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▽レス始

「月に吼える 第参話(GS)」

maisen (2005-06-26 23:56/2005-06-27 00:01)
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「――――ふぃ〜〜〜」

チャプン

「あ゛〜。風呂は命の洗濯じゃぁ〜〜〜」

―――今宵は新月、月のない夜。

「お〜い、タマ〜?」

―――とはいえ、地上に光溢れる都会と違って、ここは自然の光だけの深い深い森の中。

「きもちえ〜ぞ〜。入らんのか〜?」

「グルルルルッ!」

―――星の光が天を満たし

「うおっ!?何でそんなに怒るんだよっ!」

「グルルルルルルルルッ!」

―――地上の道を照らし出す

「わかった!わかったって!もう何も言わんからそのまま岩の後ろに居ろって!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・コン」

―――天然の温泉、当然のごとく露天風呂に肩までつかる半人狼の青年と、


「・・・・・・・・・・・・・・キューン」


―――1匹の9本の尾をもつ狐を照らし出す

「・・・・・・・・い〜い○だな♪ハハン♪」

「・・・・・・・・コン♪」

―――緊張感の欠片もない。


 温泉から上がった青年―――「犬飼忠夫」は、体をしっかりと隅々まで吹き上げると、手近に生えている草をおもむろに数本引っこ抜き、体に擦り付ける。

「とりいだしましたるは何の変哲もない洋服でござ〜い」

 そのままリュックサックの中からジーパンと一揃いの上着、肌着を取り出す。

「コン?」

 どこかの岩陰から狐の声が聞こえたが聞き流しつつ

「なんとこれは今まで一度も袖を通したことのないまッさらの新品!」

 ごそごそとその服を身につけ――

「これで匂いで見つけられる心配は無い!完璧っ!いっつぱーふぇくとぅ!」

 額に真っ赤なバンダナを巻いて耳を隠す。尻尾は窮屈だがズボンの中だ。

「よっしゃ!偽装も完璧!」

おずおずと岩陰から顔を出した狐は、どこか未練がましい表情を見せながらも

「コン♪」

青年の頭に陣取った。


一方その頃人狼の里では―――

「・・・・ああ、沙耶。今そっちに逝くよ・・・」

「待てー!早まるなポチっ!まだ早い!」

「薬ー!医者ー!衛生兵はまだかっーー!!」

「待ってください!他にも玉葱中毒の患者が多すぎて手が回りません!」

「くっ!だからあれほど拾い食いはするなと言っておったろうが!」

「嗚呼、光が見えるよ・・・・・・沙耶、もう少しだ・・・・」

「ポチィィィィィィィィ!!!」

「あ゛〜〜〜〜頭痛い。飲みすぎたか」

「何でお前はそんなに落ちついとるんだ犬塚ぁぁぁぁぁぁ!!」

「長老・・・元気いいですねぇ。拙者なんて二日酔いでもうグダグダ」

「親友の危機だろうが少しは慌てんかこの薄情もーん!!それにまだ当日じゃぁ!!」

「あ、それじゃ1日酔い?語呂が悪いなぁ―――って、うわたたたた!!こんなとこで霊波刀なんて振
り回さないでくださいよ!!」

「これ以上怪我人を増やさないでくださーーーい!!」

―――――壮絶だった。あ、ポチの口から魂が半分ほど出てる。


「ふう。何とか全員峠は越えたか」

「ええ。何故か私は手当てして貰えませんでしたが」

 隣の部屋ではいまだに呻き声が聞こえているが、とりあえず落ち着いたようである。

「バカと二日酔いにつける薬はないわい。それはそうと」

「なんですか?長老」

「お前の娘はどうした?この騒ぎで出てこないとは、よっぽど肝が座っとると見えるが」

 ん?という感じで不思議そうな顔をした犬塚家の大黒柱は―――

「っ!!!」

 慌てて娘の部屋に向かって走り出し―――

 バンっ!!

