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▽レス始

「世界はそこにあるか  第20話 (GS)」

仁成 (2005-08-17 20:01/2005-08-19 21:21)
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小竜姫は横島との修業の日々を思い返してみる。


彼とのいろいろなことを思い出して、にへらーと頬が緩むが、今思い出すことはそういうことではない。


彼女にとっての幸せな日々という意味ではなく、まさしく修業という意味だ。


彼女は主に剣術を指南していた。

彼女が音に聞こえるほどの神剣の使い手であり、彼は霊波刀使いだからである。

そもそも、彼の修業は武神として最高峰である斉天大聖も行なっており、彼女自身が出来ることがそれほど多くなかったのだ。


彼女が最初に剣を教えたとき、彼には何もなかった。

無垢というか、真っ白である。

半ば予想していたことであった。

教える人もいなかっただろうし、彼もその後習得した文珠という便利すぎる能力に依存してしまうところがあったのだろう。

自分は所詮バイトである、という意識もあったのかもしれない。

だが彼女は、そのことに失望などかけらもなく、むしろ嬉しさが湧き、さらにやる気が出たのを覚えている。


それは自分が彼の師であるという安堵感。


そして、何もないところから自分が教えることが出来るという高揚感。

まるで真っ白なキャンバスに、最初に筆を入れる時のような――そんな、感覚。


なんとも下卑た感覚であるような気がするが、そんな今までにない感覚を持っている自分が妙に嬉しいから不思議なものである。


また脱線しかけた。


基礎すらなかった彼であるが、剣の習得は順調そのものだった。

プライドがなければ、拘りもない。

相手に合わせて振るってきただけだったので、変な癖もない。

似合わないが、小竜姫の正統派の剣術を素直に吸収していったのである。


彼には元々状況に合わせた臨機応変さや、応用力の高さがあった。

それと合わさって、単なる剣法でない、彼の戦う力として身につけたのだ。


ここまで思い出しておきながら、気が付く。


――こういうことじゃないですね……。


彼のことに浸るあまり、と言えばそれまでなのだろうが……。

また頬が緩むのを感じる。


この人が聞きたいのは、こういうことじゃないし、仮にそうであってもこのことを話すことは出来ない。


ならば言うに相応しいことは一つしかない。


世界はそこにあるか  第20話

――されど信じるものとして  供宗


「それ!」

青年が手に力を入れる。

「わあっ……!!」

青年の飛ばした竹とんぼが空を舞い、子供の口から歓声が上がった。

まるで空に吸い込まれるように高く上がり、ゆっくりと落ちてくる。

子供はそれを拾い、今度は自分で飛ばしてみるようだ。

子供の顔は今までに見たことがないほど無邪気な子供らしい笑顔で、母親は側でそれを見ていて顔をほころばせる。


母親として、今までこんな顔をさせてやれなかったことを悲しく思うとともに、今見ることが出来たことにこの上ない喜びを感じるのだった。


目が覚める。

瞳にうっすらと光が入って、自分がゆっくり覚醒していくことを実感する。

だが、あるものが視界に入った途端、彼女の警戒センサーは最大級に反応した。

人間だ。

素早く起き上がると、全身のばねを使って一瞬のうちに距離をとる。

そして臨戦態勢を取り、相手を睨みつけた。

「ちょ、ちょっと待ってくれ!
気持ちはすんげー分かるけど、ちょっと落ち着いてくれませんかっ!!」

分かってはいたものの、少し悲しい反応に、横島も何とか説得しようと試みる。

だが、相手は全く警戒を解くことはない。

人間がどんなものか分かっているから。

何度も自分達の棲家を追われてきたのだから、当然であろう。
彼らのやり口は分かりすぎるほど、分かっているのだ。

「ほら、あなたの傷も治しましたし、敵意とか感じないでしょ?」

その言葉にいつの間にか、自分の傷が治っていることに気付かされる。

それに、相手の言う通り、化猫である自分の感覚を持ってしても、彼から敵意が感じられないことも事実なのだ。

少し警戒を解く。

だが、油断はしていない。

彼女にとって人間とはそういう対象なのだ。

