<忠夫>
学校からの帰り道、銀ちゃんとなっちゃんと別れて家に帰ろうとした時、少し遠くでかなり高い霊圧を感じた。お姉ちゃんが言うには僕の霊圧も結構高いらしいけど、あの感じは僕よりもずっと大きく感じる。……悪い妖怪さんかもしれない。
少し怖かったけど、僕は力を感じた場所へ向かうことにした。
そこは公園で、そこには……。
「ふえ〜ん!」
……泣きじゃくっている僕より少し学年が高いだろう女の子と、その周りを暴れまわってる怪獣さんたちがいた。
ちなみに公園はほとんど壊滅していた……。
「ふえ〜ん!」
妙神山のただおくん〜小学生のただおくん とっくんしよう!〜
<冥子>
ふえ〜ん。怖いわ〜怖いわ〜。どうしてこういう時にフミさんはいないの〜。怖い人に声を掛けられてとってもとっても怖かったんだから〜。
こういう時にお友達がいたらきっと怖くても耐えられるかもしれないのに、私にはいないの〜。式神のお友達がいるけど、みんなはずっと出ていられるわけじゃないし〜、それに心は分かってもおしゃべりしたりできないわ〜。
人間のお友達は欲しいけど〜、みんなを見せたら怖がって私から離れていっちゃうの〜。この子たちは怖くなんかないのに〜、大事なお友達なのに〜。
私の親戚の子供たちは恐れたりしないけど〜、その子たちは何だか笑顔が気持ち悪いの〜。私を私として見てくれてないの〜。そんなのお友達じゃないわ〜。だからそんな子たちとはお友達にはなれそうにないの〜。
それに私が泣いたら式神たちが驚いて、周囲一面焼け野原にしてしまうから〜、例え純粋にお友達になってくれようとしてもそれを見て離れていっちゃうの〜。
だから冥子にお友達はいないの〜。考えたらまた悲しくなったわ〜。もっと泣きたくなっちゃうわ〜。そう思ってまた泣こうとした時〜
「ふ、ふ、ふえ……」
「どうして泣いてるの、お姉ちゃん?」
その子は現れたわ〜。
「ほら、大丈夫だよ。怖くなんかないから」
そう言ってその子は私を抱きしめて、頭を撫でてくれたわ〜。私より年下みたいなのに、とっても暖かくて気持ちいいわ〜。そういえばお母様以外の人が私の頭を撫でてくれたのは何年ぶりかしら〜。
「大丈夫、お姉ちゃん?」
その子は心配そうに聞いてくるの〜。よく見たら擦り傷だらけだわ〜。きっと式神たちが驚いている所を通って私の処へ来たから〜、怪我しちゃったのね〜。
「ごめんなさい〜。怪我させちゃったわ〜」
「ん? 大丈夫だよ。小竜姉ちゃんとの修行でこれぐらいの傷は結構慣れてるからね」
でも怪我させてしまったことに変わりはないわ〜。ごめんなさい〜。
それにしても凄いわ〜。私が泣いちゃうとプロのGSでも逃げるしかできないのに〜、この子はそれを潜り抜けてきたわ〜。
「あなたお名前は〜? 私は六道冥子っていうの〜」
「僕? 僕横島忠夫。お姉ちゃんなんで泣いてたの?」
私はこの子に事情を話したわ〜。だってとっても優しい声と表情をしているんですもの〜。私は変な男の人に声を掛けられたこと〜、私は泣いちゃうと式神たちがびっくりして暴れちゃうこと〜、そのせいで他のお友達ができないことを喋ったの〜。
きっとこの子も私を怖がると思ったわ〜。だって式神を知っている親戚の子たちだって私を恐れたんだもの〜。でも私はこの子なら怖がってくれないとも思えたの〜。だから話したわ〜。
「そっか。じゃあ、僕が友達になってあげるよ!」
その顔は〜、私を怖がってたり〜、愛想するためだったり〜、嫌がっている顔じゃなかったわ〜。本当に、心の底から私と友達になりたいと思ってくれてる笑顔だったの〜。
「ありがとう〜。冥子嬉しいわ〜」
冥子、この子を信じて良かったわ〜。
<忠夫>
怪獣さんたちの中心にいるのは、ちょっとのんびりしたお姉ちゃんだった。なんとなくキヌ姉ちゃんに似ている気がする。雰囲気とか。
事情を聞いて、僕がお友達になってあげるって言ったらとても喜んでくれた。それはこのお姉ちゃんの顔が、昔ちょっとしたことで寂しくなっていた、置いていかれることに恐怖していた頃の僕に重なったからかもしれないし、それ以上にこのお姉ちゃんとただ友達になりたかったからかもしれない。多分両方だと思う。
でも僕がお友達になっても根本的な解決にはなりそうもない。学年も学校違うだろからずっと一緒に居られるわけではないし、何より他にも色々なお友達を作って欲しい。
どうしたらいいんだろ? う〜ん、う〜ん。
あ、そうだ。
「ねえ、冥子ちゃん。特訓しない?」
「特訓〜?」
