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!警告!バイオレンス有り

「月に吼える 第弐拾四話(GS)」

maisen (2005-07-23 00:45/2005-07-23 01:13)
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「いい加減落ちんかいっ!」

ズゴンッ!!

猿神が繰り出す金剛棍。激しい音を立てて竜神王を揺さぶります。

「ぐわっ!―――なんのぉぉぉっ!!」

ゴゥッ!

 負けじと竜神王の口から吐き出される灼熱の炎。しかし猿神の体毛を少し焦がした所で

「甘いわぁぁぁっ!!」

ブンッ!

「なんじゃそりゃぁぁぁっ!!」

 猿神の振り回した金剛棍があっさりと吹き散らします。竜神王の叫びもむべなるかな。

「うわわわわわっ!!こっち来たーー!!」

「あじゃじゃっ!!」

 吹き散らされた炎は、周りで見守っていた家臣団を直撃。何人か黒焦げです。

「やはりこのままではっ!」

「ふふふ・・・とうとう諦めたかの?」

 流石に武神として名高い猿神。余裕の笑みを浮かべながらじりじりとその間を詰めて行きます。

「ならばっ!!」

「むっ?!」

 大きく息を吸い込む竜神王。猿神は警戒し金剛棍を構えます。


「―――犬塚殿ォォォッ!!」

「おおおおおおおっ!」


 竜神王の口からほとばしったのは、連れの人狼への合図でした。その声に答えて突如猿神の足元から飛び出してきたのは犬塚父。

「おりゃぁぁぁっ!」

「うおっ?!」

 よくよく見れば出現地点から先程親父達が密談していた所まで、モグラが穴を掘った後のように土が盛り上がっています。ここまで穴を掘って来たのでしょうか。すごい頑張り屋です。馬鹿ですが。

「はっはっは!竜神王の装具の力を見せてやるわぁぁぁっ!」

 新しい玩具を手に入れた子供のような目をしています。そのまま大上段に刀を振りかぶり、吶喊します。

「小癪なっ!」

ガキンッ!


 しかし猿神も流石。体勢を崩しながらも迎撃の一撃を放ち、それらはぶつかり合いました。

 さて問題です。豪速球がバットで的確に球を捉えたバッターを吹き飛ばす事はできるでしょうか?


「―――あーれー」

キランッ!

 ホームラン!絶対的な重量差はどうしようもなかったようです。

「・・・・・・・・あちゃー」

「・・・・・・んで?」

「げ。」

 竜神王、ぴーんち。


「―――横島君、マリア。あんた達はメドーサを足止めしておいて。カオスは勘九朗とか言うのを。ピートは雪ノ丞をなんとかしとめて頂戴。私はあの陰念を相手にするわ」

「・・・了解っす」

「イエス。ミス・ミカミ」

「やれやれ、老人を扱き使いおってからに」

「わかりましたっ!・・・試合の決着、此処でつけてやる!!」

「相手が厄介だと思ったら時間稼ぎに徹すること。相手に連携させないこと。―――やれそうならさっさと倒してほかの所に援軍に行くこと。いいわねっ!」

 周りの仲間にそう号令し、構えた神通棍に更に霊力を注ぐ美神。

 対して白竜側は―――

「・・・作戦会議はもう良いのかい?」

「あら、待って頂いてたみたいね」

 既に冷静さを取り戻したメドーサと、その前に構える3人組。

「その余裕が命取りだって事、教えてあげるわっ!」

「はっ!!やれるもんなら――やってみなぁぁぁっ!!」

 その声と共に、素早く左右に分かれる3人組。右に勘九朗、雪ノ丞。左に陰念。そして中央からはメドーサの魔力砲。


ズドンッ!!


