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▽レス始

「月に吼える 第拾六話(GS)」

maisen (2005-07-10 02:56/2005-07-10 03:00)
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「一体これはどういうことなのですかっ!」

「さぁ、全く分かりませぬ・・・美神殿達に、何かあったのではないでしょうか?」

「そんなことは見れば分かります!鬼門達は周辺の捜索を!私はあそこを見てきます!」

「「はっ!」」


 小竜姫たちが天竜姫の情報を基に探しに出てみるも、既にそこには天竜姫どころか人影すらも碌に無く、辺りには静寂が広がるばかり。それでも一縷の望みにかけて探し回るも全くの無駄骨となり、肩を落としながら一旦美神の除霊事務所に戻ってみればそこにあるのは無残にも黒く煤けた残骸と、僅かに立ち上る白い煙。

 しばらく唖然としていた彼女らだが、小竜姫はとりあえずの指示を出すと、既にビニールテープの張られ、封鎖されたそこに飛び込んでいった。

「・・・酷い」

 数時間前の姿はそこに無く、あるのは只黒く煤けた瓦礫ばかり。いや―――


「―――これは・・・」

 ―――僅かな残り香。竜族と、邪悪な気配。

「一体何者が・・・」

がらっ

「っ!!」

ちゃきっ!

 その匂いに集中していた小竜姫の背後から、瓦礫を突き崩す音とともに何かが這い出てくる。武神らしく凄まじい速度で反応し、神剣を構え振り向く小竜姫。果たして現れたのは―――


「いてて・・・ふう、何とか助かったようだな」

「あ、熱かったんだな〜〜」

 イームとヤームの竜族凸凹コンビであった。


「―――何者ですかっ!名を名乗りなさい!」

「「うわっ!」」

 そう激発する小竜姫に対し、いきなりの巨大な竜気に仰天する2体。

「「げっ!!」」

 そしてそのまま回れ右をして逃げ出そうとするが―――

チャキ

「―――そこより一歩でも動けば、そのそっ首叩き落されるものと思いなさい」

 首に添えられる冷たい感触と、ソレより冷たい小竜姫の言葉。

「「あう」」

 こりゃもうダメだ、と死出の旅を覚悟した彼らであった。


「―――つまり、その「怪しいフードを被った竜族のお偉いさんらしきもの」に騙された、というわけですね?」

「「・・・はい」」

「―――馬鹿ですか貴方達は!」

ごぅっ!!

「「ひぃぃっ!!」」

 怒声とともに抑えられていたはずの竜気が再び爆発し、ひたすら萎縮するイームとヤーム。

「・・・ふぅ。それで、何で今更こんな所に?」

「・・・それは―――」

 フードを被った怪しい影が窓から飛び出した直後。すぐさま意識を取り戻した二人組は脱出を考えたが、窓の下には人間が一杯。

 ビルの内部に逃げ出そうにも、そちらは既に何に引火したのやら火の海であり、どこかに良い出口は無いか、と探してみれば、衝撃で崩れたらしい本棚の裏に緊急脱出用らしきモノ。慌てて飛び込むもビルの一フロアを吹き飛ばす衝撃は伊達ではなく、既に途中で崩れ落ち頭は通る位の隙間はあるものの行き止まり。下手に崩せば二次災害があるために手も出せず―――しょうがないのでほとぼりが冷めるまで隠れていた、というわけである。


