閉鎖されたエレベーターの中で、横島は令子にジャレついている。
「ちょっと待って・・・大事な話があるの。」
「もう待ちませんよ〜♪」
バカップル丸出しの二人。
そういう空間に果たして令子が耐えられるのか?
答え・・・・無理です。
「待てっちゅーとろーがっ!!!!」
白いスリーブレスで胸に日の丸が付いたシャツを着て、赤いグローブをつけた令子がアッパーカットで横島を遥か上空に浮かせた。
令子のバックには『JET』の文字が・・・・・
エレベーターはいつの間にか止まり、天井にへばりついていた横島は、なにか潰れるような音をたてて落下してきた。
「このヤドロクがっ!!!!!」
追い討ちとばかりにヒールでゲシゲシと踏みつける。
床がせり上がって止まった場所・・・宮殿のダンスホールの様な高級ではあるが、なにもない場所であった。
いや、なにも無くはない。
ソファ風なイスが2脚、他の場所より一段高い場所にテーブルのようなもの、その横に時代物のイス・・・と、それに座ったアシュ。
二人のいつものやりとり(?)を見て、頭に汗マークを浮かべている。
「あ・・・・あら?・・・・アシュ見てたの?」
アシュの視線に気付いた令子の頭にも、汗マークが浮き出ている。
「横島・・・君には失望したよ。令子、お前もだ。」
横島に失望というより、令子の素を見て失望したのだろうか?ふつーはそう考える。
「まだ私が、信用できないようだね。」
イスに座ったまま足を組みかえるアシュ。
足の短い雪之丞が見たら、“嫌味”ととり発砲するとこだろう。
それはともかく・・・ほんとにいいのか?アシュ??
今のを見て“美しい”なんていいきれるのか???
「ち・・・違うのアシュ!・・・・これは・・・・」
さすがにここまで地がでてしまうと、言い訳は難しい。
「いいんだよ、こんなオバケ屋敷こさえといて信じろっていうのが、どだい無理な話なんだよ。」
いつの間にか復活していた横島は、立ち上がって令子の手を取ると後ろに引いた。
「気にいってもらえると思ったんだがねぇ・・・・」
「瓶づめの赤ん坊さえ見なきゃ〜な。」
横島がそういうと、アシュの目が一瞬だけ鋭くなる。横島は、賢者の石をとりだすと右手で弄びながら言葉を続けた。
「あれと、この石っころで、いったい何やらかそうってんだ?」
「神の研究さ、私はこれを1万年続けている。」
賢者の石でお手玉をしていたが、それを握り締めアシュを睨みつけた。
「1万年だ?人をバカにするのもいいかげんにしやがれ!」
アシュの下へズカズカと歩み寄る横島。
突然、顔面に衝撃を感じその場へヘタリ込む。
「イテテテ・・・また硬質ガラスかよ・・・・・・・」
横島の行動に失笑するアシュ。
テーブルに備えてあるスピーカーが音を立てる。
「なに用だ?」
『侵入者です。』
「始末しておけ。」
イスから立ち上がり、机のスイッチを押す。
アシュの背後の壁が上がっていき、奥から巨大なスクリーンがでてくる。
「どうやらお友達のようだよ、横島君。」
もう一度スイッチを押すと、スクリーンに映像が映し出された。
監視モニターらしく、潜入している雪之丞とシロが映されている。
「あいつら・・・・・って、ユッキ〜ヤバくないか?」
先程の勘九郎を思い出し、訝しげな顔をする。
「それと、もう一人。」
カメラが切り替わると、西条が横島の写真を男に見せている映像が映る。
「西条まで?・・・・こりゃいよいよ狂ってきやがった。」
「彼の相手をしているのは、古代中国の哲人だよ。」
アシュは西条と共に映っている男の顔を見ながら言った。
「と思い込んでるパラノイアか。」
からかうように横島が言う。
「彼は本物だっ!」
アシュは、横島を睨みつけ怒鳴りつけた。
「んじゃ本物のパー?」
真剣な奴をからかい、自分のペースにもっていく・・・それが美神流。
横島は右手を自分の頭の側でヒラヒラさせた。
「いいかよく聞け!」
アシュはスクリーンを切り替えた。
「彼らは、私の1万年のコレクションだ。政治・芸術・哲学・宗教、ありとあらゆる優れた者、美しい者が私の手により保存され現実のものとして生かされているのだ。」
偉人といわれ歴史に名を残している人物の写真が次々とスクリーンに映し出されている。
アシュは言葉を続けた。