 着弾と共に巻き上げられた爆炎は、戦いの狼煙となって燃え上がる。

「さて・・・私の相手はあんた達だったね・・・」

「あ〜、手加減してくれないかな?」

「ノー。横島・さん。―――メドーサ・魔力・開放しつつ・あり。余計な・希望・持たない方が・貴方の・精神衛生上・よろしいかと」

 爆炎を物ともせず、その只中を歩み出る忠夫とマリア。

「はあぁぁぁ。いっちばん厄介な所とか〜〜バンダナはもう閉じたままだし」

「問題・ありません。対GS試験用・装備・順調に・稼動しています」

「ふん。この前の借り、返させてもらうよ・・・」

 呟いたメドーサは、両の掌を胸の前で合わせると、その手を押し広げるようにして、其処からいつか見た槍を取り出す。

シュン

 そして具合を確かめるようにそれを一振りすると、斜めに構えてこちらを睨み付ける。

「あんたの命でねっ!!」

「お〜、怒ってる怒ってる」

「もう一度・言います。―――問題・ありません」


「さてさて、マリアの方はあやつがついとる限り・・・いや、ち〜と心配じゃな」

「グルルルル・・・」

 泰然と立つカオスの前に、唸り声を上げながら構える、魔装術を発動させた勘九朗。

「ふん。意識は獣に落ちても、体で覚えた技術だけは無くさんか・・・哀れ」

「グアアアアアッ!!」

 その声に反応したのかは定かではないが、勘九朗は大きく声を上げるとカオスに向かって飛び掛る。

「聞こえてはおらぬだろうが、一つ、講義をしてやろう。―――錬金術師の本領は、な」

ズガンッ!!

「ガッ?!」

 カオスに向かって右手を振り下ろすが、それはカオスを素通りし、会場の床を抉るのみ。

「―――己の生み出した道具を使った、頭脳戦にある」

ズバンッ!

 声が聞こえてきたのは、勘九朗の足元に転がるゴツゴツとした、機械でできた小さな球から。その球は、勘九朗が気付いた途端に破裂し、凄まじい光を溢れさせる。

「グギャァァァァッ!!」


「―――それゆえに。狂った獣では、人の知恵には及ばんのだ」


「雪ノ丞・・・あなたとは、こんな形でなく、ちゃんとした試合をやりたかった」

「・・・・・・」

「だけど・・・いや、だから。―――これが貴方と僕のGS資格を賭けた戦いだ」

すっ

 右手で十字を切りつつ、左手は拳に変えて握りこむ。

「ルォォォォン・・・」

 まるでそれに答えるかのように、低く満足げな一鳴きをした後、こちらも構えを取ってピートの眼を見つめる雪ノ丞。


「始めよう。GS試験、第2回戦だっ!!」

「オッ!!」

ズガガンッ!