だが横島も彼女のそういう反応から、まだこちらを信じてはくれていないようだが、もう少しでなんとかなりそうだと確信する。

「俺のツレも妖怪ですしっ!
なあタマモ、アレやってくれないか? 練習してたやつ」

横島の言葉にタマモの顔がこわばる。

何かとてつもなく嫌なものを思い出したような、そんな感じだ。

「アレって……、練習も何も、横島が勝手にやってただけじゃない!
あんなの出来ないわよ!!」

真っ赤な顔で、猛然と拒否する。

それほどのものだろう、“アレ”とは。

「頼むよ……」

急にシリアスで真剣な顔になる。

反則だ。

たとえ、本気じゃないと分かっていても、なかなか拒否できるものではない。

それに、今のタマモにこの空気――前フリ――を裏切ることは出来なかった。
いい意味でも悪い意味でも、二人の影響を受けているようだ。

覚悟を決めたように、タマモは美衣と正面から向かい合う。


「……くっ、…しっ……信じて欲しい、ニャン♪」


周囲の時が――完全に止まった。


なんだかそれっぽいポーズまでとっている。

狐なのになぜニャン?

おそらく、対化猫仕様なのだろう。

タマモは何に対してか分からない羞恥と怒りに、真っ赤になってそのまま震えている。

横島も心眼もこれだけのことをさせておいて、なぜかノーリアクションだ。

「……ぷっ!」

突然美衣の口から笑いが漏れる。

そこからもう、タマモを含めて全員巻き込んでの大爆笑だ。

まあ、彼女は単なるヤケなのだが。
涙ぐんでるし。


このことがきっかけとなったのか、事情を話すと、横島たちは美衣の家に招待してもらえることとなり、家までの道を歩いている。

横島も美衣もなんだか笑顔のような気がしたが、タマモだけが何か大切なものを無くしたような、そんな目をしながら後をついていくのだった。

私役に立ったわよね、と自分を慰め、さらに現実逃避しながら。


「じゃあ、この辺りで一時休憩にしましょうか」

その言葉を聞いて、美神は肩で息をしながら、その場に座り込む。

前のようにシャドウを出すのではなく、生身での修業である。

「はぁ…はぁ……よっ、横島クンはいつもこんなにキツイ修業してるの?」

「こんなものじゃないですよ。彼のメインは霊波刀ですから。
貴女は自分の霊波の流れをもっと掴んで、それを鋭く、無駄なくしていく訓練が主です。
まあ、一流と言われるだけあって貴女は元々綺麗なものでしたけど」

小竜姫の言葉に、げっ、と顔をしかめる。

今も一時間以上、神通棍を持って彼女に挑みかかっていたのだから。

だが事実、GS試験が終わってここに来たときは、美神以上の修業を受けたのだ。

小竜姫から見れば、素人に毛の生えたような体だったのだから当然だろう。
早くもとに近いものを取り戻して欲しかったのである。

「それに、それほどのことをしなければあそこまで強くはなれないでしょう?」

「……まあね」

素直に頷く。

最近の彼の成長が異常であることは、美神も感じ取っていた。

いまはまだEランクの見習いGSであるが、いつ正式なGSの免許を与えてもいいぐらいにまでなっている。

それから美神は何かを考え込み、黙ってしまう。

小竜姫もそれを邪魔しないようにしているのか、話しかけることはしない。

「ねえ……、あんたから見て横島クンってどう?」

少しためらいがちに、それでいて意思の篭った言葉を投げかける。

「? それは彼の師匠として、ということですか?」

彼女の言いたいことは半ば以上分かっているが、それでも一応聞き返す。

「そう」

早く答えが聞きたいのだろうか、簡潔に言う。

それを聞いて、小竜姫は先ほどの美神のように黙り込んだ。

時折、いきなり顔が緩んで、美神をビビらせる。

やがて意を決したように真剣な顔つきになると、まっすぐに美神の瞳を見つめる。

「天才……ですね」

「やっぱり……」

予想していたのだろうか、苦々しい顔をしながらも正面から小竜姫の言葉を受け止める。

「ええ。あまり好きな言葉ではありませんけど、特に収束に関してはそうとしか言いようがありません。
貴女も天才と言われる方でしょうが、それとはまた違ったものですね」

美神も頷く。

GS試験期間中に、サイキックソーサーという霊力を一点に収束する技――これも割とセンスが必要である――を身につけ、妙神山で修業していたとはいえ二週間で、霊波刀<ハンズオブグローリー>を習得して帰ってきた。

