インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

「GSルシオラ?復活大作戦!!第6話(GS)」

クロト (2005-10-15 13:26)
BACK< >NEXT

 それからのヨコシマとの生活は順調だった。
 時給は据え置きだったけど、初仕事をこっそり見に来ていた美神さんが私達の除霊をけっこう評価してくれて、(私が期待してた通り)これからも仕事を回してくれることになったのだ。どうもピンハネしてそうな形跡があるけど、まだ高校生のヨコシマがあまり大金持つのも何だしね。
 まあそれで収入が増えた分バイトの時間を減らせて、学校にも行けるようになった。美神さんは気に入らないようだったけど、もともと学生の本分は勉強なんだから文句は言えなかったわね。私は24時間いっしょだからいいけど♪
 修行もしてくれてる。ヨコシマは伊達さんみたいなマニアじゃないしそんなに暇があるわけじゃないけど、煩悩パワーは偉大ね。
 とはいえ文珠や霊波刀のような特殊な技能を私が開発させることはできないから、すでに使えるソーサーのより有効な使い方を指導することにした。こういう修練を通じて霊力も上がるはずだわ。
 まずは空中でのコントロール、その次は爆発の制御ね。『前』の私には縁すらなかった技だけど、これは心眼として存在してる私の新しい能力。