 互いに繰り出した右拳は、互いの左頬をぶっ飛ばした。


「・・・さて、と。どうやらあんたが3人の中で一番厄介みたいね」

「へっへっへ。あんなメドーサ様の下僕に乗っ取られた奴等と一緒にするなってんだ」

 静かに対峙する美神と陰念。だが、この不細工な魔装術に鎧われた青年だけは、他の二人とは明らかに雰囲気が違った。

「・・・ふーん。ってことは、あの二人は利用されただけ、のようね」

「ケッ!少しばかり強いからって、いい気になってるからさ!」


 陰念は気付かない。


「あら?じゃあやっぱり貴方が一番弱いのかしら?」

「―――キサマッ!」

「だ〜ってそうでしょ?どう見てもあんたの鎧がいっちばん不細工だし」

「・・・黙れ」


 戦いは、殴りあうだけが戦いではない。


「迫力も無いし」

「・・・・・・黙れ!」

「なんと言っても顔がチンピラって感じよね〜」

「黙れ黙れダマレェェェッ!!俺が一番強いんだぁぁっ!!」

「あんたが意識を保ってるつもりなのも、どうせ取り憑いた眷属が少なかったからじゃないの?」

「――――――っ!」

「あらあら、図星みたいね。少し揺さぶっただけでこんな鎌に引っかかってるようじゃ、まだまだよ?」


 情報を得ることも戦いだ。そして―――


「このくそアマァァァァツ!」

「さ〜て、ちょっとキツメのお仕置きタイムと洒落込みましょうか」


―――GS美神令子。その超一流のブランドは、伊達や酔狂では、断じて、ない。


「落ち着きたまえ冥子君っ!」

「きゃ〜!きゃ〜!きゃ〜!」

「何ですのこの方はぁぁぁ!!」

 一方その頃白竜道場では、阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されていた。

「ちょっと手裏剣が掠めたくらいで何でこんなことにぃぃぃっ!!」

「忍者なら戦う相手と依頼人くらい調べておきたまえぇぇぇっ!!」

「きゃ〜!きゃ〜!きゃ〜!きゃ〜!きゃ〜!きゃ〜!」

ズゴゴゴゴンッ!!

 何があったかは推して知るべし。

「―――大丈夫でしょうか、唐巣さん達は・・・」

 そして小竜姫は神父達に後を任せ、会場に向かってまっしぐら。

―――大丈夫ではないが死にはしない、と思う。


ズガンッ!

「ウガァァァッ!!」

「それも外れ、じゃよ」

ボムッ!

「オオオオオゥッ!!」

 最早、幾度繰り返したであろうか。カオスの幻影を殴りつけ、その度に放たれる衝撃や爆発、閃光に轟音。その様は正に獣と猟師の如く。罠にかけるカオスと罠ごと食い千切らんとする勘九朗の戦いは、傍から見れば至極単純な物、であった。

「ふむ。やはりベースは人間、か。しかし半分霊的存在と化しておる」

「グルルルル・・・」

「・・・だが、飽いた、な」

 呟くカオスの眼には失望が。飛び掛る勘九朗の目には狂わんばかりの怒りが。しかし、それまでの展開とは異なる事態が発生する。

「ゲハハハハッ!」

ボボボボボッ!!

 眼に頼ることを諦めたのか、勘九朗はその周囲にいくつもの魔力を凝縮させた球体を作り始めた。

「―――ほう、獣とはいえ学習はするようじゃ、な」

「ガァァッ!!」

 勘九朗の咆哮と共に全方位に向かって放たれる光の球。

ズゴゴゴゴゴゴンッ!!

そして広がる炎の華。

「ゲハハハッ!!」


「所詮は獣、か。・・・先も読めずに、只、力押しで―――『ヨーロッパの魔王』に勝つのは」

 だが、カオスの声は途切れない。

そして、勘九朗の足元には何時の間にやら先程から痛い目を見させられ続けた機械仕掛けの球体達が―――幾つも、幾つも転がってきていた。

「ガァァァッ?!」


「――――900年程、遅かったのう」

――カッ!

「・・・ふん。詰まらぬ」

 そして、その一言を最後に、獣は閃光に包まれた。


「おおおおおっ!!」

「オオオオオッ!!」

ズガンッ!

 ピートの右拳が雪ノ丞のどてっ腹にぶち込まれれば、

がしっ

「なっ!」

「オウッ!」

ズダンっ!

「がはっ!」

 雪ノ丞はその手を掴んで投げ飛ばし、地面に叩きつける。

「このっ!」

「ガッ!」

ズガガガガガンッ!

 そして再び始まる乱打戦。いったい何発殴ったか。何回殴られたか。もう、数えちゃいられない。そんな暇があるのなら――

「ぜりゃあっ!」

ごきぃっ!

「ガッ!」

―――この一発に、力を篭めろ!

ずだんっ!!

 綺麗に決まったピートの拳。たまらず吹っ飛んだ雪ノ丞はそのまま壁に叩きつけられる。

「―――っはあっ!はぁっ!はぁっ!」

「ゴルルルル・・・」

 だが、あっさりと壁から抜け出し再び構えを取る雪ノ丞。

「オオオオオオオン・・・」

 壁から抜けた彼は、悲しそうな、いや、悔しそうな一声を上げる。

「・・・そうです。貴方も僕も、もう限界だ。終わりですよ、次でね」

「オオオオオオオン・・・」

「・・・残念ですか?僕も少し残念です。でも・・・」

「・・・・・・・」

「貴方が「こちら側」に戻ってこれたら、また、いつか、やりましょう」

ズバンッ!!