「世界の終わりについて考えた事があるかね・・・予言しよう、あと数日のうちに世界は滅びると。だが私に選ばれた者達、優れた者、美しい者は生き残る事ができる。永遠に!!」
アシュの熱弁が終わると、横島は呆然としていた。
「そうだったのか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ぽつりと呟いたかと思うと、声をだして笑いだす。
「なにが可笑しい!」
「わははははははははは!!!!!永遠の生のお次は、世界の滅亡ときやがったか。アンタの芝居もたいしたもんだ。」
笑いながら近くにあったイスに座る。
「アンタが“アシュタロス”なら1万年生きてる事も世界の滅亡も不可能じゃないだろうなぁ。でもアシュタロスは“死ぬ”事を認められたんだぜ?例え転生したとしても今頃はまだ赤ん坊だ。姿形は似てても“人間”にそんな事ぁできやしねーよ。・・・それともアンタ・・・アシュタロスだというのか?」
横島のすぐ近くに永遠の命を持つ者がいる、Drカオスである。
カオスを見ていれば判る・・・永遠の若さなど不可能な事が。
アシュは横島を見て、溜息をついた。
「はぁ〜〜〜・・・無教養さ、頑固さ、判るだろ令子、彼が永遠の生に値しない人物という事が・・・令子、お前だけでいい、永遠の生を得るのは。」
アシュにそういわれると、令子は横島の座っているイスの側に歩いた。
「横島君とじゃなきゃ、ゴメンだわ。」
「令子!!!」
思わぬ言葉にアシュは焦った。
「そりゃ永遠の若さは欲しいわよ。“現世利益優先”な私ですもの、永遠の若さがあればいつまでも稼げるしね。でもアタシ年をとってヨボヨボになった横島君を見たくないもの・・・」
令子は横島の側にくると、横目で横島の方を見ている。
“事務所手に入れるときにすでに見ちゃったし・・・・”
とりあえず、この言葉だけは飲み込んでおく。
「美神さん・・・ひょっとして俺の事・・・・」
横島は見上げるように令子を見た。
「あのさ・・・いいかげん、“令子”って呼んでくれないかしら・・・普段でもさ・・・」
「お・・・俺の事、愛してます?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・今頃気づいたの?」
真っ赤になり、顔を背ける令子。
「れいこ〜〜〜〜〜っ!!!」
いきなりルパンダイブ敢行っ!!!!
「時と場所を考えんかーーーーーーーっ!!!!!」
やはり迎撃されてしまった。この横島という男、どうもTPOというものが頭から欠落し、学習能力も乏しいようだ。
しかし、端から見るとバカップルのジャレあい(かなり過激ではあるが・・・)にしか見えないらしい。
アシュは、このバカップルのジャレ会いにイラついていた。
「令子!!!横島から離れろっ!!!」
かなり熱くなっているらしい。
クールな面影は今は無い。
「無駄だよ、アシュ。二人は固ぁ〜い、固ぁ〜〜〜い絆で結ばれちまってんだから♪」
令子のストレートを交わして、その手を引き寄せると令子の頭を自分の顔に寄せた。
その横島の行動に驚いた令子だったが、横島の体温を感じると借りてきた猫のように大人しく横島に従っている。
横島のその行動は、アシュの感情を見事なまでに逆撫でした。
アシュは、机の方に目をやるとボタンを押した。
横島の座っていたイスから捕縛用の金具がでると、横島の両手両足を完全に封じ込める。
「な!なにしやがる!!」
「君のその“下劣”な神経の皮を剥いでみたい。」
横島の座っていたイスは、アシュのいる場所から離れた方へ移動し、リクライニングすると横島を十字架状に吊るし上げた。
令子はアシュを止めようと彼のいる場所にいくが、硬質ガラスに阻まれる。
「やめて!アシュ!!!」
ガラスを叩き、令子が叫んだ。
「殺しはしないよ、しばし夢を見るだけさ。」
アシュがそういって、スイッチをいれると机と入れ替わりに計器類がならんだコンソールが現れ、天井からはコードが数本繋がったヘルメット状のものとモニターが現れた。
「これが横島のすべてさ!!」
メインスイッチを入れるアシュ。
すでに硬質ガラスは排除されているが、横島のすべてと聞いて令子も動きを止めて成り行きを見ている。
ちゃららちゃんちゃちゃちゃちゃちゃららん♪ちゃんちゃんちゃんちゃん♪
キャーーーー!!!!!!!
