(元はと言えば私がメドーサ達を止めていればこんな事にはならなかったんだ・・・・・・・・・すまない姉さん、義兄さん・・・・・・・・・ポチ)
Legend of Devil Vol.10 Accident その1
「やぁ、ウチの義兄さんの様子はどうだい?」
「ベスパちゃん!!」
「お久しぶりですねベスパ」
「おぁ、今日は任務で来てるんでね、あたしの上官とその弟と一緒にさ」
「小竜姫、横島の様子はどうだ?」
「今」
「ワルキューレ!」
「どの」
「どの位経った?」
「くらい・・・・・・・・・」
「今日で丁度1ヶ月です。 中では後一週間と言ったところですね」
「それ」
「それでは異変があるとすればそろそろと言うところか」
「・・・・・・・・・はい」
「姉上! 僕にも横島さんの現状を聞かせてください!」
先程から言葉を邪魔され続けていたのはジークだった。悲しいかな個性は強めだがGSキャラの中ではどうしても影が薄くなってしまうのだった。
「何か文句があるのか?」
「い、いえなにも・・・・・・・・・」
ワルキューレの鋭い眼光がジークへと突き刺さる。悲しいかな姉には対抗向出来ないジーク。いずれ結婚しても妻の尻に敷かれる事請け合いだ。
「ふふ、相変わらずのようですね」
「任務って何?」
「なんだこの娘は?」
「横島さんの事務所のメンバーでタマモさんです。 そして人界で横島さんの現状を知る唯一の女性です」
そう小竜姫に紹介され小竜姫の後ろから軽く会釈をするタマモ。
「コイツか、軽率な行動から横島の魔族化の進行を早めた妖怪というのは」
「うっ」
「ワ、ワルキューレ!」
「姉さん言い過ぎですよ!」
一連の事件でタマモが大きく傷付いている事を知っている小竜姫と、いつもと変わらないように見えて普段より棘がありすぎると感じたジークがワルキューレを制止した。
「フン!」
「ところで任務というのは?」
「横島さんの魔族化の確認と、それに伴うであろう魔族の人格の消失の確認、そして横島さんの体をその人格が支配した場合による・・・・・・・・・その魔族の排除なのね〜」
「ヒャクメ! いたんですか」
ズル!
突然のヒャクメの登場に驚くもボケを忘れない小竜姫、さすがだ。
「ひ、酷いのね〜!」
「ところでどうやって調べたんだ?」
「私はヒャクメですよ? これまでの神魔族の動向から推理すれば自ずと分かるのね〜」
「なるほどな」
「ね、ねぇ魔族の排除ってもしかして」
「・・・・・・・・・横島が魔族の人格に食われたときは横島ごとその魔族を殺す」
「だ、ダメよ! そんな事絶対させないわ! それに・・・・・・横島が魔族なんかに負ける訳ない!」
タマモは小竜姫の後ろから飛び出しワルキューレの襟元を掴み言い放った。
バシィ!
「当初の予定通り3年の修行期間があれば横島が生き残る確率はかなり高かったのだ! だが貴様の軽率な行動で横島の魔族化の進行が早まり横島として生き残る確率を下げてしまった事がわからんのか!!」
ワルキューレの平手により吹き飛ばされたタマモ。威嚇するような眼で睨むモノのワルキューレの言葉に何も言い返せなかった。
「ワ、ワルキューレ! 元を正せばメドーサ達が仕組んだ事です! タマモさんは被害者なんですよ!」
「フン!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「? ベスパちゃんどうしたんでチュか?」
「い、イヤなんでもないよ」
ベスパは少し離れたところで俯きながら拳を握りしめていた。
(元はと言えば私がメドーサ達を止めていればこんな事にはならなかったんだ・・・・・・・・・すまない姉さん、義兄さん・・・・・・・・・ポチ)
続く
Legend of Devil Vol.10 Accident その2
妙神山修行場横島専用特殊空間
「横島よ大丈夫か?」
「・・・はい・・・・・・なんとか」
「最近間隔が狭くなってきたのう」
「・・・・・・・・・」
(ヤツの声が聞こてくる。 俺に俺の体を渡せとどこからとも無く聞こえてくるんだ。 次の瞬間体に激痛が走って意識が朦朧としてくる。 常に体が蝕まれていくそんな感覚が俺を襲ってるんだ)
「間もなくお主の中の魔族が覚醒を始めるじゃろう。 おそらく意識下の戦いになるじゃろうがお主の負けは許されんぞ?」
「判ってますよ」
「じゃが心せよ? あの方法は最後まで使うな。 言うなればアレは奥の手じゃお主自身の体が持つか分からん。 どう考えても許容量はオーバーしとるからの」
「・・・・・・・・・ハィ・・・!!!!!?・・・ぅぐ!! ・・・ぐ! ぐあぁぁ!!!!」
「む! 来たか!?」
横島の悶え苦しむ姿はこれまでの比ではなかった。魔族の人格が横島の身体を蝕んでいく。意識が混濁し深い闇に落ちる感覚が横島を包み込んでいく。
「むぅ、魔力があふれ出してきておる・・・・・・・・・やはりアレを使うか。 ヌゥゥゥゥゥゥ、ハッ!!」