 その言葉が終わると同時に、凄まじい勢いで駆け出すピート。雪ノ丞は動かず・・・只その力を蓄える。

「「がぁぁぁぁぁぁっ!!」」

 先に繰り出されたのは雪ノ丞の拳。カウンター狙いのそれは、間違いなくピートの鳩尾に突き刺さる―――はず、であった。


ぼひゅっ!
ドゴンっ!!


 しかし、実際に叩いたのは空気の壁と、霧に変わったピートの体。胴体だけを霧と化し、雪ノ丞の拳をかわしたピートは、彼の顔面にクロスカウンターをぶち込んだ。

「ガ・・・ぁ」

ぐらっ・・・ドスン。

「ふぅ・・・切り札は最後まで取って置いた方がいいですよ?」


「んで?まだやるつもりなのかしら?」

「・・・ち、ちくしょう」

 神通棍、破魔札、精霊石等々。様々な攻撃手段。そしてそれを活かしきる頭脳。十分な威力。万能、というのはまさに彼女の戦い振りにあった。

 殴りかかられては神通棍でそらし、受け流し、切り返す。

 魔力砲は結界符であっさり防がれる。

 残り少ない魔力を使った、破れかぶれの連続魔力砲も、精霊石で防ぎきられた。

―――勝てない。

「化けもんかよ・・・」

「しっつれいねー。化者みたいな見た目になった奴に、化物呼ばわりされたくないわ」

「―――なんでだっ!なんでそんなに強い?!」

 陰念の喉から迸ったのは、怒り。化物になっても強い力を得たい。魔族に利用され様がそれでも構わない。強く、強く、もっともっともっともっともっと!!!

「それが馬鹿だって事」

「なっ?!」

「その意味がわからないようじゃ・・・「強くなっても、弱いまま」、よ?」

「どういうことだ?!」

「自分で考えなさい。私は其処まで優しくないわよ?・・・ま、大金積まれたら話すかも♪」

 その瞳から覗くのは、自信。自分に対する絶対的なまでの信頼。そして、大きな欲と情熱。其処にあったのは、非常識なこの場で非常識なまでに余裕を持った、どこまでも美神令子である女性であった。

「・・・・いまさら、だ」

「ふん。だめ、みたいね」

「・・・・・・・・・今更そんなこと関係ねぇよっ!!」

「・・・なら、どうするのかしら?」

「力、だ。お前も、あの蛇女も、誰でも、何もかも!全てぶっ殺せる、そんな力があればいい!」

ゴゥッ!

 その叫びと共に溢れ出す魔力。しかし、それはさっきまでの魔装術といった偽りの魔力ではなく。

「・・・魔道に堕ちた、わね」

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオっ!!!」

 陰念本人から溢れ出す物。そして陰念はその姿を変貌させる。

「グガァァァァッ!!」

「・・・・情けない。あんたよりはまだ横島君のほうが分かってるわよ。きっと、ね」


「マダダッ!モット、モットチカラガッ!!」

「うそっ?!」

 しかし其処で終わらない。一端下級魔族へと変わった陰念は、更にその姿を変えていく。

―――ボシュッ

 変容は、静かに終わりを告げた。其処に居たのは、陰念の姿に戻った・・・いや。

「・・・喰らったわね。メドーサの眷属ごと、その属性を」

「・・・ああ。もう、戻れねぇみてえだが、な」

 その皮膚のあちらこちらは鱗で覆われ、瞳は蛇眼と化している。なによりも、その存在から溢れ出すのは―――強力な、魔力。


「シュッ!」

「なんのっ!」

ガキンッ!

 メドーサの繰り出す槍を、右の拳に霊力を纏わせ弾き返す。反動で槍を振り払い、一気に懐に飛び込む。

「おらぁっ!!」

「甘いっ!!」

ゴズッ

 隙だらけに見えたボディに一発ぶち込んでやろうと踏み込むも、待っていたのは迎撃の膝蹴り。もろに喰らって仰け反る。

「喰らえっ!」

「ノー。その行動は・不可能・です」

ガンガンガンッ!!