 そんなある土曜日のお昼過ぎ、私達が学校から帰ると美神さんからの電話があった。
「……あ、美神さん。どうしたんスか?」
「横島クンね。休みのとこ悪いんだけど、すぐ来てくれないかしら。何なら時給倍出すから!」
 切羽詰った様子で自分から給料アップを口にする美神さん。これは相当な事件ね。ヨコシマもそう思ったようで、
「な、何かあったんですか美神さん!?」
「いや、別にそういうわけじゃないけどとにかく早く……!」
「わ、分かりました」
 というわけで急ぎ出勤した私達の前にいたのは、美神さんとおキヌちゃん、それに初めて見る3〜4歳くらいの少女だった。
『……?』
 少女はおもちゃで遊んでいる。おキヌちゃんはいつも通り平和そうだ。美神さんだけが疲れきった様子で顔に井桁を浮かべている。でもこの状況の何がそんな緊急事態なのかしら。
「えっと、何があったんスか?」
 ヨコシマが当然の疑問を口にした。美神さんは答える元気もないようで、おキヌちゃんが代わりに、
「昨日の夜美神さんのお母さんが来てこの子を預けて行ったんですよ」
「美神さんのお母さん!? そう言えば子どもの頃の美神さんにそっくりだ!」
 何でそんなこと分かるのかしら。『前』に私が聞き損ねてた事件でもあったのかしらね。
 で、美神さんの補足によると、この子は子どもの頃の美神さんで、美神さんのお母さんは過去から時間移動で来たらしい。魔族に狙われている彼女を守るため、現在の美神さんに預けて行ったというのだ。
 時間移動……ああ、美神さんのお母さんって『前』に会った隊長さんよね。それで分かったわ。でも魔族ってアシュ様がらみかしら。いえ、アシュ様が美神さんをメフィストと断定したのは逆天号と隊長さんが戦った事件より後だからそれはないわね。
 私がそんな思索にふけっていると、
「子どものキンキン声聞きたくないーっ! 寝かしつけるのもごはん食べさせるのも遊んでやるのもイヤ! ママ早く迎えに来てよ!!!!」
 おがーん!
 泣き喚く美神さん。それで私達を呼んだのね。でも子どもってこの人の方じゃ……。
 とりあえず少女――れーこちゃんを私達に押し付けて多少余裕が出来たのか、電話機の方に歩を進め、
「もしもし、東都大学動物行動学教室? 美神公彦をお願いします。いえ、私美神教授の娘です」
 ……。
 話の後、美神さんはその東都大学という所に出掛けると言い出した。れーこちゃんも行きたがったけど、この事務所の建物に宿る霊――『人工幽霊一号』が昨夜ここの結界に侵入しようとした妖怪がいたと報告してきたため、急に緊張感を増した美神さんが、
「事件のことがわかるまでは絶対外に出ちゃ駄目よ!」
 ということで、私達4人は留守番ということになった。ここに入れなかったというのだから、確かにここにいた方が安全でしょうね。
 …………
 ……
 ヨコシマはれーこちゃんの相手をして遊んであげていた。れーこちゃんはすっかりなついて楽しそうだ。将来私とヨコシマの娘が出来たらこんな光景を見られるようになるのかしら? 魔族ハーフ云々は置いとくとして。
 コツコツッ。
「あれっ? 鳥だあ……!」
 事務所の窓に小鳥が何羽か張り付いているのをおキヌちゃんが見つけた。ヨコシマが近づいても逃げなかったのに、れーこちゃんが来た途端ばたばたと飛び去っていった。
『何か変ね……?』
 感じた違和感に小さく呟く。と、その窓からOL風の若い女性が事務所の前にいるのが見えた。
 美人の出現に反射的に出て行こうとするヨコシマ。
『待ってヨコシマ!!』
 強い声で制止する。不思議そうに私を見上げたヨコシマに、
『何か怪しいわ。さっき美神さんが魔族って言ってたでしょ。魔族には人間の姿に化けられる者もいるわ』
「あいつがそうだって言うのか?」
『自信はないわ。でももし彼女がそうならここには入れないはず……』
「じゃ、ちょっとここで見てましょうか」
『そうね、それがいいわ』
 おキヌちゃんの提案に頷いて4人でしばらく窓から覗いていたけど、やはり女性は敷地内に入ろうとはしてこない。腹立たしげに周囲をうろついている。
「怪しいな……やっぱりあいつが妖怪か?」
『そうね。美神さんが戻るのを待ちましょう』
 この結界に入れない位だから彼女は魔族としては高位じゃないけど、今の私達が相手をするのは無理ね。せめて正体が分からないと危険すぎるわ。
 そこへ美神さんの車が猛スピードで駆けつけてきた。それを見た女性の姿が急にぶれたかと思うと、魔物――ハーピー(人面鳥)に変身する!
『やっぱり!』
「きゃ……妖怪!?」
「おおっ、ちちしりふとももー!」
『それどころじゃないでしょヨコシマ!』
 彼女は人間に近い姿をしていたが、両腕は翼になっていた。上半身は羽毛で覆われていて下半身は脚を露出している。そんな格好だから体型は丸わかりで、確かに胸は大きめだけど、それが何……もとい。今はそれどころじゃないわね。
「ちっ、もう来たじゃん! しょうがないから相手してやるじゃん!!」
 ハーピーが翼を羽ばたかせて空中に舞い上がる。そしていったん振り上げた腕を思い切り振り下ろすと、そこから羽が1本、凄いスピードで撃ち出された。
 あれがハーピーの武器!?
 美神さんはとっさに上体を傾けて攻撃をかわす。羽はシートに深く刺さって大きな穴をあけた。
「やってくれるじゃない! でも間に合ったみたいね。今度こそ逃がさないわよ!」
「チッ! まあいい、次は外さないよ!」
 霊力はそこそこだけどあの羽は危険だわ。外に出て援護しに行く暇はないし、むしろそれは危ない。
『ヨコシマ!』
「おうっ! いけぇホーミング・ソーサー!」
 私の意図を正確に読み取ったヨコシマが窓をあけてソーサーを投げる。今のヨコシマは投げた軌道を急角度に曲げることはできないけど、多少遠くても目標に当てる程度の変化を与えることはできた。相変わらずのネーミングは何だけど。
 どがぁっ!
「ぐうっ!?」
 2発目を放とうと腕を振り上げた所へ側頭部にソーサーの直撃を受け、さすがに空中でよろめくハーピー。
「ナイスよ横島クン!」
 その隙を逃す美神さんじゃない。霊体ボウガンの矢が腹に突き刺さる。
「ぎゃっ!!」
 ハーピーは悲鳴をあげて落下したけど、立って着地する力は残っていた。でももう勝負はついたわね。
「とどめじゃー!」
「悪魔よ退け! 生まれ出でたる暗き冥府へと帰るがいい!!」
 2枚目のソーサーと美神さんの退魔護符を受けて、
「くそっ……でもこれで終わりと思うんじゃないよ。いずれ次の刺客が……」
 捨て台詞を残しつつ、光に飲み込まれるようにして消えていった。
 …………
 ……
 夕方になって。嵐になってたけど、隊長――いえ、美智恵さんが事務所を訪ねてきた。
 彼女とは『前』で色々あったけど別に恨んではいない。戦った事もあるしヨコシマをスパイにされた事もあるけど、私にとって結果的には良かったし、彼女もヨコシマに悪意があったわけじゃないから。それに南極の戦いの後ではずいぶんお世話になった。
 といって、今話をするのは避けた方がいいわね。
 私は眼を閉じてただのバンダナのふりをした。
 美神さんと美智恵さんが話をしている。美神さんがれーこちゃんを返し、美智恵さんは昨日からのことを尋ねた。
 私達がハーピーを倒したと聞くと、美智恵さんはにっこり笑って美神さんを誉め、
「そう、ずいぶん強くなったのね、うれしいわ。本当はしばらくここにいたいけど――時間がないの。あなたはもうママがいなくても自分の力で立てるわね?」
 私は見たことがないけど、これが母親の表情というものなのだと思った。
「ええ、ママ……」
 美神さんは少し目元を潤ませつつも笑顔で答える。
 美智恵さんも満足そうに微笑んで、
「じゃあね、令子……」
 建物の外に出て、落ちてきた雷といっしょに消えていった。