「・・・やはり黒幕が居ましたか」

「へい、その霊格といい、まんざら嘘ではない、と思ったもので、すっかり・・・」

「―――よいでしょう。貴方達、まだ情状酌量の余地はあります。こちらに協力しなさい」

「「許して頂けるんで?!―――ありがとうございますっ!!」」

「これからの働き次第では、ということです―――『鬼門!聞こえますか!』」

 性根が甘いのか、二人組に利用価値を見出したのか。司法取引を持ち掛け、その二人を手駒にくわえる小竜姫。そのまま鬼門達に念話で話し掛けるも―――

『鬼門?どうしたのです?』

「ど、どうかされたのかな?」

「いえ、おかしいですね・・・鬼門たちと連絡が「あいつらなら外でおねんねしてるよ」―――っ!」

どす

「―――ぁ」

どさり

「・・・ふん。音に聞こえた武神も、不意を衝かれればこんなもんさね」


 ―――その反応は無く、返ってきたものは全く気配を感じさせずに背後に突然現れたフードからの一撃。その一撃をモロに食らい、倒れ伏す小竜姫。

「貴様はッ!」

「・・・こんな所に隠し通路かい。さて、鼠を炙り出すとしようかねぇ」

 ヤームの声を無視しつつ、先ほどまで彼らが隠れていた通路に向かってフードの中から滑り出した大口を持った化物たちが何匹も飛び込んでいく。

「さ、さっきは、よ、よくもやってくれたんだな!」

「・・・雑魚どもが意外にしぶとい。―――いや、利用価値はまだあるかな?」

 何かを思いついたようにそう呟くと、そのフードを体から落とす。中から現れたのは―――


「「―――っ!!」」


 そして彼らを驚愕させたのは―――


―――それより数分後―――

ドドドドドドドドドッ!!

 地下下水道を滑るように進む一隻のボート。船上にあるのは美神たちの姿。そしてそのボートを追いかける先ほどフードの人物が使わした大口の化物たち。

「ビッグイーター?!それにしてもあの数って反則じゃない?!」

 ビッグイーターと呼ばれた化物たちの、その数―――およそ50匹。周囲の状況と足手纏いと保護対象のことを考えればとりあえず―――


「三十六計逃げるにしかず!スーパーニトロターボブーストチャージャー、オンッ!」

ボッ!―――ドカン!

 怪しすぎると言うか、安全性に全く気を使ってないのでは?と思わせるような装置のレバーを引っ張ると、案の定爆音とともに吹っ飛ぶような加速で下水道を駆け抜けるボート。

「うひゃぁぁぁぁぁ!!」

「・・・・・・きゃっほう♪」

「―――よしっ!追いついてこれないみたいね・・・このまま一気に東京湾まで抜けるわよっ!」

「―――美神さん!前っ!」

 しかし下水道の出口には鋼鉄製の柵があり―――

「大丈夫よ、ちゃんとスイッチ一発で開くように―――


かちっ


 美神がリモコンを操作した後も、依然としてその存在を示していた。

―――あれ?・・・おキヌちゃん、乾電池とか持ってないわよね?」

「美神さーーーーん!!!!」


―――東京湾―――

 静かな夜であった。辺りには船の姿も無く、近くには観光スポットも無く倉庫が広がるばかり。

ドゴォォン!!

 ―――突如爆音と閃光がその静寂を切り裂くまでは。


「備えあれば憂いなしっ!!」

「どこからそんなもの手に入れたんですか?!」

「お金があれば大抵のものは手に入るのよおキヌちゃんっ!」

「へー、『からしにこふ』とか『くれいもあ』っていうんでござるかー」

「・・・・・・うん、そう」

 バズーカを肩に担いで未だ異常な速度ですっとばす船上にて勝ち誇る美神と、その姿に思わず突っ込むおキヌ。その後ろでは、簡易な武器庫と言うか兵器庫となっている船の倉庫を覗いたお子様二人がなにやらごそごそやっていた。


 星もあまり見えない夜空の下、東京湾に飛び出したボート。そして―――

ずどどどどっ!