キャーーーーーーーーー!!!!!!
水着の女の子たちが大騒ぎしている。
その中央でギターを奏でる横島。
ごーごー!!ごーじゃ〇!ごーごー♪ごー!〇ゃにびぐーー♪
モニターを見ていたアシュと令子は、呆然としてしまっている。
“下劣とは思っていたが、ここまでとは・・・・”
“やっぱり、ロクでもないこと考えていたわね・・・・”
さすがの二人も、声にはだせなかったようである。
「ど・・・どうやらまだ浅い心理のようだ・・・いうなれば“夢”ではなく、煩悩や願望程度だな。」
アシュは頭に汗マークを貼り付けたまま、ダイアルを回した。
忠夫様ぁ〜〜〜〜〜〜〜〜♪
今日は私の番よ!
今日はア・タ・シ♪
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「まぁ・・・・予想通りといっちゃなんだが・・・・」
すでに悟りの境地に達しているアシュ。
ルシオラ、冥子、エミ、魔鈴、小竜姫、ミィ、おキヌ、メドーサ、ワルキューレ等など・・・・ようはハーレムである。
“ヤバい!!!!死ぬかもしれん!!!!”
アシュは、死の予感を感じた。
真横に夜叉がいるのだ!!!!!
“なぜ、アタシがいないのよ・・・・・・”
地鳴りにも似た殺気を隠しもしない令子。
身の危険(巻き添え)を感じたアシュは、再びダイアルを回す。
画面に、一瞬令子が映った。
画面の中の令子は、綺麗な顔とばかりはいえなかった。
普段の“怒り””ドツき”“夜叉”・・・まさに百面相である。
呆れた顔、照れた顔、怒った顔、泣いた顔、まさに素の令子であった。
ふと画面が消え、次に現れたのはエプロン姿の令子・・・・「あら?帰ってたの。おかえり♪」
笑顔で話しかける令子。
鈍い令子でも、それを見れば十分であった。
今にも泣きそうな顔をして、画面を食い入るように見つめている。
「だいぶ深層に近づいてきたようだね・・・」
アシュは冷笑して、ダイアルを回す。
画面がホワイトアウトした。
真っ白になり、なにも映らない。
「な!なに!???横島は夢を見ない!!!」
「どうしたのアシュ?」
令子の言葉さえ耳に入らないアシュは、言葉を続ける。
「空間!虚無!!!それは白痴の、いや神の領域にほかならない!!!」
驚きのアシュの表情が、嫉妬と恐怖に歪んだ。
「永遠の眠りにつくがいい!横島ぁーーーっ!!!!」
ダイアルをリミットまで回すと、横島の身体が電気に触れたように痙攣しだした。
「やめて!!アシュ!!!」
令子はアシュを止めに入るが、アシュはその頑強な身体で令子を寄せ付けようとしない。
「この・・・・・」
令子は、神通棍を抜きアシュに振りかざした。
その瞬間、衝撃が部屋の中を駆け巡る。
機材は倒れ、壁に亀裂が入り、天井が崩落する。
塔の外では、アメ〇カ海軍による空爆が行われていた。
一個人を攻撃するというには、あまりにも仰々しい数である。
一つの島を攻撃するというには、やりすぎの感があるが、世界を脅迫した男を叩くという実にアメリ〇らしいものでもある。
空を見上げ、戦闘機を確認する西条。
その表情は、なぜか喜びに満ちている。
「おお!!あれはまさしくア〇リカ海軍、さてはGメンから協力要請があったか・・・兵隊さんよ!ありがとう!!!」
つくづく平和な人である。
ミサイルによる地上攻撃の最中、塔を駆け上る雪之丞とシロ。
ガレキを駆け抜け、元は広かった場所に辿り着く。
雪之丞とシロがその部屋で目にしたものは、倒れて起き上がらない横島を必死で抱えようとしている令子の姿であった。
「助けて!!横島君が起きないの!!!」
「まったく、このクソ忙しいのに呑気な奴だぜ・・・」
ブツブツといいながらも、横島の側に駆け寄る雪之丞。
「令子・・・・・・・」
横島の側以外から、声がする。
3人は声の方を向いた。
