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▽レス始

「月に吼える 第六話(GS)」

maisen (2005-06-28 22:51/2005-06-30 01:03)
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「――――――――ぐっ!・・・・すまんな、犬飼。もはや拙者もここまでのようだ・・・」

「馬鹿なことを言うんじゃないっ!お前がそんなことでどうする!―――娘を泣かせるつもりかぁっ!」

「ああ、シロ―――。最期にお前に一目だけでも会いたかった・・・・・・・」

「何を言っている!また、何度でも見れるに決まっているだろうが!!」

「先に、逝ってるが・・・・お前は、ちゃんと、見届けるんだ・・・・・」

「ああ!分かった!分かったから!もう喋るんじゃない!!」

「・・・・・・・・ありがとう」

ガクッ

「犬塚ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


「・・・・・・・・・・・・・・で、満足したか、馬鹿ども」

「「わりと」」


――――人狼の里・犬飼宅――――

 日の出を静かに迎えるはずの里が何時になく騒がしい。それもそのはず、里の中心にある長老宅からは、大勢が騒ぐ音がここ一週間程絶えることなく聞こえているからである。

「ちっくしょー!!」

「ただでさえ少ない人狼の女子が―!!」

「また犬飼家かーーー!!」

「忠夫ーーーー!!駆け落ちーーー!うらやましいぞーーー!」

「自棄酒じゃぁぁぁぁ!!!!」

「「「「うおぉぉぉぉぉっ!!!!」」」」

 ・・・・・・・・・ようするに、生還の宴を開いていた彼らのところに、「シロが忠夫と駆け落ちした」という話が聞こえてきたのである。


―――――喜びの宴は、瞬時に嫉妬の自棄酒へと姿を変えたのであった。それからというもの、一週間それは続き・・・・たまらず犬飼宅へ逃げ出した長老は、元凶の親二人に漫才を見せられた。冒頭は、そういう訳である。


「全く・・・少し前まで女々しく陰に篭っていたかと思えば―――すっかり元通りか」

 残念さと苦々しさと、ほんの僅かの「ようやく陰鬱な雰囲気から開放された」という爽快感をかもし出しながら、長老は2人の対面に腰を下ろした。

「まぁ、我が娘もそろそろ大人。ようやくこの里から出ても獣の姿にならなくなったとことのほか喜んでおりましたからねぇ」

「左様。我が愚息はあの生まれの性か、獣どころか、半獣人の姿さえ取れなかったからなぁ」

「・・・・・この里では、場所や月にとらわれることなく人の姿を取れることが大人の証。そういった意味では、あれも十分に異端であるからのぅ」

 ふと、昔を思い出す遠い目をしながら

「まぁ、沙耶殿のおかげで、少なくとも人間全体に対する偏見は消えたわけだ・・・」

「あいつも、喜んでおりましたよ・・・ここの皆は、私を受け入れてくれた、と」

 それに対し、「当たり前じゃ」という誇りとくすぐったさに満ちた視線を返す長老。

「強い女性でありました、そして、我等の奉ずる月とは真逆のはずの―――太陽のような」

「あの子も、太陽を持っておる。炎の固まりのごとき、な。―――しかし、同時に、危険な物も、その内に秘めておるように思えてしまう」

「妻の名―――沙耶は刀の『鞘』に通じます。その息子であるあやつなら―――美事、収めて見せるでしょう」


 誇らしさと、ほんの少しの、「なにか」の感情を隠しながらのその返答に、その親友は同じ――――


 ―――いや、隠された感情をこちらははっきりと示しながら呟く。

「炎を、か。しかし犬飼。拙者は、不安なのだ―――鞘は『莢』。その中に、『包み育てる』性を持ってしまう。そうではないか?」

「「・・・・・・・・・・」」

 ――――不安を隠しながらの返答でなく、はっきりとした声色に、沈黙で返す2人。


――――いや


「―――――――くっくっく。良いではないか」

 長老だけは、全くの信頼だけをその声に乗せていた。

「それでも、あやつなら・・・忠夫なら、何とかしてみせるのではないか?―――――そう、思っているのであろう?」

「・・・・・・・・いやはや、流石は年の功、といったところでしょうか」

「・・・・・我が息子ながら、あれはまた沙耶の息子。あの、神鉄を真綿に来るんだ我が妻の鞘」


「「「砕けるものなら砕いてみろ!」」」


 数瞬の後、犬飼宅は3人の爆笑に包まれ―――――


―――――――ドカンっ!!


