インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

!警告!壊れキャラ有り

「月に吼える 第拾八話(GS)」

maisen (2005-07-12 00:12/2005-07-12 23:31)
BACK< >NEXT

「・・・・・・ぶつぶつぶつ」

「・・・おキヌちゃん?あのうっとーしいのどうにかなんない?」

「まぁまぁ美神さん、空き巣にあった直後なんですから」

「・・・俺の肉俺の家俺のTV俺の服・・・ぶつぶつぶつ」

 昨夜家に帰り着いた忠夫を向かえたのは、半壊した扉の立てかけてある玄関と、荒れに荒れた部屋の中。爪跡に引き裂かれた人狼の里で着ていた普段着に、替えの服2着。そして壊れたというか原型を留めていないTVと、空っぽの食料庫。

 30分ほど呆然とした後、ふらふらと歩きながらいつの間にやら教会に到着。依頼を終えて帰ってきていた唐巣神父達と鉢合わせ、話し掛けるも聞こえない様子でふらふらと、鬼気を纏いながら礼拝所まで歩いていく。

 そのころ騒ぎを聞きつけた美神たちが忠夫を発見するも、先ほど見た姿とのあまりの落差に固まるばかり。後を突いてきた神父達も見送るばかり。

 そんな彼らを余所に、祭壇の前まで歩み寄った忠夫は、何処からともなく部屋の中にただ一つ残されていた遺留品らしき物―――怪しすぎる包丁を取り出すと


「・・・斬る」


 ただ一言だけ呟き十字架に歩み寄る。

「「まてーーー!!!」」

 たまらないのはキリスト系の技を使う唐巣神父とその弟子ピート。なにせいきなり弟子の助手が教会の中枢を叩ッ斬ろうとしているのだ。たとえ偶像崇拝が禁止されていたとしても、やはりそれは教会に通う人々にとっての心の拠り所。いきなり破壊されては困ったなんていうレベルの問題ではない。

 それより何より。高いのだ、アレは。

「お、落ち着きたまえ横島君!」

「一体全体何を考えているのですか?!」

「はなせぇぇぇぇっ!!武士の情けでござるぅぅぅぅぅっ!!!」

 慌ててしがみ付く神父達を引きずりながら、一歩一歩目標に近づく忠夫。伊達に人狼の血を引いちゃいない。成人男性2人くらいなら軽々である。

「これは復讐でござるぅぅぅっ!!神は死んでいるんだから良いでござろうがぁぁぁぁ!」

「・・・教会関係者の前で吐く台詞じゃないわね」

「一体何があったんでしょうねぇ?」

 頭を抑えながらその様子を眺めるだけの美神と、のほほんと呟くおキヌ。

「拙者のお肉の仇ィィィッ!!!」

「それ、うちの教会とは絶対関係ないだろうっ?!」

「とりあえず落ち着いてください横島さぁぁぁぁぁん!」

「・・・・・・ほんとに何があったのかしらねぇ」

「横島さん、微妙に幼児退行起こしてますねー」

「今の拙者は神でも斬れるぞぉぉぉっ!!!」

「「斬るなぁぁぁぁつ!!」」

 ・・・要するに八つ当たりである。


 ひとまず錯乱する忠夫をフルパワー神通棍でシバキ倒し、「何かあったのなら家でだろう」と当たりをつけた美神が様子を見に行って見れば、そこにあったのは荒れ果てた忠夫宅。

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・押し入り強盗?」

「・・・・・・・・・本人居ないんだから空き巣でしょ?」

 結局全く原因不明ではあったが、面倒くさくなってそのまま忠夫を部屋に放り込み、置手紙に「明日朝十時教会前集合」とだけ書いた紙を額に張り付け。放置して教会にて一夜を過ごした美神たちであった。

