カーン。カーン。
じゅぅぅぅぅ。
シャリ、シャリ。
「よし、できたぞっ!!」
「ふっむ、なかなかの仕上がり。しかしあの男、いきなり「其処の侍!勝負じゃぁぁ!」とは、拙者、何か恨みでも買ったのか?」
「そのかわり、なかなかの業物を手に入れたではないか。」
「む、結果おーらい、という奴だな」
「そう言う事だ。さて、勢いで作ってしまったが、これ、どうする?」
「・・・・・・・・・・・忠夫に押し付けよう。なにか、黒くなりそうだし」
「・・・・・・・・・・・親馬鹿だなぁ。素直に様子を見に行くって言えば良いではないか」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・何のことだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さて、な?」
「・・・まぁよい。行き先は百合子嬢から聞いておる。行くぞ犬塚」
「まてまて、今包むから」
ごそごそ
「よし、後は」
かきかき
「『伝家の包丁・しめさば丸・まぁくつぅ』、と」
「・・・・・・・・なかなか、なうい名前をつけるな」
「聞いたでござるか!父上たち、兄上のところに行くつもりでござるよッ!!」
「まぁ、あの犬飼っておっさん締め上げる手間が省けたわね」
「拙者の直感も、捨てたものではないでござろう?」
「今回は、うまくいったみたいね」
「よし、つけるでござるよ・・・・・」
がさがさ
「待ちなさいよ・・・・・・・」
ごそごそ
その夜、人狼の里から2人の人狼と、頭に木の枝を括り付けた人狼と狐の少女が出て行く姿を、月だけが、遥か天上より見つめていた。
――――いや
「なんでですか長老ー!!」
「あやつらを見逃せ、とは!!」
「納得いきかねますなー」
「こうなれば今から拙者だけでも!!」
「・・・・・・・・・・まぁ落ち着け、お主ら。今、あやつらを見逃せば――
――平穏が来るのじゃよ」
「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」
「さて、寝ますねー」
「拙者は散歩にでも行くか」
「めしー」
「誰か修行に付き合わぬか?」
すたすたすた×4
「・・・・・・・・・・・・・わしも寝よ」
その夜。人狼の里からは、珍しく長老の胃が痛む音が聞こえなかった事を、長老宅、天井の鼠だけが知っていた。
カツーン。カツーン。
「くっさいなー。もう鼻が馬鹿になってますよ」
「あんたにはきっつい依頼だったかもね。なんてったって下水道が除霊現場なんだから」
東京の地下深く、まるで高速道路のトンネルのような、人が歩けるほどに整備された下水道。そこにはおなじみの事務所のメンバーの姿があった。
―――最近になって化け物が姿を現し、職員が多数被害にあった。早急に退治して欲しい。
要約すれば、今回の依頼はそういうことである。除霊対象の正体は不明。正確な出現位置も不明。その強さも不明。しかし、できるだけ早くやってくれ。
―――当然のごとく危険度は高く、しかし報酬額は大きい。美神は、その依頼を聞くとすぐさまOKを出し、その日の夜には下水道へと潜って行ったのである。
「はぁぁ」
「どーしたんですか、横島さん」
「いんや、なんでもないよ。それより美神さん。そろそろ化け物とやらが目撃された地点ですよ」
「・・・まぁ、いいわ。―――出たようね」
カッ。
美神がその歩みを止めるとほぼ同時に、
バシャッ!!
「しねやぁ!」
化け物が水中から姿を現す。
「雑魚が梃子摺らせてくれたじゃない!いいかげん、極楽へ行きなさいっての!!」
そう啖呵をきると、輝く神通棍を振りかざし化け物―――いつもの不定形の悪霊と違い、腐りかけ、変貌した元人間の肉体を持っている。しかも、ネクタイをし、元はスーツであったろう襤褸切れを身に纏い、何処で手に入れたのか、というかそいつの体の一部とでも言うのだろうか、えらく妖気を放つ金属バットをもっている―――に向かって、一気に振り下ろす。
がつん!
「げは、げはははははっ!」
しかし、化け物はその手に持った金属バットでその一撃をあっさりと防ぎきる。
「―――かったぁぁぁい!!何よこいつ!いつもの奴らとは一味違う!」
「援護します、美神さん!!」
そう叫ぶと忠夫はおもむろに懐に手を突っ込むと―――なんとなく、輝いているようにも見えないことも無い石っころを取り出した。
「くらえぃ!唐巣神父お手製の聖水をまぶした、人狼・だいなみっく・すとれーとぉ!」
びしゅっ!!
カキーン!!
がんっ!!
「はぅ!・・・・・・・いたたたた、こんちくしょーー!!人の新技あっさり破りやがってーー!!」
「げはげはげはげはげは!!」
忠夫の手から凄まじい速度で投げ放たれた『人狼・だいなみっく・すとれーと』とやらは、あっさりと強烈なピッチャー返しとなって
忠夫の額に直撃する。が、コンマ2秒で復活する辺り、その威力もタカが知れているのか、忠夫が非常識なのか。
「馬鹿やってんじゃない!!しょーがないわね!ちょっともったいないけど、これでも喰らいなさい!!」
そういって美神が取り出した破魔札には、燦然と輝く一千万の文字。
ズバンッ!!