ガレキの中から、ゆっくりとアシュが立ち上がる。
「ア・・・アシュタロス・・・・」
雪之丞の動きが止まった。
「私から離れてはいけない・・・永遠の若さが欲しくないのかね・・・」
アシュが背広の懐に手を入れ、銃を令子に向けた。
雪之丞は令子を自分の肩で弾き飛ばし自分が令子の場所に行くと、腰に手をかけコンバットマグナムを抜いた。
アシュの弾丸が雪之丞の肩を掠める。
雪之丞はトリガーを絞った。
雪之丞の放った357マグナムは、寸分の狂いもなくアシュの眉間を貫いた。
「ホンモノだったら、これくらいで死ぬわけはねーな・・・・」
動かないアシュを見ながら、雪之丞はそう呟いた。
横島を肩に担ぎ、雪之丞たちは屍となったアシュを見向きもせずに塔を後にした。
中央への空爆は、激しさを増していく。
「もおその辺で結構ですぞーーー!!!あとはこの西条めにお任せあれーーー!!」
黒煙が立ち昇る空を戦闘機が飛び交う中、西条が戦闘機に向かって叫ぶ。
もちろん聞こえるワケなんざない。
その西条の前を、雪之丞たちが横島を抱えて走る抜ける。
火に包まれた森を抜け、海岸の岩場にまで来ると、まだそこに火の手は無かった。
岩場に波が当たり飛沫がかかる位置まで差し掛かると、殺気を孕んだ人影に足を止める三人。
影の先には、勘九郎が立っていた。
「待っていたわよ〜♪」
犯る殺る気満々な、表情を浮かべている。
横島を放り投げ、いきなり発砲する雪之丞。
「なにすんのよ!!!危ないじゃない!!友達じゃないの!!!」
そういわれた雪之丞だが、なにやら大事なものを失くしそうな悪寒がしたのだろう。
目には涙を溜めていた。
眉間にオロナ〇ン軟膏を塗り、何事もなかったかのように勘九郎はサーベルを抜いた。
「刀でござるか・・・ここは拙者が。」
雪之丞を制し、シロが一歩前にでた。
勘九郎は、サーベルを抜くとシロに斬りかかる。
慌てる様子もなく、紙一重で交わす。
シロの顔面を狙い斬りつけるが、すべて見切られ交わされていく。
胴を薙ぎ払いにいくと、勘九郎の視界からシロの姿が消えた。
あわてて辺りを見回すと、シロは勘九郎の真後ろの飛び石状の岩の上にいた。
人狼の反射神経と目を持つシロである、勘九郎の剣術などスローモーションにしか見えないのである。
勘九郎は、シロのいる岩に飛んだ。
シロはたじろぎもせずに、勘九郎を待ち構える。
同じ事の繰り返しだ。
シロは、別の飛び石に移動し八房に手をかけた。
勘九郎がサーベルを振りかざし、飛んでくる。
シロは飛び上がりそれを向かえ打つ。
八房が、鞘から抜かれた。
その刹那、金属音が響く。
「やった!!!」
雪之丞が、思わず拳を握った。
空中で交差した二人が、お互いにいた場所に降り立った。
いつもだったら相手が、つまりは勘九郎が倒れるはずであった。
何事もなかったかのように、勘九郎はシロの方を振り返る。
シロは着地したまま、苦悶の表情で八房を見る。
霊刀八房は刃毀れし、すでにガタガタの状態であった。
シロの額から、脂汗が滲む。
「うふふふ♪レーザーじゃなきゃこの“合金チョッキ”は斬れないわよ!!」
勘九郎がそういうと、上着が8つに切り裂かれ、中から金属の地肌を露にしたチョッキ(ベスト)が姿を見せた。
「この子の後は、ア・ナ・タだからね♪」
雪之丞にウィンクすると、勘九郎は再びシロに斬りかかる。
「くっ!」
歯を食いしばり、再び飛び上がるシロ。
空中で交差する二人。
先程と同じように金属音が響いた。
陸地側に着地したシロ。
逆手に持った八房の切先が、音を立てて折れ地面に落ちる。
苦痛に顔を歪ませ片膝をつく。
勘九郎は振り返り、勝利の余韻とばかりに敗者の背中に笑みを見せた。
シロに駆け寄る雪之丞。
“次はアンタの番よ”
そう言葉を放とうとした勘九郎の視界が、ずれる。
「あら?」
八房の能力は、瞬間の8つの斬撃である。
