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▽レス始

「指輪ものがたり おまけ(GS)」

六条一馬+豪 (2005-07-05 10:11)
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むかしむかし、ある所に天邪鬼な女性と煩悩少年がおりました。
前振り無視して、それが何処なのかいきなりバラしますと
それはそれは珍しい、命を持ったお屋敷で。
他の住人として幽霊少女に狼少女、狐少女に影の薄い妖精が。
みんな仲良く、スリルとサスペンスに包まれた生活を送っていたのです。


悪霊をしばいたり、妖怪をドついたり
下級妖魔を切ったり、煩悩少年を燃やしたり
そんな平和な毎日が続いていたのですが
ある日、事件が起こりました。


なんとなんと、煩悩少年が天邪鬼な女性に指輪を渡したのです。
そしてそして、天邪鬼な女性は何だかんだでそれを受け取ったのです。


まさに驚天動地の出来事です。前人未到の快挙です。
それの何処が、と思う方は彼の貧乏さ加減をご存知無い。
大した事じゃない、と言う方は彼女のひん曲がった性格をご存知無い。
当然といいますか、主役は彼と彼女なのです。
これで普通に上手くいくわきゃありません。
彼がいらん事を口にしたり、彼女がいらん事を口にしたり
それとは逆に、お互い言葉が足り無さ過ぎたり
激しくも馬鹿馬鹿しい口喧嘩や、喧嘩後のぎくしゃくとした空気。
そのように、色々な紆余曲折はあったものの
最終的に、指輪は喜びと共に彼女のものとなったのです。終りよければ全て良し。


・・・・・・・・ええ、これで終れば平和だったのでしょう。


けれど、そうは行かぬが世の習い。
昔の人は言いました。壁に耳あり障子に目あり。
悪事のみならず、情報が千里を走る現代社会。
それに隠せば隠すほど、隠し事は現れてしまうもので。
指輪を眺める天邪鬼な女性が見咎められたか
煩悩少年がついつい口を滑らせでもしたか
指輪の事が、他の皆に知られてしまったのです。


その後、命持つお屋敷が念入りに壊されたか否かは定かでは在りません。


さて、指輪のことを知ってしまった女性陣。


とはいえ、指輪を巡って争いが起こされたわけではないのです。
指輪を消滅させようと冒険を始めたわけでも御座いません。
それぞれに、煩悩少年に対して己が感情を示しただけなのです。
幽霊少女は文句を言わぬまでも少々寂しげに
犬・・・・・・改め、狼少女は不満を露に
狐少女は『私には何?』と当然のように


こうして煩悩少年は精神的に追い詰められました。


それを優しさか、あるいは優柔不断さと呼びましょうか
どちらで呼ぶかは、人それぞれというものでしょう。
それでも、煩悩少年は彼女等を無視することは出来ませんでした。
いつも世話になったり、迷惑かけてるのも事実なのですから。
丁度いい機会であるとも思い、彼は自分の出来る限りのお返しをしたのです。


いつも優しい幽霊少女には、二人きりのデートの時間とプルタブの指輪を
元気で楽しい狼少女には、好きなだけの散歩とお気に入りのバンダナを
遊び盛りな狐少女には、色々な遊び方と手持ちのゲーム数本を
そして、影の薄い妖精にはエロ本を。友情出演です。


さてさて、これで全てが大団円?

いやいや、そう簡単にはいきません。


天邪鬼な女性は、どうにも納得がいかなかったのです。


勿論、皆が喜んでいるのはいい事です。
笑顔になっているのは喜ばしい事です。
けれど、それはそれとして。
どーしても納得がいかない点。
何故にアンタはそこまで八方美人か、と。
流石に口にはしないものの、機嫌の悪さは隠し切れず。
貰った指輪が想いを深め、嫉妬の心も深くなる。
強く想えば想うほど、不満もそれだけ強くなる。
慕情が募れば妬心も湧く。ああ、何と皮肉な事でしょう。


困ったのが煩悩少年。もはや金など在りません。
けれども天邪鬼な女性を鎮めるために、他の対処を知りません。
金が在るならどうにかなると、解っちゃいつつも金は無い。みんなビンボが悪いんや。
別に無理する必要など皆無なのですが、その点を既に忘れ去っておりました。
手段と目的とが入り混じり、好意と義務感とが入り乱れ
そうして考えに考え続けた煩悩少年は
迷い悩んだ末に、一つの結論に至ります。


(金は無い。時間も無い。ないない尽くしで余裕も無い。
 ならばこれはもー、自分をプレゼントするしかないか!?)


『いや落ち着け』と言ってくれる存在は、残念ながら傍に居ませんでした。
思い立ったが即実行。彼女の元へとBダッシュ。
道逝く困難何するものぞ。野を越え、道駆け、歩道を走り。
挨拶もそぞろに、お屋敷へと飛び込む少年。
いきなりの闖入者に、天邪鬼な女性も目を白黒。
そして、彼は大声で叫んだのです。


――――――――――俺を貰って下さい、と。


さてさてさて。


此処に居まする天邪鬼な女性。
その頬には何とも見事な微笑みが。
片手に持たれたリード線。繋がれたるは、とある首。
そう、其処に居りますは皆様ご存知、煩悩少年。
はい、目の錯覚では御座いません。確かに繋がれております。
何処からどう見ても恥かしい飼い犬同然の格好。


煩悩少年の爆弾発言を、天邪鬼な女性は誠意を持って受け入れました。
その結果が目の前の二人の姿。
何かが違ってる気もしますが、まぁ彼らですし。
飼い主よろしくな女性は何とも満足なご様子で。
繋がれております少年は、目の幅涙を流しつつも何処か満足そうで。
リード線を持った左手で、キラリと光るは一つの指輪。
嵌められた指は一体どの指なのか。
さて、それは言わぬが華で御座いましょう。


この後も、彼らの人生は続きます。
それは勿論、平穏な日々とは行かぬのでしょう。


あるいは、煩悩少年が愛想を尽かすかもしれません。
もしくは、天邪鬼な女性が突き放すかもしれません。
それに、他の女性陣が黙っているとも限りません。
一寸先は闇世です。未来は誰にも解りません。


けれども、明日は『明るい日』

そんな言葉を信じつつ。
気楽に呑気に構えつつ。

一つの円環を巡りし此度の話は、これにて幕と相成ります。


指輪ものがたり――――――――――改め、首輪ものがたり 閉幕

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