「ぐばっ?!げはぁぁぁぁっ!!」
そのまま破魔札の巻き起こした光と爆発に巻き込まれて、その姿を消す化け物。
「ふぅ・・・・・しとめたみたいね」
「――――美神さん!まだっ!」
ザバァッ!!
「うそ、もう一匹っ!!」
ゴスッ!
「っあ!」
「げはははははははははっ!!」
油断をした―――とも言い切れないが、背後から化け物の下半身のみが突然浮上し、美神に一撃を加えると、そのまま上半身と合体する。おキヌの声によって致命傷は避けたが、それでも頭部に喰らった一撃によりふら付く美神。
「美神さん!ちっくしょー!これでもくらえぃ!!人狼・だいなみっく・ふぉーくっ!!」
その姿を見て激発した忠夫の放った石は
ぶんっ!
こきーん
見事に化け物のバットを掻い潜り―――まぁ、その、いわゆる『漢の急所』に直撃したのである。
「・・・・・・・・・・ふぉぉぉぉぉ」
「・・・・・・・み、みたかっ!人狼・だいなみっく・ふぉーくの威力を!」
亀のように丸くなる敵を前に、そう威勢良く叫ぶ忠夫の腰が何故か少々引けていたのは・・・・相手にびびったからではないのだけは、間違いない。
「・・・・・・・・ということがあったんですよ」
「・・・・・・・・・・・横島君。もーちょっとましな使い方は無かったのかね?」
「・・・・・・・・・・あは、あはははははは」
次の日、唐巣神父の教会には、額に打撲の痕がある美神と、その助手、犬飼忠夫。そして、何故かこちらも少々腰が引け気味の唐巣神父とその弟子、ピートの姿があった。
「やはり、悪霊全体が少しずつ強くなってきているようだね」
「・・・・・・・殺虫剤と害虫の関係ですね?先生」
「その通りだよ美神君。―――やれやれ、まだまだ修行が足りないということか」
――――例えば、ある細菌に良く効く薬があるとする。しばらくの間その薬で細菌は殺すことができるが・・・もし、その中にその薬に対抗能力を持った細菌が現れたら?
――――より効く薬を持ってその細菌に当たるしかない。
「――――そのことですけど、先生。『妙神山』への紹介状・・・頂けませんか?」
「・・・・・美神君、君にはまだ早すぎる」
「あら、こつこつ修行を続けて・・・また相手に負けそうになったら修行するんですか?」
「――――むぅ、しかしだね」
「私達のお仕事は・・・そんなに甘いものでは無いことは、先生もよっくご存知でしょ?」
「・・・・・下手をすれば命に関るんだぞ?」
「あら、そんなこと―――――――
その瞳に不敵な輝きを宿し、美神はその言葉を舌先にのせた。
―――――――――やってみなくちゃ、わからないわ!!!」
シリアスな光景を見せる師弟の背景では・・・・・
「あれ、ピートじゃないか、お前エミさんとこ行ったんじゃなかったのか?」
「僕は先生の弟子ですってば!!」
「ほー、そのわりに、あんときゃ大分おたついてたのになー」
「・・・だってあの人のところに行ったら、「血を吸って〜」とかなりそうですから」
「・・・まぁ、日ごろの行いというかなんというか」
顔に縦線を入れたピートと、自分の日ごろの行いに自覚が無い忠夫がの〜〜んびりと会話を楽しんでいた。
妙神山。世界でも有数の霊格を誇る大霊山であり、神と人間の接点の一つといわれる霊峰である。その山中には、霊能力者間では有名な修行場がある。曰く―――「強くなって帰ってくるか、死ぬか」「あそこは、ヤバい」
その修行場に続く一本の細い道。いや、道というのもふさわしくない。まさに、断崖絶壁の崖にできた一筋の亀裂。彼女達は、現在、そこをひたすらに歩いている途中であった。
「な、なんちゅーとこですか、ここは」
「あんたは落ちてもいいけど、荷物だけは落とさないでよ」
「・・・・・・・落ちるときは横島さんの命と荷物、一緒に落ちそうですね」
「不吉なこと言わんといてくれーーー!!」
―――彼らに緊張感を求めること自体が間違っていた。
そうこうやってるうちに、目的地へと辿りつく。
「見えたわよ」
「ふぇぇ〜〜。おっきな扉ですねぇ」
「へんな顔がついてるけどね」
いかにもな扉の前で、何気なく会話する彼女らの間に
「「誰が変な顔じゃいっ!!」
「「うひゃぁ!!」」
突然の怒声が鳴り響く。驚いて飛び上がるおキヌと忠夫を尻目に、美神はその声の主達に話し掛けた。
「修行希望者よ。さっさとここ―――開けていただけないかしら?」
「「我らはこの門を守る鬼。我らの許可なくして、この門をくぐることまかりならんっ!!」」
ぎぃっ
「あら、修行希望者の方ですか?」
「・・・・・・・・5秒と持たずに開いたわよ?」
「「小竜姫さまぁっ!!」」
扉を開けて顔を覗かせたのは―――2本の角を持った、いささか妙な服を着ていたが間違いなく―――小竜姫と呼ばれた美少女であった。
ヒュバッ!!