 いきなり部屋の扉を空け―――

 「・・・・・・・・・・これはっ!」

 布団の上に置いてある紙切れに目を通し―――

 ドサリ。

 そのまま膝から崩れ落ちた。


兄上と駆け落ちします兄上を追いかけます。探さないでください。
 シロ」

「シロォォォォォォォォぉ!」

原因としてはあからさまに打ち消された前半部分であったろう。


「クンクンクンクン・・・・・む、匂いが薄れてきたでござるな・・・」

 父親が彼女の名前を叫んで今にも家から飛び出そうとし、慌てて様子を見にきた長老とおもいっきり

ぶつかって昏倒していた頃―――


「甘いでござるよ、拙者の鼻は追跡と狩りに優れた狼の鼻―――


―――少しずつ忠夫との距離を縮めつつある一人の少女がいた。


―――狙った獲物は逃がさんでござるっ!!」


―――ゾクッ!!

「うおっ!なんだ今の予感は?!」

「コン?」

「あ、いや、なんと言うか・・・・・・真っ赤な鎖が追ってくるというか、むしろ桃色のごっつい首輪?というか」

「・・・・コン!」

その台詞を聞いてどんな考えに至ったのやら、忠夫の頭から飛び降りたタマは、一声鳴くと先導するかのように忠夫を振り返りながら歩き出した。

「・・・ついてこいってか?」

「コン!」

「―――しゃーない、頼んだぞ、タマ!」

「きゅ〜ん」

頼られて何処となく嬉しそうな顔をしたタマは、張り切って走り出した。


ザンザンザンザンザンッ!

「近いでござるな・・・」

ザザザザザザザッ!

「もうすぐ・・・もうすぐ・・・」

バッ!!

「――――見つけたでござるっ!」

ヒュオッ!!

行く手を阻む草木を薙ぎ払い―――

殆ど崖に近い急斜面を駆け下り―――

そのままの勢いで大跳躍し―――

その卓越した人狼ならではの運動神経で着地地点を微調整する―――


ズドンっ!!


「兄上っ!!」

「うおっ!!おまっ!!・・・シロかっ!!」

突如空から降ってくるという荒業をかました銀の髪とその中に赤い一房の髪を持つまだどこか幼さの残る―――数年もすれば、間違いなく美女となるであろう素材に恵まれては、いる―――少女は

「何故でござるかっ?!」

―――とりあえず主語もない色々足りない台詞をかましつつ

「ぐおっ!!くるしっ・・・死ぬッ・・・マジでマジでっ・・・ぎぶぎぶぎーぶ!!」

―――青年を締め落としにかかった。


―――顔色が紫を通り越して土気色に変わった青年が何とか生還した時の第一声は

「・・・綺麗な川があって、母上がいて、恍惚の表情でそっちに逝く親父がいて、気持ち悪かったからぶん殴って引き離した」

―――であった。犬飼ポチ、まだ生死の境を彷徨っていたようである。


「しっかし、よく俺の場所がわかったなぁ。完璧に匂い消したつもりだったのに」

「へ?消えてないでござるよ?」

「え?何処に匂いがあるんだ?」

「その背中のばっぐでござる」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ」

「・・・・・・・・・・・コン」

 忠夫、痛恨の失敗。気付かなかったタマと一緒にどこか抜けていたようである。


「・・・で。何故里を出たでござるか?」

「嫁探し」

 即答。即、答える。質問の終わりと返答が被っていた位に素早い返事であった。何故かとてもイイ笑顔で、親指を立てて答える忠夫の前には、「へっ?!」という顔で只固まる人狼の少女と・・・「聞いてないわよっ!!」という顔でなんだか危険な雰囲気をかもし出している狐がいた。

「ん?・・・どうしたんだお前ら」

「嫁探し・・・でござるか?」

「コン?」

 

「ああ。そうだけど?」

「な・ん・で里の外に探す必要があるのでござるか?」

「・・・・・・・」

 

「そりゃお前、里に相手がいないからだろうが」

「・・・・ほぉう」

「コン♪」

 

「・・・なあ、シロ?タマ?」

「何でござるか♪」

「コン♪」

 

「なんだかスッゴク嫌な予感がするんですが?」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

 

「それに冷や汗が止まらないんですが?」

「流石兄上♪鋭い直感は人狼の能力の一つでござるよ♪」

「コン♪」

 

―――――――――ズゴンッッッ!!!!!