斉天大聖は取り出した如意棒を力強く地面へと突き立てた。すると空の色が一変し夜のように暗くなりオーロラが空一面に広がったのだ。
「魔力吸収空間じゃ。 これでヤツの使える魔力は多少なりとも減少するはずじゃ、後はお主次第じゃぞ横島」
「ここは? 前にも来た事があるような?」
横島は何もない真っ暗な空間に降り立っていた。真っ暗でありながらも自分の体はクッキリ見えるというおかしな場所だった。
「少しは強くなったようだな?」
「誰だ!?」
暗闇の中から声が聞こえてくる。どことなく自分の声にも似ている気がするが何処から聞こえるのかさえ分からない。
「この前は闇に捕らわれそうになっていながら今回は平気な顔で下まで降りてきやがった。てめぇ俺が寝てる間に何してたんだ?」
ザッザッザッザと足音を慣らしながら声の主が近づいてくる。その人物の姿が段々ハッキリと見えてくる。ジーパンにジージャン、額に赤いバンダナを付けたその人物の姿は
「お、俺?」
「そう、お前さ。 ただし魔族としてのお前だがな」
「そうか、アンタがみんなが言ってた魔族の人格って訳か」
「そうさ、人間としてのお前、魔族としての俺、1つの体に2つの人格は要らない。 俺は俺である為に貴様を喰いに来たのさ。 さぁ、早く俺に喰われてくれよ! この闇の世界から出るんだ! 早く殺してぇ! 早く壊してぇ! みんなぶっ殺して全てをぶっ壊してそして俺の生きたいように生きるんだ! だからよぅ俺に喰われろ!!」
最後の言葉とともに横島へと襲いかかる魔族横島(以降魔横)右手に魔力で作った爪を5本で横島を切り裂こうとした。
「巫山戯るな!!!」
“剣”
ガキィン!
「なに!?」
霊力集中に言霊を乗せた強化霊波刀で魔横の攻撃を防ぐ横島。
「全てをぶっ壊すだと?」
横島の脳裏に横島除霊事務所、妙神山、氷室神社、美神除霊事務所、そして東京タワーなど今まで過ごしてきた場所や思いである場所が映し出される。
「みんなぶっ殺すだと?」
美神、おキヌ、シロ、美智恵、西条、カオス、マリア、魔鈴、エミ、タイガー、雪之丞、冥子、唐巣、ピート、愛子、小鳩、貧、氷室家の人々、小竜姫、ヒャクメ、ワルキューレ、ジーク、ベスパ、パピリオ、父と母(大樹と百合子)そしてタマモの姿が順に頭の中を駆けめぐる。
「そんなことさせるか〜!!!」
“爆”
ドカ〜ン!!
横島の剣を覆った爆発で後方へと弾かれる魔横。
「俺がお前を消してやるよ!」
続く
Legend of Devil Vol.10 Accident その3
“飛”“翔”
上空へと駆け上がる横島の左手に霊力が集中していく。
“煙”
“煙”の能力が負荷された霊波砲を連続で10発ほど魔横に打ち込む横島。地面や魔横に当たった霊波砲から大量の煙がまき上がる。
「っく、煙幕か、だが残念だなこんなモノは俺には通用しないぜ!」
魔横は横島同様上空へと駆け上っていった。しかし横島と同じように文殊が使える訳ではない。
「霊波砲ってのはこうやるんだよ!」
高密度に集束された魔力が魔力砲となって何度も横島を襲う。
「くっ!!」
“盾”
左腕前腕に展開した“盾”で凌ぎながら魔横の周りを大きく回り隙を探す横島。しかし魔横の魔力砲は容赦なく何度も横島を襲ってくる。
「そらそらそら!!!」
「このままじゃヤツの懐に入り込む隙が無ぇ」
“反”“射”
“盾”に“反”“射”の能力を負荷させた横島は魔横の周りを回るスピードを少しずつ抑えていった。
「はん、スピードが落ちてきてるぜ、もう霊力が切れたのかよ!!」
言葉とともに止まりかけていた横島に集束した魔力砲を10発程打ち込む魔横。着弾による爆煙が横島を覆っていった。その直後爆煙の中から7・8発の魔力砲が魔横目掛け打ち込まれ、数発が魔横に着弾した。
「な!? そんな馬鹿な!? ヤツも魔力を使えるのか!? ぐっ!」
「だぁぁぁぁああぁぁぁ!!! きぃえぇろぉぉぉ!!!」
“消”“滅”
強化霊波刀に“消”“滅”の能力を負荷させ魔横に斬りかかる横島。しかしその“剣”で魔横を切り裂く事はなかった。目の前に現れた人物の為に寸止めせざるを得なかったのである。
「ル、ルシオラ?」
「俺はお前の中からどんなモノでも取り出せるのさ。 幾ら心の奥底にしまい込んだモノでもな。 コイツも俺が目覚めたお陰で力が出せねぇようだが盾くらいには使えるだろ」
ルシオラは魔横に首裏を捕まれ力無くぶら下がっている。
「コイツはお前にとって大事なモノだろ? コイツがお前にとけ込んだから俺が生まれたんだ。 マァ俺にとっても母親みてぇなもんだからな、オメェの後にしっかり喰ってやるよ! そうすりゃコイツの能力も俺のモンだ! オメェ等も俺ん中で一緒になれるぜ? 意識も全て消滅するけどな! ハハハハハハハハハ!!」
魔横は高笑いをしながら魔力砲を横島へと放つ。
ドォ〜ン!
