<夏子>
私には好きな男の子がいる。その子は幼稚園の頃からの幼馴染で名前は横島忠夫。愛称はよこっち。少しとぼけた、でも優しくて一緒にいると気持ちがとっても安らぐ子。幼稚園に居た頃はただ一緒にいることが嬉しかっただけだったが、小学校に入ってからはそれだけでは少し物足りなくなってきた。
気付いてないだろうけど、よこっちは結構モテる。同じクラスに銀ちゃんっていう美形の幼馴染がいて彼もモテるが、実はよこっちも相当にモテる。よこっちは顔は確かに絶世の美男子というタイプではないが、よく見れば顔立ちは整っているし母性本能をくすぐる可愛らしさ、それに裏表のない素敵な笑顔がある。それに加えて運動能力は異常と言ってもいい程高いので、モテないはずがないのだ。
だが私にはライバルが他に居る。正直、同じクラスの子達には負けるつもりは全くない。このクラスで一番よこっちと一緒にいた時間が長いのは間違いなく私だからだ。
ライバルは別に居る。
その名は……
「忠夫さん♪ 泥だらけですからお風呂に入りましょうね♪」
「え、い、いいよ。もう一人で入れるから」
「駄目ですよ。さ、スミズミまで洗ってあげますから」
「なんでそんなに凄い嬉しそうなの!? っていうか銀ちゃんもなっちゃんもいるんだよ!?」
「関係ありません!」
「もう、勘弁してよ、小竜姉ちゃん!」
――小竜姫という。
妙神山のただおくん~小学生のただおくん らいばる~
<忠夫>
事の発端は僕が銀ちゃんとなっちゃんを僕の本当の家である妙神山に招いたことだったんだ。絶対にこの部屋から妙神山に行けるってことを口外しないことを条件に、連れてくることを許可してもらった。本当は鬼門を倒さなければ入っちゃいけないんだけど、あくまで二人は僕が呼んだ客人だからいいんだって。二人とも鬼門を初めて見たときは凄い驚いて、泣いてた。
そんなに怖い顔かなあ。鬼門が凄く落ち込んでいたので、よしよしと慰めておいた。
その後三人で外へ出て、山の中を探検した。あまり危ないから遠くへ行くと危ないから、すぐ近くだけだけど。でもとてもいっぱい遊んだので三人とも服も体も泥んこになってしまった。妙神山には温泉があるからそれに入って泥を流そうとしたんだけど……。
「さ、早く! 久しぶりに一緒に!」
お姉ちゃんは目を血走らせて僕の服を脱がそうとする。お姉ちゃんは大好きだけど、時々暴走するからちょっと困る。銀ちゃんもなっちゃんも見てるのに。
お姉ちゃんと一緒にお風呂入るのは嫌いじゃない。
一緒にお風呂に入るのはちょっと嬉しい。
でもちょっと恥ずかしい。
「おばちゃん! いやや言うもんを無理強いさせたらあかんのちゃうか!」
あっ、なっちゃん、それは禁句……。
「……何か言いましたか? お子様の夏子さん?」
「お子様って、そんなお子様な胸のあんたに言われとうないわ。なあ、小乳姫さん?」
「あらあら、そんなブラを付けたらまっすぐ落ちてしまいそうな胸の人が何を言っているのかしら? いいですね~、着ける必要の無い人は。結構大変なんですよ? 締め付けられる感覚って? まああなたには縁のないことですが」
「はん、何言うとんのや。私がまだまだこれからやで。どっかのもうすでに成長が終わった人と違ってなあ」
「ふふふ」
「ははは」
ゴゴゴゴゴと凄いプレッシャーが二人の間に渦巻く。どうして二人はこうも仲が悪いのだろう?
二人の背中に炎を吐く竜と鋭い牙を持つ虎がけん制し合っている光景が見えるのは気のせいだろうか。
……お願いだから気のせいであってくれ。
「よこっち……。俺腹が痛うなってきた……」
「奇遇だね銀ちゃん。僕は今にも死にそうだよ……」
僕は二人とも大好きなんだけどなあ。
<夏子>
「それじゃあ泥だらけの忠夫くんをどうすればいいのですか? このままにしろと? 言っておきますが忠夫くんはまだ一人でお風呂に入ったことがありませんよ?」
なっ! このブラショタコンめ! くっ、つまり今まで毎日そんな美味しいことを! よこっちの背中を流したり、シャンプーハットをしてるのに目を瞑ってるよこっちの髪を洗ったり、よこっちのまだ可愛らしいあそこを丹念にしっかりとそれはもうスミズミまで……。
ハアハアハアハア……落ち着け私。大丈夫、まだよこっちは純潔のはず! これから私がよこっちを清く正しい世界に導いてやればいい。
そう、全てはよこっちと私の青き清浄なる世界のために!