『キシャァッ!!』

 空から降り注ぐ閃光と、それに吹っ飛ばされるビッグイーター。

「美神おねーさん!あそこっ!」

 忠夫が指差す方を見てみれば、そこにあるのは左手で閃光を放った小竜姫と―――先ほど事務所に襲撃をかけた竜族たちの姿。

 だが、それは

「2対1とは卑怯な!!」

 どう見ても小竜姫と彼らが激しく空中戦を繰り広げている姿だった。

 だが、地力の差か。しばし見ている内にあっさりと小竜姫が2体をその手に持った神剣で撃墜する。海に落ちた竜族たちを眺めた後、そのまま手招きし、岸を指し示す小竜姫。

「・・・さっすが武神ねー。なかなかやるじゃない」

 美神たちは、こちらの最強戦力と無事に合流できた事で安堵しながら、その誘導に従って近くの倉庫街の桟橋へと船を着けるのだった。


「無事でしたか、天竜姫様」

「どうやらそっちも無事だったようね、小竜姫。いきなり居なくなっちゃうから、どうしたのかと思ったわよ」

「ご心配をかけたようで・・・」

 舞い降りてきた小竜姫を正面に、美神、おキヌが並び、更にその後ろに天竜と忠夫のお子様コンビ。

「さ、天竜姫様こちらへ。早く戻りましょう」

 そして美神たちを舞い降り、着地した勢いそのままに慌てたようにすり抜けると、天竜の前に立ち、手を伸ばす。言われるままにその手に向かって歩きだす天竜姫。


―――ぎゅっ


 だが、進み出ようとした天竜の手を握って放さない忠夫。

「・・・どうかされましたか?」

「犬飼君?」

「・・・・・・?」

 その問いに答えず、只鼻を鳴らす忠夫。

「美神おねーさん」

「なによ?」

「小竜姫様とやらは、なんでござるか?」

「さっきも言ったでしょ?武神よ、竜神族の、ね」

「―――天竜からは、里で一番大きな樹のような、良い香りがするでござる。天竜も竜神族でござろう?」

「ええ、そうよ」

「ですから、私が迎えに「―――だが、お主からは


ちゃきっ


―――歪んだ匂いがするのでござるよ」


 呟き、木刀でなくその中の仕込み刀を抜き放ち、小竜姫に向かって構える忠夫。


キンッ!


 そしてその言葉を聞くと同時に懐から神通棍を取り出し輝かせる美神。

「・・・・何者よ、あんた」

「み、美神さんまで、一体何を仰るのですか?!」

「その子は人狼よ。その直感と超感覚、知らない訳が無いわよね?」

「りゅ、竜神族の言葉が信じられないと?!」

「あんたが―――本物ならね!」

 そう言い放ち小竜姫に向かって神通棍を振り下ろす―――


がつんっ!


「・・・・・・・・・ちぃ!」


―――が、小竜姫は舌打ちすると腰から剣を抜き放ち迎撃する。


「正体を現すでござる!!」


ズバッ!


 追撃に放たれた忠夫の一撃を跳躍して避けた小竜姫は―――いや、その姿は既に小竜姫ではなく


「小僧がっ!一度ならず二度までもっ!」

 偽装をといた、紫色の長髪を棚引かせた蛇の印象を受ける女へと変化していた。


―――数十分前、元美神除霊事務所―――

「「―――っ!!」」

 彼らを驚愕させたのは、フードの中から現れたその姿。

「ふふふ・・・どうだい、そっくりだろう?」

 その姿は、確かに先ほど昏倒し、未だ地面に倒れ伏す小竜姫。

「な、なんのつもりだっ!」

「さぁて、ね。あんた達を惑わせる為かもよ?」

「ふ、ふざけるんじゃないんだなっ!」

「さぁ、眷属達も目標を見つけたみたいだし、せいぜい踊ってちょうだい―――」

ひゅおっ

 そう言い残し、飛び立つ小竜姫の姿をした何か。

「追うぞ、イーム!」

「わ、分かったんだな!」

ひゅっ

 そして、それを追いかけて飛び立つ竜族達。


 彼らはそのまま東京湾上空まで飛び続け、突然聞こえた爆音に海上を見下ろせば煙を突き破りかっ飛んでくる一台のボート。


ずどどどどっ!

『キシャァッ!!』

 そしてその後ろから這い出てきたビッグイーターたちを振り向きざまの掌からの閃光で吹き飛ばす小竜姫の姿をした何者か。


「っ!なんのつもりだ!」

「これであいつらにとって、『味方に見える』のはどっちだろうねぇ?」

「―――しまった!」


 黒幕の手のひらで踊らされたことに気付いた彼らは、懸命にその事を伝えようとするも、奮戦空しく退場させられる。


 これで準備は整った。あとは何食わぬ顔をして天竜姫を攫ってしまえば、向こうが気付いた時には既に遅い。

 後に残るのは顔も、正体も分からぬ何者かが天竜姫を殺害したと言う事実だけ。地上の竜族たちと竜神族たちとの関係悪化は間違い無い―――はずであった。

 半人狼の少年がイレギュラーと成りさえしなければ。

「力づくってのは性に合わないんだがねぇ・・・此処まできたらそんなことも言ってられないか」

「で、黒幕さん?いい加減諦めて、名前ぐらい名乗ったらどうかしら?」

「ふふふ・・・諦めて?いい冗談だ。その気概と、小僧の意外さに免じて名乗ってあげようじゃないか」


ドンッ!