 ――――つづく。

 あとがき

 ハーピー編、大きな見せ場もなく1回で終わってしまいました(^^;
 途中の美神VSハーピーは原作通りということで(ぉ
 ルシオラの隊長への感情はここではこういう感じです。横島と結ばれなかったことに納得はしていなくても、霊基構造を譲った結果は彼女自身の選択によるものなので誰かを恨んでいるわけではないのです。隊長が過去に戻ったあと何もしなかった云々については小竜姫との約束がありますし、第一ルシオラがそういう事を期待するとも考えにくいですから。
 あと前回の補足を少し。ルシオラの「彼の理想像が反映されたんだと思います」という台詞は100%嘘です。小竜姫へのごまかしであると同時に、自分の姿が横島の理想の女性像だったらいいなぁ、という乙女心の表れですね。その後の冷たい視線=美神、恨めしげな視線=おキヌです。胸のサイズは関係なく単なる嫉妬です。何で自分の姿じゃないのか、と。
 ところで、美神の中にエネルギー結晶があることっていつアシュタロスにばれたんでしょうねぇ。というかなぜそのことを政府が知っていたのかが不思議です。
 ではレス返しを。

○黒覆面(赤)さん
>しかし所詮横島。ある程度の成長で止まるのでしょうか?
 ネタバレ規制ではありますが、ワイルドカード属性は当然維持しますです。

○ももさん
>やっぱりInterlude(ぉ とか入れたほうがいいような気がします
 うーん、展開によっては確かにそうかも知れません。
 初仕事の話は美神が出ないとオチがつきませんし。とりあえず今回の冒頭でフォローしました。

○貝柱さん
>「自分の創った心眼とは違う存在が入り込んでる」ってことで
 相手が横島ですからねぇ。
 それに今までに何度か心眼つくって彼らと話をした事があるのならともかく、おそらく滅多にないことでしょうから。

○暁さん
 あああ、大切な読者様が自滅していく(ぉ

○遊鬼さん
>心眼(ルシオラ)が健在って言うのもあるんでしょうが原作よりもしっかり成長してますね^^
 それが彼女の仕事で目的で手段ですから♪

○ジェミナスさん
>給料が出来高制になってるって訳ですか
 非道にも96%ピンハネされましたが……。

○ゆんさん
>いつも、シリチチフトモモといってる横島の理想
 えーと、上記の通りあの台詞はルシオラの嘘でございますので……。

   ではまた。

BACK< >NEXT

△記事頭

▲記事頭

PCpylg}Wz O~yz Yahoo yV NTT-X Store

z[y[W NWbgJ[h COiq [ COsI COze