 其処を狙って引き戻した槍を突き出すも、槍の穂先を正確に狙ったマリアの銃撃がそれを押し留める。

クルッ・・・ザンッ!

 その隙にメドーサの膝を踏み台に後方へ跳んでマリアの傍に着地。

「いたたたたっ!」

「大丈夫・ですか?横島・さん」

「お〜。マリア、ナイスフォロー」

「ノー・プロブレム」

「ちっ!厄介な機械がっ!」

 舌打ちと共に再び構えるメドーサ。それに呼応するかのように霊力を高めていく忠夫と―――マリア。

「・・・マリア、何時の間にそんな事できるように?」

「ドクター・カオスは・陳腐な表現・ですが・天才です。一週間・ほどで・ボディの・変更と共に・仕上げられました」

 驚いたように尋ねる忠夫に対し、マリアはどこか誇らしげにカオスのことを伝える。いつぞやのカオスの秘密基地捜索で、色々と探していたのはこの為であったようだ。

「ボディの変更?」

「イエス。この・用に」

見た目全く変わらぬマリアの何処が変わったんだろう?と思っていると、マリアはその手を忠夫の頬にあてる。

「うぇっ?!・・・あ、や〜らかい」

「霊力を・より効率的・に循環・できるように・有機物メインの・ボディに・換装・してあります」

 いきなりのマリアの行動に驚くも、その手から伝わるのはあったかさと柔らかさ。つくづくあのカオスのやることには驚かされっぱなしの忠夫である。

「これからも・バージョン・アップを・施す・予定です。期待して・お待ちを」

「いや、期待って・・・」

「・・・期待、して・いただけません・か・・・」

「いやいやいやいや!!期待する!期待するから!!」

「ありがとう・ございます」

 何処となくしょんぼりしたようなマリアに、慌ててフォローする忠夫。その返答を聞いたマリアはやはり何処となく嬉しそうで。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・で、もういいかい?」

「うおっ!!」

「・・・・・・・」

 そしてすっかり忘れていたのに、律儀に待ってくれていたメドーサの突っ込みで慌てて振り向く忠夫。マリアはなんだか不満そう。


「はんっ!全く。機械なら機械らしくしてりゃいいものを。なに色気づいてんだか」

「・・・・・・」

豪ッ!

 メドーサのその一言に、マリアはブーツに仕込まれたブースターを吹かして突撃する。

「マリアッ?!」

「―――機械人形が、図星を付かれて怒ったのかい?!」

「ノー。これは・只の・敵への・攻撃です」

「中身は小娘かいっ!」

ヒュゴッ!

「なっ!」

 勢い良くメドーサの前まで突っかけて行ったマリアは、メドーサの突き出した槍を、直前で、そのままの勢いで左足を後ろに振り上げ縦に一回転。胴体を狙って突き出された槍は、逆さまになったマリアの頭の下を掠めるようにして通り過ぎる。空中に浮かんだままで遠心力を活かした踵落し。

ズゴンッ!!

「がぁっ!!」

 流石に目の前で背中を向けられたことに一瞬動揺したのか、槍を引き戻す暇も無く、頭は避けたものの左肩に強い一撃を喰らうメドーサ。マリアは肩を踏んでメドーサの後ろへ。慌てて振り向くメドーサ。

「こ、この小娘がぁっ」

「これでも・製造されてから・700年・経過して・います」

「機械の癖にっ!」

「・・・羨ましい・のですか?」

「―――っ!」

「貴方には・そういった・存在がいなかったの「だまれぇぇぇっ!!」

轟ッ!!