「―――嫁に来ないか?」
「「うおっ!!」」
「・・・・はぁ?」
「・・・・・・・・・・・ぜんっぜん見えませんでしたよ、今の」
「・・・・・・・・・・こんなところだけレベルアップしなくてもねぇ」
もはや人の目どころか、おそらく鬼の目にさえ止まらなかったであろう速度で動いた忠夫は、塵一つ舞い上がらせずに少女の前に慣性の法則さえ無視しつつ停止すると、とりあえず口説いてみた。
頭を抑えつつ忠夫が―――驚くことに、小竜姫を口説き始めると同時に地面に落下した―――落とした荷物の中からおもむろに神通棍を取り出した美神は、とりあえず
ごんっ!ばきっ!ずがっ!!ぐしゃっ!!!
ヒャインヒャイーン!!
打撃音が生々しい音を出すまでシバキあげた。
「・・・・・えー。私がこの修行場の管理人を務めます、小竜姫と申します」
「小竜姫さんっすか!!いいお名前ですね――!!―――嫁に来ないか?」
「・・・・・・・・何者ですか、この方は」
「・・・・・・・・・・・・・只の「ぶぁか」です。今片付けます」
ずごんっ!!!
真っ赤に染まっていたはずの忠夫が、瞬時に復活し、性懲りも無く小竜姫の手を握り、口説こうとしたところで再び美神の躾が行われる。
再びぼろ雑巾と化した忠夫が眼を覚ましたときには、美神と管理人を名乗った小竜姫どころか、心優しき幽霊少女の姿さえあたりには無く・・・
何故か扉の顔に張られた巨大な札と、
「「しくしくしく」」
―――むせび泣く2鬼の声と、開かれた扉。むさくるしいふんどし姿の首なし石像がこけている光景だけが広がっていた。
「やぁ」 たしか、そう迎えるのだったかな。
まったく、君はよっぽどここが珍しいようだね。そんなに辺りを見回していては、いつかその足元に開いた奈落に気付かないまま、いつのまにか動けなくなってしまいそうだ。
たまにはよく目の前を見ることだ。この天文台にだって、それなりに見るべき物はあるのだから。それが例えなんでもないようなものに見えたとしても、本当は大事なものだということもある。
たとえば、ほら、今君が座っているその古い椅子。君が座る前は、一体誰が座っていたと思う?
ふむ。そう途方に暮れた顔をすることは無い、たまには回答が与えられても良かろう。答えは
「僕」が座っていた、と。そう言う事だ。
―――――あははっ!
―――――彼女から伝言を預かっているよ?「さて、私は何でしょう?」
―――――実に、実に彼女らしい。
―――――さて、謎は謎のまま。全ては流れる。
―――――君には一言だけ
―――――良い夜を。
---アトガキッポイナニカ---
はいすいませんmaisenでございます^^
という訳で「ドラゴンへの道!」編、開幕でございます。
流石に一話ではまとめきれない、と原作を読み返しているときに気付く始末。
誰か文才とまとめる能力をプリーズorz
と、いうわけでレス返しおば。
AZC様>いや、あれ、思いっきり邪神ですし。
偽バルタン様>あはははは^^;流石にちょっとやりすぎたかな〜と、投稿した後で後悔したのは秘密です。
WEED様>もはやこのままのかっこいいと評判のカオスで行くか、ちとボケ老人テイストになるか、ちと迷い中です。その上今回もまたバックグラウンドで一件片付いちゃっておりますし^^;
初風様>まぁ、答えはまだまだ秘密です。いつか明かせるといいなぁと思いつつ、とりあえず一歩進んで見ました。
へのへのモへじ様>さぁて?w実はその辺りのことはすでに展開を構築中ではありますw
マディマディー様>・・・・・・・あんまり突っ込まないでくださいorz
私も違和感はありましたからwそのうちもっとよさげな表現を考えたいな、と
柳野雫様>お好きなようにお呼びくださいw そして、うちの彼らはむかしっからああですw
アクセル様>ううん、喜んでいいやらなんやらw まぁ、彼女達も奮闘中ですので、もうしばらくお待ちの程をw
桜葉 愛様>おお、そう言っていただけると嬉しいですなー。残念ながら、今回彼らの出番はありませんでしたが、またいつかその日まで少々お待ちおばw
では、次回もお楽しみに・・・・・・・・・していただけると泣いて喜びます^^ノシ
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