、これは私がつくった幻影なのだ。
「手応えが……ない!?」
 もう遅いわ。私は逆立ち状態でメドーサの頭を掴んでいた。
「極死・蛍夜!!」
「ぐっ!」
 私の麻酔を受けたメドーサの動きが一瞬止まる。今のパワーじゃ気絶はさせられなかったけど、刺叉の射程外まで飛び下がる時間くらいは稼げるわ。
「こ、こいつ!」
 メドーサがまた霊波砲を撃ってくるけど、それはかわせた。2発目は避けられなかったけど、これもはずれ――幻影だから。
 さらにいくつかの幻影がメドーサの周囲をふわふわと飛び回る。
「横島神拳奥義、蛍想転生!! を忘れたおまえには破れないわ」
 もちろん嘘。メドーサが冷静ならば、今の私の幻影は見破られてしまうでしょうね。でもそのために、狙われる危険を冒して彼女の理性を奪ったのよ。
「おふざけでないよ!!」
 怒り狂ったメドーサが霊波砲を乱射し始めるが、そこに小竜姫さんが斬り込んだ。
「その言葉、そのままお前に返してあげます!」
「くっ、小竜姫! ジャマすんじゃないよ!」
 小竜姫さんとメドーサが打ち合いを始める。一方ヨコシマ達も勘九郎&ゾンビ部隊との戦闘に入っていた。
 よし、狙い通りね。
 今メドーサの回りにいるのは全部幻影。本物の私はこっそり風水盤に近づいて解析を始めている。
 ――これは凄いわ。魔法科学の粋、それとも東洋の神秘かしら。時間があればゆっくり研究してみたいけど、今はそうも言ってられない。急いで呪場の構造と制御システムを分析する。
 …………。うん、分かったわ!
 制御盤に手を置いて――
 ヴイィイン……バシッ!!
 呪力の流れを暴走させて互いにぶつかり合わせる。回路の容量を超えたエネルギーが風水盤の諸所で爆発を起こし、その機能を停止させた。
「なっ……何ぃぃぃぃ!!?」
 妙な気配に振り向いたメドーサの叫びと同時に――風水盤は完全にただのガラクタと化し、広がりつつあった魔界のエネルギーが急速に薄れていく。
「き、き、き、貴様ぁぁぁ!!!!」
 彼女の言う使い魔1匹に翻弄されたあげく計画を潰されたメドーサの声は怒号というより悲鳴のように聞こえた。まあ色んなことを甘く見たり見下したりしてたのがおまえの敗因よ、メドーサ。
 これで作戦はおしまい。ちょっとヒドいやり方だったけど彼女もここまで怒らせれば撤退はしないでしょう。だってここで逃がしたら次はどんな手で復讐しに来るか分からないし、第一『この世界の』私を見たときに黙っていないでしょうから。
「悪は必ず滅びるのです! あきらめてこの剣の錆となりなさいメドーサ!」
 小竜姫さんが容赦なく追撃する。私も横からサポートした。この2人の戦いにまともに割り込む力はないけど、私がこちらにいればメドーサの攻撃がヨコシマ達に向かうことはないものね。

「あんた達にはずいぶんと楽しい思いをさせてもらったわね……たっぷりお礼させてもらうわ!!」
 美神さんが兇悪な笑みを浮かべて勘九郎に襲い掛かる。しかしゾンビの1体が間に入って神通ヌンチャクを受け止めた。美神さんの一撃を防ぎ切れなくて腕が砕けたとはいえ、この動きはパワーだけじゃなくて知能も感じるわ。
「邪魔よあんたら!」
「死になさい!」
 右手を失って剣を持たない勘九郎が左手から霊波砲を放つ。美神さんはそれを身を低くしてかわし、ヌンチャクを振り上げて勘九郎の顎に叩きつけた。いつもより動きが数段速いわ、相当怒ってるわね。
「クッ!」
 よろめく勘九郎に追撃しようとする美神さんだけど、それを阻止せんとゾンビが横から殴りかかる。あわてて退く美神さん、そこへピートさんが霊波砲でフォローに入った。伊達さんが勘九郎の前に出て、
「この大バカ野郎、とうとう魂まで魔物になりやがって……!」
 悲しみと決意のないまざった表情。その気持ちはよく分かるわ、私も『前』にベスパと訣別して戦ったことがあるから……。
 ドウッ!
 至近距離で撃ち合った霊波砲が相打ちになり、2人が地面に倒れる。ピートさんが伊達さんを助け起こし、勘九郎にはヨコシマが駆けていく。
「蝶のように舞い――」
「小僧……!」
 膝をついて起き上がった勘九郎にヨコシマは剣に変えた『栄光の手』を掲げて、
「ゴキブリのよーに逃げる!」
 あっさりその脇を超高速で走り去った。
「……」
「参加しろーー!」
 勘九郎が呆然とそれを見送り、美神さんもあきれて叫んだけど、フフッ。2人ともヨコシマのことまだ分かってないわ!
「と見せかけて……蜂のよーに刺すっ!」
 ボケで気が抜けた所へ戻ってきて、勘九郎の脳天に会心の一撃!
「で、ゴキブリのよーに逃げる!」
「こ、このガキャー!」
 激怒した勘九郎がそちらに一歩を踏み出したとき、
 どがーん!
 その足元で爆発が起こった。ヨコシマは逃げる時にソーサーを置いて行ったのだ。それを勘九郎が踏むことで起爆したというわけ。
「ぐあっ!」
「見たか新技、サイキックマインの威力!」
 ヨコシマの攻撃は威力自体は他の3人にそう劣らない。それを不意打ちで2発受けた勘九郎はかなりのダメージを負っているはず。
 そう見てとった伊達さんが勘九郎の背後から、
「この……バカが……っ!」
 全力で霊波砲を叩き込む。胸の真ん中を打ち抜かれた勘九郎は――何を言い残すこともなく、その場にどさっと倒れ伏した。

