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「Ringu2  (GS)」

犬雀 (2005-07-09 22:19)
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『Ringu2』


「お兄ちゃん!御飯だお!」

今日の横島の一日は元気な少女の声から始まる。
といってもこの程度で起きるような横島ではない。
何しろ昨日は一騒動あったのだ。
常人なら生死の境をさ迷うようなダメージの回復に全体力を消耗した彼がこの程度で起きるはずはない。

「むう…起きるつもりは無いのかお?」

プーッと頬を膨らませて立つのは元ビデオの呪いの少女りんぐぅである。
横島に棲家だった呪いのビデオに相撲番組を上書きされ、戻るに戻れず結局横島の家に居候することになったのだ。

「ならば実力行使だお!」

りんぐぅはエプロンを脱ぎ捨てスクール水着一枚になると押入れを開け、棚に登って大口を開けてグガガガカとイビキをかいて眠る横島に狙いを定めた。

「いくお!必殺ダイビングボディプレスだお!!」

掛け声と共にジャンプするりんぐぅの脳天が押入れの天井にぶつかる。

「だおっ!」

ゴキュッ!と相当にヤバそうな音をさせ、りんぐぅはもんどりうって横島の上に落下した。
奇妙な騒音に眠りを妨げられ、寝返りを打とうとした横島の上に落ちたりんぐぅの鳩尾に横島の一部が突き刺さる。

「だふっ!」

鳩尾を押さえてのた打ち回るりんぐぅ。
しばらくじたばたしていたがやがて力尽きたかクテリと気絶した。
さしもの横島もこれだけの大騒ぎなら起きるかと思いきや、実に気持ちよさそうに白目を剥いて失神していた。

そりゃあ朝の漢の元気印、朝もっこりの上に小柄とは言え一人分の体重が降って来たのだ。
死ななくて良かったね♪ってレベルだろう。
つまりは相打ちだったということである。

結局、二人は仲良くネンネした。


「もっとまともに起こせんのか!!」

「りんぐぅだって失神してたんだお!!」

朝飯というかすでに昼食の時間だが、ちゃぶ台の前で喧嘩する二人。
横島君どうやら今日は自主休校と決めたらしい。

「だいたいこれはなんじゃっ!!」

ちゃぶ台を指差す横島。
彼の目の前にはりんぐぅが作ったと思しき料理が並んでいる。
生の魚を料理と言うのであればだが。

「何って朝御飯だお?」

「生魚をそのまま食えと言うのか!」

「好き嫌いはいけないんだお!それにサバは体にいいんだお!!」

「サバを生で食うのは危険じゃ!!」

別に必ずしも危険と言うわけではない。
だがサバとか青魚にはアニサキスという寄生虫がいることがある。
素人に生食はお勧めできない。

「ダイエットになるんだお!」

「パラサイトに頼るつもりはない!!だいたいどこで買ってきた?!」

「通りすがりの行商人のおばさんから買ったお!」

別に寄生虫でダイエットしなくても、彼はそのバイトの性質上均整の取れた体をしている。
一見細身だが筋肉は締まっているのだ。
それにアニサキスはダイエットに向かないっていうか意味がない。
単に激しい腹痛にのた打ち回るだけだ。

「文句言うだったらりんぐぅが貰うお!」

言うなりりんぐぅは横島の皿の上のサバを掴むと一息で丸のみしようとした。
しかしまあ、今回のサバはかなり形が良かったもんだから当然のごとく喉に詰まるのである。

「けふけふ…」

「馬鹿!出さんか!」

横島に後頭部を張り飛ばされて宙を舞うサバと「けほけほ」と涙を浮かべて咳き込むりんぐぅ。

ちょっと見には小学生の美少女が生サバを飲み込もうとする図と言うのはかなりシュールな光景である。
元々りんぐぅは半分ペンギンらしいからこれが正しい食事法だったのかも知れないが見た目は童顔丸出しの少女だ。
はっきり言って異様な展開に横島は脱力した。