 その言葉とともに放たれたのは、圧倒的なまでの、小竜姫に匹敵さえする巨大な魔力。

「・・・やば」

「私の名はな―――


ひゅっ


 呟きとともに一瞬で、神通棍を油断せずに構えていたはずの美神の懐に飛び込み、その続きを耳元に囁く。


―――メドーサ。冥土の土産に、持って行きな」


ずごんっ!!


 いっそ優しささえ篭ったようなその呟きとともに放たれた、先端が2つに分かれた槍は、明確な殺意とともに美神を一撃で吹き飛ばした。

「―――ぁ、がはっ!」

「ほう?今のを喰らってたかが人間が生き延びるとは、ねぇ」


 吹き飛ばされた美神は、そのまま倉庫の壁に叩きつけられ、沈黙する。息はあるようだが、もはや動ける状態にない。そして残ったのは、戦闘能力の無い幽霊少女と竜神の姫。そして―――

「ガォゥ!!」

 狼のごとく、その刃を携え、こちらを見てさえいないメドーサに向かって飛び掛る半人狼の少年。

「ふん。思い切りはいい。その意気も悪くない。だが―――


バキィ!


―――弱い」


 その一振りで美神と同様に吹き飛ばされる。


ずごんっ!!


 地面に叩きつけられ、只の一撃で体のあちこちからは出血し、おそらく骨も何本か持って行かれている。

「・・・・ふん」

 その様子を見て、鼻で笑ったメドーサは、その歩みを残った2人へと向ける。

「―――や、やらせません!!」

「・・・・・・」

 その前には、怯える竜神の少女と、それを庇うように手を広げて立つおキヌ。その数メートル前で立ち止まったメドーサは、誰にも聞こえない声でそっと呟いた。

「・・・・・・あんたは、幸せ者だねぇ」


―――痛い。

 体中の骨が軋んでいるし、切り傷、擦り傷なんて数える事さえしたくない。

―――痛い。

 胸の辺りが熱い。多分2、3本は折れてる。

―――イタイ。

 一撃。只の一撃でもうボロボロだ。速い、重い、鋭い。そして容赦の無い、殺す気の一撃。

―――――――――――――怖い。

 視界は歪んでいる。頭がふらふらする。もうこのまま目を瞑ってしまいたい。

―――――――――――――死にたくない。

 勝てる気がしない。あんなのに勝てる訳が無いじゃないか。


「・・・いいさ。纏めて死にな。これだけたくさんお仲間が居れば、死出の旅路も怖くなんて無いだろう?」

「美神さん!横島さん!―――だれかっ!」

―――――――――――――死にたく無いけど

痛いけど、怖いけど。

「・・・・・・助けて、犬飼君!」


―――これで立たなきゃ男じゃないだろうっ!!!

「・・・・・・・・ぉぉぉぉおおおおおおおおっ!!」

「ふん・・・しぶとい、いいさ、纏めて死になっ!」

 そして繰り出される槍。

「死んでたまるかっ!!拙者が死んだら!だれが護る!!!」


『良く吼えた』
『良く言った』

『ならば―――』

『見せてみろ、ガキ』
『証明せよ、小僧』


キュンッ

ズドドドドドン!

―――バキューン


 いつか聞いた、銃声が後から来る超々距離からの射撃音。

 その一撃は忠夫に向かって繰り出された槍を粉砕し、まるでメドーサを避けるように、だがその足元に確実に着弾し―――そこから粘度の高い煙を吐き出す。


そして―――


ズダン!

「がはっ!」


 ―――最後の一発が、忠夫の胸に直撃する。


 しかしその体を貫く衝撃とは裏腹に、弾頭は忠夫の体中に、金色の光を放ちながら拡散する。


―――キュウン

「・・・間接部・ロック・解除。火器管制回路・停止。望遠モード・停止。改良型・ロングレンジライフル・『テュポーン』・異常なし。通常モード・復帰」

「ふむ、聞くまでも無いが、着弾はどうじゃ、マリア?」

「サーチ―――敵性存在・武器・破壊成功。撹乱・成功。特殊弾頭・着弾・確認。指示遂行率・100%と・判断します」

「よしよし。満月の光のみでできた月光石と、我が錬金術の粋を集めた解呪薬。うまいこと効いてくれるじゃろ」

「ドクター・カオス。引き続き・ダイレクト・サポート・可能ですが?」

「・・・いらんよ」

「しかし」

「・・・大丈夫じゃよ。そんなに必死にならんでもいいわい」

「ノー。ドクター・カオス。これは今後の・状況を鑑みての―――「いつになく饒舌じゃのう、マリア?」―――ソーリー・ドクター・カオス」

「まぁ見ておれ。あの程度で死にゃせんだろうが、今回のはちとハンデがきついからのう。只のご褒美じゃよ、今の台詞への、な」

「理解・できません」

「・・・・冷たいのう」


「くそぉっ!!」

ぶおっ!