特に霊波刀のほうは、アレだけのものを作れるGSを美神は知らない。

作るだけならなんとか出来るかもしれないが、実践レベルでは到底無理だ。

しかもそれだけのものを、特に集中することなく無造作に出している。

前回でも、僅かな期間に霊波刀、文珠、を習得し、小細工無しではあるが、美神と一対一の勝負をして勝てるほどになっている。

もちろん環境がそうさせたのかもしれないが、彼の天賦の才は絶対に否定できない。

「当然、除霊では貴女の足元にも及ばないでしょうが、こと霊的戦闘に関してはすでに貴女を超えているかもしれませんね」

その言葉に、美神は横島が妙神山から帰ってきたときに湧き上がった黒い感情を思い出す。

「……怖いですか?」

小竜姫の問いかけに、心が少しビクリと反応した。

恐怖。

今まで丁稚として扱っていたものに、
追いつき、追い越されるということに対する――怯え。

「彼を認めることが出来ませんか?
自らの常識を超えて成長する彼を―――信じることが出来ませんか?」

言葉を続ける。

まるで彼女に叩きつけるように。

試すかのように。

だが、小竜姫の口調とは裏腹に美神の表情は実に穏やかなものだった。

「ふん。そんな感情が一瞬でもなかったわけじゃないけど、いつまでもそんなものに縛られているほど、私は器の小さな人間じゃないわ。
それに、あいつは私が事務所を開いたときからの助手。大きな事件のときはいつもうしろにいたわ。もう信じるとか、信じないとかいう次元じゃないのよ。
もちろん、悔しさとか、寂しさとかはあるけどね」

小竜姫は驚いていた。

まさか今の美神がこれほど彼のことを認め、さらに素直に自分の心情を語ることが出来るなんて思わなかったからである。

確かに、前回のような頑迷さはなかったが、それでも彼女は意地っ張りなのだ。

小竜姫は美神の言葉ににっこりと微笑む。

今の彼女なら大丈夫だ。

そう思い、懐からあるものを取り出して、美神に渡す。

「……何これ?」

それは輝く一つの珠。

「これが彼の能力の一つの終着であり、才能と修練と奇跡の結晶です。
文珠と言えば、分かりますか?」

美神の顔が先ほどの小竜姫よりも、はるかに驚いた顔になる。

霊力を凝縮し、キーワードで一定の特性を持たせて、解凍する技。

今では文献の中にしか存在しない、人の起こせるある種の奇跡。

「!! これを…まさか横島クンが……!!?」

「そうです。サイキックファンネルという彼の技はご存知でしょう?
あれの修行過程でできたのが、これです」

実際には逆である。

文珠の操作の修業の副産物が、サイキックファンネルなのだ。

「そんなことはどうでもいいわ。
あいつ、こんな重要なこと私に黙ってたわねぇぇぇ!!!!」

美神の表情に怒気があらわになる。

だがそれは、彼女を知るものにとっては、どこか微笑ましいものだ。

「じゃあ、話も終わったことですし、ヒャクメも一人で退屈にしているでしょうから戻りましょうか」

「げっ、またゲーム?」

「妙神山の伝統で、師と弟子はテレビゲームで友好を深めなければならない、というのがあるんですよ」

笑顔でそう言って、小竜姫はさっさと行ってしまう。

テレビゲームが出たのはここ十数年のことでしょ、という美神の呟きは誰にも聞かれることはなかった。


すでに美衣の家に着てから丸一日以上経っていた。

初めのうちはやはり警戒心が完全に解けていなかったが、今では友人、知人に対するようにほとんど自然体で接してくれている。

「どうぞ」

今もお茶を入れ、横島とタマモに渡していた。

タマモは湯飲みを受け取ると、美衣の体を改めてじっと見る。

大きな胸に、くびれた腰、そして体全体から溢れる色気。

湯飲みを置き、自分の胸を確かめるが、スカスカと手は空を切るばかりで何もない。
真っ平らである。

戻る前の美衣以上に均整の取れた体――もちろん色気に関しては及ばないが――を思い出して、ため息を吐く。

窓の外を眺めれば、とっくに夜の帳は下りており、真っ暗である。

隣の部屋で、遊びつかれたであろうケイも、布団の中ですっかり熟睡している。

この家についてすぐに、二人は懐かれ、昨日から外で家でと遊び通しなのである。

今も先ほどまで遊び場だったこちらの部屋には、横島が持ってきた一生ゲーム――人の一生をボードゲームで楽しむという、斬新かつ革命的なゲーム――が遊びっぱなしのままで放置されている。