 更に数瞬の後、爆音を響かせた。


――――GS美神除霊事務所――――

 事務所のソファーに座って・・・・・・・いや、舌を出しながら「ぐてぇ」、として寝転んでいるのは、元 犬飼・現 横島忠夫であった。

「―――――――はーど、だ」

 ほぼ力尽きた野良犬の様相を呈している理由は、雇われてからの一週間で、まさに嵐のように依頼をこなしていった美神に主な原因がある。

 新たな助手を得、その活動範囲と対応範囲を広げた美神は、それまで諸々の依頼を―――美神一人しかいない為、という理由で受けなかったものである――――断ってきた鬱憤晴らしというかのように、ひたすらこなしまくったのである。

 海に行き、山に行き、異空間に行き、時には幽霊と共に銀行を襲い、またあるときは女子高で校長に青春を取り戻し、その挙句宇宙にまで事務所の活動は及んだのである。

「結局、まともに嫁探しは進まんし―――」

 女子高では「危険物」と書かれたトランクに入れられて厳重に鍵をかけ、さらにごっつい鎖で巻いたあと呪縛ロープで巻かれて、そのまま依頼終了まで放置され。

 海では生まれて初めて逆なんぱ、とかいうやつをされたが、人妻と知って泣く泣く諦めた。『人狼の里・独り者の鉄の掟=その4、子持ちの人妻に手を出すな!』に引っかかった為である。―――ちなみにこの掟、破ればもれなく夫と独り者集団からの血の制裁があるため、正に鉄の掟となっている。

 ちなみに銀行員のおねーさんがたは、現金を持たない横島を歯牙にもかけなかった。あまりの冷たさに「嫁に来ないか?」の「よ」さえ言えなかった。

「・・・・・・・えぐえぐ」

 現実の厳しさを知り、一人涙する横島であった。


「きょ・・・協同作戦?!そんな話、聞いてないわよっ!!」

 ここ一週間というもの順調にその業績を伸ばし、上機嫌で次の仕事へと向かった美神であったが――

―ここに来て、とうとうその悪運も尽きてきたようである。

ぎゅっ

「え〜。私は令子ちゃんと一緒にお仕事できるのを楽しみにしてたのよ〜〜。そんな言い方無いじゃない〜〜〜」

 そのまま身を翻して逃げ出そうと・・・いやいや、厄介ごとを回避しようとしていた美神の髪を掴み、間延びした話し方で美神を引き止めた肩までの黒髪を持つ女性―――GS「六道 冥子」は、楚々とした雰囲気を持つ、洋風お嬢様であった。 


 年頃の女性、しかも、可愛い。

――――― LOCK ON ―――――

―――― 犬飼 忠夫 いきまーす! ―――――

 弾道ミサイルのごとく、正確に目標「名も知らぬ美女」の向かって飛び立つバカ一匹。

「お嬢さ〜ん!」

 着弾まで――――5秒

「嫁に――――

 おキヌが呆然と隣から突如消えた横島を見送り、美神が霊力を高めた右手を振りかぶり―――4秒

「来ない――――

 冥子の影が光を放ち―――3秒

「か―――あぶろべしっ!!」

 美神の渾身の右ストレートより早く炸裂したのは、12本の―――いや、12匹の迎撃ミサイル―――

「あ〜。霊の気配でこの子達〜、今殺気立ってるので〜、近づくとあぶないですよ〜?」

 GSの大家、六道家に伝わる、12神将と呼ばれる―――現代では一国の軍隊にさえも匹敵する式神達であった。


―――――ギャーッス!

「あ〜れ〜?」

―――――ギブ、ギブギブギブ!

「あのバカ・・・・。なに、どうしたの冥子?」

―――――電気はいーやーっ!!

「ん〜、なんていうか〜、あの子達、攻撃してるんじゃないわ〜」

―――――うおっ!あぶなっ!かすった!かすったって!!

「へ?」

―――――キャインキャイ―ン!

「なんていうか〜、久しぶりにお父さんにあって〜懐いてるみたいな〜?」

―――――俺がいったい何をしたーーー!!

「・・・・すっごい愛情表現だこと」

―――――がぶ。

「「「あ」」」


 逃げ回ってはいたが、何せ相手には悪意や殺気というものが無い。子供がじゃれているような―――それにしては激しすぎてはいたが―――ような物である。しかも個々でも反則気味の連中が連携を取って来るからたまったもんではない。何時の間にやら彼らに追い詰められていた横島は―――大口をもった式神に咥えられ、そのまま六道冥子の影の中へと拉致されてしまった。

「・・・ど〜しましょ〜?」

「・・・・・・・さっさと出して・・・・まぁいいか。12神将もいるし、戦力的には問題ないから、そのままほっときましょ。―――どーせ死にゃしないでしょ」

「美神さーーーん!」

 頭痛をこらえながらの美神の台詞に、おキヌは必死で呼びかけるも、「除霊に入る前から疲れたわ」という風に除霊対象の新築マンションに入って行った美神には届かなかったようである。


―――――数時間後、ようやく式神の『甘噛』から開放された横島が見たものは、記憶の中では新築マンション『であった』瓦礫の山であった。


「ん〜〜」

「あら〜?冥子どうしたの〜?」

 その夜、六道邸にて―――――

「あ、お母様〜〜」

「珍しいわね〜貴方が考え事だなんて〜」

「そんな〜、お母様ったらひどいわ〜」

 なんとものんびりとした会話を交わす、六道冥子と


「そんなことより〜、貴方、また除霊に失敗したんですって〜?」


ゴゴゴゴゴッ!!