 次の朝、教会に訪れた忠夫はなんだか雰囲気が荒んでいた、とだけ言っておこう。

「ぶつぶつぶつぶつ・・・・・」

「まぁいいか。とりあえず、昨日の妙な奴の紹介してきた建物は此処ね」

「ほえ〜。おっきな建物ですね〜」

「大きいには大きいけど・・・大分ガタがきているみたいよ。まぁ、場所自体は一等地だから手を入れれば結構・・・」

「お待ち―――して――おりました。美神除霊――事務所の皆さん――」

 その声に振り向けば、確かに昨日この話を持ち込んできた全身を覆うコートに顔が見えないほどに大きな帽子を被った人物の姿。

「約束の時間ちょうどのはずだけど?―――それより、本当なんでしょうね?」

「――ええ。この建物の――最上階に―権利書を――用意してあり――ます」

「で、そこまでたどり着ければこの建物が私の物って訳ね」

「御自分――達の力で――とってこられたら―という条件付で―――すが。それでは―――御武運を」

 最後の一言だけを明瞭に喋り、そのコートは中身が無かったかのように地面に崩れ落ち、そしてその中からは案の定何も見つからなかった。

「いやに霊波の単純な奴だったわね・・・まるで人工の幽霊みたい・・・」

「人工の幽霊、ですか?」

「ええ。私も実物を見たことは無かったけど・・・戦前、そういった研究をしていた人がいたって話よ」

「ええっ?!」

「確か名前は―――


 振り仰げば、そこには先ほどまでは無かった存在感を誇示する洋館。


―――渋鯖男爵、とか言ったかしら」

キィッ

 その音に視線を下げれば、開かれた扉が手招きするかのように僅かに動いていた。


「ふん、さっさと入って来いってか。面白そうじゃない、行くわよ、あんた達!」

 そう言い残し颯爽と開かれた扉に歩み寄る美神。

「横島さーん!美神さんが呼んでますよー!」

「ぶつぶつぶつぶつ」

 そして未だ立ち直りきっていない忠夫を引きずりながらそれを追いかけるおキヌ。

―――こうして旧渋鯖男爵邸の冒険は幕を空けたのだった。


―――玄関―――

 扉をくぐって中に入ってみれば、確かにそこら中痛みは見られるものの、ほとんど埃の積もっていない床。

「・・・・・・ふん」

 辺りを一通り眺めた後、鼻を鳴らし歩みを進める美神と、その後に続く忠夫達。

ばたんっ!

「―――返すつもりは無いってわけね」

 そして全員が扉をくぐると同時に閉じる玄関。おそらくこの屋敷の裏方は、簡単に開くような仕掛けはしていないだろう。

「いや、結構簡単に開くかもしれないわね・・・まぁ、ここまできたら、進む以外の事をするつもりはないけど」

 玄関から視線を外し、再び前を見ればそこには何時の間にか一体の全身鎧の姿。

「・・・・へ?」

『第一の関門です。その鎧を倒してください』

 機械的な音声が何処からともなく響き渡る。その残滓が消えると同時に動き出す全身鎧。

ひゅばばばばっ!!

 その鈍重な見かけからは思いもよらない連続攻撃に、慌てて神通棍を伸ばし応戦にはいる美神。

「――プロの剣捌き?!冗談じゃないわよ!横島君!」

 そちらが剣士ならこちらは侍、とばかりに忠夫の名を呼ぶが――

「ぶつぶつぶつぶつ」

 忠夫は未だに現実逃避の真っ最中。

「あああ!まだやってたんかっ!!」

 美神が意識の外に置いていただけで、彼はさっきからずっとそうである。

ひゅおっ!

「きゃあっ!」

 突っ込みで意識を逸らした美神の眼前すれすれで通り過ぎていく前身鎧の剣。

「や、やばっ!―――横島君!」

「ぶつぶつぶつぶつ」

「あんたの部屋を荒らした犯人は、この屋敷の一番上にいる―――


ズバンッ!!

がらがらがらっ!!

 美神の一声が、忠夫を変えた。

「―――ふ、ふふふふふふふふふふっ!!」


「―――かも、しれないわよー。って聞いちゃいないわね」

「み、み、み、美神さんっ!!!」

 いつの間にやら再び取り出した怪しすぎる包丁は、そのぬらりとした輝きを一層増しながら忠夫の手の中で目覚め始めた。そして彼がふらり、と鎧の隣を通り過ぎると同時にそれは見事にばらっばらとなってあたりに散らばる。

「――――俺の肉とTVと服と部屋をカエセェェェェッ!!!!」

「・・・・・・壊れたかしら」

「横島さぁぁぁぁん!!」


ずどどどどどどっ!!!!