「じゃ、よこっちは私が洗ってあげるわ。大丈夫、私こう見ても妹と弟がおるから洗ってあげるのは大得意やで!」
「なっ、そんなの許しません! 不純異性交遊は非行の始まりです! ここはいつも洗ってあげてる姉であるこの私が……」
「そっちの方が不健康やないか! 大体私とよこっちはあんたがさっき言うたようにまだ子供やで。不純異性交遊もなにもないやろ」
……ナニはあるかもしれんけどな。
「くっ……! ならばどちらと入りたいか本人に決めてもらいましょう! 忠夫さん!」
「よっしゃ! それでいこうやないか! よこっち!」
私と小竜姫はよこっちがおった後ろを振り向いた。
……が
「「あれ、忠夫さん(よこっち)は?」」
<銀一>
「ほらよこっち、目瞑りいや」
「うん」
ざばあっとお湯をよこっちにかけてやる。二人をほっといて温泉に入ったが、とても気持ちいい。よこっちは頭を洗うのが苦手らしいので、俺が洗ってやった。
ぶるぶるぶるっとよこっちが頭を振って水を切っている。
「さんきゅー、銀ちゃん」
まだ目を瞑ったままのよこっちが言う。
「ま、これぐらいはな。お風呂ごちそうになったんやし」
「でも、僕頭洗うの本当に苦手だったんだ、だからありがとう」
よこっちはニカっとクラスの女子が赤面するような裏表のない笑顔を向けた。
「違う! 俺はノーマルや! 俺は夏子が、夏子一筋なんやー! くらっとなんかしとらへん! 絶対絶対違うんやー!」
ガン! ガン! ガン!
「ど、どうしたの銀ちゃん!? 急に柱に頭をぶつけだして!?」
「違うんやー!」
<小竜姫>
私と夏子さんが声を聞きつけてお風呂に入った時はすでに銀一さんは頭から血を流して気絶、忠夫くんはわけが分からずおろおろしてました。……その姿もプリチーでしたが。
何があったのか聞いても忠夫くんはよく分かっていなかったようですし、目覚めた銀一さんに聞いても、頭を打ったショックで忘れてしまったらしく、なぜ自分が風呂場に倒れていたのかとても不思議そうな顔をしていました。
一体何があったのでしょうか?
続く
こんにちは、大学から帰ってくたくたののりまさです。今回は短編で主役を夏子と銀一にやらせてみましがちょっと短めになってしまった気がします。前回に次は幕間といいましたが、それはもう少し後の方がよいと思ったので今回は短編としました。レスを踏まえて壊れ表記はしましたが、菜の表記はこれぐらいじゃいりませんよね? もし菜表記がいると思ったらおっしゃってください。修正しますから。
ちなみに忠夫くんは最近ちょっとお姉ちゃんたちと一緒にお風呂に入るのが恥ずかしくなり、ここ一週間ぐらいは老師と一緒に入っていました。小竜姫の発言はそれを踏まえてですので。
さてそろそろ他のGSキャラを出そうかと思います。そういえば原作でGSだった人はまだ忠夫くんしか出てないんですよね。
そこでアンケートです。今度出て欲しGSキャラのアンケートをしますので、次の中から一人選んでくれると嬉しいです。
1.ぷっつんしたら魔王でも止められないのほほんお嬢様。
2.お金が世界を動かすと豪語する意地っ張りな赤毛の少女。
3.体を鍛えるのが三度の飯より大好きなスーパーマザコン男。
この三つから選んでくれると嬉しいです。募集期間はだいたい明後日の午後六時くらいまで。多分次の次の話ぐらいに出てくると思います。
一応どれも大体の話は考えているのでやっつけにはならないので安心してください。
それではこの辺で。
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