「うん。特訓して式神たちが暴そ……驚かないようにすれば、お友達ももっとできるかもしれないよ」
「でも〜、冥子特訓の仕方なんて分からないわ〜」
「大丈夫だよ。僕、こう見ても一応お姉ちゃんに霊能の訓練受けてるから、基礎的なことなら教えられるよ」
冥子ちゃんはどうやら悩みはじめたようだ。
<冥子>
私は〜、訓練したりするの嫌いなの〜。だって頑張っても辛いだけなんですもの〜。
でもこの子との訓練なら楽しいかもしれないわ〜。
「分かったわ〜。横島くんがそう言うなら〜、冥子頑張る〜。それでまずは何をすればいいの〜?」
横島くんはう〜んと考え出したわ〜。何か一生懸命考えている姿は可愛いわ〜。
トクン。あれ〜横島くんを見てたら、今胸が変な感じがしたわ〜。なんでかしら〜。
今まで感じたことのない感覚だわ〜。何かしら〜。
そうか〜、きっとこれが師弟の絆というやつね〜。熱いわ〜。
やがて横島くんは顔を上げたわ〜。
「そうだ。ちょっとやそっとのことじゃ驚いてプッツンしないように、落ち着いた心を持てばいいんじゃないかな」
「そうね〜。それがいいと思うわ〜」
「それじゃまずは瞑想してみようか。これは心だけじゃなく霊能力も安定させることができるよ」
「瞑想って、なにすればいいの〜?」
私知らないわ〜。
「う〜ん、小竜姉ちゃんは心を無にするとか何とか言ってたけど。冥子ちゃんなら最初は何か楽しいことを思い浮かべたらどうかな」
「そうするわ〜」
楽しいことってなにかしら〜。そういえば昔家族みんなで海に行ったことがあるわね〜。あの時はとっても楽しかったわ〜。辺り一面は海で〜イルカさんやクジラさんもいるの〜。あ〜クジラさんが私の所に来たわ〜。私はクジラさんに乗って海を行くの〜。空を見上げたら〜星がいっぱいだわ〜。
あら〜、星の光とは別の光が見えるわ〜。あれは〜、核の光だわ〜。私はクジラさんで宇宙へ行くの〜。行ってみたら〜、そこではロボットさんたちが戦ってて〜、大きな隕石が落下しかけてたわ〜。大変大変〜。このままじゃ地球に核の冬が来るわ〜。
あ〜、ディアッカがやられたわ〜。あれ〜、よく見ると白いロボットが一機で隕石を押し返そうとしてるわ〜。冥子も手伝わなきゃ〜。
うんしょ、うんしょ。私が頑張ってると〜、急に目の前の隕石が爆発したわ〜。きゃ〜。助けて〜。
クジラさんとはぐれて宇宙を彷徨ってたら、声が聞こえたわ〜。
「……ちゃん、い子ちゃん」
この声に導かれて〜、私は帰るわ〜。
「冥子ちゃん、冥子ちゃん! 寝ちゃ駄目だって! 起きてよ〜。これじゃ特訓にならないよ〜」
「むにゃむにゃ。大丈夫よ〜。私には帰る場所があるもの〜。こんなに嬉しいことは無いわ〜」
「冥子ちゃ〜ん、起きてー!」
おまけ
<小竜姫>
はっ!?
ぱりーん。
あら、食器を洗っていたらコップを落としてしまいました。
「珍しいのね〜。小竜姫がコップを割るなんて〜」
「ええ、なぜだか忠夫くんに悪い虫がつく嫌な予感がしたもので」
それに、こうでもしないと私今回の出番は名前しかないですから。それに微妙に最近出番が少ない気がしますし……。
「小竜姫はまだいいのね〜。私なんて自分が視点になったことすらないのね〜。老師や銀一くんでもあったのに〜」
しくしくヒャクメが泣いてましたが、当然のごとくほっときました。
続く
アンケート結果は後半追い上げていたユッキーから逃げ切り、冥子ちゃんに決まりました。それにしても7,8の二話でレスが自分のを除いても九十越え、単純なレスの数は百件を越えました。皆様には感謝してもしきれません。
さて、今回は前半あまり壊れはなく、全体的にほのぼのした空気が漂っていたと思いますが、それだけだと壊れ表記がいらないのでガンダムネタを後半大量投下しました。
ですがただのネタではなく、実はこれ、冥子の心の動きを表してもいます。
ところでおキヌちゃんの蘇生ですが、話の展開によっては生き返ることも考えていますが、多分大分後の話で、それまで連載が続くどうかはっきりいって微妙です。だから最初は生き返る話を書かないっと言ってたんです。ですから連載がもっと続けば生き返る話を書くかもしれません。その場合、老師か宮司がこっそり体を保護していたとか……。
さて、次は冥子ちゃん編第二段です。小竜姫様の出番が少ないとお嘆きの方はもう少しお待ちください。もう少ししたら暴れまくってもらいますから。
ではこの辺で。
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