 流石『ヨーロッパの魔王』謹製。その煙幕がメドーサを数十秒も惑わせたのは驚くべき、といってもいいだろう。そして、「彼」にはそれだけあれば十分であった。

 メドーサがなんとか煙を吹き飛ばし、辺りを確認してみれば既に―――誰の姿も無い。美神も。おキヌも。天竜姫も。―――忠夫も。


「いたたたた・・・あの爺、ぜってーわざとこんな使い方しやがったな!」

「・・・・・・誰?」

「おう、気付いたか天竜」

「・・・・・・犬飼君?」

「ぴんぽ〜ん!大当たり〜〜♪」

「・・・・・・でも」

「まぁまぁ、俺にも実際よくわからんし。とりあえず賞品は―――


―――あのおねーさんに帰ってもらうってので、どうかな?」


「・・・・・なぜだっ!今の射撃は分からんが、逃げ出せるはずがないっ!」

 狂乱したように辺りの建物に魔力砲を打ちながら、ひたすら飛び回り捜索するメドーサ。

「どこだ!!どこにい―――


ずがんっ!!


―――がぁっ!!」


 その横手から、突然飛んで来た鉄骨は、狙いバッチリメドーサに直撃する。そしてその衝撃に動きを止めたメドーサに向かって次々と飛来するコンクリートの塊や、マンホールの蓋、ベンチや工具のたっぷり詰まった工具箱。


すごごごごごごごごんっ!!!!


「がぁぁぁぁぁっ!!」


 とっさに手に持つ槍でいくらかは打ち落とすも、全方位から機関銃のごとくぶっ飛んでくる巨大な質量。支えきれる訳も無く、なすすべもなく、只、打ち据えられる。

「ふざ・・・・・けるなぁぁぁぁぁっ!!」

 確かに―――非常識だが―――誰かが投げている。しかも縦横無尽に倉庫街を駆け回りながら。だが―――なぜ足音がしない?いや


気配が無い?


「さて、問題です」

「どこっ―――いや、誰だ貴様ぁぁぁぁっ!!!」

「人狼にとって、狩りは日常。しかし、相手は野生の獣。捕まえるのにもっとも有効な手段は?」

「出て来い!姿をあらわせぇぇぇっ!!」

どごごごごごごっ!!


 何処からとも無く、いや、周り全てから聞こえてくるような、そんな声。その戯言が喋る間も、ひっきりなしに飛んでくるコンクリートの群。よく見れば、周辺の頑丈なはずの倉庫の壁や、地面が凄まじい勢いではがれていっているのが分かったろう。もはや打ち返す余裕も無く、ひたすら避けつづけるメドーサ。気付けば辺りにはそこらじゅうに障害物ができている。


 そして、そのばかげた弾幕が唐突に途切れ―――


「答えは、気配を完全に消してゼロ距離から―――

「―――っ!!!」

―――最大威力を持って、一撃で仕留める、ってな感じで」


―――その言葉は、背後から、耳元に囁くようにして語られた。


『狼の牙。そは何の為に?』

「獲物を狩る為、じゃないのでござるか?」

『では、獲物は何の為に?』

「えーと?」

『なぜ我らにはこれほどまでに強力な牙がある?』

「護るため、かな?」

『それでは足らぬ。そも一つの答えであるが、まだ足らぬ』

「じゃあ、何が足らないんだ?」

『護る為の牙をお前は知った。ならば、それを持って、次の牙を見つけてみせろ』

「牙?」

『人狼としての、身体強化。霊力を使ったその増幅は、お前のその力をさらに高める』

「・・・殴り合えってか?」

『さぁな?』


―――それはまるで夢の中で。パイパーの呪いが月の力となんだか怪しい力で無理やり解けていく中で。いつか見た影法師との会合であった。


「・・・・・・何者だ?」

「さぁね?」

「人狼だと言ったな?さっきのガキの仲間か?」

「どうだろね?」

「―――答える気は無し、か」

「とりあえず、今日はこれでお開きにしません?」

「・・・・・・殺さないのか?」

「・・・・・・な〜んか、まだまだ切り札持ってるでしょ?互いにここらが引き時だと思いませんか?」

「・・・・・・ふん、狸が」

「・・・・・・狼だっての」

ヒュン!