「くっ……勘九郎までやられるなんて……」
 風水盤を破壊され、配下もゾンビも全滅したメドーサはさすがに落胆の色を隠せないようだ。
「こうなったらせめて、こいつら全員ぶっ殺す!」
 飛び上がったメドーサの霊圧が膨れ上がる。これは――
「「超加速!?」」
 私と小竜姫さんの声が重なった。
 突如世界が変貌する。すべてが止まる、いや壊れた針時計のようにゆっくり動いている世界の中で――メドーサだけが元の速さで小竜姫さんを刺叉で貫こうとしているのが見えた。
 メドーサがこれを使えることを知らなかった小竜姫さんの反応が1歩遅れる。でも私は知ってた、だからそう、こんなこともあろうかと! ヨコシマが美神さんのしばきで気絶してるときにひそかに出て来て練習しておいた技。
「ヨコシマならサイキック・フィールドとでもつけるかしらね」
 メドーサの術が発動する直前に私は七枚羽の盾(?)を卵型に出現させて全身を覆い、そのままメドーサに体当たりした。ダメージは大したことなくても予想外の衝撃でメドーサの体勢が崩れる。その間に小竜姫さんも超加速を発動して追いかけ、メドーサの肩口を神剣で切り裂いた!
「ぐあっ!」
 メドーサがもんどりうって地面に落下し、集中が途切れて超加速が解ける。とっさのことで集中が足りなかった小竜姫さんもいったん解除して着地した。
「くっ、貴様、どうして……」
 2人とも不思議そうね。私が超加速なんて使えるわけないもの。その通り、私はそんな技使ってないわ。
 超加速というのはその名のように自分自身を高速化する技じゃなくて、周囲の時間の流れを遅くすることで相対的に速く動いてると感じさせる技。だから術者の力の影響を遮断すれば術の効果も及ばなくなる。
 もちろん今の私とメドーサの霊力には桁違いの開きがあるけど、周囲全てに効果を及ぼそうとするメドーサに対して、自分だけを守ればいい私はずっと少ないエネルギーですむというわけ。ちょっとでも盾に穴が開いたらその瞬間にくらっちゃうけれど。
「何が起こったんですかね?」
「心眼がメドーサの超加速を破ったのよ。……おそらくね」
「超加速って、韋駄天がやってたあれっスか?」
「ええ、どうやってかは分からないけどね。あんたらってほんとに規格外だわ」
 後ろでヨコシマと美神さんがのんびり評論している。ピートさんと伊達さんも疲労困憊ながら何とか立っていた。
「で、どうします? 俺達も加勢しますか?」
「メドーサと直接やり合うには装備が足りないわ。超加速にはついてけないし、とりあえず見てましょう」
「はい」
 そうね、その方がいいわ。私もそろそろエネルギー切れだし。
「それじゃ小竜姫さま、後はお任せします」
「いいでしょう。お手柄でした心眼」
 身体がブレ始めた私を見て小竜姫さまは頷き、キッとメドーサを睨みつける。
「私も時間がありません。速攻でカタをつけます!」
 再び超加速を発動して、
「最大パワー……沈めッ!!」
「くそっ……!」
 メドーサも超加速を発動するけど、負傷して冷静さも欠いた今の彼女じゃ小竜姫さまに及ばないわ。
 バンダナに戻った私には見えなかったけど、たぶん2、3回の激しい打ち合いの後で――メドーサは事切れて地面に倒れていた。

