チュンチュン―――
朝日が昇る。小鳥の囀りが聞こえて、しかも今日は快晴の予感がする。
こんな日に、気持ちよく目覚めることができるならば、それは、一つの幸せではなかろうか。
「・・・・・・・・・・おい、生きてるか?」
「・・・・・・・・・・ああ、なんとか、な」
「・・・・・・・・・・・やばかったな」
「・・・・・・・・・・・ああ、久しぶりに死ぬかと思った」
朝日が昇る。小鳥の囀りが聞こえて、しかも今日は快晴の予感がする。
「・・・・・・・・・・・生きてるよな?拙者たち、助かったんだよな?」
「・・・・・・・・・・・ああ、生き延びたよ」
こんな日に、生きるということの大切さを知った彼らは、一つの幸せを得た・・・のか?
「・・・・・・・・・・・・・・もう、拾い食いは止めような」
「・・・・・・・・・・・・・・ああ、武士はくわねど高楊枝って言うもんな」
「「・・・・・・・・・・・生きてるって素晴らしい・・・・・・」」
とりあえず、とっても幸せを感じているようなので、良しとしよう。
「やぁ」 またまたお会いしたね。改めて名乗ることもないとは思うが、せっかくの再会だ。あえて名乗らせていただくとしようか。
よろしく、私の名は「シュレーディンガー」だ。観測者、見つめるもの、法則、只そこにあるもの、愉快犯、快楽至上主義。色々呼ばれ方はあるけれど、最近はこの名を名乗っているよ。
――――私に意味を求めてはいけないよ?私は「そういうもの」なのだから。
まぁそんな事は置いといて、彼らの話をはじめよう。彼は出会った。彼女に出会った。それはつまりこの世界の歯車が回りだすことを示している。彼ら二人がトリガーであって、スイッチなんだよ。
とはいえ、それはあくまでもただのイグニッションキーのようなもの。車のエンジンを思い出してもらうといい。あれは動き始めるときこそバッテリーによる発動が必要だろう?でも、動き始めてしまえば、そう、それは――――――――
―――――――――自分の力で動き出す
つまりは、そういうことさ。ん?わかりにくいかな?こればっかりはしょうがない。だってそれが私の存在そのものなのだから。こんな感じだから、私を知りえた僅かな人たちからは嫌われたりすることもあるんだけどね?私に言わせれば明確な答えが始めからわかっているものなぞ、存在する意義の半分は消えてなくなっていると思うのだがね?
おやおや、少々愚痴っぽくなってしまったようだ。すまないね、ここに訪れる者などそう多くはない。久しぶりの客人に対して、少々礼を欠いてしまったようだ。
お詫びといっては何だが、お茶を一杯ご馳走しよう。まぁ、物語を聞きながらでも飲んでくれると嬉しいな―――
「全く・・・いきなり降って来て、全然怪我した様子もない上に、第一声が「嫁にこい~」?ふっざけた痴漢だこと」
「その怪我しなかった人をいきなり重症一歩手前まで殴り倒した美神さんもすごいと思いますけど・・・」
犬飼 忠夫がニュートンに負け、ひなびた温泉の女湯に落ちてからしばらく後、そこには美神と呼ばれた浴衣姿の女性と、明らかに地面から浮きつつ、人魂を纏わせた「幽霊の」 少女がいた。
「――――うん?この子・・・なんか変ね。―――おキヌちゃん!荷物の中から呪縛ロープと、霊視ゴーグル持ってきて頂戴!」
「――――呪縛ろーぷ?れいしごーぐる?・・・ふぇ~ん、わかりませ~ん」
「ああ、そりゃそうよね・・・しょーがないわねぇ。ちょっと見張っててよ、多分あれだけやっとけばしばらく動けないと思うけど」
「はい!」
頭を掻きつつ自分の部屋に戻る浴衣姿の美女と、それを元気一杯に見送る幽霊美少女の後ろでは――
(―――ヤヴァイ!呪縛ロープとか霊視ゴーグルとかってTVでやってた霊媒道具じゃねぇか!GSなんぞと事かまえるわけにはいかん!)
―――すでに流れ出る血も止まり始め、戦術的撤退を考える半人狼の青年がいた。
(・・・・ああっ!でも、年上の美女に縄で縛られる・・・イイかもしれんっ!!)