 その一言が、何に触れたのか。

「機械が、囀るなァァァッ!!!」

「これは―――」

「砕け散れ!!」


 メドーサの手に蓄えられたのは、それまでとは比べ物にならないほどの巨大な魔力。一瞬の間さえも無く放たれたそれはマリアに向かって突き進む。回避するには速度がありすぎる。距離が近すぎる。されとて直撃すればその言葉どおりマリアは砕け散る。


―――しかしその顔に焦燥は無い。


「おりゃぁぁぁぁっ!!」

ズパンッ!!

 ―――そして、それは予測通り、マリアを傷付けない。疾風の如く割り込んだ影が、気合の咆哮と共に、その力を真っ二つに切り開く。

「おお、ほんとにできた」

「ありがとう・ございます。横島・さん」

「ふ・・・・ふざけるなぁぁっ!!」

「まじめだっつーの。これ以上無い位」

 その台詞とは裏腹に、何処までも軽い口調で返すのは半人狼の青年。その右手には、青く光り輝く霊波刀。バンダナに開いた目が最後に伝えた物は、人狼としての霊波刀の作り方。ぶっつけ本番で試すことになるとは思わなかったが、結果オーライ。

「便利だなー、これ。まさに栄光を掴む俺の牙、「ファング・オブ・グローリー」ってか」

「・・・ノー・コメント」

「あれ?不評?」

「ノー・コメント・です」

 軽く振り回しながらマリアに問い掛けるも、マリアは視線を逸らして批評せず。

「・・・・・・もう、いい。認めてやる。お前らは、確かに厄介だ」

 そのどこまでもぺースを崩さない目の前の二人に、そう告げる。辺りの喧騒も、何時の間にか静まり返っている。どうやら完全にこちらの陣営は沈黙したようだ。―――いや


「―――メドーサ様」

「・・・陰念、か。随分と変わったようだね」

「ここは一端引くべきだと思いやすが」

「・・・ふん。これ以上は時間がかかりすぎる、か」

 メドーサの傍らには、何時の間にか姿を現した陰念。そして、辺りからは美神やカオス、ピートがこちらへ駆けて来る音が聞こえる。

「・・・ちっ!」

 心底悔しげに舌打ちすると、ふわり、と浮き上がる陰念とメドーサ。そして陰念は会場の天井に向かって魔力砲を放つ。

ズゴンッ!