「勝った……わね」
 あまりに戦いが熾烈だったせいか、少しほうけたような表情で呟く美神さん。
「ええ、今回の件では本当に助かりました。ところで――」
 小竜姫さんはふっと言葉を切って、
『――――心眼。あなた、何者ですか?』
 突然私に鋭い念話を向けてきた。その表情にあるのはすでに疑惑ではなく確信。分かってるわ、あそこまでやったらもう言い逃れはできないってことは。
『あなたが心眼である事は確かですし、あなたの『身体』からは横島さんの霊力も感じました。でもそれだけであんな事が出来るはずはありません。それにあなたの態度は横島さんの事を前から知ってたとしか思えませんし』
『…………』
 誤魔化しは許さない、という言外の意志がひしひしと伝わってくる。ときどきギャグに落とされてはいるけど、やっぱり彼女は竜神族でも上位の武神だった。
 でも殺気は感じない。この念話も私だけに伝えて、2人だけの事にしようとしてくれていた。
『……はい。望んでこうなったのではありませんが、あなたがつくる心眼とは別の存在――だと思います。少なくとも、魂のあり方は違います』
 できる限りの誠意をこめて静かに答える。
『今はまだ、正体は話せません。でも人界や神界に害を加える気はありませんし、ましてヨコシマに手出しなんかしません』
『…………』
 小竜姫さんは少しだけ間を置いた後、
『分かりました、あなたを信じましょう。心眼というのは私の娘のようなものですからね』
『それじゃ……』
『ええ、横島さんのことは任せましたよ。できればもう少し節度ある行動をするように教育してくれると助かります』
 微笑んで、そう言ってくれた。
『えっと、それはちょっと……』
 それは神にも魔にも困難すぎる要望。お互い苦笑して、内緒話を打ち切った。

「あの〜……小竜姫さま?」
 黙り込んだ小竜姫さんに美神さんがいぶかしげに声をかける。小竜姫さんははっと振り向いて、
「いえ、何でもありません。私ももうエネルギーが少ないのでこのまま……いえ、とりあえず外に出るまでご一緒しましょう」
 そう言って角の姿になると美神さんの掌の上に落ちた。美神さんはそれをポケットに入れた後、
「ところで横島クン。ちょぉっといいかしら?」
 依頼を成功させ、宿敵も討ち果たされてご機嫌なはずなのに、何故か背後に般若を浮かばせつつヨコシマに話しかける。
「はっ、はいっ!! な、何事でございましょうか」
 反射的に背筋をピーンと伸ばして答えるヨコシマの襟をにこやかな笑顔で締め上げながら、
「あんたその三角巾とどういう関係なわけ? 何をしたのか洗いざらい吐いてもらうわよ」
「あ、そーです、そーでした! 愛し合ってるとかおまえの女だとかどーいうことなんですか?」
 あ、おキヌちゃんまで参戦してきた。
「横島お前……?」
「横島さん……?」
 伊達さんとピートさんの視線もちょっと痛そうだ。ヨコシマが恐慌して、
「し、知らん! 俺は何もしてない! 俺は無実や、バンダナに聞いてくれーーー!!」
 ほんとにその通りなんだけど――こういうときにヨコシマの主張が聞き入れられた試しはないのよね。
 ごめんヨコシマ、エネルギーが切れた私にはおまえを助けられないわ。
 まあいつも通りの折檻で終わりでしょうし、その分は後で私がサービスするから、ね?
 愛してるわ、ヨコシマ。


 ――――つづく。

 あとがき

 ルシオラ大活躍……すぎかな?(^^; ピート影薄いし。
 超加速をこの方法で破れるかどうかについては公式の見解が分かりませんので、このSSではこうだという事でご理解下さい。
 ではレス返しを。

○貝柱さん
>横島くんが式神使い呼ばわりされてますが・・・
 式神使いというのは蔑称ではないと思いますが、まあ事情を知らない人から見ればそういう風に見える、ということで。
 あと師匠はその3人ですー。
>次回、マジメに戦うのかギャグって戦うのか・・・どっち?
 当人達は大真面目なんですがやってることは(^^;

○具注さん
>魔界陣地形成で魔族のルシオラ式神はパワーアップですかね?
 ルシオラは強くなりますが他の人が皆弱くなるので差し引きはマイナスでしょうね。

○皇 翠輝さん
>原作者は『栄光の手』の由来を知ってて出したんでしょうかね?
 どうなんでしょうねぇ……ブラックユーモアなのかも知れませんし。

○ジェミナスさん
>極楽愚連隊の宅配便
 ルシオラと小竜姫が参加したから要らなかったです……というかそんな大人数バトル描き切れませんし(ぉ
>陰念
 結局生き残ってますねぇ……再登場できるかどうかは不明ですが、出ない方が幸せかも(マテ

○ト小さん
>「挑発」ですよね・・・
 はい、そうも思ったのですが今回のルシオラと比べるとおとなしいものだったので……いやルシオラが性悪なんじゃなくてあくまでも作戦ですよ?
 横島君の成長……原作でもテーマの1つでしたねぇ。

○切兜さん
 はい、これからも宜しくお願いします。

○ももさん
>学校とかでもルシオラのせいでセクハラ働けないから、横島君の評価がよくなってたりするのでしょうか?
 そうですねぇ。出席日数も増えてますし、ポイント上がってそうです。
 その分彼の欲求不満は溜まってそうですがw
>いや、それも血を見るような気がしますがw
 彼の場合誰を選んでも血を見るのは変わりませんし(ぉ

○遊鬼さん
 今回何とか決着です。
>強めのゾンビ
 んー、描写が足りなかったでしょうか。
 これは原作であったキョンシー技術を応用したやつです。原作見ると横島君が戦ったのはそのタイプではなさそうだったのでああなりました。

   ではまた。

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