チョッキを切り裂く事は、叶わなかった。
しかし、それと人に対しての斬撃は別の話である。
「いやだ!!お化粧崩れちゃうじゃないの!!!!」
顔を3つに切断された勘九郎は、ずれた顔を抑えながらそう叫ぶとそのまま海に落ちていった。
「壁塗りかよ、お前の化粧は!」
海に落ちていった勘九郎に、雪之丞は軽くツッコむとうなだれているシロの背中に声をかけた。
「バッキャロー!!!ナマクラ剣くらい直せば済むだろーが!!!」
「折れたのは剣のせいではござらぬ!!拙者の・・・拙者の腕の未熟さゆえでござる・・・・」
俯いたままシロは、そう言った。
顔は見えていない。だが、その声でシロが泣いているのが判る。
「シロ・・・」
微かに揺れている背中に雪之丞は、かける言葉が見つからなかった。
「悪党ども!!!そこを動くな!!!!」
遠くで西条の声が聞こえた。
どうやら、彼らの姿が見えたらしい。
「行くぞ!!!」
横島を再び肩に担ぎ、雪之丞は駆け出した。
島の端に、雪之丞が乗ってきたヨットが停まっていた。
雪之丞はそれには乗らず、隣に停泊させてあったモーターボートに飛び乗った。
エンジンは一発で始動し、モーターボートは彼ら4人を乗せ桟橋を離れる。
後一歩遅く、西条が到着した。
沖へ向かうボート。
隣にあるヨットでは、とてもではないが追いつけない。
西条は余裕の笑みを浮かべ、手漕ぎボートに乗り込んだ。
「こんなこともあろうかと、ちゃんと手は打ってあるのだよ。」
雪之丞が操るモーターボートにはロープが繋がれており、手漕ぎボートにその先が結ばれているのだ。
逃走にはおそらくこちらを使うと読んだ勘が、当たったというワケだ。
木製の桟橋のロープの残りがみるみるうちに少なくなっていく。
ボートのヘリを掴み、備える西条。
モーターボートに引かれ、もの凄い勢いで走り出すボート。
隣のボートが・・・・
「し・しまったーーーー!!!!なんたる不覚!!!かくなるうえは・・・」
オールを手にして漕ぎ出す西条。
足こぎボートだったらリゲ〇ン飲んだら追いつけたかも?・・・とCMを思い出していたら、空から轟音が響いた。
戦闘機より重い音である。
西条が空を見上げると、B52が編隊を組んで飛んでいる。
そこから投下される複数の・・・・・・・・
タマモ
西条の周りが一瞬で火の海になる。
タマモに抱きつき泣き叫び西条。
周りでは、タマモの分身が狐火で好き放題燃やしまくっている。
「タ・・・タマモ君、少しは手加減したらどうかね・・・・」
「そうもいってられないのよ“ある事情”ができたから。」
「ある事情って?」
「後で判ると思うわ・・・・って、アンタいつまで抱きついてるつもりよ。」
西条の顔に向かい、タマモ(爆弾)は狐火を放った。
のどかな海岸線に人影が見える。
元は高級だったバーバリーのコートも、今は無残に焼け焦げボロボロになっている。
焦燥しきった男は、その足取りも重く、一歩一歩を辛そうに歩いていた。
「西条くん?・・・・・・・西条君なの??」
ふいに声をかけられ、声の方を振り返ると令子によく似た女が車から降りてきた。
「やはりあなたなのね・・・まさかとは思ったけど・・・」
女の顔を見て、西条の顔がみるみる崩れていく。
「先生・・・・美神先生!!!!!!!」
港から街の方に戻り、とりあえず西条に食事を与える事にした。
日本を発ってしばらく経つので、日本食の店を選ぶ。
座敷に上がり、西条と美神美智恵は差し向かえに座った。
「私がこのコロンビアの田舎街まで来たのは、他でもありません・・・横島君とバカ娘の追跡をやめさせるタメよ。あの子たちは今、重要な人物に携わっているの。これは世界的・・・いえ地球的規模の問題なのよ。」
美智恵の言葉を聞き、キョトンとしている西条。
「言っている意味が、よく判りませんが???」