横島が持ってきた荷物は、ケイと遊ぶためのものだったのだ。

「ホント、子供ってタフよね。こっちのほうがへとへとだもの」

「……ふふ、すいません」

見た目子供にしか見えないタマモの言葉に、美衣は苦笑する。

「そうだな。れーこちゃんもそうだったけど……」

横島も可愛らしい少女の姿を思い出し、追従する。

『……ふむ。まあ、理由は簡単だな』

こんなことに理由があるのかと、タマモと美衣は首を傾げたが、横島のほうは心眼の言い様になんだか嫌な予感を感じていた。

「なんだよ?」

『まず、子供というのを別の言い方で言うとどうなる?』

一応尋ねた横島に、まるでクイズかとんちのような質問を逆に返してくる。

「うーん……少年・少女とか」

「童とか幼子もそうですね」

律儀にそれに答えるタマモと美衣。

二人の言葉を聞いた心眼の様子に、横島はさらに嫌な予感が膨らむ。

『そうではない。ケイは息子なのだろう? つまり坊やだ。
ということは……』


まさか。


『坊やだからさ……』

「お前、それ言いたかっただけやろっ!!!」

隣の部屋のケイを起こさないように、音量は控えめで、それでいて鋭いツッコミが入る。

というか、前フリが長すぎる。
コントか?

それにしても心眼のしてやったりというか、勝ち誇った様子はなんなのだろう。

そんな中、周りの空気が変化する。

『茶番は終わりだ……。来たようだな』

三人が頷き、家の外に神経をめぐらせる。

そもそも、その茶番の9割を君が占めているのだが。


もう、そこまできているのを感じていた。

敵も三人、こちらも三人。
ならば一人が一人ずつ相手をすればいいだけのこと。

「こちらから仕掛けよう。美衣さん、大丈夫ですか?」

「ええ」

待っていては不利だ。
相手によっては、いきなり家に火を放たれないとも限らない。

「いくぞ」

横島が静かにそう言い放つと、三人は家を飛び出し、それぞれの相手に向かっていく。

こちらは妖狐に化猫、さらには横島である。
相手の位置や動きは完璧に掴んでいる。

横島は素早く相手の目の前まで詰めると、何か戸惑う敵に、渾身の右ハイを脳天に叩きつける。

するとあまりにあっさり意識を失い、地面に横たわる。

タマモの相手も簡単に幻術に翻弄されている。

何かがおかしい。
いくら二人の戦闘能力が人外であるといっても、相手は戦う意志すらあまりなかったように思える。


「うわっ!」

美衣の相手は、最初に彼女に話しかけてきたリーダー格の者であり、そう簡単に戦闘不能にされていないのだが、それでも防戦一方だ。

「ちょっ、待っ……」

その様子に横島は何かあることを確信する。

「やっぱ変だな。少しやめてくれませんか!」

敵を秒殺した横島が美衣に向かって叫ぶと、訝しがりながらも攻撃をやめ、向こうから逆に攻撃されないよう、距離をとる。

「ふぃ〜……助かったぁ。これでやっと話が出来るよ。
つっても俺だけのような気もするけど」

肩を下ろし、辺りを見回すと、仲間の一人は地面に倒れているし、もう一人は幻術を解かれたものの、まだまともとは言えない。

「俺達もさ、話を聞きに来ただけなんだ」

「ほおぉ……。以前襲った奴が、こんな夜遅くにか?」

横島が皮肉る。

彼の言葉に嘘はないようだが、ここまでの条件が揃わなければ、実際に襲われ、敵視していた美衣はともかく、残る二人は敵でないことが分かったはずだ。

「殺人鬼や殺人狂、この場合は殺妖か……じゃあるまいし、俺達だって仕事だからしたまでさ。それにこの状況で本気でやろうと思ったらもっと人数を集めるよ。自分達の実力は把握できてるんでね」

