――どうしたのか。
登山家たる『鴉』は考える。
狸が、眼下のケースの中に納まっていた。
入り口は狸が何とかは入れそう、と言う程度の広さ。仕掛けで戸が閉まるようだ。
このケースは、恐らく心無い者が享楽で作った物なのだろう。
矢が、親と思しき狸に突き刺さっている。
そして、子ダヌキがか細い声で鳴いていた。
当然、彼は薪を作る為の斧を用いてケースを壊す。
まとわり付く子ダヌキを撫で、親ダヌキを近くに掘った穴に埋め、十字を立てた。
…暫し黙祷。今度は、どうしたものかと考える。
彼は非常に貧乏なのだ。
「そうだ」
姪の家には、イヌや猫などがいた。
彼女に預ければ、問題はないだろう――。
ヨコダヌキの冒険/2
「…タ、タヌキ?」
当然ながら。
鴉の姪は、そんな声を上げた。
見た目は、中学生程度か。亜麻色の髪を、短めに切っていた。
「ああ。この前の登山の時に拾ったんだ――『黎子』ちゃん、頼めるかい?」
「そりゃあ、いいけど――」
彼女自身、そんなに動物が好きな方ではない。
好きなのは、むしろ妹である。
…小さい時の写真を見れば、必ずと言っていいほど家のイヌと写っていたのだが。
「でも、ウチには『ニシジロ』とか『ハーピー』とか、何匹も動物がいるのよ? 内容も豊富だし…」
「かと言って、私にも飼えそうにないんだ…そうなると、然るべき所に連れて行くしか…」
鴉は含みを持たせる。
どこかの誰かに似たあくどさ。
…うわぁ、ムカつく。
黎子はそう思った。
そんな言い方をされたら、引き取る以外に手は無いじゃないか、と。
「分ったわよ、鴉伯父さん。この子――ええと、」
むーん、と黎子は唸る。
名前は何にしようか、と。
…身体的特徴を挙げてみようと思い、じっくりと観察する。
目はなんだか潤んでる。ま、この際関係が無い。
身体は黒と茶色の二色。足も真っ黒とか真っ茶色とかそういうわけでもない。
だが、尻尾ではそれが横縞になって現れている。
横縞。
「よし、決めた!」
何を、という鴉の視線など物ともせず、黎子は言い放った。
「あんたは『ヨコシマ』よ!あんたは、私が預かる!」
震える子ダヌキ――『ヨコシマ』は、くぉん、と鳴いた。
その言葉を、受け取ったかのように。
続く!
レスが付くとはここまで嬉しい物だったのでしょうか。ふおんせすかです。
今回はヨコシマ君からの視点は一切無し、と言うか一回書いたんですがどうにも上手くいかず…素人は一人称に手を出さないほうがいいのでしょうか。
何はともあれ、人生初のレス返し。
>黒覆面(赤)様
やっちゃいました。色々と。
自分の中ではY島さん最強です。
>CC様
すみません、転生物です。素人の力量不足が憎い。
本棚の奥にその小説があったので、もしかしたらその影響もあるのかも…。
>スレイブ様
ショタコン悪魔…ついでにホモ半吸血鬼もいますが。
どんな冒険になるか、と言われるとご近所の縄張り争い、修羅場は姉と妹による弄り回し合戦になりそうです…。
実はタヌキがどう鳴くか知りません。
微妙に漢字が違ったりするのは…そのままって訳にも行かないかな、というだけの理由です。
続きます。