「・・・・・・ねぇ」
「なに?」
「そんな事はさせねぇ!!!」
魔横の集束された魔力砲を受けたにもかかわらず一歩も引かず叫んだ。
(あの方法は最後まで使うな。 言うなればアレは奥の手じゃお主自身の体が持つか分からん。 どう考えても許容量はオーバーしとるからの)
(師匠、今使わなきゃダメだ! コイツは今倒さなきゃならない! 例え俺の体が無くなっても・・・・・・・・・!)
“霊”“力”“倍”“増”
(ルシオラは霊格を保護しとけば復活出来るはずだ・・・・・・・・・ルシオラ・・・・・・ゴメン俺は行けないよ)
「な、なんだこの霊力は!?」
横島から発せられる巨大な霊力よる巻き起こる風で押し返される魔横。その風の為魔横はルシオラを手放してしまった。
「し、しまった! ば、馬鹿な! こんな馬鹿げた霊力では貴様の体も持たないぞ! 分かっているのか!?」
「分かってるさ。 でもお前にこの体を渡す事は出来ない!」
横島の右手に凄まじいほどの霊力が集束されていく。大きな球になれば圧縮集束され、また霊力が集まり大きな球が出来れば圧縮集束されていく。そのパワーを考えれば魔横の集束魔力砲の8倍ほどである。
「俺はお前を許さない! タマモを傷付け、俺の大事なモノまで壊そうとする・・・・・・・・・そしてお前が生まれるきっかけとなったはずのルシオラまでも・・・・・・・・・俺は許さない!! うおおぉぉぉおおおおぉぉ!!!!」
“完”“全”“消”“滅”
横島の集束された霊波砲に言霊が負荷されていく。
「きぃえぇろぉ〜!!!!」
ドン!!
横島の右手から霊波砲が放たれた。横島から発せられる霊力の風に身動きがとれない魔横へと真っ直ぐ突き進んでいった。
「う、うわ〜!!!!!」
(誰が決めた俺の生を、誰が決めた光を見ぬ内に消える俺を、誰が、誰が、誰・・・だ・・・れ・・・が・・・・・・・・・)
ドォ〜ン!!!!
霊波砲は魔横に直撃し、その魔横を完全に消滅させ闇に返したのだった。
続く
あとがき
こんにちは鱧天です。私のHPでは既に完結した『LoD』色々な意を込めて此方に投稿しています。私は現在『LoD』の続編『ゴーストスイーパー横島蛍』を執筆中であります。『LoD』をもっと様々な人に読んで貰いたい事と、続編の『GS蛍』を此方に投稿したい事もあり、完結した『LoD』を現在投稿している次第です。ではまた『LoD Vol.11』でお会いしましょう。
レレっとレス返し♪
>通行人Aさん
>自分のところのHPにて公開してる作品を、ほぼ手直しもなくこちらに投稿する
>ことに意味はあるのでしょうか?こちらで投稿後、推敲して自HPに掲載という
>のでしたら、わからなくはないのですが…。
え〜、あとがきにも書きましたが様々な方に読んでいただきたいことと、続編投稿の下準備という感じです。
>緑翠碧さん
>○サル爺が天界、魔界でも使い手の珍しい文珠にかなり詳しい。
>○使い方について「あんたやった事あんのかよっ」と突っ込みを入れたくなるほどずばり言い切る。
珍しい事は調べる。どんな些細な事も知識として蓄える。文武両道、サルの基本概念の設定です。なのでサルは頭は良いですが馬鹿です。(笑)
>○>そのままに言霊をのせた(文字をイメージ)。“剣”
>文字をイメージするんですか? 剣その物のイメージではなく?
はい、“剣”の文字です。まぁ文字と同時に“剣”の形を脳内描写しているでしょうが基本は文字です。
>マ〜シャルさん
>自分はここで初めて詠みました
>ですのでこの掲示板に投稿され、読む事ができるのはうれしいです。
>自分のように投稿掲示板でしか作品を読まない人もいるとおもいますよ。
ありがとうございます! 続編の『GS蛍』も『LoD』投稿終了に合わせ順次投稿していこうと思いますのでよろしくお願い致します。
>siriusさん
>文珠の”アイテムとしての効果”をあたかも”自分の能力”のように扱う手法ですか。
>外に出す必要が無くなる分、確実に霊力の消費量は減って速度も上るでしょうね。
えぇ、今の横島に必要なのは如何に霊力消費を抑えるかと、如何にスピーディーに行動出来るかなので、使わせて頂きました。