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▽レス始

「指輪ものがたり 第四話(終)(GS)」

六条一馬+豪 (2005-07-03 13:18)
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「横島君、ちょっと良い?」

「は、はい何スか?」


さて、二人の喧嘩という惨事というか珍事が起こって数日後。
偶然と言おうか、運命の悪戯と言おうか
除霊作業に出かけようとする際、再び部屋で二人きりとなっていた。
言わずもがな、横島と、美神とが。


「何か俺、忘れ物でもしてましたか?」

「いや、そーいうんじゃなくてね。
 えっと・・・・・・・・・・」


此処暫く、横島はへこんでいた。
その理由は今さら言うまでも無かろう。
彼にしては珍しく、結構落ち込んでいたのだ。傍から見ても解るくらいには。
だが、其処は横島。雑草の如き不屈の魂を持つ男。
変わらぬ生活を過ごすうちに、ま、いーか、と思えるようになっていた。


「ほ、ほら・・・・・・・アレの事よ、アレ。
 解るでしょ? 横島君が、私の・・・・・・・・・」

「アレ、って?――――――――――あっ!?」

「そ、そーよ、アノゆび」

「まさかこの前下着パクったんがバれたんでしょーかっ!!!?」

「いつ盗んだーーーーーーーーーっ!!!!!」


・・・・・・・・・まぁ、見てのとおりである。
このまま有耶無耶となってしまえば、それはそれで今までと同じ日々が続いたのだろう。
でも、そうするには、美神にとってちょっとばかり箱のヤツが重過ぎた。
自業自得なバカの襟首を捻り挙げつつも、殴らないようにどうにかこうにか自制する美神。
心底怯えた顔付きを見ると情けない気持ちになりつつ、襟を掴んだ手を離してやった。
お仕置きは後でも可能。今やるべき事は他にある。

すぅはぁ、と大きく深呼吸。高鳴る鼓動に手の平当てて。
単純な謝罪は出来ない。ンな事すれば、より深く横島の傷を抉る事になる。
かといって、素直に喜びを伝える事など不可能。だって美神だし。
とゆーわけで、彼女は彼女らしく、こほんと咳払いなどをして


「――――――――いい、横島君?
 アレはね、もう私のモンなの。
 私のモンなんだから、どうしようと私の勝手。
 だから、横島君が返せったって絶対に返さないし
 私のモノをゴミだなんて言うのは許したりしないし
 捨てろったってずぇったいに捨てたりなんかしないから。
 解ったら返事っ!!!!」

「は、はいぃっ!!?」


アレって何だ、と考えるより早く強制的に奪われる承諾の意志。
所謂、言質を取られるという奴か。
何が何だか解らない横島は、とりあえず聞き返したいのだが


「ん。よし、もーいいわよ」


と、満面の笑みを投げられては口を閉じる他は無い。
首を捻りつつも、問題は無いのかだろうと自分を納得させ
美神から視線を外し、振り返って一歩踏み出した所で


――――――――アリガト


背中に投げられた小さな声。
それは酷く小さくて、ともすれば聞き逃しそうな声。
それは酷くか細くて、あるいは空耳と思えそうな声。
でも、それは確かに聞えた、彼女の声。

ほんの一瞬だけ立ち止まった横島は
けれど、振り返る事無く部屋から出た。
その口元に堪えきれぬ笑みを浮べながら。
それはあの日と同じように、けれどあの日とは決定的に違って。


部屋に残った美神は仕事の準備中。
顔がほんのり赤いのは、きっと急いでいるからに違いない。
ふぅ、と何処からとも無く聞える吐息の音。


『蟻の一歩ですね』

「うっさい」


憮然とした声で、美神は人工幽霊壱号の皮肉に返答する。
そして一瞬だけ、彼女は視線をある一点に向け
すぐに反らして立ち上がり、本日の仕事へと歩き出した。


彼女の視線が向けられた先には、従業員にさえ知らされてない隠し倉庫。
それは言ってみれば宝箱。
重要な書類。たまに脱税の証拠なんかも。
貴重なオカルトアイテム。時折、カオスからぱくったものも。
微妙に犯罪チックではあるが、どれもこれも価値の高そうなものばかり。
その中に一つ、酷く場違いなモノがある。


それは内緒。それは秘密。

隠し倉庫の中に、ちっちゃな箱が置いてある事は
金銭的にもオカルト的にも価値の低そうな指輪が在る事は
特に、時折、美神がこそこそとそれを確認している事なんかは

美神と人工幽霊壱号だけの知る秘密である。



「・・・・・・他の誰かにバラしたらアンタを壊す、念入りに」

『念入りっ!?』


秘密なのである。

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