「だお〜。イワシにすれば良かったお…」

「どっちにしろ生で食うな!」

「魚は生食が一番美味しいんだお!それにオカズなんか作れないお!」

「んじゃ俺は何を食えばいいんだよ。」

「生サバが嫌なら生ホッケもあるお?」

「生から離れんかっ!!せめて刺身にしろっ!」

朝から刺身も豪勢なものだが、言ってみてから横島は気がついた。
ジットリした目でりんぐぅを睨んでみると彼女は目に見えてうろたえだす。

「もしかしたら…これって悪戯のつもりじゃあるまいな…」

「な、な、な、なんのことだお?りんぐぅは家主に悪戯なんかしないお?」

「ほほう…」

ジトっとした視線は相変わらずである。
元呪いの分際で意外と心理的なプレッシャーに弱いのかダクダクと汗を流し出すりんぐぅ。その目がちらちらと押入れの一角に泳ぐのを横島は見逃さなかった。
やおら立ち上がるとガバッと押入れを開けそのまま膝をつく。

「なんちゅームゴイ真似を…」

そこには横島君の煩悩の源、エッチぃ書籍の皆さんがご丁寧にも纏めて輪切りになった惨殺死体となって転がっていた。

横島から立ち上り出す負のフォースに怯むりんぐぅ。
慌てて逃げようとした彼女の頭がグワシと掴まれる。

「あだだだだ…指!指!めりこんでいるお!!」

「なんであんな真似をした…」

地獄を吹きすさぶ風はこんな音色なんだろうなぁと思わせる低い声にりんぐぅの顔が青ざめた。それでも必死に抗弁すべく口を開く。

「だって!こんな美少女が同居しているのにあんな危険な本は要らないんだお!!」

「あほう!お前みたいなツルッペタンは煩悩の対象外じゃ!!」

「嘘だお!昨日、事務所のお姉さん達が言っていたお!お兄ちゃんは節操がないから同居なんて駄目だって!!」

「ぐわ…」

昨日の悪夢を思い出して崩れ落ちる横島。
その目に恐怖の色が浮かび上がると膝をついたままズリズリと部屋の隅まで這っていき、そこでダンゴ虫のように丸くなって震えだした。

痛む頭をさすりつつりんぐぅは横島に近寄ると彼の頭をよしよしと撫で始めた。

「うんうん…怖かったものね。辛かったものね…」

「あ…う…って半分はお前のせいじゃぁぁぁぁぁ!!!」

「だおぉぉぉぉ!!」


そう…昨日横島は地獄を見たのだった。


時は一日遡って昨日の朝…


「ちっ!まだ息がある…」

怒り心頭という様子の令子。
血に濡れた神通棍を持ち肩で息する様はまさに夜叉である。

横島が心配で朝早くから駆けつけてみれば、当の横島がまだあどけない少女に濃紺のスクール水着を着せて自分の横に寝かせているという場面に遭遇し、「おのれ横島!ついに犯罪者へと堕ちたか!ならば本人のため!いいえ何より事務所の名誉ため!ここでコイツを処分する!!」といつもの倍の霊力を込めた神通棍の一撃を叩き付けたのだ。

彼女の足元ではボロボロになった人っぽい物体がかすかに痙攣している。
その横には目から怒涛のごとく涙を流して震え上がるスク水少女がいた。

令子は少女に憐憫の篭った視線を向けた。

「ごめんね…コイツと一緒なんて怖かったでしょ。今から処分するからね…」

ニタァリと返り血のついた頬を歪めて笑う夜叉に「ヒイィィ」と震え上がる少女。
怖かったのはどうみても令子のことなんだが本人は気づいていない。

「さあ…性犯罪者…長い付き合いだから末期の台詞ぐらいは聞いてあげるわ…」

やる気満々で神通棍を振り上げる令子に足元のボロは必死に途切れ途切れの声を出す。

「ち…ちがう…俺は…む、無実…」

「まだ言うか!!どこの世界に見も知らない女の子にスク水着せて横に侍らせて寝ている奴が無実だと言う法律があるの!それとも何?この子はあんたの妹だとでも言うつもり?!!」