彼らの戦いは三人の連携により、一体の対象を倒す、というやり方。

前の戦いですら楽なものではなかったのだから、これだけの状況では応援を頼むのが普通だろう。

「で、あんたらは何で妖怪を守ったんだい?
事情があるから、とこっちは思ってるんだが」

横島は説明する。

美衣が悪い妖怪ではなく、子どもとただ平穏に暮らしたいだけであるのに、何度も住処を追われているために工事を妨害したこと。

そしてもうじき、ここを離れ、新しい場所に移り住むこと。

ここでない場所とは、妙神山のふもとであり、神界が直接管理している場所ではないといっても、あそこなら開発されることもない。

横島自身は、町で暮らすという選択肢も与えおり、援助もするつもりだったのだが、それはケイがもう少し成長してからと言われたのだ。

「なるほどね……。
でも何であの時、そんなことが分かったんだ?」

いきなりリボルバーで撃ってきたのだから当然だろう。

ぱっと見ただけで、いい妖怪か悪い妖怪か見分けることが出来たら苦労はない。
そんなことは関係なく仕事を果たすのが、普通なのだ。

「あれは、美人な女性が集団に襲われてたから助けただよっ」

それを聞いて、ぷっと吹き出す。

どこの世界のGSが美人だからという理由で、妖怪を助けるというのだ。

自分達からすればあまりに理不尽な行動だったのに拘わらず、どこかおかしさと清清しさを感じてしまう。

「クク……まあいいさ。
ここを離れるっていうなら、こちらの雇い主には仕事を完了したと伝えていいわけか?」

「いいんじゃねーか?」

「そうか、じゃあ俺達は帰るわ。
こんな時間に来たのも、他の仕事が押してたからだしな」

地面に倒れる仲間を引きずって、真っ暗な森の中へと消えていく

あとには安堵の顔をした三人が残された。


翌朝

横島たちは今日東京に帰る、つまり別れの朝である。

目の前には涙ぐんだケイと、それをなだめる美衣がいた。

「兄ちゃん……。ほんとに行っちゃうの?」

あまりにも悲しげな様子に、ぽんと掌を頭の上に乗せる。

「なーに、またすぐ会えるさ」

彼の声聞いたために、ケイの眼にどんどん涙がたまってくる。

その様子を見ると、屈みこみ、ケイの目を見ながら、手にビー玉のような玉を乗せる。

ケイはそれを見るとみるみる心が落ち着いてくる。

「これやるよ。お守りだ」

にかっとケイに笑いかけ、再び立ち上がる。

「これであの家は簡単に移動できますから。じゃあ、お元気で」

すでに美衣には、別に文字の入った文珠を渡してある。

「じゃあね」

『ホイポイカプセルだな』

「本当に、ありがとうございました」

別れの挨拶を交わすと、向きを変え、歩き始める。

「兄ちゃん! 今度会ったら、竹とんぼの作り方ボクに教えてよっ!」

ケイは横島の背中に向かって力いっぱい叫ぶ。

「おう!」

横島は振り返ると、手を振り、それに応える。

やっぱり笑顔だ。


横島たちが見えなくなると、ケイは手の中にある玉を――またじっと見る。

なんだか、少し寂しくなくなった。


そんな気がした。


あとがき
急に、世間はコミケだったことに気付かされた。
お盆中、墓参り以外は家でごろごろしていた私は、大変だなとも思ったのですが、やはり好きならば大変ではないのだろうか。それとも大変だけど好きだから平気なのだろうか。
わけの分からない考察でしたw

というわけで(どういうw)20話です。
美衣編はこれにて終了。
横島天才説は、もちろん広義の天才ということです。

あとケイは、男の子でも女の子でも皆さんの好きなように。(前回も今回も地の文では息子とは言ってません) ちなみに私の中では少女です(爆)

なんだかんだでこの話も20話。
次は死津喪比女と言いたいですが、外伝を一つ出したいと思います。
ちなみに、逆行前の話。

今回も読んでいただきありがとうございます。


>柳野雫さん
ほのぼのも頑張って多少入れてみました。
どうでしょう。


>ヴァイゼさん
>心眼は最早ここまでくるとどこまではギャグでどこまでがマジかわからなくなってきました^^;
それがうちの心眼の持ち味ですw


>casaさん
今回美神さん大目に書いてます。
まあ、まじめと言うかなんと言うか、なんですが。


>ステルナさん
>無限カツラ、青カツラ、赤カツラの方は唐巣神父が所持してそうですね(笑)。
……おもしろいんですけどw


>響さん
凄いところ突かれました。
関係ないといえばないんですが……これ以上はノーコメントでw


>桜葉さん
このGSたちの扱いはいろいろ考えたんですが、結局こうに。
そんなに世の中変なのばかりじゃないだろう、と。


>なまけものさん
昼飯食べないと働かないわけですねw


>てぽさん
ありがたい評価どうもです。
戯言ネタ好きなのでしたら、外伝は期待してください。
今まではそれほどなかったんですけど。


では。

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