「あ〜、ごめんなさいお母様〜〜!」


 その母、六道 冥華(メイカ)の姿があった。母子だけあって、その面立ちは良く似ているが―――こちらは着物の着こなしからして熟練された―――「大人」であった。


「で〜?何を考えていたのかしら〜?」

「それがね〜」

 しばらくの間、奪われたコントロールを返してもらってようやく一息ついた―――何処となく煤けている―――冥子と、母の会話は続けられた。

 中心は―――「六道に伝わる」12神将に「異常に懐かれた」青年―――横島 忠夫である。

「・・・・・・・そんなはずは無いわ〜。あの子達は先祖代々伝わるれっきとした『六道家の式神』よ〜?」

「え〜、でもでも〜」

「そんなにほいほい懐いてちゃ〜、式神としては致命的よ〜?」

「・・・・ほんとなのに〜」


 拗ねた顔をして部屋を出て行った娘を見送った後。しばらく、その絶えない笑顔の裏で何かを考えていた冥華は、なにかに思い当たったような、同時に凄まじく―――ここ数年、睡眠中以外は崩さなかった笑顔を崩すほどの―――驚いた顔をした後、

「フミさん〜。フミさんはいるかしら〜」

 また、何事もなかったかのように、筆頭侍女を呼びつける。

「―――ここに」

 何処からともなく、音どころか、気配すら出さずに背後に現れた懐刀の侍女に、全く崩れない笑顔で。

冥華は――― 

「お願いがあるの〜」

「ハッ」

―――『六道家当主』としての命令を出した。


 「やぁ」 また来てくれたのかい?ありがたいねぇ。客人も来なければ、動き出す歯車さえも無い――そんな時間に比べて、ここ最近の時間のなんと「楽しい」こと。―――幸せすら感じるね。

 ―――見えるかい?あの歯車が。一つの歯車の動きが、次の歯車を動かし、その次の歯車を動かす。

そしてその歯車がまた次の歯車を動かして―――。次の、次の、次の・・・そして、世界は、動き出す。

 しかも、この歯車って言うのが曲者だ。予想なんかできやしない。トリガーを見切ることくらいならできるよ?観測者だもの。・・・・・・・ところが、その観測者たる全能を使っても、その動きは見切れはしない。

 ―――まぁ、見切れるからといって私が見ると思うかい?―――おや、分かってきたみたいだね?『私というものが』そう、つまり、「風情」が無いじゃないか。―――そして、分かっているのかな?君もまた、「観測者」なのだということを。君は、一体何を見ているのだろうかね?


―――――そう、その通り。

―――――答えは、自分で、見つけたまえ――――


―――――それでは、良い夢を。


「あ"ー寒かったでござる。しかし、あの女、何が「すべて凍るはずなのにー!!」でござるか」

「・・・・・・・・・・・・・」

「あの程度で、この犬塚シロに流れるエモ・・・ごほんっ!もとい、兄上への想いが凍るわけがないでござる!」

「・・・・・・・・・・・・・・コン」

「どうした〜狐♪そんなに凍ったことが悔しいんでござるか♪」

「・・・・・・・・・・・・・・・・グルルッ!」

「わーっはっはっは!」

「・・・・・・・・・・・(ギラン!)」

ダダダダダッ!

「ん〜何処に行くでござるか〜?」

ぴた(止まって振り向き)。じーっ(何かを確認した後)。・・・・ふっ(嘲るような笑みを浮かべて)。


ダダダダダダダダダッ!!!(突如全力疾走)


「なっ!まてーい!このクソ狐ー!!」

ズドドドドドドドドッ!!!(追跡開始)


「しくしくしく・・・・この世にまだ凍らせられないものがあるなんて・・・・・また雪女修行のやり直しね」


---アトガキッポイナニカ---

はいすいませんmaisenでございます^^

休日でもない限りやっぱりたくさんは書けませんねぇ^^;

だいたい1時間半から2時間近くかけてこれぐらいなんですから。

もっと早くしたいなぁ。


いつもいつも感想ありがとうございます。特に何名かのかたには何度も感想をいただいて、恐縮するこ

と限り無しでございます。

期待していただいている限り、これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします^^ノシ


ps・・・壊れ表記?

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