トドメをさすべく神通棍を振り上げる令子に家主を抹殺されたら行くところに困るとりんぐうが必死にすがりついた。

「ち、違うお!り、りんぐぅは呪いだお!!」

「へ?」

「だ、だから!りんぐぅは呪いだからお家が無くなっちゃって!それでこのお兄ちゃんが面倒見てくれるって!お、お兄ちゃんは悪くないんだお!!」

「そう…」

納得したのか令子は神通棍を納め足元に転がるボロキレを冷たい目で見つめる。
ヨロヨロとボロキレは人の形をとり始めた。
相変わらずとんでもない回復力である。

「そうなんです…俺は無実っす…」

だけど令子は聞いてくれませんでした。
ふぅと息を吐くとりんぐぅに憐憫の目を向ける。

「つまりは手遅れってことね…」

「え?」

「すでに調教済みか貴様あぁぁぁぁぁぁ!!!」

「あんぎゃぁぁぁぁ!!」
「だおぉぉぉぉぉぉ!!」

ついに爆発した令子の怒りは横島と巻き添えになったりんぐぅをたちまちのうちに吹き飛ばした。


「えーと…つまり…りんぐうちゃんはあのビデオの呪いの本体ってことなんですか?えーと…あのペンギンの中身?」

「ぐす…そうだお…こ、怖かったんだお…」

「あ、もう怖くないからね…」

泣きじゃくるりんぐぅをよしよしと宥めているおキヌの横では令子が手足をありえない方向に曲げている壊れた人形のようなものの襟首を掴んで揺さぶっている。
微妙にコメカミに汗をかいているのは流石にやりすぎたと思っているのだろう。

「つまりあんたはもうビデオに戻れないから解呪は成功したってわけね。でかしたわ!横島君!!」

「もう返事も出来んと思うでござるが…」

「なんか空から階段が降りてきているしねぇ」

「あ、あはは…」

変わり果てた師匠の姿に涙ぐむシロと、天から降り注ぐ光とともに現れたエスカレーターを珍しいげに見ているタマモにおキヌの額からも冷たい汗が流れた。
家主の訃報?に泣きじゃくっていたりんぐぅがおキヌにすがり付きながら令子にピシリと指を向ける。

「怖かったんだお!このおばさんは鬼だお!!」

「誰がおばさんよ!」

「りんぐうから見ればおばさんだお!」

「は!笑わせてくれるわね!そんなツルペタなお子様が!」

「な?!り、りんぐぅはこれからだお!おばさんこそもう少ししたら垂れるだけの人生だお!!花の盛りは短いんだお!」

エスカレートする二人の口論は留まるところを知らない。
考えてみれば子供と同レベルで口論する令子も大人気ないのであるが、意外と子供っぽいところもある彼女なのだ。

「言ってくれるわね…」

「やるかだお!」

爪をまむしに曲げる令子にりんぐぅも怪しげな中華拳法の構えをとった。
強いて言えば中国4千年の歴史、形意拳の一つ「ペンギン拳」といったところだろう。
中国にペンギンがいたかどうかは不明だが。

「あんたが私に勝てると思うの?」

「りんぐぅは呪いだお。呪いの恐ろしさみせてやるお!」

「セコイ悪戯しか出来ないくせに!」

「そういうならコレを受けてみるだお!」

キラリとりんぐぅの目が光ると組んだ腕から七色の光が放たれ令子を直撃する。
「くっ」と怯むが特に変わった感じはしなかった。

「何をしたの?」

「ふふふ…おばさんが今日一日お尻で口笛を吹く呪いだお!!」

「うそっ!っていうか何よそれ!」

力んだとたんにに令子の背後から爽やかな笛の音が響き渡った。

プピー

「いやぁぁぁぁ!違うっ今のは違うっ!」

「けけけ…力むとまた鳴るお!」

ポピー

「嘘よっ!この美神令子が人前でオナラなんて!!」

「オナラじゃないお!尻笛だお!」

どう違うのかはわからないがとにかく違うらしい。

スペー

「いやぁぁぁぁ。これは夢よ!夢なのよぉぉぉ!!」

「納得したかお?」

錯乱する令子にりんぐぅは勝ち誇った顔を向けた。
セコイと言えばセコイ…しかし令子のような美女にとってこれほど恐ろしい呪いはない。
屁ではないと言われても出る音がマヌケすぎる。