「なんでじゃぁぁぁぁぁぁ・・・・・・!」


―――――――――キラン

忠夫は夜空を飾る一筋の流れ星になった。


「・・・・はっ!しまった!逃げられたか!!」

「コンッ!」


―――某温泉・女湯―――

「いや〜今回の仕事は楽だったわね〜」

 グラマラスと言う言葉を具現させたかのような体を伸ばし、缶ビール片手に温泉につかりながらくつ

ろぐという贅沢をしている女性。――――美神令子がそこにはいた。
 母親譲りの美貌と、悪霊との戦いの中で身についた鍛えられた鋼にも似たその雰囲気。少々きつめの顔立ちながらも、「絶世の」と呼んでも差し支えのない―――女性である。

「おキヌちゃんって言うかなり便利な助手も新しく事務所に入ることになったし、まさに棚から牡丹餅落ちまくりね。ほーっほっほっほっ!」

「美神さーん!」

 そこにまた一人、先ほどから独り言を喋っていた女性とはまた違う雰囲気をもった女の子―――女性と言うより、女の子と言った方がまだ近いであろう。特に美神と比べれば―――が現れる。
 先ほどの女性を綺麗、と表現するのなら、こちらは可愛い、清純と言った言葉が似合うであろう。
 どちらがどうこうでなく、彼女達どちらも大変魅力的な、と言うにふさわしい二人である。

「ど〜したのおキヌちゃん?」

「さっきすっごい爆発があったんですよ!あっちの山の方で!聞こえませんでしたか?!」

「あ〜、別にいいわよ。そんな依頼受けてないし」

「美神さ〜ん!」

―――――――物理法則と言うものがある

「困ったことがあったならまた依頼が来るわよ」

―――――――なんというか、ぶっちゃけた話

「えー、でもー」

―――――――おもいっきり投げたボールでも

「そしたらまた儲け話ね♪」

―――――――いつか必ず地面に落ちるのである


ヒュン ――――ダッパァー――ン!!

「きゃあっ!いったい何?!今度は悪霊でも出たの?!」

「違います!あそこです―――!!」

―――――――彼らのファーストコンタクトは

「嫁に来ーい!!!!!」

「死ねこのハリウッド級アクション痴漢!!!」

ドバキィ!!

―――――――電光石火の右ストレートから始まった!


 クスクスクス・・・。おやおや、彼らも相変わらずなようで。何処に行っても、どんな時でも彼らは「ああ」だ。アレだけ変わる時の流れのなかで、変わらない面を保ちつづけるとは―――いやはや。これだから、「おもしろい」

 ああ、挨拶が遅れてしまったね。こんばんわ?おはよう?それとも、こんにちはかな?まぁ気にしないでおくれ、ここではそんなもの関係ない。ただ、「やぁ」と声をかけてくれれば私はとっても嬉しいよ?ここ?私は単に天文台、と呼んでいるよ。まさに世界は綺羅星のごとく、ってね。

 さてさて、やっぱり彼らはであうのか。ただの偶然?―――っは!それこそマサカ、だ!あるべくしてそうあった。それだけのことだよ。――――そう、それだけの、只、其れだけの―――

 いや少々興奮して、喋りすぎてしまったようだね。情けないことだ。観測者たる私がこのざまでは――――おっと。

 まぁいいさ。たまにはこんな時もある。そんなときは、一人で飲むのが「楽しい」のでね。今日はこの辺で失礼させていただくよ?

それでは

―――――――――――良い夢を


---アトガキッポイナニカ---

はいすいませんmaisenです^^;

やっと事務所の人たちと合流できました。まぁ、もともとそんなに長く書いていないと言う話もありますが。

これから先のことをアトガキで書くのもなんですので、この場は感想をいただいた方々にお礼を述べるに留めさせて頂きます。ほんとうにありがとうございます。やっぱり、感想がもらえるってとってもうれしいものなんですねぇ。^^

初めて書く立場になって、感想のありがたさが良くわかりました。

ほんとうに、ほんっとーにありがとうございます^^

話が書きあがったのは、皆さんの感想のおかげです。

次も頑張りますので、ではでは^^ノシ

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