 残像を残しながら床でなく既に壁さえ走りながら特攻する忠夫を見送りながら、「ちょっと失敗しちゃった、かな?」などと人事のよーに呟く美神であった。

 程なくして。


ずごーん!!

どかんっ!!

ばきゃっ!

―――アォォォォォォォン!!


上のほうから響いてくる爆音という以外に表現の仕様の無い音と、狼の遠吠え。

「あれ?」

「・・・美神さん。この建物、この後残ってると良いですね」

『ちょっと待った――!!』

 まさか此処までとは思っていなかった忠夫の身体能力に、計算が狂った感じの美神。ちょうど幾つか関門とやらを壊した後で力尽きてくれるはずだったが、何気に建物を更地にしそうな勢いである。慌てるのは謎の声。

『あ、あの方は一体なんなんですかっ!!』

「うちの助手」

『どんな助手がここまで破壊活動を繰り広げるって言うのですかーーー!!!』

「あんなのが」

「さすが横島さんですよねー」

『ああああああっ!!!ダメだこの人達ぃぃぃぃっ!!!』

 気付くのが遅い。

『ああっ!!それは男爵が大事にしていた高価な壷――「ちょっとまったぁ!!」』

 しかし、謎の声の一言が、その場の空気を一気に変えた。

「壷?!いくら位の?!」

『相場は知りませんけど?!歴史的にも貴重な―――ああっ!その絵画だけはーー!!』

ばびゅん!!

 忠夫に引けを取らない速度で消える美神。


どごごごごんっ!

―――キャインキャイ―ン!


 再び響く爆音と、今度は幾度か聞いた狼の悲鳴。

「美神さん・・・」

 大体何が起きたか察したおキヌは、疲れたように溜息を吐いたのだった。


『・・・もういいです。これ以上破壊を広げる前に、とっととその椅子に座ってください』

 おキヌが美神とミンチ寸前の忠夫に追いついたのは、最上階のおそらく最も中心部。そして疲れたように投げやりな声が響く。

「え?あら?いつのまにこんな所に・・・」

「―――っは!ここはどこっすか?!」

そして限定的とはいえ霊力に目覚めた忠夫は―――いや、おそらく関係ないが―――あっさりと復活を果たす。どうやら現世復帰も果たしたようだ。

「ええと・・・ここに座ればいいのね?」

『そうですよー。それが玉座ですよー。これで貴方はこの事務所のマスターですよー』

 拗ねたような声と共に、いかにも倒壊寸前だった建物は光と共に新品同然へと変化していた。まぁ、仕掛けも関門も全部ぶっ壊されりゃぁそりゃ拗ねたくもなるだろう。

「いいのかしら?もうちょっとこう、なんか―――『これ以上私の中を引っ掻き回さないでくださいぃぃぃぃっ!!!』―――まぁいいか」

そして美神は忠実な僕と、あらたな拠点を無事手に入れたのだった?