「しました!しましたから止めてっ!!」

「わかればいいんだお…」

こうして令子はりんぐぅの呪いの力の前にあっさりと屈したのである。

一段落してやれやれと座り込む一同。
勿論、横島はまだボロ雑巾状態だが少しずつ人の形をとり始めていた。
もう10分もすれば復活するだろう。
勝手知ったるアパートでおキヌが煎れたお茶を皆に配る。
ズズーと一息ついて令子はりんぐぅに話しかけた。

「で、あんたはこれからどうする気?」

「どうって言われてももう戻れないし…ここに住ませてもらうお?」

「ちょ!あんたいくら元呪いだからって自分を大事にしなさいよ。」

慌てる令子の心の中では横島ロリ説は確たるものになっているようだ。

「そ、そそそ、そうです!女の子が横島さんと同居なんて!」

「拙者だって我慢しているのに!」

「まあ狐に油揚げよねぇ…」

同居という部分にこだわるおキヌとこの際だから自分の願望を言い切るシロ、そして傍観者のスタンスを崩さないタマモと三者三様の反応をするが、根本的に横島君がこの娘とムニャムニャの仲になるかもというのは同意らしい。
これは流石に横島も死んではいられない。このままでは不名誉な称号がついてしまう。

「俺はロリちゃうわぁぁぁ!!」

「いいんだお…住ませてもらう以上、りんぐぅだって覚悟しているお…でも痛いのは嫌だお?」

目元を染めて畳に「の」の字を書くりんぐう。
どうにもマセた少女である。
無論こんな台詞を肯定しようものなら命どころか魂まで存在が危うくなるのは間違いない。

「痛いってなんやぁぁぁぁぁ?!!」

「そんなこと女の子の口から言わせる気…恥ずかしいお…」

「お前はちょっと黙っとれえぃぃ!!」

「だおっ!」

ついにたまりかねた横島の鉄拳を脳天に受けて沈むりんぐぅ。
その様子を呆然と見ていた令子たちだったが、とにかく同居は認められない。
理屈はどうでも感情が許さないのである。

「と、とにかく却下よ。」
「です!」、「そうでござる!」

「面白そうだから賛成…あ、嘘です…ごめんなさい…」

トラブル大好きの悪戯狐少女はジロリと自分を見る三人の視線に殺意の波動を感じて素直に謝った。
室内に険悪な空気が満ち始めている中でりんぐぅがポツリと爆弾発言を投下する。

「そんなこと言ってもりんぐぅはもうお兄ちゃんから離れられないお?」

「なんで?!」

「きっと解呪された時にお兄ちゃんに括られたお。何となくわかるお。」

「「「なんですとっ!」」」

「だからお兄ちゃんとりんぐぅの二人暮しが嫌ならここに誰か住むしかないお。」

「私が!」

りんぐぅの妥協案に真っ先に反応するおキヌ。
今の彼女は通常の三倍は早い。顔が赤いせいかも知れない。

「待ちなさいおキヌちゃん!!それこそ狼にラム肉っ!」

「肉っ?!」

子羊ならともかく精肉扱いされて絶句するおキヌであるが、今の令子はそんなおキヌに
構っている心の余裕はない。

「そもそも本当に括られたの?」と聞いてみればりんぐぅは元気よく「試してみるお!」と叫ぶと外に出て行こうとした。

当然、止める横島であるがこの呪い少女には口で言うより手足の言語が有効なのは証明済みとばかりにとび蹴りをかます。スク水のままりんぐぅに外に出られては自分がご近所から通報されかねない。

「待て!そんな格好で外に出る気かお前は!!」

「だおっ!いきなりとび蹴りはないんだお!」

「せめて何か着ろっ!」

「何かといってもここに女の子の服なんかないんだお!」

「着ぐるみ着ればいいだろうが!」

横島の差し出したペンギンの着ぐるみにりんぐぅは顔をしかめた。

「暑いから嫌だお〜」

「いいから着ろっ!」

りんぐぅは口を尖らせながらも器用にペンギンの着ぐるみを着て外に出て行った。

一同が見守る中、ペンギンはよちよちと階下に降りようとしたが、ペンギンの構造上、階段を下りるのには相当無理があるわけで

「だおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

と悲鳴を残してまっ逆さまに転げ落ちた。
思わず令子も声をかける。

「だ、大丈夫?」

「だ、大丈夫だお…」

それでも何とかヨチヨチとアパートの敷地から出るりんぐぅ。
そのりんぐぅに襲い掛かる次の災難。
どこから現れたか解らないが野良犬である。

野良犬はなんの躊躇もなくりんぐぅの尻のあたりにカプリと噛み付いた。

「痛いおー!」

鳴きながら逃げるりんぐうの目の前に迫るのは電柱。
当然尻に意識が行っているりんぐぅが気づくはずもなく…。
勢いよく電柱にぶつかって仰向けにひっくり返るりんぐぅの上に今度は電線に止まっていたカラスが急降下してくる。