「・・・次は、必ず、殺す」

「・・・美神令子。その命、しばらく預けといてやらぁ」

―――カチッ

 メドーサは、もはや手の届かない高みで、懐から四角い板のような物を取り出すと、それについているボタンを押し込む。だが、何も起こらない。

「・・・壊れたのかいっ?!最後の最後までケチの付きっ放しかっ!!」

 そう捨て台詞を残して、会場にあいた穴から飛び出していくのであった。


「「「・・・はぁぁぁぁっ」」」

「なんじゃなんじゃ。若い者が揃って溜息なんかつきおって」

「ドクター・カオス。お怪我は」

「おう、マリア。ぴんぴんしとるよ」

「・・・なんでそんなに元気なんだこの爺は」

「・・・さすがドクター・カオスさんですねぇ」

「・・・そういう問題かしら」

 安堵の溜息をつく美神たちに向かって情けない、と言う感じで説教するカオス。マリアに向けた表情は只の好々爺なのだが。


「美神さん!!」

「・・・遅いっすよ小竜姫様」

「メドーサならついさっき逃げちゃったわよ」

 疲れて座り込む美神たちの前に、メドーサが開けた穴から飛び込んできたのは小竜姫。

「・・・えええっ!そんなぁ」

しょぼん

 今度は完全にすれ違った事を知って落ち込む小竜姫の肩を叩くカオス。

「そんなお前さんにプレゼント。これを押してみい」

「へ?」

「ほれ」

ぐいっ

ぽちっ

―――――――――――――――ずごーん

「おお、成功成功」

「あ、あのー」

 戸惑う小竜姫の手を握り、懐から取り出した何処からどう見てもTVのリモコンなそれの赤いスイッチを押させる。――と、同時に遠く離れた空から聞こえるごッつい爆音。

「いやなに。昨日怪しい装置を見つけたのでな?遠隔操作のようじゃったから、少々弄くって本来のリモコンにエネルギーが流れ込むようにちょちょいっとな?」

「・・・ってーことは、あの爆発は」

「うむ。どうやら爆発系のトラップだったよーじゃの」

「え?え?」

 呆れた様に尋ねる美神と、泰然と答えるカオス。そしていまだに状況把握のできていない小竜姫。


「爺いっ!俺の嫁さん候補の手を気軽に握るんじゃ「あ・スタンガン・暴発・しました」―――あびゃびゃびゃびゃびゃびゃっ!!!」

 いまだに小竜姫の手を握るカオスに向かって突っかける忠夫に、どこまでもざーとらしい台詞をのたまいながら、いつぞやの電撃を二割増でかますマリア。


「あだだだだ・・・体中が痛いぜ・・・」

「あ、元に戻ったみたいですね」

「む、そこの半吸血鬼!なんだかお前と勝負する!!」

「―――えーと、またの機会で」

「あら、それじゃ私と寝技でも「いらんっ!!」ま、つれない事」

 むっくりと起き上がってきた雪ノ丞と、それに話し掛けた途端に勝負を挑まれるピート。そして何時の間にやら復活して怪しいお誘いをかける勘九朗。


―――天井からは、真昼の月が、薄っすらと姿を見せていた。


「・・・・けほっ」

「・・・・ごほっ」

「・・・一体何だってんだい。・・・もうやだ、帰って寝る」

「・・・そうですね」


---アトガキッポイナニカ---
はいすいませんmaisenでございます^^
というわけで第弐拾四話、此処にお送りいたします。

あ〜、処理大変だった。というのが一番ですかね〜。せっかくの戦いもまだまだって感じです。修行がたらんなぁ

レス返しー。

アイギス様>orz そうですか。本編はまだまだですか。頑張りますTT この場合の狸っていうのは褒め言葉にも聞こえるかとw ええと、竜神王ぴ−んち、のまま次回に引きましたw

法師陰陽師様>転生は・・・しないでしょう。はっきりとした自我が確立する前に喰われましたから。おお、そう言っていただければ幸いです^^ 怪獣大戦争・・・話は変わりますが、某2000シリーズの 地球防○軍ってすごいですよね?(マテ いや、大好きですよ?

Casa様>それは違いすぎるでしょうw はい、陰念君です。他の二人に比べて劣っていたので、負の感情が多かった為に、抵抗せずにあっさりと支配された為、喋れるくらいの余裕があった、と。 なるほどwグロいからw

皇 翠輝様>と、言う訳で今回霊波刀初お目見えでございますw キタ―w

桜葉 愛様>擬人化ですかー。なんと言うか、あの心眼様見てたら私にゃ無理ですわ。そんな根性と技術ありませんw 私としては、ただ単に2番としてしまうのもあれだったもので。 ま、これから先は秘密ですw というわけで、戦闘。楽しんでいただければ幸いです。

ジェミナス様>満月・・・思わず月見酒と洒落込みました(マテ おいしかったです(爆

へのへのモへじ様>いやははwあの3代目も大好きですがw 

偽バルタン様>今回までのお話で忠夫君には基礎の基礎、出力と身体強化を憶えていただきました。これから先は・・・ふふふふふw

柳野雫様>ええと、大変でしたorz ほんとーに最初っから最後までバトルでやんのorz
かっこいいといわれると、あれですな、頑張った甲斐がありますなw

ヴァイゼ様>さてさてその辺りのお話は次回、エピローグにてw 陰念・・・やられませんでした(爆 そうなんですよね〜赤提灯なんですよね〜更に言えば人狼の里からなんですよね〜。・・・何時の間にこんなことに(爆

KUROKU様>ええと・・・面白いと思っていただければ私は嬉しいですw 

さてさて次回はエピローグ。シュレさんの出番もありますよ〜

ではでは次回をお楽しみに・・・していだだけたら嬉しいなぁ^^ノシ


・・・何時の間にか1ヶ月たちそうだなぁ

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