「ぜぇ、ぜぇ」

「はっ、はっ、はっ」

「も、もう走れないわよ・・・」

昨夜遅くに襲撃を受けた人狼3人と狐の少女は、そのまま逃避行を開始。何時の間にかあたりは鬱蒼とした森となっていた。

「ち、父上は何処でござるか?」

「さ、さぁ、拙者も逃げるのに必死でござったからなぁ・・・」

「きゅ〜〜」

しかし、どうやら犬塚父とははぐれた様子である。


「・・・・で、此処は何処でござるか?」

「わからん。本能の命ずるままに走ったでござるからなぁ」

「・・・あんた達ほんとーに無駄にタフよね〜」

 まだ疲れが抜けていないのか蹲ったまま動けないタマモに対し、人狼達は既に息も整い普通に会話している。

「とりあえず、この森を―――

がさがさっ

―――む、何奴っ!」

がさっ

「あれー?ポチさんにシロちゃん、何時里に帰ってきたんですかー?」

「「「へっ?」」」

 本能は本能でも帰巣本能だったようだ。そして―――


「み〜つ〜け〜た〜ぞぉぉぉぉっ!!!」

「「「「げっ!」」」」

 チョウロウ―――ろっく、おん―――


結果報告。チョウロウ―――人狼二人と狐一人。その後、力を使い果たし気絶。


     シロ――――――振り出しに戻って一回休み。


     タマモ―――――同上。


     ポチ――――――なぜか無傷。


     名も無き人狼――ポチに盾代わりに使われかなり痛い目。トラウマ。


 一方その頃―――

「ふぅ、なんとか逃げ切れたか。む、いい匂いでござるな〜〜」

 犬塚父は他の皆とはぐれた後、いまだ東京にて潜伏中。

「お、あれが「屋台」というやつで―――「うぉぉぉぉん!」―――むぅ、まなーのなっていない奴」

 そしてその前にはいわゆるガード下の赤提灯。その椅子に座って浴びるように酒を飲んで涙を滂沱と流しているのは―――


―――頭にやけに立派な角を持った、良い歳した渋めの長髪のおっさんだった。


次回に続く。


「やぁ」 そろそろこの世界も少しずつレールに沿って動き出したようだ。


 前にも誰かが言ったと思うが、大きな分岐点の前には必ず「選ばれた」者がいる、というのは分かっていると思う。


 そんな君に今度は「僕」が質問だ。 

 世界は、どうやって彼らを選ぶと、思うかい?


 そして、世界に選ばれた者と―――


―――世界に愛された者は常に同一人物だと思うかい?

 ああ、やっぱり、驚いた。

―――さてさて。その答えは見つかるかな?

―――それでは良い夜を。


---アトガキッポイナニカ---
はいすいませんmaisenでございます^^
というわけで今回は幕間というか私の息抜きというか。

そして一旦人狼達の旅も終了となります。次回からは―――まぁ、分かると思いますw

レス返しー。

黒川様>小竜姫が気にしているのは、「自分の保護下でそういった事態が起きた」ということです。また、天竜の場合、今回の目的の一つとして地上の『有力な』竜族との「できれば」婚約がありましたからねぇ。確定・・・したかな?(マテ 
 あははw 大魔神ですかいw

へのへのモへじ様>いや、あくまで人狼ブラリ旅部門では、ですしw それにチョウロウが普通の場面に出ることは無いですから・・・ないはず(マテ
 いや、この場合問題なのは見た目かとw

偽バルタン様>かっこいいといっていただけると嬉しいですねぇw今回はいいとこなしですがw
 そして彼らは、結局すれ違いきりましたw

皇 翠輝様>ふふふ・・・次回のお話をお楽しみにw
 八房にはもうからめて頭の中には既に一つのお話がw

桜葉 愛様>トラップ・・実は色々考えてたんですが、何気に暴走しました忠夫君。作者の手を離れて(マテ そして色々と問題発生中の忠夫君の巻きでもありましたw
 未来忠夫ですかー。どうしようかなー。(爆

なまけもの様>はっはっはw次の山場はそこにする予定ですw

柳野雫様>実は、小竜姫まだまだ忠夫君にいろいろと警戒心を抱いています。まぁ、存在自体が謎の上に、今回あんなことやっちゃってますからねー。第一印象からは大分違って見えている、と。

ヴァイゼ様>すいません、前述したのですが、そこらへんの描写が足りていない、というか流してしまいました。完全にミスですねorz
 はっはっはwチョウロウの強さはVS人狼オヤジーズ戦においてその真価を発揮しますのでw

リーマン様>まさに宮仕えというか、お役所って感じにしました。硬く硬く、未知の物には警戒するっていう感じで。おお、そこに気付かれるとはw

アイギス様>長老が強いのはそれまでの実戦経験、そして老いたりとはいえそれらの戦いを潜り抜けた猛者であることから考えています。まぁ、今の所全く関係ない方向にしか発揮されていませんがw

夢幻の戦士様>初めまして^^ 速い・・・ですか?毎日毎日大量に流れ込む作品を見ているとそんな風には思えなくて^^; そして長老の怒りは今回も報われませんでした、とさw

ジェミナス様>はい、いったん終了ですw そして次回からはw


さて、次はどのはなしにしようかな、と

ではでは^^ノシ

BACK< >NEXT

△記事頭

▲記事頭

PCpylg}Wz O~yz Yahoo yV NTT-X Store

z[y[W NWbgJ[h COiq [ COsI COze