「あだっ!痛いお!突っつかないでお〜!だおっ!!」

カラスにたかられて転げまわるりんぐぅの横を通り過ぎたトラックから落ちたコンクリの固まりが脳天に直撃し、ついに彼女は動きを止めた。

やがてピクリとも動かなくなったりんぐうの上にカラスより数倍でかい鳥がどこからともなくワラワラと集まり出す。
それはどことなくアフリカのサバンナあたりを走り回っていそうな鳥に似ていた。

「あ、あれは!駄目鳥!!」

「知っているのタマモ!」

「ええ…駄目駄目な人にとりつくという伝説の魔鳥よ。」

「どっから湧いたのよ!」

「そこいらへんが伝説なんじゃない…」

そういうもんか?と思わないでもないが今やりんぐぅの上で巣まで作り始めた駄目鳥を見ればなんとなく納得出来ちゃう一同である。
世の中まだまだ不思議は多い。

やがて意識を取り戻したりんぐぅが駄目鳥を振り払ってヨロヨロと戻ってきた。
みんなの前で着ぐるみの頭を脱ぎ、中から出てきたりんぐぅの顔はダクダクと流れる血で真っ赤だった。結構怖い。腐っても呪いということだろうか。

「こ、これでわかったかお?」

「何が?」

「りんぐうは呪いだから大元から離れると呪いが自分に返ってくるんだお。」

「それってつまり…」

「このお兄ちゃんから離れるとりんぐうは不幸になるんだおぉぉぉ!!」

目から涙を飛ばして訴えるりんぐぅに令子は醒めた視線を向けた。

「それって自業自得じゃ…」

「なんなら呪いのおすそ分けするお?」

「遠慮するわ。」

部屋に戻ってグシグシと泣くりんぐぅを横島がよしよしと撫でてやる。
その様子は煩悩と言うより本当の兄妹のように見えて微笑ましい。
だが体はペンギンの着ぐるみのままなので違和感も凄まじく大きかった。

なんとも奇妙な光景が展開する横島の部屋でホフッと溜め息をつく令子。
彼女もりんぐぅと横島を引き離すのは流石に可哀想だと思ったのだろう。
けっして呪いのお裾分けが嫌だというばかりではない。
ひねくれ者ではあるが優しい一面もあるのだ。

「こうなったら横島君とこの子が一緒に住むのを認めるしかないわねぇ。」

「え?」

困惑する横島である。なし崩しに一晩泊めたとはいえ、女の子と同居するというのは年頃の男としてはかなりまずい。
第一、煩悩の発散はどうする。まだ借りてないAVのタイトルが脳裏に駆け巡る。
いかに彼が煩悩小僧とはいえ、こんな少女の前でウッフンアッハンビデオを鑑賞する趣味はない。