「オカルト系の事件なら、私たちオカルトGメンが世界規模で活動できるわ。でもそういう類の事件じゃないのよ・・・“世界の警察”を名乗るところから、圧力・・・いえ脅しをかけてきているの。単なる“圧力”や“脅し”なら跳ね返してやるけど・・・もう完全に私たちの手には負えないトコにいってしまっているわ。」
珍しく美智恵が、ハッキリとは喋らない。
真意を包み隠すかのように、両手で口の前を隠している。
「これだけは言っておくわ。“世界の警察”は喧嘩を売られて、黙ってみている国ではないってことね・・・それを止める事ができる国は、世界中を探しても無いのよ。」
タマモが言っていた“ある事情”とは、このことだったのか・・・西条は奥歯を噛み締めた。
その様子を見て、美智恵は一通の封筒を西条の前に置いた。
「総理大臣からの特別報奨金よ。みんな待ってるわ、日本へ帰りましょう。」
「横島君を捕まえるのは、自分以外おりません。」
「気持ちは判るは・・・私だって、横島君とバカ娘を首根っこ引きずってでも帰りたいわよ・・・」
「先生!!ボクは!!!!」
いきり立つ西条だが、美智恵はそれ以上に大きな声を出しテーブルを叩いた。
「これは、命令よ!!!!!」
歯軋りし肩を震わせて堪えようとした西条だが、意を決したように立ち上がると料理の乗っていたテーブルをひっくり返し封筒を幾重にも破いた。
「自分は個人の資格で、横島君と令子ちゃんを追います!!」
西条は奮い立ったように大声でそういうと、周りの人間を蹴散らしながら店を飛び出していった。
「西条君!!!!」
上司であり師でもある美智恵の声も今の西条を止める枷にはならず、ただ虚しく店の中に響くだけであった。
後書き
うををををををををを!!!!!段々オリジナル路線がでてきて、原作を崩さないようにするのが難しくなってきました(汗)
壊れ作家は壊れ作家並にがむばっておりますので、見捨てないでやってくださいませ。
無機物クィーンタマモ姫は、今回は“爆弾(焼夷タイプ)でした。一緒に『ひのめ』も投下しようと思ったのですが、さすがにそれはあまりにもヤリすぎかな・・・と思い自粛いたしました。
さぁ!!!あと2話(予定)ラストスパートです。はたして上手くまとまるのか、かなり不安です・・・・
レス返し
Yu-san様>
原作通りにいくとアレですね・・・しかし・・・観たまんまの大統領補佐官がなにをしでかすか。そこがミソかもしれません(謎)
ATK51様>
唐巣が演じた“スタッキー大統領特別補佐官”は、サイドを残し見事なツルッパゲであります。
それだけが理由で、唐巣神父が選ばれました・・・いとあはれ。
アシュ天則>すいません!!元ネタわかないっす!!!
タキシード&トランペットは原作の六道女学園にいったときに横島君がやってました。
なぜにトランペットを持ち出していたかは謎です。
おそらくギターだと“渡り鳥”になってしまうので、某人造人間の01号のようにトランペットなのではないでしょうか・・・かなり古いネタです・・・おそらく原作者とトシがあまり離れていないせいかもしれません(滝汗)
ちなみに自分は、某美少女戦士はSのウラヌ〇のファンでありました。・・・まさかその後に、その戦士のリーダーと同居する根暗少年を演じるとは・・・
足岡様>
マモー体型のアシュタロス・・・・メチャ怖っ!!!!!!しかも声は黄門様!!!!!!
想像するだけで腹痛いです(爆)
今現在、ちょうど理由のとこを書いてました。頭の中では上手くいっても文にすると難しいっす(汗)
かなり苦闘してますが、なるべく判り易く、そしてズレた点が無いようにがんばりますので、それまでお待ちくださいませ。
皆様、いつもありがとうございます。
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