 その会話を最後に、あっさりとその姿を消すメドーサ。

「さっすがプロ。引き退きも鮮やか。―――あああああ、えー乳や。嫁に誘ったら来てくれんかな?」

―――そう呟いたのは、確かに青年へと姿を変えた犬飼忠夫だった。


「わっはっはっはっは!!!見たか、マリア!!」

「―――横島さん・いえ・犬飼忠夫・及び・人狼のデータライブラリの・修正を・求めます」

「いらんよ。あれほどの膂力と速度、並みの人狼では不可能じゃ」

「彼は・半人狼では?」

「そうじゃよ?ただ、霊力も使わず人狼並みの力を出せる、異常な個体、じゃがな」

「―――画像データ・保存・プロテクト―――完了」

「いやいや、えーもんみせてもろうたわい。さて、帰るぞマリア」

「・・・・・・・・・・・・・イエス。ドクター・カオス」

「わーっはっはっはっはっは!!!」

 ヨーロッパの魔王と、鋼鉄の少女を見送るのは、只、半分に分かれた月のみ―――。


---アトガキッポイナニカ---


はいすいませんmaisenでございます^^

ええと、おまけ「今日の人狼」及びシュレーディンガーの出番は次回のお話と言うかエピローグで。


・・・・・・・だって全部ぶち壊すんだもん、あいつら。orz


と言う訳でレス返しー。


法師陰陽師様>ええと、力と記憶を持ってかれるだけですね。原作でも確認しましたから間違いないです。 王道ですかwいい響きです

が、残念ながら忠夫君(大)、不意打ち奇襲に罠罠罠、ですからw 今回は珍しく・・・いや、不意打ちですねw ヒロイン?さぁねぇ(何

名称詐称主義様>シュレーディンガーの次は彼らが邪神と言う話がw いやいや、あくまでも人間とその最高傑作ですよ? あー、そん

だけ人物動かすのは流石に腕が足り無すぎorz ですので、まぁ、もうちょっと、お待ちください。

皇 翠輝様>楽しんでいただければ幸いです^^; ああ、こっちの方で答え返して頂いてましたね^^;

casa様>今回の、という区切りならば確かに彼女がヒロインです。 反応は・・・また次のお話でw

柳野雫様>漢ですかw カオスも人間。生活しなきゃ、しんどいんですw 不死ですから、しんどいだけw

桜葉 愛様>暗躍と言うか、見物と言うか。ま、今回はあんまり手出ししなかった訳ですがw 元に戻ったらそれは犯罪ですw 詰めが甘

い、という辺り判り難いかな、とも思っていたので、その辺見ていただけてるとうれしいっすw

ジェミナス様>・・・シロタマ?あれ?(爆 ええと、すんませんもうちょとお待ちおばw

アイギス様>・・・立っちゃったかなw シロタマの反応・・・・見れるかな(マテ

ふぁんぐ様>アルルゥ・・・ですか?←未プレイ ええと・・・ググりググり・・・。 いいかもしれん(爆

偽バルタン様>カオスの生活・・・・それはなぞに包まれています。とはいえ、今回も怪しい発明品持ってきてますから、なんとなく予想つ

きません?w

梶木まぐ郎様>侍の誇りは・・・どっかにあるんですよ、きっと(マテ 一歩進んだ忠夫君(大)の方が役に立ってくれますように(爆

へのへのモへじ様>いやいや、そう言っていただけると嬉しいですねーw さてさて、元に戻った訳ですが、そのお話は後日談にて。 

残念ながら、今回のカオスの目的は・・・なんだったんでしょうねぇ?w 記憶ですが、バッチリ引き継がれます。原作で、そのせいで横島

君例のごとくボロボロでしたからw


ええと、後日談急いで出しますねー^^;ノシ


壊れ表記がいるかもしれん・・・・ガクガクブルブル((;・д・))

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