「い、いやまずいっすよ!」

「なに…あんたやっぱりこの娘に手を出す気?」

「そうじゃなくって!!」

「お兄ちゃん…いいお…お兄ちゃんが初めての人なら…「黙れい!」…だおっ!」

「で、何がまずいの?んー?」

返答次第では埋めるわよ?と目で語る令子に横島が本音を言えるはずもなく、視線をさ迷わせてなんとか考え付いた言い訳に縋りつく。

「いや…えーと…ここには女の子の生活に必要なものってないし…」

「そうねぇ…いいわ。とにかく解呪は成功したんだから報酬の一部をあげるわよ。それでこの子に必要なものを買いなさい。」

そして令子は懐から札束を取り出した。
その厚さから見れば二十万はありそうだった。
思わず我を忘れて叫ぶ横島。

「いいんすか!」

「仕方ないじゃない…」

目先の現金に目を奪われた横島が正常な判断を保てるわけもなく、ついに彼は漢の夜のお楽しみタイムを金で売り払ってしまったのである。

そして場面は現在に戻る。


「それで俺の宝をこんなムゴイ姿にしたというのかお前は…」

「そうだお。りんぐぅだって勢いだけで押し倒されるのは嫌だお!」

「あー。倒さん倒さん…」

さもさも関心が無いとばかりに手を振る横島にりんぐぅも怒った。
幼いとは言え女は女、魅力が無いと面と向かって言われれば怒りもする。

「むっかー!りんぐぅのどこが不満なんだお!」

「その子供まるだしの顔!」、「だお!」

「そこから続く平坦な胸部!」、「だおだお!」

「くびれのないウエスト!」、「だおだお〜!」

「隙間から向こう側が見える貧弱な太股!」、「だおぉぉぉぉ!!」

「まだ言って欲しいか?」

「も、もう許してほしいんだお…」

膝をついて畳に涙をこぼすりんぐぅを横島は呆れたような、それでいてどこか優しい眼差しで見ていた。
やれやれと言った感じで首をすくめると泣き濡れるりんぐぅに声をかける。

「さて。じゃあお前の必要なものを買いに行くか!」

ガバッと顔を上げるりんぐぅ。涙で汚れているその顔には驚きの表情が浮かんでいる。

「り、りんぐぅはここに住んで本当にいいの?」

「ここに居なきゃ不幸になるって言うんだから仕方ないだろ。」

「お兄ちゃん…ありがとだお!!」

先ほどまでの屈辱の涙ではなく、喜びの涙を振りまきながら飛びついてくる少女を優しく抱きとめる横島。
その表情は妹を愛しむ優しい兄のものであった。


こうしてりんぐうと横島の奇妙な同居生活は始まったのであった。
                                 おしまい


後書き

ども。犬雀です。
今回はりんぐぅの続き。
といいましてもりんぐぅも実は最初から三部作って思ってましたので、今話はその中間であります。
次回はりんぐぅと横島君の奇妙な生活という感じで書きますです。
では…


1>ヒロヒロ様
うむ。確かにブラウ・ブ〇より彼女のほうがいいですな。
はたしてフラウちゃんは横島君を射止めることが出来るか?であります。

2>皇 翠輝様
あはは。実はその落ちも考えたんですが、とある方にお渡しした作品にてその落ち使っちゃったんで、今回の落ちとなりました。

3>柳野雫様
同盟成立ですが…古来、利害関係で結びついた同盟は脆いというのもありますので。さてどうなりますことやら。
てか次は美神さんが反撃に出られるのでしょうか?(弱気)

3>HAL様
タマモものはシリアス風味で今書いてます。ただべら棒に長いので小ネタ投稿にはならないかと…。投稿したらそれとなく後書きに書きますのでお許しください。

4>kurage様
ええ。次回で復活しますとも…ですがしもべまで活躍するかどうか。
ロデムは…色々と問題がw

5>zendaman様
ロデム…実は犬はゴキを見たことが無いのです。やはり皆さん嫌なのですねぇ。

6>アズラエル様
ははは。確かに妖怪化してますな。まあ横島君はそういうところは気にしないと思いますです。

7>仁成様
初めましてです。いつも楽しみに読ませていただいております。
次回は美神さんが逆襲に転じて…さてさてどうなりますか?w

8>maisen様
初めましてです。過分なお褒め光栄であります。
美神さんは可愛いのでどうしても虐めたくなりますです。
ネタとしてはあるのですが…いつか美神さん可愛いものを書いてみたいです。

9>Yu-san様
あははは。やはりロデムはお嫌いの方が多いようで。
そうですか飛ぶんですか…ふーむ…怖いかも。

10>プロミス様
うむ。それも面白いネタでありますな。でもそれだと横島君も逃げたりして。メモメモ。

11>偽バルタン様
なんで知っているのでしょう。実は彼女は他にも色々と調べております。
何を調べているかは次回でw

12>ヴァイゼ様
そうなんですよ。計算する結構行くんですね。何に使うかは次回で明かす予定です。

13>なまけもの様
カオスに依頼すると何かと問題がありますから。もしかしたら茶筒ボディ…って別なネタでしたな。さて次回、どういう形で体を手に入れるか…。

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