―――訂正。ただのバカがいた。
(どうする・・・どうする忠夫!このままここにいればGSに睨まれるかもしれん!しかし、外に出て見つけた嫁候補第一号!しかもすこぶるつきの美女!!・・・もったいない!もったいないぞぉぉぉっ!!」
「きゃぁ!」
「うぇっ!」
どうやらいつのまにか口から出ていた忠夫の心の叫びは、近くにいた幽霊少女を驚かせ、その悲鳴が更に忠夫本人も驚かせたようである。初めて視線を交わす2人。そして―――
「あ・・・・あの、だいじょうぶですか?」
「―――――嫁に来ないか?」
「―――――何を考えとるかこのばかたれーー!!」
とりあえず目に入ったおキヌを口説き?はじめた忠夫への返答は、少女の悲鳴を聞き駆け戻ってきた美神の十二分に体重の乗った飛び蹴りであった。
「―――で、あんたなんでこんなところにいるの?」
また更にしばらく後、忠夫が目覚めてみれば呪縛ロープでぐるっぐるに巻かれた己と、
「あんた、人間じゃないでしょ?」
―――神通棍を輝かせながら額にいくつも井桁を浮かばせた美神がそこにいた。
「・・・・・・・ななななんのことでせうか?わ、私はどこにでもいるゴク普通の一般村民ですよ?」
「へぇ?じゃぁその頭から生えてるお耳は何かしら?」
その言葉に慌てて耳を隠そうとし、完璧に拘束されている為腕が動かせず、じたばたともがく忠夫の額にはすでにバンダナはなく―――しっかりと、狼の耳が生えていた。
「こ、こ、これは―――ですねぇ?」
「これは?」
「そのぉ・・・あの・・・ええと・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
どんどん纏う雰囲気が冷たくなり、温度を下げる美神の視線にさらされながら―――
「・・・・・・・・お前の綺麗な声を良く聴く為さ?」
「・・・・・・・・ちょぉ~~~っと躾が足りないようね?」
忠夫は何処までも忠夫であった。
―――ばしっ!どかっ!ごすぅ!
―――キャイーンキャイーン!
「へぇ?!半人狼!いまどきめっずらしいわねぇ~。人狼が人との交流を絶ってから、もうずいぶん経つわよ?」
「・・・・・・ええ、まぁ色々ありまして」
「んで、そんなレアな存在がどうしてこんなところにいるわけ?」
「嫁探し」
即答しつつもイイ笑顔で答える忠夫に、呆れた溜息をつきながらも美神は神通棍をしまい、
「はぁ~。まぁ、確かに人狼と人間が結ばれた話はあるけど・・・」
「ねぇ、美神さん。ろーぷ解いて上げましょうよ」
「まぁ、悪い子じゃなさそうだしねぇ・・・馬鹿だけど」
苦笑いを浮かべつつロープを解いてバンダナを返してやるのだった。
「それで、これからどうすんのよ?女性をさらうっていうのなら、しっかりバッチリ極楽へ送ってあげるけど?」
「――――はっ?」
本当に、全く考えてもいなかった事を言われたように固まった後、忠夫は
「なーにいってんすか!やっぱ愛がないとだめでしょ?!愛がなきゃぁ!!」
全力で己の信念をぶちまけた。
「・・・・・・・・・・ふーん」
対する美神は、どこか全く興味がないようでいて――――
(・・・・・・・・なんだろ。これ。なんだか、すごく懐かしい)
――――自分でも持て余す心のそこからの感情に戸惑っていた。
「とりあえず、母上繋がりで連絡とってあるんで、そっちの方にでも行ってみようかな、と」
「へぇ、どこ?」
「東京っス。といっても、自力で生きていけるように頑張るつもりっすけどね」
「・・・・・・・・・あんた、犬飼忠夫って言ったわよね?」
「嫁にきますか?」
「・・・行くかいっ!」
とっても不機嫌な表情で、でもどこかに楽しげな色を瞳に浮かべたまま―――美神は言う。
「あんた――――私の裸を見て、無料で済むとは思ってないわよね?」
「・・・・え"」
「とりあえずお金なんか持ってないでしょ?―――なら、体で払いなさい」
「そー言うことなら今すぐこの場ですぐにでもー――!!」
ばごんっ!
「・・・労働力を提供しなさい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・りょ、了解しました」
ルパンダイブをかましつつトランクス一枚で凄まじい勢いで尻尾をはためかせ(トランクスには穴があいている)飛び掛ったところを、カウンターでガゼルパンチをレバーに食らって悶える忠夫と
「まったく・・・まぁ、荷物持ちもできる、人狼の血を引いてるから霊力も使えるはずだし、超感覚もついてくる。・・・拾い物・・・・・・かなぁ?」
はやまったかなぁ?ってな顔でたたずむ「いくら分働け」という額の提示をしなかった美神と
(うわぁ、おとこのひとってすごくきんにくがついてるんだぁ)
以外に引き締まっている忠夫の体を見て真っ赤になりながらも目が離せないおキヌの上からは―――
――――いつのまにか、涼しげな、透き通るような朝日が差し込んでいた。
「兄上ー!あっにぃうっえぇーーーー!!何処でござるかーーー!!」
「コーーーーーン!!」
「このバカギツネェェェ!!少しは手加減するでござるよぉぉぉ!!!」
「グルルルルルルルルルルルルルッ!!!」
「やるでござるかぁっ!!」
「グルルルルルルルルルルルウッ!!」
―――――――――ドカンっ!バキンッ!!ズゴンッ!!
―――――――――ギャー!シロー!親に向かって何をするんだ―――――
―――――――――邪魔でござる!!どけぇぇぇぇっ!!―――――――
―――――――――コーーーーーーーーーーーーーン!!―――――――
―――――――――反抗期かぁぁぁぁぁ!!―――――――――――――
―――――――――ずごーーーーん!!
---アトガキッポイナニカ---
皆さんご機嫌いかがですかmaisenでございます^^
――――いや、難しかった。^^;
なにがむずかしかったって、ねぇ。
まぁ、とりあえず書き上げました。今回も、皆さんの感想のおかげです。
思わず何度も何度も読み返してしまいましたよ^^;
とりあえず、ようやく原作に入れるかなぁ?