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「ヨコダヌキの冒険!(GS)」

ふおんせすか (2005-07-21 18:11)
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「あぶねぇっ!!」

 ―― 一瞬、一秒にも満たない油断だった。
 相手は、人間に寄生する魔族。
 美神美智恵が若き日に倒した、チューブラー・ベルと同種族の存在だ。
 そいつは人から追い出され、霊波刀による致命的なダメージを負った。
 そして、背を向けた青年と女性に、最後に残った尻尾だけで飛び跳ねて女性を襲ったのだ。
 反射的に、青年は女性を突き飛ばす。
 どす、と。
 心臓に、鏃の如く尖った尻尾が突き刺さった。

「――!!!」

 がはっ、と血が口からあふれ出る。
 彼は手から光る珠を出し――そこで、破裂音と共にその手が止まった。
 悪魔の尻尾が、破裂したのだ。
 なんと言う往生際の悪さか。
 下級悪魔の尻尾だけ、と言ってもその霊力は人の比ではない。
 彼のチャクラはボロボロになり――そして、彼の意識は飛んだ。永遠に。


 横島忠夫。
 美人の奥さん多数・美少女の娘多数・息子0。
 享年、31歳。


 ヨコダヌキの冒険


 ぱか、と目を開いた。
 まず見えたのは、銀色に光る棒。
「は」
 …明らかに太い。
 直径は…見た感じ、20cmほどだ。
 目のまん前にあるそれから、他の場所を見てみようと顔を動かす。
 いや、動かそうとしたが、なかなか力が入らない。
 歯を食いしばり、生まれたばかりの馬のように振るえながら鉄柵の向こう側を見る。
 上を見る。まずは星と、月。月には少しばかりの雲。
 そして下を見る。


 つち。


 頭を振る。もう一度。


 土。石。アリ。木。草。全部巨大。


 目をこすろうとして、その手が――


 ――明らかに。ヒトの物とは違うことに気がついた。


「え、ええっ!?」

 形は、イヌの物に似ている。
 色合いは黒がかった茶色。
 たしっ、と顔にも触れてみる。
 …イヌっぽい形だ。

「はぁあっ!?」

 と言うことは、外が巨大なのではなく。
 自分が小さいと言うことだ。

「う、嘘だろ…!?」

 慌てて、辺りを力が入らない首で必死に見回す。
 鉄柵は、金属板の屋根がついて、そして後ろには黒っぽい、何か動物のようなものが見えた。
 …息は、ない。
 流れ出た血が、自分の――未だに実感がわかないが――尻尾の近くまで流れて固まっていた。
 …落ち着け、と自分に言い聞かせる。
 すぅう、はぁあ。

「落ち着けるかーっ!!」

 ごろごろと転がりたい所だが、力も入らない。
 まるで熱さにうだるイヌのようにぽて、と顎を金属板にくっつけて、精一杯唸る。
 10分も唸った頃か。人の足音が聞こえてきた。
 ぴく、と耳が動くのを実感する。
 人の耳の筋肉は退化したが、野生動物の耳には筋肉がある。

「…むぅ」

 成人男性――それも、中年の声のようだ。
 そして、それを彼は聞いた覚えがあった。

「この声は――」

 そう。2005年からの、GS協会会長。

「――唐巣神父!?」

 月明かりに、額が光るのが見えた。


続く!


はじめまして。ふおんせすかと申します。
…先日、家の近くでタヌキを見ました。
そこから考えたものだったのですが、いかがでしょうか。
…続きます。

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